会社法の「設立・定款」は、株式会社を作る場面で最初に確認すべき分野です。発起人、定款、設立時発行株式、出資の履行、設立時役員等、設立登記までがつながっており、どこかに不備があると、登記、株主構成、資本金、役員の権限、設立後の契約関係に影響することがあります。
このページでは、会社設立の全体像をつかみたい方、定款の記載事項を確認したい方、会社法25条以下の条文解説から根拠を確認したい方に向けて、関連する解説記事を整理しています。
- 会社設立の全体像は、まず株式会社設立の流れで確認する
- 誰が発起人になるか、発起人にどのような責任があるかは、発起人とはと発起人等の責任で確認する
- 定款の記載事項は、絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項に分けて確認する
- 出資、設立時役員、設立時代表取締役、設立時調査は、設立登記前に整合性を確認する
- 条文上の根拠は、会社法25条・26条から会社法102条の2・103条までの逐条解説で確認する
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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設立・定款でまず確認すること
株式会社設立では、定款作成、出資、役員選任、設立登記が別々の作業に見えます。しかし実務上は、発起人が誰か、誰が何株を引き受けるか、資本金をいくらにするか、誰を取締役・代表取締役にするかが連動します。
公式条文を確認する場合は、e-Gov法令検索の会社法を参照してください。発起設立の一般的な流れは、法務省の株式会社の設立手続(発起設立)についても参考になります。
| 確認したいこと | 最初に読む記事 | 主な条文・関連論点 |
|---|---|---|
| 会社設立の全体像 | 株式会社設立の流れ(発起設立・募集設立) | 会社法25条以下、設立登記、登記後手続 |
| 発起人の役割・人数・責任 | 発起人とは | 会社法25条、26条、52条〜56条、103条 |
| 定款の記載事項 | 定款とは|記載事項と作成の実務ポイント | 会社法26条〜31条、目的、商号、本店、出資額、発起人 |
| 変態設立事項・現物出資 | 現物出資・財産引受け(変態設立事項) | 会社法28条、33条、52条、52条の2 |
| 出資の履行・払込証明 | 出資の履行(払込み)と払込証明 | 会社法34条〜37条、仮装払込み、発行可能株式総数 |
| 設立時役員・代表取締役 | 設立時取締役・監査役の選任方法、設立時代表取締役の選定 | 会社法38条〜48条、機関設計、代表権 |
| 会社の成立・登記 | 株式会社の成立時期、会社法911条|株式会社の設立の登記 | 会社法49条、911条、商業登記申請 |
| 募集設立・創立総会 | 募集設立とは、創立総会の手続 | 会社法57条〜102条、創立総会、種類創立総会 |
設立手続全体を知りたい場合は実務記事から、条文上の根拠を確認したい場合は逐条解説から読むと整理しやすくなります。すでに設立作業中であれば、定款、払込、設立時役員、登記書類の整合性を優先して確認してください。
会社設立の実務記事
実務記事では、条文番号だけでは把握しにくい会社設立の流れ、定款作成、払込み、設立時役員、登記前後の確認事項を場面別に整理しています。
設立手続の全体像と発起人
定款作成・定款認証
定款の記載例や認証手続を確認する場合は、日本公証人連合会の定款等記載例も参考になります。ただし、雛形をそのまま使うのではなく、目的、株式、機関設計、譲渡制限、事業年度などを自社の実情に合わせて調整する必要があります。
株式・出資・資本金
設立時役員・設立時代表取締役・調査
募集設立・創立総会
会社法25条〜56条の逐条解説(発起設立を中心に)
会社法25条〜56条は、株式会社設立の入口から、定款、出資、設立時役員、株式会社の成立、引受けの取消制限、発起人等の責任までを扱います。発起設立で会社を作る場合は、この範囲を順番に確認すると、設立登記前の不備を発見しやすくなります。
| 条文 | 解説記事 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 25条・26条 | 株式会社の設立・定款の作成 | 発起設立・募集設立の区分、発起人による定款作成 |
| 27条 | 定款の記載又は記録事項 | 目的、商号、本店、出資額、発起人などの絶対的記載事項 |
| 28条 | 変態設立事項 | 現物出資、財産引受け、発起人の報酬、設立費用 |
| 29条〜31条 | 任意的記載事項・認証・備置き閲覧 | 任意的記載事項、定款認証、定款の備置き・閲覧 |
| 32条・33条 | 設立時発行株式の決定・定款事項の検査役調査 | 設立時発行株式の決定、検査役調査、例外 |
| 34条〜37条 | 出資の履行・株主となる権利・発行可能株式総数 | 払込み、現物出資の給付、失権、発行可能株式総数 |
| 38条〜45条 | 設立時役員等の選任・解任 | 設立時取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任・解任 |
| 46条 | 設立時取締役等による調査 | 出資履行、変態設立事項、手続違反の調査 |
| 47条・48条 | 設立時代表取締役等の選定 | 設立時代表取締役、設立時委員の選定 |
| 49条・50条 | 株式会社の成立・株式の引受人の権利 | 設立登記による成立、株式引受人の地位 |
| 51条 | 引受けの無効又は取消しの制限 | 会社成立後の引受け取消し制限、設立の安定 |
| 52条 | 出資された財産等の価額が不足する場合の責任 | 現物出資等の価額不足責任 |
| 52条の2 | 出資の履行を仮装した場合の責任等 | 仮装払込み、関与者責任 |
| 53条〜55条 | 発起人等の損害賠償責任・連帯責任・責任免除 | 発起人・設立時役員等の責任、免除の可否 |
| 56条 | 株式会社不成立の場合の責任 | 会社が成立しなかった場合の責任と費用負担 |
会社法57条〜103条の逐条解説(募集設立・創立総会)
募集設立では、発起人以外の設立時株式引受人を募集するため、発起設立よりも手続が複雑になります。設立時募集株式の募集・申込み・割当て、払込み、創立総会、種類創立総会、定款変更、引受取消し、払込仮装責任までを確認する必要があります。
| 条文 | 解説記事 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 57条〜62条 | 設立時募集株式の募集・申込み・割当て・引受け | 募集事項、申込み、割当て、引受けの成立 |
| 63条・64条 | 設立時募集株式の払込み・払込金の保管証明 | 払込み、払込金保管証明、払込取扱機関 |
| 65条〜83条 | 創立総会の招集・議決権・決議・議事録・省略 | 創立総会の招集、議決権、決議、議事録、省略 |
| 84条〜87条 | 種類創立総会・設立に関する事項の報告 | 種類株式発行会社の創立総会、設立事項の報告 |
| 88条〜92条 | 設立時取締役等の選任・解任 | 募集設立における設立時役員等の選任・解任 |
| 93条・94条 | 設立時取締役等による調査(募集設立) | 創立総会後の調査、不備がある場合の対応 |
| 95条〜102条 | 募集設立における定款変更・引受取消し・発行可能株式総数の定め | 定款変更、引受取消し、発行可能株式総数、種類株式 |
| 102条の2・103条 | 払込仮装責任・発起人の責任等 | 募集設立の払込仮装責任、発起人等の責任 |
設立・定款で実務上問題になりやすいポイント
会社設立は、登記申請書類をそろえる作業だけではありません。設立後に事業を始め、資金調達を行い、株主・役員・取引先との関係を安定させるためには、設立段階の設計が重要です。
定款目的は、許認可・金融機関審査・将来事業を見据えて決める
目的は、会社法27条の絶対的記載事項です。抽象的すぎる目的や、許認可に合わない目的は、設立後の事業開始、銀行口座開設、許認可申請で問題になることがあります。詳しくは、会社設立の「目的」の決め方を確認してください。
資本金・株数・持株比率は、創業者間の権利関係に直結する
設立時発行株式の数、払込金額、資本金、資本準備金をどう決めるかは、会社成立後の議決権比率、配当、増資、創業者間の支配関係に影響します。資本金・準備金の基礎は、資本金・準備金・剰余金の違いも参考になります。
現物出資・財産引受けは、検査役調査と責任を意識する
金銭ではなく財産を出資する場合や、会社成立後に特定財産を譲り受けることを設立前に約束する場合は、変態設立事項として定款記載や検査役調査の問題が生じます。設立後の追認で簡単に直せない場面もあるため、現物出資・財産引受け(変態設立事項)で要件を確認してください。
仮装払込み・見せ金は、成立後の責任問題につながる
出資金を一時的に用意して払込みの外形だけを整え、すぐに引き出して返済するような処理は、会社の資本充実を害し、発起人等の責任や払込仮装責任の問題につながります。払込口座、払込時期、払込証明は、出資の履行(払込み)と払込証明で確認してください。
設立時役員の選任と代表取締役の選定は、機関設計と登記に合わせる
取締役会を置くか、監査役を置くか、誰を代表取締役にするかによって、就任承諾書、印鑑証明書、議事録、登記事項が変わります。機関設計全体は、会社の機関設計もあわせて確認してください。
設立登記・登記後の手続との関係
株式会社は、設立登記によって成立します。定款を作成し、出資を履行し、設立時役員等を選任・調査しても、設立登記が完了するまでは株式会社として成立していません。
- 設立登記の条文上の根拠は、会社法49条・50条と会社法911条で確認する
- 登記申請の手続全体は、商業登記の申請手続で確認する
- 登記申請期限や起算点は、登記申請の期限(2週間・3週間)と起算点で確認する
- 登記後は、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所・労働保険・銀行口座・許認可などの手続も確認する
設立前の契約、設立費用、成立前の取引、登記後に引き継ぐ権利義務は、後日紛争になりやすい部分です。設立準備の段階から、誰の名義で契約するのか、会社成立後にどのように処理するのかを整理しておくことが重要です。
関連する会社法分野
設立・定款の論点は、株式、役員、計算、登記、会社関係訴訟ともつながります。本文で詳述すると設立・定款の主題から外れる論点は、次の記事で確認してください。
| 関連分野 | 関連ページ | 設立・定款との関係 |
|---|---|---|
| 会社法全体 | 会社法逐条解説(全体マップ) | 会社法全体の条文・論点から目的の記事へ移動する |
| 登記 | 商業登記の申請手続、会社法911条 | 設立登記の申請、添付書類、登記事項を確認する |
| 株式 | 種類株式とは | 設立時に種類株式・譲渡制限・発行可能株式総数を設計する |
| 役員・機関 | 会社の機関設計 | 取締役会、監査役、代表取締役の設計と登記に関わる |
| 計算・資本 | 資本金・準備金・剰余金の違い | 資本金、資本準備金、払込金額の決め方に関わる |
| 会社関係訴訟 | 会社法828条|会社の組織に関する行為の無効の訴え | 設立無効、新株発行無効、組織再編無効などの入口を確認する |
よくある質問
発起設立と募集設立はどちらを選ぶべきですか。
少人数の創業者や中小企業の設立では、発起人が設立時発行株式を全部引き受ける発起設立が使われることが多いです。設立段階で発起人以外の引受人を募集する必要がある場合は募集設立を検討しますが、創立総会などの手続が加わるため、手続負担も確認する必要があります。
定款では何を必ず決める必要がありますか。
会社法27条では、目的、商号、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所を定款の記載又は記録事項としています。これらに加えて、変態設立事項や株式・機関設計に関する事項も、必要に応じて定款で定めます。
定款認証後に内容を変えられますか。
設立前・設立後のどの段階で、どの内容を変更するかによって手続が変わります。募集設立では創立総会や種類創立総会が関わる場合もあります。目的、本店、発行可能株式総数、機関設計などは登記事項にも影響するため、変更の必要が出た場合は条文と登記手続を合わせて確認してください。
会社はいつ成立しますか。
株式会社は、本店所在地で設立登記をすることによって成立します。定款作成や出資の履行を終えていても、それだけでは株式会社は成立しません。成立日や成立前の行為については、株式会社の成立時期で整理しています。
設立後に出資や定款の不備が分かった場合はどうなりますか。
不備の内容によって、定款変更、登記の補正・変更、発起人等の責任、払込仮装責任、設立無効の訴えなどが問題になります。設立後に簡単に追認・修正できるとは限らないため、設立前に定款、出資、役員、登記書類を整合的に確認することが重要です。
まとめ
設立・定款は、株式会社の出発点です。設立手続では、発起人、定款、出資、設立時役員、設立時代表取締役、設立時調査、設立登記を順番に確認する必要があります。
- 会社設立の全体像をつかむ場合は、まず設立手続の流れから確認する
- 定款では、絶対的記載事項、変態設立事項、任意的記載事項、認証、備置き閲覧を分けて整理する
- 出資・払込み・現物出資では、資本充実と仮装払込みリスクに注意する
- 設立時役員・代表取締役・機関設計は、登記事項と就任承諾書類に影響する
- 条文上の根拠を確認したい場合は、会社法25条以下の逐条解説を順番に確認する
会社設立の段階での判断は、設立後の株主関係、役員の権限、資金調達、許認可、金融機関対応にも影響します。定款や設立書類に不安がある場合は、登記だけでなく設立後の運用まで見据えて確認することが大切です。
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