【会社法911条】株式会社の設立の登記|条文の要点と実務ポイント

会社法911条は、株式会社の設立登記について、登記をすべき時期と登記事項を定める条文です。株式会社は、本店所在地で設立の登記をすることによって成立するため、911条は会社設立の最後の入口になる規定です。

実務では、会社法911条を読むだけでなく、定款、出資の履行、設立時役員の選任、設立時取締役等の調査、登記申請書、添付書類、登録免許税、会社成立日を一体で確認する必要があります。

この記事では、会社法911条について、発起設立・募集設立ごとの登記期限、911条3項の登記事項、会社成立時期との関係、株式会社設立登記の実務チェックポイントを整理します。

  • 会社法911条は、株式会社の設立登記の期限と登記事項を定める条文です。
  • 発起設立では、設立時取締役等の調査終了日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に設立登記をします。
  • 募集設立では、創立総会の終結日や種類創立総会決議日など、911条2項所定の日のいずれか遅い日から2週間以内に設立登記をします。
  • 911条3項の登記事項には、目的、商号、本店、資本金、株式、役員、機関、公告方法などが含まれます。
  • 株式会社は設立登記によって成立するため、申請期限だけでなく、成立日・登記完了日・証明書取得可能時期を分けて管理することが重要です。

坂尾陽弁護士

株式会社の設立登記は、単なる事後手続ではなく、会社が法的に成立するための重要な手続です。定款作成や払込みが終わっていても、設立登記をしなければ株式会社として成立しません。設立日をいつにしたいか、登記完了後にいつから契約・銀行口座・許認可手続を進めるかを逆算して準備しましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法911条とは

会社法911条は、会社法第7編第4章「登記」に置かれた、株式会社の設立登記に関する中心条文です。会社法907条〜910条が登記の通則・効力・変更登記・期間を定めるのに対し、911条は株式会社を設立するときに、いつ、何を登記するかを定めています。

条文全体は長いため、最新の条文はe-Gov法令検索「会社法」で確認するのが安全です。本記事では、条文の要点と実務上の確認ポイントに絞って整理します。

項目 会社法911条の内容 実務上の意味
1項 発起設立の設立登記期限 設立時取締役等の調査終了日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に登記します。
2項 募集設立の設立登記期限 創立総会や種類創立総会など、募集設立特有の手続を踏まえて期限を計算します。
3項 株式会社の設立登記事項 目的、商号、本店、資本金、株式、役員、機関、公告方法などを登記します。

会社法上の登記全体の位置づけは、会社の登記とは|登記の効力・対抗要件・登記漏れのリスクを整理でも整理しています。


株式会社の設立登記と会社成立の関係

株式会社の設立登記を考えるときは、会社法911条だけでなく、会社法49条との関係を押さえる必要があります。会社法49条は、株式会社が本店所在地で設立の登記をすることによって成立すると定めています。

つまり、定款を作成し、公証人の認証を受け、出資の払込みをし、設立時役員を選任していても、設立登記をしなければ株式会社は成立しません。911条は、その設立登記をいつまでに申請し、どの事項を登記するかを具体化する規定です。

設立日・申請日・登記完了日を分けて考える

実務では、会社成立日、登記申請日、登記完了日が混同されやすいです。通常の設立登記では、法務局に設立登記を申請した日が、登記簿上の会社成立年月日として扱われます。一方、登記完了日は、法務局での審査・記録が完了し、登記事項証明書や印鑑証明書を取得できるようになる日です。

区分 意味 実務上の注意点
設立登記申請日 本店所在地の法務局に設立登記を申請した日 通常は会社成立年月日として登記簿に記録されます。
会社成立日 株式会社が法的に成立した日 税務届出、社会保険、契約開始時期などの基準日になり得ます。
登記完了日 法務局の審査・記録が完了した日 登記事項証明書や印鑑証明書の取得、銀行口座開設、許認可手続に関係します。
令和8年2月2日以降の休日特例

令和8年2月2日以降、一定の要件の下で、行政機関の休日を会社等の設立の登記の年月日・成立の年月日として記録することを求められる特例が設けられています。設立日を休日にしたい場合は、法務省の案内と最新の登記実務を確認してください。

株式会社の成立時期や成立前の行為は、設立登記と密接に関係します。ただし、本記事では会社法911条の設立登記を中心に扱い、成立前取引や発起人行為の詳細には踏み込みすぎないようにします。


発起設立の場合の設立登記期限

発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける設立方法です。中小企業の株式会社設立では、発起設立が多く用いられます。

会社法911条1項は、発起設立の場合、株式会社の設立登記を、本店所在地において、次のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならないと定めています。

  • 会社法46条1項による設立時取締役等の調査が終了した日
  • 発起人が定めた日

指名委員会等設置会社として設立する場合は、設立時代表執行役が会社法46条3項の通知を受けた日が問題になります。ただし、通常の中小企業の設立では、取締役会非設置会社又は取締役会設置会社として設立するケースが多く、まずは設立時取締役等の調査終了日と発起人が定めた日の関係を確認することになります。

設立時取締役等の調査とは

設立時取締役等は、選任後遅滞なく、出資の履行が完了しているか、設立手続が法令又は定款に違反していないかなどを調査します。現物出資などがある場合には、その価額の相当性や証明の相当性も問題になります。

法務省の発起設立手続案内でも、設立時取締役等による調査と設立登記申請の手続が整理されています。実際に申請する場合は、法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」も確認してください。

発起人が定めた日とは

発起人が定めた日は、発起人が設立日として想定する日です。会社法911条1項では、調査終了日と発起人が定めた日のいずれか遅い日を基準に2週間以内とされているため、発起人が定めた日だけで期限を判断しないように注意が必要です。

期限管理の注意点

設立登記の期限は「設立したい日から2週間以内」ではありません。発起設立では、会社法46条1項の調査終了日と発起人が定めた日のいずれか遅い日を基準にします。


募集設立の場合の設立登記期限

募集設立とは、発起人以外にも設立時発行株式を引き受ける者を募集する設立方法です。発起設立より手続が複雑で、創立総会や種類創立総会が関係することがあります。

会社法911条2項は、募集設立の場合、設立登記を次のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならないと定めています。

基準日 実務上の意味
創立総会の終結の日 募集設立の基本的な基準日です。
会社法84条の種類創立総会の決議をした日 種類株式発行会社として種類創立総会決議が必要になる場合に確認します。
会社法97条の創立総会決議日から2週間を経過した日 設立に関する一定の決議があった場合に、待機期間を踏まえて基準日を判断します。
会社法100条1項の種類創立総会決議日から2週間を経過した日 種類株主に関する手続との関係で確認します。
会社法101条1項の種類創立総会決議をした日 種類創立総会決議がある場合の基準日として確認します。

募集設立は、発起設立よりも関係者と手続が多くなります。設立登記の期限を確認する際は、創立総会や種類創立総会の有無、決議内容、議事録、払込み、設立時役員の選任・調査を時系列で整理することが重要です。


会社法911条3項の登記事項

会社法911条3項は、株式会社の設立登記で登記すべき事項を列挙しています。条文上は多数の事項が並びますが、実務では「ほぼすべての株式会社で問題になる事項」と「定款・株式・機関設計に応じて問題になる事項」に分けて確認すると整理しやすいです。

分類 主な登記事項 実務上の確認ポイント
会社の基本情報 目的、商号、本店及び支店の所在場所、存続期間又は解散事由の定款定め 定款、事業内容、許認可、本店所在地の表記を確認します。
資本・株式 資本金の額、発行可能株式総数、発行する株式の内容、単元株式数、発行済株式総数、株券発行会社である旨 定款、設立時発行株式、出資の履行、種類株式の有無を確認します。
株主・新株予約権等 株主名簿管理人、新株予約権、電子提供措置をとる旨の定款定め 上場準備、種類株式、新株予約権、電子提供制度の設計に応じて確認します。
役員・代表者 取締役の氏名、代表取締役の氏名及び住所 取締役会設置の有無、代表取締役の選定方法、住所公開を確認します。
機関設計 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、一時会計監査人、特別取締役、監査等委員会、指名委員会等 会社の規模、株式譲渡制限、定款、上場・非上場の設計に応じて確認します。
責任限定・情報開示 役員等の責任免除、責任限定契約、貸借対照表の電子開示に関する事項 定款に定めを置くか、登記が必要かを確認します。
公告方法 公告方法の定款定め、電子公告に必要な事項、定款に公告方法の定めがない場合の官報公告 官報、日刊新聞紙、電子公告のどれを選ぶか、電子公告URLをどう管理するかを確認します。

公告方法については、会社の公告方法(官報・日刊新聞・電子公告)|定款の定めと選び方や、【会社法939条】会社の公告方法もあわせて確認してください。


中小企業の設立で特に確認すべき登記事項

会社法911条3項には、上場会社や複雑な機関設計を前提にした事項も含まれています。非上場の中小企業を設立する場面では、特に次の事項を重点的に確認します。

目的・商号・本店所在地

目的、商号、本店所在地は、定款作成と設立登記の両方で重要です。目的は許認可や将来事業との関係、商号は会社種類の表示や同一商号・不正競争上のリスク、本店所在地は定款の記載範囲と登記上の具体的住所を確認します。

目的や本店所在地は、設立後の許認可、金融機関手続、取引先審査にも影響します。定款作成段階で、将来の事業内容、許認可文言、本店移転の可能性まで見据えて整理しておくことが重要です。

資本金の額・発行可能株式総数・発行済株式数

資本金の額は登記事項ですが、会社法27条の定款の絶対的記載事項ではありません。他方で、設立時発行株式に関する事項、発行可能株式総数、出資の払込み、資本金の計上は相互に関係します。

設立時に資本金をいくらにするかは、信用、許認可、税務、創業融資、運転資金との関係も踏まえて検討します。会社法911条上の登記事項としてだけでなく、設立後の事業運営に耐える設計になっているかを確認することが重要です。

取締役・代表取締役・機関設計

設立時取締役の氏名、代表取締役の氏名及び住所は登記事項です。取締役会設置会社にするか、監査役を置くか、代表取締役をどの方法で選定するかによって、定款、議事録、就任承諾書、印鑑届出などの実務が変わります。

設立時代表取締役の選定方法は、設立後の契約締結や金融機関手続にも直結します。代表者を誰にするかだけでなく、選定方法と必要書類が機関設計と合っているかを確認しましょう。

公告方法

公告方法は、定款で定めた場合にはその定めが登記事項になります。電子公告を選ぶ場合は、公告ページのURLなど、電子公告に必要な事項も問題になります。定款に公告方法を定めない場合でも、会社法939条4項により官報公告とされる旨を登記する必要があります。


設立登記申請の手続・添付書類との関係

会社法911条は、株式会社の設立登記の期限と登記事項を定める条文であり、申請書の具体的な作り方や添付書類のすべてを定める条文ではありません。実際の申請では、商業登記法、商業登記規則、法務局の実務をあわせて確認します。

株式会社の設立登記では、一般に、次のような書類や情報が問題になります。

  • 登記申請書
  • 定款
  • 発起人の決定書又は発起人会議事録
  • 設立時取締役・設立時代表取締役等の就任承諾書
  • 設立時取締役等の調査報告書
  • 払込みを証する書面
  • 印鑑届書、代表者の印鑑証明書
  • 登録免許税の納付に関する書類
  • 現物出資がある場合の検査役・弁護士等の証明書など

どの書類が必要かは、取締役会設置会社かどうか、現物出資の有無、発起設立か募集設立か、電子定款か紙定款か、オンライン申請かどうかによって変わります。申請手続全体は、商業登記の申請手続|申請人・添付書類・オンライン申請の基本を確認してください。

実務ポイント

会社法911条3項の登記事項と、登記申請書に記載する「登記すべき事項」は対応します。登記事項を確定する前に、定款、株式発行事項、役員選任、公告方法、本店所在地の表記が整合しているかを確認しましょう。


会社法912条〜914条との違い

会社法911条は、株式会社の設立登記に関する規定です。合名会社、合資会社、合同会社などの持分会社の設立登記は、会社法912条、913条、914条で別に定められています。

会社類型 設立登記の条文 主な特徴
株式会社 会社法911条 株式、資本金、取締役、代表取締役、機関設計、公告方法など多数の登記事項があります。
合名会社 会社法912条 社員の氏名・住所、代表社員など、持分会社固有の登記事項を確認します。
合資会社 会社法913条 無限責任社員・有限責任社員の区別などが登記事項になります。
合同会社 会社法914条 資本金、業務執行社員、代表社員などを確認します。

持分会社の設立登記は、【会社法912条・913条・914条】持分会社の設立の登記で整理しています。株式会社と合同会社を比較して選ぶ場合は、設立登記事項だけでなく、出資者の責任、機関設計、信用、運営コスト、将来の資金調達もあわせて検討する必要があります。


株式会社設立登記の実務チェックリスト

会社法911条に沿って株式会社の設立登記を確認する際は、次の項目をチェックします。

設立手続の時系列

  • 発起設立か募集設立かを確認する
  • 定款作成・認証が完了しているかを確認する
  • 出資の払込み又は現物出資の給付が完了しているかを確認する
  • 設立時取締役等の選任と調査が完了しているかを確認する
  • 会社法911条1項又は2項の基準日から2週間以内かを確認する

登記事項の整合性

  • 目的・商号・本店所在地が定款と一致しているか
  • 資本金の額、発行可能株式総数、発行済株式数に矛盾がないか
  • 役員の氏名、代表取締役の氏名・住所が正確か
  • 取締役会、監査役、会計参与、会計監査人などの機関設計が定款と一致しているか
  • 公告方法の定款定めと登記事項が一致しているか

申請後の実務

  • 登記完了予定日を確認する
  • 登記事項証明書・印鑑証明書の取得時期を確認する
  • 税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所などへの届出期限を確認する
  • 銀行口座開設、許認可申請、主要取引先との契約開始時期を調整する
  • 設立日を休日にしたい場合は、休日特例の要件と申請方法を確認する

会社法911条に関するよくある質問

会社法911条は何を定めていますか

会社法911条は、株式会社の設立登記について、発起設立・募集設立ごとの登記期限と、設立登記で登記すべき事項を定めています。

株式会社の設立登記はいつまでに必要ですか

発起設立では、設立時取締役等の調査終了日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内です。募集設立では、創立総会の終結日など会社法911条2項所定の日のいずれか遅い日から2週間以内です。

株式会社はいつ成立しますか

株式会社は、本店所在地で設立の登記をすることによって成立します。通常の実務では、設立登記申請日が会社成立年月日として登記簿に記録されますが、登記事項証明書などを取得できるのは登記完了後です。

登記完了日が会社設立日ですか

通常は、登記完了日と会社設立日を分けて考えます。登記完了日は法務局の審査・記録が完了した日であり、登記事項証明書や印鑑証明書を取得できるようになる時期に関係します。

資本金の額は定款に必ず書く必要がありますか

資本金の額は会社法911条3項の登記事項ですが、会社法27条の定款の絶対的記載事項ではありません。ただし、設立時発行株式、払込み、資本金計上との関係で、設立手続全体として整合している必要があります。

公告方法を定款に定めない場合はどうなりますか

定款に公告方法の定めがない場合、会社法939条4項により官報に掲載する方法が公告方法となり、その旨が会社法911条3項29号により登記事項になります。電子公告を選ぶ場合は、電子公告URLなども確認します。

合同会社の設立登記にも会社法911条が適用されますか

合同会社の設立登記は、会社法914条で定められています。911条は株式会社の設立登記に関する規定です。合名会社は912条、合資会社は913条、合同会社は914条を確認します。

設立登記の申請を司法書士に依頼すべきですか

設立登記は自社で申請することもできますが、定款、機関設計、現物出資、種類株式、許認可、設立日調整、電子公告などが絡む場合は、司法書士や弁護士などの専門家に確認した方が安全です。設立後の契約や株主間関係まで含める場合は、法務面の設計もあわせて検討する必要があります。


まとめ:会社法911条は株式会社設立登記の期限と登記事項を確認する条文

会社法911条は、株式会社の設立登記について、期限と登記事項を定める重要な条文です。株式会社は設立登記によって成立するため、911条は会社設立実務の最後の確認ポイントになります。

  • 会社法911条1項は、発起設立の設立登記期限を定めています。
  • 会社法911条2項は、募集設立の設立登記期限を定めています。
  • 会社法911条3項は、目的、商号、本店、資本金、株式、役員、機関、公告方法などの登記事項を定めています。
  • 株式会社は設立登記により成立するため、申請日、成立日、登記完了日を分けて管理する必要があります。
  • 登記事項は定款、出資、役員選任、機関設計、公告方法と密接に関係するため、申請前に全体の整合性を確認することが重要です。

設立登記の申請手続や添付書類は、商業登記の申請手続|申請人・添付書類・オンライン申請の基本、登記期限の考え方は登記申請の期限(2週間・3週間)と起算点|登記の期間の考え方も参考になります。

坂尾陽弁護士

設立登記の段階で登記事項を誤ると、設立後の契約、銀行口座、許認可、株主・役員関係に影響することがあります。会社設立では、登記申請書だけでなく、定款、株式、役員、公告方法、設立後の事業開始スケジュールまで一体で確認しましょう。

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株式会社の設立登記、登記申請手続、設立・定款に関する周辺論点は、次の記事も参考になります。

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