【会社法118条・119条】新株予約権買取請求・価格の決定等|条文の要点と実務ポイント

坂尾陽弁護士

会社法118条・119条は、一定の定款変更によって新株予約権者の地位に影響が生じる場面で、新株予約権者が会社に対して新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求できる制度と、その後の価格決定・支払のルールを定めています。実務では、対象となる新株予約権、新株予約権付社債の社債部分、20日前通知、請求期間、証券提出、撤回制限、定款変更日からの30日+30日の申立期間を、株式買取請求とは分けて管理することが重要です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法118条・119条の要点

会社法118条は、新株予約権買取請求の「入口」を定める条文です。どの定款変更が対象となるか、どの新株予約権者が請求できるか、通知・公告、請求期間、証券提出、撤回制限、定款変更中止時の効果を確認します。

会社法119条は、会社法118条に基づいて新株予約権買取請求がされた後の「価格決定」と「支払」を定める条文です。価格協議がまとまる場合、まとまらない場合、裁判所への価格決定申立て、利息、仮払い、買取りの効力、証券との引換えを確認します。

項目 会社法118条・119条の要点 実務で確認すること
対象となる場面 全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更、又は一定の種類株式に譲渡制限・全部取得条項を設ける定款変更です。 会社法107条・108条のどの定めを置くのか、対象となる新株予約権の範囲を確認します。
請求できる者 対象となる新株予約権の新株予約権者です。株主総会で反対した株主である必要はありません。 新株予約権原簿、発行要項、対象株式の種類、保有者を確認します。
新株予約権付社債 原則として、新株予約権付社債に付された新株予約権について請求するときは、社債部分の買取りも併せて請求します。 別段の定め、社債権者の範囲、社債券の有無、償還条件を確認します。
通知・公告 会社は、定款変更日の20日前までに対象新株予約権者へ通知します。通知は公告で代えることができます。 定款変更日、通知日、公告方法、対象者漏れを確認します。
請求期間 新株予約権買取請求は、定款変更日の20日前の日から定款変更日の前日までの間に行います。 請求書で新株予約権の内容・数を特定し、到達証拠を残します。
価格決定 定款変更日から30日以内に協議が調わないときは、その期間満了後30日以内に裁判所へ価格決定を申し立てることができます。 発行条件、対象株式価値、行使価額、残存期間、行使条件、評価資料を整理します。
支払・効力 協議成立時は定款変更日から60日以内に支払い、買取りの効力は定款変更日に生じます。 支払期限、利息、仮払い、証券との引換え、会計処理を確認します。

株式買取請求の流れと併せて確認する場合は、反対株主の株式買取請求・新株予約権買取請求|価格決定までの流れも参照してください。

会社法118条・119条の条文の位置づけ

会社法118条・119条の原文・最新表示は、会社法(e-Gov法令検索)で確認してください。ここでは、実務上の判断に必要な範囲で条文の構造を整理します。

会社法118条1項|新株予約権買取請求ができる場面

会社法118条1項は、次の定款変更をする場合に、対象となる新株予約権者が、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取るよう会社に請求できると定めています。

  • 全部の株式の内容として、会社法107条1項1号の譲渡制限を設ける定款変更をする場合:全部の新株予約権
  • ある種類の株式の内容として、会社法108条1項4号の譲渡制限又は同項7号の全部取得条項を設ける定款変更をする場合:当該種類の株式を目的とする新株予約権

新株予約権は、将来、一定の条件で株式を取得する権利です。その対象となる株式に譲渡制限や全部取得条項が設けられると、新株予約権者が予定していた投資回収や権利行使後の株式の処分可能性に影響することがあります。会社法118条は、そのような影響を受ける新株予約権者に退出の機会を与える規定です。

会社法118条2項|新株予約権付社債では社債部分も問題になる

新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求をする場合、原則として、併せて新株予約権付社債についての社債の買取りも請求しなければなりません。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は例外です。

実務では、新株予約権部分だけを見て判断すると不十分です。発行要項、社債要項、別段の定め、社債券の有無、利息・償還条件、社債権者集会の要否などを確認し、新株予約権部分と社債部分を一体で整理します。

会社法118条3項から5項|20日前通知と請求期間

会社は、会社法118条1項各号の定款変更をしようとするときは、定款変更日の20日前までに、対象となる新株予約権者に対して、当該定款変更を行う旨を通知しなければなりません。この通知は公告で代えることができます。

新株予約権買取請求は、定款変更日の20日前の日から定款変更日の前日までの間に、新株予約権の内容と数を明らかにして行います。会社側は、通知・公告の期限と対象者を誤らないようにし、新株予約権者側は、請求期間内に到達したことを証拠化します。

会社法118条6項・7項|新株予約権証券・新株予約権付社債券の提出

新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求をする場合、新株予約権者は会社に対し、その新株予約権証券を提出しなければなりません。新株予約権付社債券が発行されている場合も、原則としてその社債券の提出が必要です。

証券を紛失している場合は、公示催告の申立てが問題になります。実務では、証券が発行されているか、どこで保管されているか、担保設定や質入れがないか、提出期限に間に合うかを早めに確認します。

会社法118条8項から10項|撤回制限・中止時の効力・260条不適用

新株予約権買取請求をした新株予約権者は、会社の承諾を得た場合に限り、その請求を撤回できます。会社が対象となる定款変更を中止したときは、新株予約権買取請求は効力を失います。

また、会社法118条10項は、新株予約権買取請求に係る新株予約権について、会社法260条を適用しないと定めています。会社法260条は、新株予約権取得者による新株予約権原簿記載事項の記載又は記録の請求に関する規定です。買取請求後の新株予約権について、第三者取得や原簿処理を通常の新株予約権と同じ感覚で扱うと、権利関係が複雑になるため注意が必要です。

会社法119条1項から3項|価格協議・価格決定申立て・撤回

会社法119条1項は、価格について新株予約権者と会社の間で協議が調ったときは、会社が定款変更日から60日以内に支払をしなければならないと定めています。価格協議が調わない場合、定款変更日から30日以内に協議がまとまるかどうかが重要な分岐です。

定款変更日から30日以内に協議が調わないときは、その期間満了後30日以内に、新株予約権者又は会社が裁判所に価格決定を申し立てることができます。定款変更日から60日以内に申立てがない場合は、118条8項の撤回制限にかかわらず、その後、新株予約権者はいつでも買取請求を撤回できます。

会社法119条4項から8項|利息・仮払い・買取りの効力・証券との引換え

会社は、裁判所が決定した価格について、119条1項の期間満了後の法定利率による利息も支払わなければなりません。また、価格決定前でも、会社が公正な価格と認める額を仮払いすることができます。

現行法では、新株予約権買取請求に係る新株予約権の買取りは、定款変更日に効力を生じます。新株予約権証券又は新株予約権付社債券が発行されている場合、会社は、これらの証券・社債券と引換えに代金を支払う必要があります。

会社法118条の対象となる新株予約権

会社法118条で最初に確認すべきことは、「どの新株予約権が対象になるか」です。新株予約権は、発行要項によって対象株式、行使価額、行使期間、行使条件、取得条項、組織再編時の取扱いなどが異なります。株式の内容を変更する定款変更があっても、すべての新株予約権が常に対象になるわけではありません。

全部の株式に譲渡制限を設ける場合

会社がその発行する全部の株式の内容として譲渡制限を設ける場合、会社法118条1項1号により、全部の新株予約権が対象になります。新株予約権者は、将来株式を取得したとしても、その株式の譲渡に会社の承認が必要になるため、投資回収の前提が変わります。

この場面では、株主側では会社法116条の株式買取請求が問題となり、新株予約権者側では会社法118条の新株予約権買取請求が問題になります。会社側は、株主名簿だけでなく新株予約権原簿も確認し、通知・公告の対象者を漏らさないようにする必要があります。

種類株式に譲渡制限又は全部取得条項を設ける場合

ある種類の株式の内容として譲渡制限又は全部取得条項を設ける場合、会社法118条1項2号により、当該種類の株式を目的とする新株予約権が対象になります。例えば、A種種類株式を目的とする新株予約権があり、A種種類株式に全部取得条項を設ける場合、その新株予約権者に買取請求の機会が問題になります。

種類株式の設計は、会社法107条会社法108条種類株式とは|内容・設計・定款変更のポイントと密接に関係します。新株予約権を発行している会社が種類株式の内容変更を行う場合は、株式だけでなく、対象株式を目的とする新株予約権まで含めた設計が必要です。

ストックオプション・投資家向け新株予約権で確認すること

非上場会社では、役職員向けストックオプション、投資家向け新株予約権、M&A・資金調達に関連する新株予約権などが発行されていることがあります。会社法118条の対象になるかどうかは、名称ではなく、発行要項上どの株式を目的としているか、定款変更によってその目的株式にどのような変更が生じるかで判断します。

特に、退職時の失効、上場時の行使条件、M&A時の取扱い、会社による取得条項、行使価額調整条項がある場合、買取請求の要否や価格評価に影響します。定款変更の議案を作る段階で、発行済みの新株予約権の一覧表を作成しておくことが重要です。

株式買取請求との違い

会社法118条・119条は、会社法116条・117条と似た構造を持っています。しかし、対象は株式ではなく新株予約権です。そのため、反対株主の要件、評価方法、新株予約権付社債の扱い、証券提出、権利行使との関係で違いが生じます。

比較項目 株式買取請求(116条・117条) 新株予約権買取請求(118条・119条)
対象 株式 新株予約権。新株予約権付社債の場合は社債部分も問題になります。
請求主体 反対株主 対象となる新株予約権の新株予約権者
反対要件 議決権を行使できる株主は、原則として事前反対通知と総会での反対が問題になります。 新株予約権者は株主総会の議決権を有しないことが多く、株式買取請求のような反対株主要件とは異なります。
評価の中心 株式価値、企業価値、シナジー、非上場株式評価など 対象株式価値、行使価額、残存期間、行使条件、取得条項、ボラティリティなど
証券の提出 株券発行会社では株券提出が問題になります。 新株予約権証券又は新株予約権付社債券の提出が問題になります。
価格決定申立て 117条2項 119条2項

株式買取請求と新株予約権買取請求は、同じ定款変更で並行して発生することがあります。会社側は、株式側の手続だけを進めるのではなく、新株予約権原簿、発行要項、対象株式の種類、新株予約権付社債の有無を一体で確認してください。

会社法118条・119条の手続スケジュール

会社法118条・119条では、「定款変更日」を基準に期限を管理します。株主総会決議日ではなく、定款変更が効力を生ずる日を基準に、通知、請求期間、価格協議、価格決定申立て、支払期限を整理します。

時期 手続 確認ポイント
定款変更日の20日前まで 対象新株予約権者への通知又は公告 対象者、公告方法、通知到達、証拠保存を確認します。
定款変更日の20日前の日から前日まで 新株予約権買取請求期間 新株予約権の内容・数、請求書、証券提出、到達証拠を確認します。
定款変更日 定款変更の効力発生・買取りの効力発生 買取対象の新株予約権、原簿処理、権利行使の停止・管理を確認します。
定款変更日から30日以内 価格協議 会社提示額、評価資料、協議記録、仮払い方針を整理します。
30日経過後30日以内 裁判所への価格決定申立て 新株予約権者又は会社が申立てできます。申立期限を厳格に管理します。
定款変更日から60日以内 協議成立時の支払期限・申立て有無の分岐 申立てがない場合は新株予約権者の撤回が可能になります。
裁判所決定後 決定価格・利息・仮払いとの差額精算 法定利率、仮払い済額、証券との引換え、支払方法を確認します。

会社側が期限を誤ると、買取請求の適法性、撤回可否、利息、証券引換え、原簿処理で紛争が起きやすくなります。新株予約権者側も、請求期間を過ぎてしまうと権利行使が困難になるため、定款変更日の把握が最重要です。

新株予約権付社債の注意点

新株予約権付社債では、新株予約権と社債が一体的に設計されています。会社法118条2項は、新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求をする場合、原則として社債の買取りも併せて請求することを求めています。

別段の定めを必ず確認する

会社法118条2項には、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合の例外があります。したがって、発行要項・社債要項で、新株予約権と社債の分離、買取請求時の取扱い、償還条件、期限の利益、社債権者集会の要否を確認します。

社債部分の価格・利息・償還条件を整理する

新株予約権付社債では、新株予約権のオプション価値だけでなく、社債部分の元本、利息、償還期限、信用リスク、担保・保証の有無も問題になります。会社側が価格提示をする場合は、社債部分と新株予約権部分をどのように整理したかを説明できる資料を用意する必要があります。

証券・振替・保管状況を早めに確認する

新株予約権付社債券が発行されている場合、支払は社債券との引換えになります。証券が現物で保管されているか、質権設定や担保差入れがないか、紛失していないかを早めに確認します。発行から時間が経っている場合、証券管理が曖昧になっていることもあるため注意が必要です。

新株予約権の価格決定と評価の実務

新株予約権の価格評価は、株式評価とは異なります。新株予約権は、将来、一定の条件で株式を取得できる権利であり、その価値は対象株式の価値、行使価額、残存期間、行使条件、取得条項、譲渡制限、税務・会計上の前提などに左右されます。

価格協議で準備する資料

  • 新株予約権原簿、発行要項、割当契約、社債要項
  • 対象株式の種類、株式数、行使価額、行使期間、行使条件
  • 取得条項、消滅条項、退職・退任時の失効条項
  • 対象株式の評価資料、直近決算、事業計画、資本政策表
  • 上場会社の場合は市場株価、ボラティリティ、開示資料
  • 非上場会社の場合は株価算定書、第三者評価、過去の資金調達条件
  • 新株予約権付社債の場合は社債部分の元本、利息、償還条件、担保・保証
  • 価格提示・仮払い・裁判所申立てに関する社内決裁資料

発行要項上、組織再編、譲渡制限、全部取得条項、上場、退職などの場面で新株予約権をどのように扱うかが定められていることがあります。価格協議の前に、まず発行要項上の権利内容を正確に把握してください。

オプション評価モデルを使う場合の注意点

新株予約権の評価では、ブラック・ショールズ・モデル、二項モデル、モンテカルロ・シミュレーションなどのオプション評価の考え方が使われることがあります。ただし、非上場会社のストックオプションや投資契約に基づく新株予約権では、市場株価やボラティリティの前提を置きにくい場合があります。

そのため、評価モデルの名称だけで結論を決めるのではなく、対象株式価値、行使条件、失効条件、残存期間、権利行使の現実性、発行時の払込金額、資金調達時の条件を具体的に検討する必要があります。

会社法118条固有の裁判例は多くない

会社法118条・119条の新株予約権買取請求については、株式買取価格決定事件に比べると、著名な裁判例は多くありません。もっとも、価格決定の構造、手続の公正性、評価資料の整理、申立期限の管理については、会社法117条や組織再編における価格決定の議論が参考になります。

ただし、新株予約権は株式そのものではないため、株式買取価格決定の考え方をそのまま当てはめるのは危険です。新株予約権の内容、発行条件、対象株式の価値、社債部分の有無を踏まえて、個別に評価資料を作成する必要があります。

会社側の実務チェックリスト

新株予約権を発行している会社が、譲渡制限や全部取得条項に関する定款変更を行う場合は、株主対応だけでなく新株予約権者対応を並行して準備します。

  • 発行済み新株予約権を一覧化する:新株予約権原簿、発行要項、割当契約、社債要項を確認します。
  • 対象株式の種類を確認する:定款変更の対象となる株式を目的とする新株予約権を特定します。
  • 会社法118条の対象行為か確認する:107条1項1号、108条1項4号・7号との関係を整理します。
  • 通知・公告の期限を管理する:定款変更日の20日前までに通知又は公告を行います。
  • 請求期間を明示する:定款変更日の20日前の日から前日までの期間を案内します。
  • 証券提出を確認する:新株予約権証券・新株予約権付社債券の有無、紛失時対応を確認します。
  • 価格評価資料を準備する:対象株式価値、行使価額、残存期間、行使条件、社債部分を整理します。
  • 価格決定申立てを検討する:協議不成立時に会社側から申し立てるか、申立期限を管理します。
  • 仮払いと利息を検討する:会社が公正な価格と認める額の仮払い、法定利率による利息を確認します。
  • 原簿・会計処理を整える:定款変更日に買取りの効力が生じる前提で、原簿、会計、税務、開示を確認します。

会社法118条・119条は、手続を後回しにしやすい条文です。しかし、新株予約権者に通知漏れがあると、定款変更後の権利関係や価格紛争が複雑になります。定款変更の議案作成段階で、新株予約権者対応を同時に設計してください。

新株予約権者側の実務チェックリスト

新株予約権者側では、定款変更によって自分の新株予約権の価値や権利行使後の株式の処分可能性に影響があるかを確認します。会社から通知・公告があった場合は、請求期間が短いため、早めに発行要項と権利内容を確認する必要があります。

  • 保有する新株予約権を確認する:内容、数、行使価額、行使期間、行使条件を確認します。
  • 対象株式を確認する:定款変更の対象となる株式を目的としているか確認します。
  • 請求期間を確認する:定款変更日の20日前の日から前日までに請求します。
  • 請求書で内容・数を特定する:どの新株予約権について買取請求するかを明確にします。
  • 証券提出を準備する:新株予約権証券・新株予約権付社債券の有無と保管場所を確認します。
  • 新株予約権付社債の場合は社債部分も確認する:別段の定め、社債元本、利息、償還条件を確認します。
  • 価格資料を集める:対象株式価値、発行時資料、資本政策、第三者評価、会社の提示額の根拠を確認します。
  • 30日+30日の申立期限を管理する:協議不成立時に裁判所へ申し立てるか判断します。
  • 撤回の扱いを確認する:原則として会社の承諾が必要ですが、119条3項の場面では撤回可能性が変わります。

新株予約権買取請求をした後に、その新株予約権を行使する、譲渡する、担保に入れるといった行動を取ると、買取請求との整合性が問題になることがあります。請求後の行動は、発行要項、会社法118条・119条、会社との協議状況を踏まえて慎重に判断してください。

関連制度との違い

会社法116条・117条との関係

会社法116条は反対株主の株式買取請求、会社法117条は株式の価格決定等を定めます。これに対し、会社法118条・119条は新株予約権者の買取請求と価格決定を扱います。

同じ定款変更でも、株主には株式買取請求、新株予約権者には新株予約権買取請求が発生し得ます。会社側は、株主向け通知だけでなく、新株予約権者向け通知・公告、発行要項確認、価格評価を別建てで整理します。

組織再編・M&Aに伴う新株予約権買取請求との違い

合併、会社分割、株式交換、株式移転などの組織再編でも、新株予約権買取請求が問題になることがあります。ただし、根拠条文は会社法118条・119条ではなく、組織再編に関する個別規定です。

もっとも、通知、請求期間、証券提出、撤回制限、価格協議、裁判所への価格決定申立て、仮払い、利息、買取りの効力という考え方は共通する部分があります。M&Aにおける買取請求全体の検討は、M&Aにおける反対株主の株式買取請求も参照してください。

新株予約権の発行・差止めとの違い

新株予約権は、発行段階で有利発行、既存株主の希釈化、支配権争い、不公正発行が問題になることがあります。これらは、主に新株予約権の発行手続や差止めの問題であり、会社法118条・119条の新株予約権買取請求とは別の論点です。

本記事の対象は、既に発行されている新株予約権について、一定の定款変更により新株予約権者に買取請求権が発生するか、発生した場合に価格をどう決めるかです。発行段階の紛争と、買取請求段階の価格紛争を混同しないようにしてください。

よくある質問

会社法118条はどのような場面で使いますか。

代表的には、会社が全部の株式に譲渡制限を設ける場合、又は一定の種類株式に譲渡制限や全部取得条項を設ける場合です。その定款変更により、新株予約権者が将来取得する株式の内容や処分可能性に影響があるため、対象となる新株予約権者に買取請求権が認められます。

新株予約権者は株主総会で反対する必要がありますか。

株式買取請求では反対株主の要件が問題になりますが、新株予約権者は通常、株主総会の議決権を有しません。会社法118条では、株式買取請求のような反対株主要件ではなく、対象となる新株予約権者かどうか、請求期間内に内容・数を明らかにして請求したかが重要になります。

新株予約権付社債では、新株予約権部分だけを買い取ってもらえますか。

原則として、新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求をするときは、併せて社債部分の買取りも請求しなければなりません。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は例外です。発行要項・社債要項を必ず確認してください。

会社から通知が来ていなくても買取請求できますか。

会社法118条は、会社に対して定款変更日の20日前までの通知又は公告を求めています。もっとも、新株予約権者側では、通知の有無だけでなく、定款変更日、請求期間、対象新株予約権に当たるかを確認する必要があります。通知漏れが疑われる場合は、請求期間と証拠を早急に確認してください。

価格が合わない場合はどうなりますか。

定款変更日から30日以内に価格協議が調わない場合、その期間満了後30日以内に、新株予約権者又は会社が裁判所に価格決定を申し立てることができます。申立期限を過ぎると、119条3項により新株予約権者がいつでも買取請求を撤回できる状態になるため、会社側も申立てを検討する実益があります。

新株予約権買取請求後に撤回できますか。

原則として、会社の承諾がある場合に限り撤回できます。ただし、119条3項に定めるように、定款変更日から60日以内に価格決定申立てがない場合、その後は新株予約権者がいつでも撤回できます。撤回可否は、時期と申立ての有無で変わります。

新株予約権の買取りの効力はいつ生じますか。

会社法119条6項により、新株予約権買取請求に係る新株予約権の買取りは、定款変更日に効力を生じます。支払日ではない点に注意が必要です。原簿処理、権利行使、会計処理、税務処理、社債券・新株予約権証券との引換えを、定款変更日を基準に整理します。

関連記事

会社法118条・119条は、株式買取請求、種類株式、譲渡制限、全部取得条項、M&Aにおける買取請求と密接に関係します。

まとめ

会社法118条は、全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更や、一定の種類株式に譲渡制限・全部取得条項を設ける定款変更により影響を受ける新株予約権者に、新株予約権買取請求権を認める条文です。会社法119条は、その後の価格協議、価格決定申立て、支払、利息、仮払い、買取りの効力を定めています。

実務では、定款変更日を基準に、20日前通知、請求期間、証券提出、30日協議期間、その後30日の申立期間、60日支払期限を管理することが重要です。新株予約権付社債、ストックオプション、投資家向け新株予約権では、発行要項・社債要項・対象株式の内容・価格評価資料を早期に確認し、株式買取請求とは別建てで整理してください。

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