株主名簿とは|名義書換・閲覧謄写請求・株主名簿管理人を整理

株主名簿とは、株式会社が株主の氏名・住所・保有株式数などを記載又は記録して管理するための帳簿です。単なる連絡先一覧ではなく、株式譲渡後の名義書換、株主総会の招集通知、剰余金配当、基準日、株主名簿閲覧謄写請求など、会社が「誰を株主として扱うか」を確認する実務の出発点になります。

坂尾陽弁護士

株主名簿は、株主総会や株式譲渡の場面で後から問題になりやすい帳簿です。非上場会社では、株主名簿の整備、名義書換の記録、住所変更の管理、閲覧謄写請求への対応をセットで確認しておきましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)

 


株主名簿とは何か

株主名簿は、株式会社が株主を管理するために会社法上作成する帳簿です。会社法121条は、株主の氏名又は名称・住所、株式数、株式取得日、株券発行会社の場合の株券番号などを株主名簿記載事項として定めています。

会社の実務では、株主名簿を見れば、誰に株主総会招集通知を送るのか、誰が議決権や配当を受ける株主なのか、株式譲渡後に名義書換がされているのかを確認できます。そのため、株主名簿が古いままだと、株主総会決議、配当、M&A、事業承継、少数株主対応などの場面で紛争の原因になります。

  • 株主名簿は、会社が株主を把握するための基本帳簿です。
  • 株式譲渡の場面では、名義書換や会社への対抗要件と結び付きます。
  • 株主総会や配当では、基準日と株主名簿の記載が重要になります。
  • 株主や債権者から閲覧謄写請求を受けたときは、会社法125条の拒絶事由を確認します。

会社法の条文そのものを確認したい場合は、e-Gov法令検索の会社法で最新条文を確認できます。


株主名簿で管理する主な事項

株主名簿で最低限押さえるべき事項は、会社法121条の記載事項です。種類株式を発行している会社、株券発行会社、相続や合併による株式移転がある会社では、管理項目が増えやすいため、更新履歴も含めて整理しておく必要があります。

管理項目 実務上の確認ポイント
株主の氏名又は名称・住所 個人株主、法人株主、相続人、住所変更、通知先を確認します。住所が古いと招集通知・配当通知・催告の実務で問題になります。
保有株式数 普通株式だけでなく、種類株式発行会社では種類ごとの株式数を分けて管理します。
株式取得日 譲渡、相続、合併、自己株式処分など、株式を取得した根拠と日付を確認します。
株券番号 株券発行会社で株券が発行されている場合に問題になります。株券不発行会社では通常問題になりません。
更新履歴・根拠資料 株式譲渡契約書、譲渡承認決議、名義書換請求書、相続関係資料、本人確認資料などを保存します。

なお、登記申請で添付する「株主リスト」と、会社が常時管理する「株主名簿」は別のものです。株主リストは一定の登記手続で添付する資料であり、株主名簿そのものを代替するものではありません。


会社法121条〜126条の全体像

株主名簿の基本は、会社法121条から126条にまとまっています。この記事では横断的に整理しますが、個別条文の要件・効果を確認したい場合は、各条文記事で確認してください。

条文 テーマ 実務上の位置づけ
会社法121条 株主名簿 株主名簿の作成義務と記載事項を定める中心条文です。
会社法122条 株主名簿記載事項を記載した書面の交付等 株主が自分に関する株主名簿記載事項の書面交付等を求める場面で問題になります。
会社法123条 株主名簿管理人 株主名簿事務を信託銀行・証券代行会社などへ委託する制度です。
会社法124条 基準日 一定の日の株主を、議決権や配当などの権利を行使できる者と定める制度です。
会社法125条 備置き・閲覧謄写請求 本店等への備置き、株主・債権者の閲覧謄写請求、拒絶事由を定めます。
会社法126条 株主に対する通知等 株主名簿上の住所等に通知・催告を発すれば足りるという通知実務の基礎です。

名義書換と株式譲渡の関係

非上場会社で株式譲渡が行われた場合、譲渡契約だけで実務が完結するわけではありません。会社との関係では、誰が株主名簿に記載又は記録されているかが重要になります。株式譲渡の効力や会社に対する対抗要件は、株式譲渡の基本でも詳しく整理しています。

名義書換とは

名義書換とは、株式を取得した人を株主名簿上の株主として記載又は記録する手続です。譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約が成立していても、会社の株主名簿が更新されていないと、会社に対して株主として権利行使できるかが問題になります。

株券を発行しない会社では、通常、譲渡人と譲受人が共同して株主名簿記載事項の記載・記録を請求します。株券発行会社では、株券の交付や株券の所在が問題になりやすいため、株券発行会社の整理もあわせて確認する必要があります。

譲渡制限株式では承認手続も必要になる

多くの非上場会社では、定款で株式譲渡制限が定められています。この場合、株式譲渡を進めるには、名義書換だけでなく、会社の承認手続を確認しなければなりません。

注意

名義書換は、譲渡制限株式の承認手続そのものではありません。譲渡制限株式では、会社法136条以下の承認請求、承認又は不承認の決定、会社又は指定買取人による買取りなどが問題になります。詳しくは譲渡制限株式の承認手続を確認してください。

名義書換を怠ると権利行使に影響する

名義書換がされていないと、基準日や株主総会の場面で不利益が生じることがあります。最高裁昭和35年9月15日判決は、一定時点の株主に新株引受権を与える決議がされた場面で、その時点までに名義書換をしていなかった譲受人は新株引受権を取得しないと判断しました。

他方で、譲受人が適切に名義書換請求をしたのに会社側の過失で書換えがされなかった場合には、会社が名義書換未了を理由に譲渡を否認できないとされた裁判例もあります。実務上は、譲受人側は名義書換請求を速やかに行い、会社側は請求日・添付資料・承認決議・処理結果を記録しておくことが重要です。


基準日と株主名簿の関係

基準日とは、会社が一定の日を定め、その日に株主名簿に記載又は記録されている株主を、一定の権利を行使できる者と定める制度です。会社法124条は、基準日株主が行使できる権利を、基準日から3か月以内に行使するものに限っています。

基準日は、株主総会の議決権、剰余金配当、株式分割、株主優待、その他株主に対する権利確定の場面で問題になります。たとえば、株主総会の基準日後に株式が譲渡された場合でも、原則としてその総会で議決権を行使する者は基準日時点の株主名簿上の株主になります。

場面 株主名簿で確認すること
株主総会 基準日時点で議決権を行使できる株主、招集通知の送付先、議決権数を確認します。
配当 配当を受ける株主、送金先又は通知先、名義書換のタイミングを確認します。
株式譲渡後 譲渡日、譲渡承認日、名義書換日、基準日との前後関係を確認します。
所在不明株主 通知先住所、返送履歴、配当受領状況、所在不明株主制度の利用可能性を確認します。

株主総会の招集通知や議決権行使の具体的な手続は、株主総会の招集通知議決権行使の実務で確認してください。


株主名簿の閲覧謄写請求

会社法125条は、株主名簿の備置きと閲覧謄写請求について定めています。株式会社は、株主名簿を本店に備え置く必要があります。株主名簿管理人を置いている場合は、株主名簿管理人の営業所が備置場所になります。

株主及び債権者は、株式会社の営業時間内に、理由を明らかにして株主名簿の閲覧又は謄写を請求できます。書面で作成されている場合はその書面の閲覧・謄写、電磁的記録の場合は法務省令で定める方法により表示されたものの閲覧・謄写を求めることになります。

会社が拒否できる場合

会社は、株主名簿の閲覧謄写請求があった場合、会社法125条3項の拒絶事由に該当する場合を除き、拒否できません。現在の拒絶事由は、大きく見ると次のように整理できます。

拒絶事由の類型 実務上の見方
権利の確保又は行使に関する調査以外の目的 単なる営業利用、名簿の転売、権利行使と関係しない目的などは問題になります。
会社業務の遂行を妨げる目的・株主共同の利益を害する目的 嫌がらせ、業務妨害、会社や株主全体の利益を害する目的がある場合です。
利益を得て第三者に通報する目的 株主情報を有償提供する目的がある場合です。
過去2年以内の有償通報歴 過去に株主名簿の情報を利益を得て第三者に通報したことがある場合です。
実務メモ

平成26年改正前は、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にあることが株主名簿閲覧謄写請求の拒絶事由とされていました。現在はその拒絶事由は削除されています。古い裁判例や解説を読むときは、現行法の拒絶事由と混同しないよう注意が必要です。

閲覧謄写請求で問題になりやすい目的

株主総会での委任状勧誘、公開買付けへの応募勧誘、共同して株主権を行使するための他の株主の確認などは、株主権の行使と結び付きやすい目的です。東京地裁平成24年12月21日決定は、公開買付けの勧誘や委任状勧誘を目的とする株主名簿閲覧謄写請求について、会社法125条3項1号の「権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」とはいえないと判断しました。

一方で、最高裁平成22年9月14日決定は、会社に対する金融商品取引法上の損害賠償請求訴訟の原告を募る目的でされた株主名簿謄写請求について、会社法125条3項1号の拒絶事由に該当するとした原審の判断を是認しています。

少数株主が他の株主を確認したい場面では、請求目的の書き方、閲覧謄写後の利用方法、会社側の拒絶理由が争点になりやすいです。少数株主側の実務対応は、株主名簿閲覧請求の解説も参考になります。


株主名簿管理人とは

株主名簿管理人とは、株式会社に代わって株主名簿の作成・備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者です。会社法123条は、株式会社が株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、その事務を委託できることを定めています。

上場会社では、多数の株主を管理するため、信託銀行や証券代行会社が株主名簿管理人として関与するのが一般的です。非上場会社では必ず置かなければならないわけではありませんが、株主数が多い会社、種類株式やストックオプションを発行する会社、事業承継やM&Aを予定している会社では、株主管理体制を早めに整備する実益があります。

確認事項 ポイント
定款の定め 株主名簿管理人を置くには、定款でその旨を定める必要があります。
委託する事務 株主名簿の作成・備置き、名義書換、通知事務、株式事務などの範囲を委託契約で確認します。
備置場所 株主名簿管理人を置く場合、株主名簿の備置場所は株主名簿管理人の営業所になります。
非上場会社での要否 必須ではありませんが、株主数、株式移動の頻度、相続・事業承継、IPO準備の有無を踏まえて検討します。

株主に対する通知等と住所管理

会社法126条は、株式会社が株主に通知又は催告をする場合、株主名簿に記載又は記録された住所に宛てて発すれば足りると定めています。株主が別の通知場所や連絡先を会社に通知している場合は、その場所又は連絡先に宛てて発することになります。

この通知又は催告は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます。そのため、会社側は、株主名簿上の住所、株主からの住所変更届、発送日、返送履歴を管理しておくことが重要です。

ただし、通知が長期間返送されているからといって、直ちに株主の権利を消滅させられるわけではありません。所在不明株主の株式売却制度は、会社法197条以下の別制度として、通知不到達や配当不受領などの要件を満たすかを慎重に確認する必要があります。


中小会社が整備しておきたい株主名簿チェックリスト

非上場会社では、株主名簿が創業時のまま放置され、相続、贈与、譲渡、増資、自己株式取得、住所変更が反映されていないことがあります。株主名簿を整備する際は、次の順に確認すると実務上の漏れを減らせます。

  • 現在の株主、株式数、種類株式の有無を確認する
  • 定款で株式譲渡制限、株券発行会社かどうか、単元株制度の有無を確認する
  • 過去の株式譲渡、相続、贈与、増資、自己株式取得の資料を集める
  • 名義書換請求書、譲渡承認決議、株式譲渡契約書、相続関係資料を整理する
  • 株主総会の基準日、招集通知の送付先、議決権数と整合しているか確認する
  • 株主からの閲覧謄写請求に備えて、受付手順、本人確認、拒絶事由の検討フローを用意する
  • 住所不明・連絡不能の株主について、返送履歴や配当受領状況を記録する

株主名簿の整備は、単に表計算ソフトの一覧表を作る作業ではありません。株主の権利、会社の通知義務、株式譲渡の対抗要件、株主総会の有効性に影響するため、株式移動の根拠資料とセットで確認する必要があります。


よくある質問

株主名簿を作っていない場合、どうすればよいですか。

まず、定款、設立時の株主資料、過去の株主総会議事録、株式譲渡契約書、増資資料、相続関係資料を集め、現在の株主構成を復元します。単に現経営者の認識だけで作成すると、相続人や過去の譲受人との間で紛争になることがあります。

株主名簿と株主リストは同じですか。

同じではありません。株主名簿は会社が株主管理のために備え置く会社法上の帳簿です。株主リストは、一定の登記申請で添付する株主情報の資料であり、株主名簿そのものを代替するものではありません。

株主名簿は誰でも閲覧できますか。

誰でも自由に閲覧できるわけではありません。会社法125条では、株主及び債権者が理由を明らかにして閲覧謄写請求できるとされています。請求目的が権利行使と関係しない場合や、会社業務の妨害目的などがある場合には、会社が拒否できることがあります。

名義書換前の譲受人は株主総会に出席できますか。

名義書換前の譲受人が会社に対して株主として権利行使できるかは、株式の種類、株券発行の有無、名義書換請求の有無、会社側の対応、基準日との関係によって変わります。少なくとも、譲受人側は譲渡後速やかに必要な名義書換請求を行うべきです。

株主名簿管理人は必ず置く必要がありますか。

必ず置かなければならないわけではありません。もっとも、株主数が多い会社、上場会社、IPO準備会社、株式事務が複雑な会社では、株主名簿管理人や証券代行サービスの利用を検討する実益があります。


まとめ

株主名簿は、株主を一覧化するだけの書類ではなく、名義書換、基準日、株主総会、配当、通知、閲覧謄写請求と結び付く会社法上の重要な帳簿です。特に非上場会社では、株主名簿の不備が、事業承継、M&A、少数株主対応、株主総会決議の有効性に波及することがあります。

株主名簿を整備するときは、現在の株主構成だけでなく、過去の株式移動、譲渡承認、名義書換、基準日、住所変更、通知履歴まで確認することが重要です。株式譲渡や株主名簿閲覧謄写請求が紛争化しそうな場合は、会社側・株主側のいずれでも、早めに資料を整理して対応方針を検討しましょう。

関連記事

株主名簿に関する個別条文や、株式譲渡・株主総会の実務は、次の記事も参考になります。

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)