発起人等の責任(会社法52条〜56条・103条)|不足額・損害賠償・連帯責任・免除を整理

発起人等の責任とは、株式会社の設立手続で、現物出資・財産引受けの評価、出資の履行、設立事務、募集設立の手続などに不備があった場合に、発起人、設立時取締役、設立時監査役などが負う会社法上の責任をいいます。

会社設立では、「登記が完了すれば終わり」と考えがちですが、成立後に現物出資財産の価額不足、払込みの仮装、設立前契約、設立費用、募集設立の説明不備などが問題になることがあります。これらは、会社の資本充実、株主・債権者保護、設立手続の公正に関わるため、会社法52条から56条、募集設立では会社法102条の2・103条などで責任が整理されています。

本記事では、発起人等の責任について、不足額支払義務・仮装払込み責任・損害賠償責任・連帯責任・責任免除・会社不成立の場合の責任を、会社設立の実務で確認すべき順番に沿って整理します。

  • 現物出資・財産引受けの価額が著しく不足すると、発起人や設立時取締役が不足額を支払う責任を負うことがあります。
  • 払込みを仮装した場合は、登記が済んでいても、仮装した出資額全額の支払義務や株主権行使制限が問題になります。
  • 発起人、設立時取締役、設立時監査役が設立について任務を怠ると、会社や第三者に対する損害賠償責任が生じ得ます。
  • 責任を免除するには、取締役会決議や発起人同士の合意では足りず、総株主の同意が必要になる類型があります。
  • 募集設立では、発起設立よりも免責が狭くなる場面があり、募集・払込・創立総会の証拠化が重要です。

坂尾陽弁護士

発起人等の責任は、設立後にトラブルが起きてから初めて意識されることが多い分野です。特に、現物出資、財産引受け、第三者からの資金調達、募集設立を使う場合は、設立前の段階で責任の入口を確認しておくことが重要です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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発起人等の責任とは

発起人等の責任は、株式会社の設立に関与する者が、設立手続の不備や資本充実を害する行為について負う責任です。ここでいう「発起人等」には、場面により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、現物出資財産等の価額証明をした専門家、募集設立の引受人などが含まれます。

発起人は、単に会社設立を思いついた人ではありません。株式会社の設立では、定款を作成し、設立時発行株式を引き受け、出資を履行し、会社成立までの設立事務を進める中心的な立場にあります。会社設立の基本的な流れは、定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項と作成の実務ポイント出資の履行(払込み)と払込証明株式会社の成立時期で詳しく整理しています。

発起人等の責任を理解するうえでは、まず、誰の責任か、会社に対する責任か、第三者に対する責任か、連帯責任か、免除できるかを分けることが重要です。条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」も参照してください。

発起人等の責任は設立後にも問題になります

設立登記が終わっても、設立手続中の不備が当然に消えるわけではありません。現物出資の評価、払込口座の動き、設立前契約、募集時の説明資料などは、設立後の紛争で確認されることがあります。


発起人等の責任の全体像

発起人等の責任は、条文ごとに責任の対象と要件が異なります。実務では、次のように整理すると全体像を把握しやすくなります。

責任類型 主な条文 責任を負う可能性がある者 責任の内容 実務上の注意点
現物出資・財産引受けの価額不足 会社法52条 発起人、設立時取締役、価額証明者など 不足額の支払義務 評価資料、検査役調査、省略要件、専門家証明を確認する
出資履行の仮装 会社法52条の2 仮装した発起人、関与した発起人・設立時取締役など 仮装額全額の支払又は給付、株主権行使制限 見せ金、即時引出し、名義貸し、循環資金に注意する
任務懈怠による損害賠償 会社法53条 発起人、設立時取締役、設立時監査役 会社又は第三者への損害賠償責任 会社への責任と第三者への責任で要件が異なる
連帯責任 会社法52条、52条の2、54条など 複数の責任者 連帯して支払・賠償する責任 内部負担割合とは別に、外部的には全額請求され得る
責任の免除 会社法55条、102条の2、103条など 責任を負う発起人等 一定責任の免除には総株主の同意が必要 発起人間の合意や取締役会決議だけでは足りない
株式会社不成立の場合 会社法56条 発起人 設立に関してした行為の責任・費用負担 会社が成立しなかった場合の契約・費用負担を事前に整理する
募集設立の特則 会社法102条の2・103条 設立時募集株式の引受人、発起人、設立時取締役など 払込仮装責任、発起人責任の特則 発起設立より免責が狭くなる場面がある

このように、同じ「発起人等の責任」といっても、現物出資の価額不足、仮装払込み、任務懈怠、不成立、募集設立では、責任を負う人も、免責・免除の考え方も異なります。各条文の詳しい要件は、会社法52条の逐条解説会社法52条の2の逐条解説会社法53条〜55条の逐条解説会社法56条の逐条解説会社法102条の2・103条の逐条解説で個別に確認できます。


現物出資・財産引受けの価額不足と会社法52条

会社法52条は、株式会社の成立時における現物出資財産等の価額が、定款に記載又は記録された価額に著しく不足するときに、発起人及び設立時取締役が、会社に対して連帯して不足額を支払う義務を負うことを定めています。

ここで問題になりやすいのは、金銭出資ではなく、不動産、車両、機械設備、知的財産権、在庫、事業用資産、営業財産の譲受けなどです。現物出資や財産引受けは、定款記載、検査役調査、省略要件、専門家証明などが絡むため、設立後に価額不足が発覚すると、発起人等の責任につながります。

現物出資・財産引受けそのものの手続は、現物出資・財産引受け(変態設立事項)で詳しく解説しています。本記事では、価額不足が発覚した場合の責任に絞って説明します。

不足額支払義務が問題になる場面

価額不足責任は、定款に記載された価額と、会社成立時の現実の価額との間に「著しい不足」がある場合に問題になります。単に評価方法に幅がある、多少の価格変動があるというだけで直ちに責任が生じるわけではありませんが、設立時の資本の実質を害するような不足がある場合には注意が必要です。

  • 定款に高い価額で記載した機械設備が、実際には老朽化していた場合
  • 譲り受ける予定の事業用資産に重要な瑕疵や権利制限があった場合
  • 知的財産権やソフトウェアの評価根拠が不十分だった場合
  • 不動産の鑑定・評価資料が古く、成立時の価額と大きく乖離していた場合

免責される場合と免責されない人

会社法52条2項は、一定の場合に発起人や設立時取締役が不足額支払義務を負わないことを定めています。代表的なのは、会社法33条2項の検査役調査を経た場合や、発起人・設立時取締役が職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合です。

ただし、免責の範囲には注意が必要です。現物出資財産を給付した発起人や、財産引受けの譲渡人である発起人は、無過失を主張して責任を免れることができない場面があります。また、専門家が価額相当性の証明をした場合でも、その証明について注意を怠らなかったことを証明できなければ、不足額について連帯責任を負う可能性があります。

評価資料を残すだけでは足りません

現物出資や財産引受けでは、評価資料を作成するだけでなく、定款記載、検査役調査の要否、省略要件、専門家証明、設立時取締役等の調査まで一連の流れを証拠化する必要があります。

設立時取締役等による調査との関係は、設立時取締役等による調査(検査役含む)も併せて確認してください。


出資の履行を仮装した場合と会社法52条の2

会社法52条の2は、発起人が出資の履行を仮装した場合の責任を定めています。金銭の払込みを仮装した場合には、払込みを仮装した出資に係る金銭の全額を支払う義務を負い、金銭以外の財産の給付を仮装した場合には、その財産全部の給付又は価額相当額の支払が問題になります。

典型的には、いわゆる「見せ金」が問題になります。見せ金とは、会社に真実の資金を確保させる意思がないのに、一時的な借入金などで払込みの外形を作り、登記後すぐに払い戻して借入先へ返済するような行為をいいます。

最高裁昭和38年12月6日判決は、当初から真実の株式払込として会社資金を確保する意図がなく、一時的借入金で払込みの外形を整え、会社成立手続後すぐに払込金を払い戻して借入先に返済した場合には、有効な株式払込みとはいえない旨を示しています。旧商法下の裁判例ですが、現在でも仮装払込みリスクを理解するうえで重要です。

関与者にも責任が及ぶことがある

会社法52条の2では、仮装した発起人本人だけでなく、その仮装に関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者にも、支払義務が生じることがあります。ただし、仮装した本人以外の者については、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明できる場合には責任を免れる余地があります。

仮装払込みがある場合、単に「通帳に一度入金されている」「払込証明書がある」というだけでは安全とはいえません。入金原資、入金後の出金、借入先、返済時期、発起人・役員間の合意、口座管理状況を総合的に確認する必要があります。払込みの基本実務は、出資の履行(払込み)と払込証明で整理しています。

株主権の行使制限にも注意する

仮装払込みがあった発起人は、必要な支払又は給付がされるまで、仮装した設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使することができません。これは、単なる金銭支払責任にとどまらず、設立後の支配関係にも影響し得る重要な効果です。

登記済みでも仮装払込みのリスクは残ります

設立登記が完了していても、仮装払込みの責任が当然に消えるわけではありません。後日の株主間紛争、資金調達、M&A、デューデリジェンスで払込原資や入出金履歴が確認されることがあります。


任務懈怠による損害賠償責任と会社法53条

会社法53条は、発起人、設立時取締役又は設立時監査役が、株式会社の設立について任務を怠ったときに、会社又は第三者に対して損害賠償責任を負うことを定めています。

会社に対する責任は、設立について任務を怠り、それによって会社に損害が生じた場合に問題になります。第三者に対する責任は、職務を行うについて悪意又は重大な過失があり、それによって第三者に損害が生じた場合に問題になります。

会社に対する責任

会社に対する責任では、発起人や設立時役員が、設立手続を適切に行わなかったことによって、成立後の会社に損害が生じたかが問題になります。たとえば、現物出資財産の評価確認を怠った、財産引受けの定款記載を欠いた、必要な調査を行わなかった、払込みの確認を形だけで済ませた、といった場面が考えられます。

第三者に対する責任

第三者に対する責任では、会社ではなく、取引先、設立時募集株式の引受人、債権者などが損害を受けた場合が問題になります。もっとも、第三者責任では、単なる過失ではなく、職務を行うについて悪意又は重大な過失が必要です。

設立に関する説明資料、募集資料、契約書、設立前の交渉記録、議事録、調査報告書は、後日「誰が何を知っていたか」「どの程度注意を払っていたか」を判断する重要な資料になります。

会社法53条〜55条の条文ごとの整理は、会社法53条〜55条の逐条解説で扱います。


連帯責任と責任免除の考え方

発起人等の責任では、複数の関係者が連帯して責任を負うことがあります。連帯責任になると、会社や第三者は、責任者のうち一部の者に対して全額を請求できる場合があります。内部的な負担割合は別途問題になりますが、外部的には「自分の関与分だけ払えばよい」とは限りません。

連帯責任が問題になる主な場面

  • 現物出資財産等の価額不足について、発起人及び設立時取締役が不足額を支払う場面
  • 出資履行の仮装について、仮装した発起人と関与者が支払義務を負う場面
  • 任務懈怠による損害賠償について、複数の発起人・設立時役員が責任を負う場面
  • 会社不成立の場合に、発起人が設立に関してした行為や費用について責任を負う場面

責任免除には総株主の同意が必要になる

会社法55条は、会社法52条1項の不足額支払義務、会社法52条の2第1項・第2項の仮装払込み等に関する義務、会社法53条1項の会社に対する損害賠償責任について、総株主の同意がなければ免除できないことを定めています。

そのため、設立後に「発起人同士で合意した」「取締役会で承認した」「代表取締役が了承した」というだけでは、責任免除として不十分です。特に、複数株主がいる会社では、免除に反対する株主がいると免除できません。

なお、第三者に対する損害賠償責任は、株主全員が同意したからといって当然に消えるものではありません。会社内部の免除と、外部の第三者に対する責任は区別して考える必要があります。


株式会社が成立しなかった場合の責任と会社法56条

会社法56条は、株式会社が成立しなかったときに、発起人が連帯して、株式会社の設立に関してした行為について責任を負い、設立に関して支出した費用を負担することを定めています。

会社が成立しない場合、そもそも権利義務を帰属させる会社が存在しません。そのため、設立準備中にした契約、専門家費用、広告費、事務所契約、設備購入、募集関係費用などについて、誰が責任を負うのかが問題になります。

会社不成立が問題になる例

  • 設立登記申請に至らず、設立計画が中止された場合
  • 設立登記が却下又は取下げとなり、会社が成立しなかった場合
  • 募集設立で必要な手続や払込みが完了せず、設立を断念した場合
  • 設立前に契約や発注を進めたものの、会社が成立しなかった場合

設立前の契約や開業準備行為については、会社が成立すれば当然に会社へ引き継がれるとは限りません。発起人の権限、定款記載、財産引受け該当性、契約名義などを整理する必要があります。成立前行為の基本は、株式会社の成立時期|成立日・権利義務の帰属・成立前の行為を整理も参照してください。

会社名義のつもりでも発起人責任になることがあります

会社がまだ成立していない段階では、成立後の会社が当然に契約当事者になるわけではありません。設立前に重要な契約をする場合は、発起人名義、会社成立を停止条件とする条項、成立後の再契約・承継手続を確認しましょう。


募集設立における発起人等の責任と会社法103条

募集設立では、発起人だけでなく、設立時募集株式の引受人が関与します。そのため、発起設立よりも、募集、申込み、割当て、払込み、創立総会などの手続を通じて、多数の関係者の保護が問題になります。募集設立の全体像は、募集設立とはで整理しています。

会社法103条は、募集設立における発起人の責任等について特則を置いています。特に重要なのは、会社法52条2項の免責が、募集設立では検査役調査を経た場合に限定される点です。発起設立では、発起人や設立時取締役が注意を怠らなかったことを証明する免責が問題になりますが、募集設立ではその余地が狭くなります。

設立時募集株式の払込仮装

募集設立では、設立時募集株式の引受人が払込みを仮装した場合、会社法102条の2により、仮装した払込金額の全額を支払う義務を負います。また、仮装に関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者が、引受人と連帯して支払義務を負う場合があります。

募集設立は、発起人だけで完結する設立よりも関係者が多く、説明資料や資金の流れも複雑になりがちです。払込期日、払込取扱機関、払込原資、創立総会議事録、募集書類を一体として管理することが重要です。

賛助者が発起人とみなされる場合

会社法103条4項は、募集設立で、募集の広告その他募集に関する書面・電磁的記録に、自己の氏名又は名称及び会社設立を賛助する旨を記載又は記録することを承諾した者について、発起人とみなして一定規定を適用することを定めています。

スタートアップや新規事業で、有力者、支援者、提携先、専門家名を募集資料に掲載する場合には、その表示が単なる紹介なのか、設立を賛助する表示なのかを慎重に確認する必要があります。


裁判例から見る発起人等の責任の実務リスク

発起人等の責任は、条文だけではイメージしにくい分野です。旧商法下の裁判例も含め、設立手続の実務リスクを理解するうえで参考になる判断があります。

見せ金による払込み

最高裁昭和38年12月6日判決は、真実の払込みとして会社資金を確保する意思がなく、一時的借入金で払込みの外形を整え、成立手続後すぐに払込金を払い戻して借入先に返済したケースについて、有効な株式払込みとはいえないと判断しました。

この判断からは、払込証明書や通帳上の入金記録があるだけでは足りず、会社資金として実質的に確保されていたかを確認すべきことが分かります。

定款に記載のない財産引受け

最高裁昭和28年12月3日判決は、定款に記載のない財産引受けについて、会社成立後に株主総会の特別決議で承認しても有効にならない旨を示しました。また、財産引受けが無効である場合には、会社側だけでなく譲渡人も無効を主張できるとされています。

この判断からは、財産引受けを「設立後に承認すればよい」と軽く扱うことが危険であることが分かります。定款作成段階で、財産引受けに該当する契約かどうかを検討しておく必要があります。

発起人の権限と開業準備行為

最高裁昭和38年12月24日判決は、発起人は会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為であっても原則として行うことができず、原始定款に記載され法定要件を満たした財産引受けだけが例外的に許される旨を示しています。また、積極財産と消極財産を含む営業財産の一括譲受けは、財産引受けに当たると判断されています。

設立前に事業譲受け、店舗契約、設備購入、システム導入、営業資産の移転などを進める場合には、発起人の権限内の行為か、財産引受けに該当しないか、成立後の会社との再契約が必要かを確認しましょう。


発起人等の責任を避けるための実務チェック

発起人等の責任を避けるには、設立後に帳尻を合わせるのではなく、設立前から手続と証拠を整えることが重要です。特に、現物出資・財産引受け・払込み・募集設立では、次の点を確認しましょう。

  • 現物出資・財産引受けに該当する契約や資産移転がないかを、定款作成前に洗い出す。
  • 定款記載事項、価額、相手方、割当株式数、設立費用、発起人報酬を正確に整理する。
  • 検査役調査が必要か、省略要件を満たすか、専門家証明が必要かを確認する。
  • 払込口座への入金だけでなく、払込原資、入金後の出金、借入・返済の有無を確認する。
  • 設立時取締役等の調査報告書、発起人決定書、議事録、証明書類を保存する。
  • 設立前契約では、発起人名義、会社成立後の承継、再契約、停止条件を明確にする。
  • 募集設立では、募集資料、申込証拠、割当決定、払込証拠、創立総会議事録を一体管理する。

設立手続がシンプルな会社でも、発起人と設立時取締役が同一人物であるとは限りません。また、創業メンバー、出資者、役員予定者、専門家が関与する場合には、誰がどの責任を負う可能性があるかを事前に確認しておくことが大切です。

責任予防の中心は証拠化です

会社設立の手続は、後から見れば短期間で完了しているように見えます。しかし、責任問題では、当時どの資料を見て、誰が判断し、どのような確認をしたかが重要になります。決定書、議事録、評価資料、払込資料を残すことが実務上の防御になります。


発起人等の責任に関するよくある質問

発起人が1人だけでも責任は問題になりますか

発起人が1人だけでも、現物出資の価額不足、仮装払込み、設立前契約、会社不成立の場合の費用負担などは問題になります。1人会社では総株主の同意を得やすい場面もありますが、責任が当然に発生しないわけではありません。第三者に対する責任や、後日の資金調達・M&Aでの確認にも注意が必要です。

現物出資の価額不足が後から分かった場合はどうすればよいですか

まず、会社成立時の価額、定款記載価額、評価資料、検査役調査の有無、省略要件、専門家証明、設立時取締役等の調査内容を確認します。そのうえで、会社法52条の不足額支払義務が問題になるか、誰が責任を負う可能性があるか、総株主同意による免除が検討できるかを整理します。

払込みをした後すぐに引き出すと仮装払込みになりますか

直ちに仮装払込みになるとは限りませんが、当初から会社資金を確保する意思がなく、借入金で払込みの外形だけを作り、登記後すぐ返済するような場合は、仮装払込みと評価されるリスクがあります。重要なのは、会社資金として実質的に確保されていたか、出金の目的・時期・相手方に合理性があるかです。

会社が成立しなかった場合、設立費用は誰が負担しますか

株式会社が成立しなかった場合、会社法56条により、発起人は連帯して、設立に関してした行為について責任を負い、設立に関して支出した費用を負担します。外部専門家費用、募集費用、契約費用などは、会社不成立時の負担関係を事前に整理しておくことが重要です。

募集設立では発起設立より責任が重くなりますか

場面によりますが、募集設立では設立時募集株式の引受人が関与するため、発起設立よりも手続保護が強く働く部分があります。たとえば、会社法103条により、会社法52条2項の免責が検査役調査を経た場合に限定される点は重要です。募集設立を選ぶ場合は、募集資料、払込み、創立総会、発起人責任の特則を一体で確認する必要があります。


まとめ

発起人等の責任は、会社設立手続の不備が、設立後の会社、株主、取引先、第三者にどのような影響を与えるかを整理するための重要なルールです。特に、現物出資、財産引受け、払込仮装、募集設立を行う場合は、設立前に責任の入口を確認しておく必要があります。

  • 会社法52条は、現物出資財産等の価額不足について、不足額支払義務を定めています。
  • 会社法52条の2は、出資の履行を仮装した場合の全額支払義務や株主権行使制限を定めています。
  • 会社法53条は、設立について任務を怠った発起人等の会社・第三者に対する損害賠償責任を定めています。
  • 会社法54条・55条は、連帯責任や責任免除の基本を定めています。
  • 会社法56条は、会社が成立しなかった場合の発起人の責任と費用負担を定めています。
  • 募集設立では、会社法102条の2・103条により、払込仮装や発起人責任の特則が問題になります。

坂尾陽弁護士

発起人等の責任は、設立書類を形式的に作るだけでは防げません。資産評価、払込原資、設立前契約、募集資料、議事録を設立前から整理し、後日説明できる状態にしておくことが重要です。

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