株式会社は、定款を作成し、出資を払い込み、設立時役員を選んだだけではまだ成立しません。会社法上、株式会社は、本店所在地で設立の登記をすることによって成立します。
実務では、「設立日」「登記申請日」「登記完了日」「事業開始日」を混同しやすいです。特に、契約書、許認可、銀行口座、税務、補助金、請求書の開始日を決める場面では、会社法上の成立日を正しく確認しておく必要があります。
また、会社成立前に結んだ契約や発起人がした行為が、当然に成立後の会社へ帰属するとは限りません。成立前の行為は、発起人の権限、定款記載の有無、財産引受けの該当性、契約名義などを分けて整理することが重要です。
- 株式会社は、本店所在地で設立登記をすることにより成立します。
- 会社成立日は、原則として登記完了日ではなく、設立登記申請が受け付けられた日を基準に考えます。
- 2026年2月2日以降は、一定の要件を満たせば、行政機関の休日を設立の日とする特例もあります。
- 成立前の契約や開業準備行為は、当然に会社へ帰属するわけではないため、設計と証拠化が重要です。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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株式会社はいつ成立するか
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。これは会社法49条の基本ルールです。定款認証、出資の払込み、設立時取締役等の調査が終わっていても、設立登記がされるまでは、会社はまだ成立していません。
会社法49条・50条の条文上の整理は、会社法49条・50条の逐条解説で詳しく扱います。本記事では、条文の逐条解説よりも、会社成立日、権利義務の帰属、成立前の行為を実務でどう整理するかに重点を置きます。
条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で、会社法49条から51条、911条付近を確認してください。設立登記の実務資料は、法務省の株式会社設立手続(発起設立)の案内も参考になります。
| 手続 | 会社は成立しているか | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 定款を作成した | まだ成立していない | 会社の基本ルールを作った段階です。 |
| 公証人の定款認証を受けた | まだ成立していない | 株式会社の原始定款として効力を備える段階です。 |
| 出資の払込みをした | まだ成立していない | 設立登記に進むための前提が整う段階です。 |
| 設立時取締役等の調査が終わった | まだ成立していない | 登記申請前の点検が終わる段階です。 |
| 本店所在地で設立登記がされた | 成立する | 会社法上の株式会社として法人格を取得します。 |
「会社を作る」と日常的にいう場合でも、会社法上の成立時期は設立登記が基準です。定款認証日、払込日、代表者を決めた日、事業を始めた日とは区別します。
設立日・登記申請日・登記完了日の違い
会社設立の実務で最も混同しやすいのが、設立日、登記申請日、登記完了日の違いです。株式会社の設立年月日は、原則として、登記所が設立登記申請を受け付けた日として扱われます。登記手続が完了し、登記事項証明書を取得できるようになる日は、これとは別に考えます。
| 用語 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 設立日・会社成立の年月日 | 会社法上、株式会社が成立した日 | 原則として設立登記申請が受け付けられた日を基準にします。登記事項証明書にも記載されます。 |
| 登記申請日 | 法務局に設立登記を申請した日 | オンライン申請、窓口申請、郵送で、到達・受付のタイミングに注意します。 |
| 登記完了日 | 法務局の審査が終わり、登記手続が完了する日 | 会社成立日そのものとは限りません。証明書取得や印鑑証明書取得の実務上重要です。 |
| 事業開始日・開業日 | 実際に営業を始める日、税務・許認可で用いる日 | 会社法上の成立日と一致するとは限りません。税務・許認可のルールを別途確認します。 |
法務局の案内でも、会社・法人は設立の登記をすることによって成立し、会社の設立年月日は登記所が設立登記申請を受け付けた日になると説明されています。登記申請後、登記が完了するまでの間は、原則として登記事項証明書や印鑑証明書を取得できないため、取引開始や銀行口座開設の予定には余裕を持たせる必要があります。
設立登記の添付書類、払込証明書、就任承諾書、印鑑証明書などの準備は、株式会社設立の流れ、出資の履行(払込み)と払込証明も確認してください。
休日を会社設立日にできる特例
従来、会社成立日は法務局の受付日が基準であるため、法務局が閉庁している土日祝日や年末年始を設立日にすることは難しい運用でした。もっとも、2026年2月2日以降、一定の要件を満たす場合には、行政機関の休日を会社等の設立の日とする特例が利用できます。
法務省の案内では、主な要件として、登記が成立要件となる会社等であること、設立登記申請書に特例を求める旨と指定登記日を記載すること、指定登記日が行政機関の休日であること、指定登記日の直前の開庁日に申請することが示されています。詳細は、法務省「休日を会社等の設立の日とすることが可能になりました」を確認してください。
| 項目 | 通常の設立日 | 休日設立の特例 |
|---|---|---|
| 設立日の基準 | 法務局が設立登記申請を受け付けた日 | 一定要件のもと、指定した行政機関の休日 |
| 申請タイミング | 希望する開庁日に申請 | 指定登記日の直前の開庁日に申請 |
| 申請書の記載 | 通常の設立登記事項を記載 | 特例を求める旨と、指定登記日を記載 |
| 注意点 | 登記完了日まで証明書取得に時間がかかる | 後日になって休日設立をさかのぼって求めることはできません。 |
休日を設立日にしたい場合でも、申請書類は直前の開庁日に法務局へ到達し、受付される必要があります。記念日や期首に合わせる場合は、定款認証、払込み、役員書類、印鑑証明書、委任状の作成日を前倒しで管理してください。
設立登記までの流れと申請期限
株式会社の成立時期を正しく理解するには、設立登記に至るまでの流れも押さえる必要があります。発起設立では、一般に、定款作成・認証、設立時発行株式に関する決定、出資の履行、設立時役員の選任、設立時取締役等の調査、設立登記申請という順序で進みます。
- 定款を作成し、公証人の認証を受ける
- 設立時発行株式、払込金額、資本金・資本準備金などを整理する
- 発起人が出資の履行をする
- 設立時取締役・監査役を選任する
- 設立時代表取締役を選定する
- 設立時取締役等が設立手続を調査する
- 本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請する
- 設立登記により株式会社が成立する
株式会社の設立登記は、その本店所在地において、設立時取締役等の調査が終了した日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません。設立時取締役等の調査は、設立時取締役等による調査で詳しく整理しています。
設立時取締役・監査役の選任は、設立時取締役・監査役の選任方法、設立時代表取締役の選定は、設立時代表取締役の選定も確認してください。設立登記の登記事項は、会社法911条の逐条解説で扱います。
会社成立によって何が変わるか
設立登記によって株式会社が成立すると、会社は法人格を取得し、権利義務の主体となります。成立前は、将来設立される予定の会社として準備が進んでいても、会社そのものはまだ存在していません。成立後は、会社名義で契約、財産取得、債務負担、訴訟対応、登記・登録などを行うことが可能になります。
| 事項 | 成立前 | 成立後 |
|---|---|---|
| 法人格 | 会社はまだ存在しない | 株式会社として法人格を取得する |
| 契約主体 | 発起人個人、設立中の会社、予定会社名義などが問題になる | 会社自身が契約主体になれる |
| 株主の地位 | 株主となる権利の段階 | 出資履行済みの設立時発行株式について株主となる |
| 登記事項証明書 | 取得できない | 登記完了後に取得できる |
| 銀行口座・許認可 | 準備段階にとどまることが多い | 登記事項証明書等を用いて本申請・手続へ進みやすくなる |
発起設立では、発起人は、株式会社の成立時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となります。募集設立では、設立時募集株式の引受人も、所定の払込みを行った設立時発行株式について、株式会社の成立時に株主となります。株式数や払込金額、資本金・資本準備金の設計は、設立時発行株式とはも参照してください。
会社成立後、発起人が設立時発行株式の引受けについて錯誤・詐欺・強迫などを理由に無効・取消しを主張できるかは、会社成立の安定と関係します。会社法51条の整理は、会社法51条の逐条解説で扱います。
成立前の行為は会社に帰属するか
会社成立前に、事務所の賃貸借、ウェブサイト制作、備品購入、採用、仕入れ、許認可準備などを進めることは実務上よくあります。しかし、会社がまだ成立していない以上、成立前の行為が当然に会社の権利義務になるわけではありません。
設立前の行為は、大きく、設立自体に必要な行為、定款に記載された財産引受け、通常の開業準備行為、設立前から営業行為に近い行為に分けて考えます。
| 行為の種類 | 例 | 成立後の会社への帰属 |
|---|---|---|
| 設立自体に必要な行為 | 定款作成、認証、株式引受、払込み、設立登記準備 | 設立手続の範囲で会社成立につながる行為として整理します。 |
| 財産引受け | 会社成立後に特定財産を有償で譲り受ける契約 | 定款記載など会社法上の要件を満たす必要があります。 |
| 開業準備行為 | 事務所契約、設備購入、システム契約、広告契約 | 当然に会社へ帰属するとは限らず、契約設計が必要です。 |
| 営業行為 | 顧客との売買契約、継続取引、受託業務 | 成立前に行うと、発起人個人の責任や帰属関係が問題になりやすいです。 |
最高裁昭和38年12月24日判決は、発起人は会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為であっても原則としてすることができず、原始定款に記載されるなど法定要件を満たした財産引受けだけが例外的に許されると判示しています。成立前の行為を「会社のためだから大丈夫」と単純に考えないことが重要です。
現物出資・財産引受けの要件、検査役、評価、定款記載の実務は、現物出資・財産引受け(変態設立事項)で詳しく整理しています。
成立前契約をする場合の実務対応
会社成立前にどうしても契約や準備行為を進める場合は、誰が契約主体になるのか、成立後にどのように会社へ引き継ぐのか、相手方の同意が必要かを明確にしておく必要があります。契約名義だけを「株式会社予定」や「代表取締役予定」としても、会社が当然に責任を負うとは限りません。
| 対応方法 | 使いやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 成立後に会社名義で契約する | 急ぐ必要がない契約 | 最も安全です。成立日と登記完了日を踏まえてスケジュールを組みます。 |
| 発起人個人名義で契約し、成立後に切替える | 事務所、サービス、軽微な準備契約 | 相手方の同意、契約上の地位移転、費用負担、消費税・会計処理を確認します。 |
| 会社成立を停止条件とする契約にする | 成立後に会社へ帰属させたい契約 | 条件成就、相手方の合意、定款記載の要否を明確にします。 |
| 財産引受けとして定款に記載する | 成立後に特定財産を有償取得する場合 | 定款記載、検査役又は省略要件、評価資料が必要です。 |
| 成立前の営業行為を避ける | 顧客取引、継続取引、許認可が絡む業務 | 無理に成立前に開始せず、成立日・許認可日後に開始する設計が安全です。 |
成立前に「株式会社○○代表取締役予定」と記載して契約しても、会社はまだ存在していません。誰が債務を負うのか、成立後に会社へ引き継げるのか、相手方の同意が必要かを契約書で明確にする必要があります。
成立日を決めるときの実務ポイント
設立日は、会社法上の成立日であるだけでなく、登記事項証明書、税務、会計、契約、許認可、補助金、社会保険などの実務にも影響します。ただし、すべての手続で会社法上の成立日だけが基準になるわけではありません。
- 事業年度の初日・期末との関係を確認する
- 許認可申請で、会社成立後にしか申請できない手続がないか確認する
- 補助金・融資で、創業日・設立日・開業日の定義を確認する
- 銀行口座開設に必要な登記事項証明書、印鑑証明書の取得予定日を見込む
- 取引先との契約開始日や請求開始日を、会社成立日と整合させる
- 休日設立の特例を使う場合は、直前開庁日の申請に間に合うよう逆算する
特に、3月末・12月末を決算期にする会社では、設立日が月末や期末直前になると、第1期が極端に短くなることがあります。また、許認可が必要な事業では、定款目的や本店所在地だけでなく、会社成立日以後に申請できるか、営業開始できるかも確認する必要があります。目的の設計は、会社設立の目的の決め方も参照してください。
会社が成立しなかった場合・成立後に不備が見つかった場合
設立登記がされなければ、株式会社は成立しません。会社が成立しなかった場合には、設立に関してした行為や設立費用について、発起人等の責任が問題になります。会社法56条は、株式会社が成立しなかった場合の責任を定めています。
会社不成立の場合の責任は、会社法56条の逐条解説で扱います。発起人等の責任全体は、発起人等の責任で整理しています。
一方で、設立登記により会社が成立した後に、設立手続の不備が見つかることもあります。たとえば、払込みの仮装、現物出資の価額不足、財産引受けの定款記載漏れ、役員選任書類の不備などです。この場合、設立登記がされたからといって、すべての責任問題が消えるわけではありません。
| 場面 | 主な問題 | 関連する記事 |
|---|---|---|
| 登記前に不備が見つかった | 定款修正、再認証、払込みやり直し、書類補正 | 設立時取締役等による調査 |
| 会社が成立しなかった | 発起人の責任、設立費用の負担 | 会社法56条の逐条解説 |
| 成立後に価額不足が判明した | 出資財産等の価額不足責任 | 会社法52条の逐条解説 |
| 払込みを仮装していた | 仮装払込責任、株主権行使の制限 | 会社法52条の2の逐条解説 |
| 発起人等に損害賠償責任がある | 発起人・設立時役員等の損害賠償責任 | 会社法53条〜55条の逐条解説 |
設立登記がされず会社が成立しなかった場合と、設立登記後に設立手続の瑕疵が問題になる場合は、法的な整理が異なります。成立前後のどちらの問題かを最初に確認してください。
成立前後で確認するチェックリスト
会社成立前後では、書類、日付、契約、権利義務の帰属をまとめて確認すると、後日の手戻りを減らせます。
- 定款認証日、払込日、設立時役員の選任日、設立時取締役等の調査日が整理されているか。
- 設立登記申請期限に間に合うスケジュールになっているか。
- 設立登記申請日、会社成立の年月日、登記完了予定日を分けて管理しているか。
- 休日設立の特例を使う場合、指定登記日と直前開庁日の申請を確認しているか。
- 成立前に契約する必要があるものと、成立後まで待つべきものを分けているか。
- 成立前契約の契約主体、費用負担、地位移転、相手方同意を明記しているか。
- 財産引受けに当たる可能性のある取引を定款に記載しているか。
- 株主となる時点、払込みの証拠、株主名簿の作成予定を確認しているか。
- 銀行口座、許認可、税務、社会保険の開始日が会社成立日と整合しているか。
- 登記完了まで証明書を使えないことを取引先・金融機関対応に織り込んでいるか。
よくある質問
株式会社の設立日は登記申請日ですか、登記完了日ですか?
原則として、会社の設立年月日は、登記所が設立登記申請を受け付けた日を基準に考えます。登記完了日は、法務局の審査が終わり、登記事項証明書などを取得できるようになる日であり、会社成立日そのものとは区別します。
会社成立前に契約してもよいですか?
契約自体をすることはありますが、その効果が当然に成立後の会社へ帰属するとは限りません。発起人個人で契約するのか、会社成立を条件にするのか、財産引受けとして定款に記載すべきかを検討し、相手方の同意や契約上の地位移転も確認してください。
会社成立前に事務所を借りる場合はどうすればよいですか?
実務上は、発起人個人名義で契約し、成立後に会社名義へ切り替える方法や、会社成立を条件とする契約にする方法があります。ただし、賃貸人の同意、保証、敷金、費用負担、契約上の地位移転を明確にする必要があります。
出資を払い込んだ時点で株主になりますか?
発起設立では、発起人は、株式会社の成立時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となります。払込みは重要な前提ですが、会社が成立する前から通常の株主として会社に対して株主権を行使できるわけではありません。
土日祝日を会社設立日にできますか?
2026年2月2日以降、一定の要件を満たす場合には、行政機関の休日を会社等の設立の日とする特例があります。指定登記日の直前の開庁日に申請すること、申請書に特例を求める旨と指定登記日を記載することなどが必要です。
登記申請後に補正があった場合、設立日はどうなりますか?
補正で済み、最終的に登記がされた場合は、通常、設立登記申請が受け付けられた日を基準に会社成立の年月日が扱われます。ただし、申請が却下された場合や取下げになった場合には、会社は成立していません。補正が見込まれる場合は、取引開始や証明書取得の予定に余裕を持たせる必要があります。
まとめ|株式会社は設立登記で成立し、成立前行為は慎重に整理する
株式会社の成立時期は、会社設立実務の基礎です。定款認証や払込みが終わっていても、設立登記がされるまでは、会社はまだ成立していません。成立日、登記申請日、登記完了日、事業開始日を分けて管理することが重要です。
- 株式会社は、本店所在地で設立登記をすることにより成立します。
- 会社成立日は、原則として設立登記申請が受け付けられた日を基準にします。
- 登記完了日は証明書取得などの実務で重要ですが、会社成立日とは区別します。
- 成立前の契約や開業準備行為は、当然に会社へ帰属するとは限りません。
- 休日設立の特例、許認可、税務、補助金、契約開始日は、個別の要件を確認する必要があります。
会社成立前後の行為を曖昧にしたまま進めると、契約の相手方、費用負担、財産引受け、発起人責任、登記補正などが後から問題になることがあります。設立日を決める段階で、成立前に行うこと、成立後に行うこと、契約上明記すべきことを整理しておきましょう。
坂尾陽弁護士
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