【会社法32条・33条】設立時発行株式の決定・定款事項の検査役調査|条文の要点と実務ポイント

会社法32条・33条は、株式会社の設立手続のうち、定款作成後から出資の履行へ進む前後で確認すべき重要な条文です。会社法32条は、設立時発行株式に関する事項を発起人がどのように決定するかを定め、会社法33条は、変態設立事項について検査役調査を要する場合と、その例外を定めています。

実務では、発起人が何株を引き受けるのか、いくら払い込むのか、資本金・資本準備金をどう設計するのか、現物出資や財産引受けがある場合に検査役調査を要するのかを、設立登記までの流れの中で整理することが重要です。

  • 会社法32条は、定款に定めがない設立時発行株式の数・払込金額・資本金等を、発起人全員の同意で定める条文
  • 会社法32条の決定事項は、発起設立でも募集設立でも、出資設計の出発点になる
  • 会社法33条は、会社法28条の変態設立事項がある場合の検査役選任申立てを定める条文
  • 現物出資財産等の総額が500万円を超えない場合など、検査役調査が不要になる例外がある
  • 検査役調査が不要な場合でも、定款記載、専門家証明、設立時取締役等の調査、登記添付書面の確認は別途必要になる

坂尾陽弁護士

会社法32条と33条は、資本金をいくらにするか、現物出資を使えるか、検査役手続が必要かを分ける条文です。設立時発行株式の決定と変態設立事項の調査を混同すると、定款・払込・登記のどこかで手続が止まりやすくなります。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法32条・33条の位置づけ

株式会社の設立では、まず発起人が定款を作成し、株式会社としての基本事項を定めます。その後、設立時発行株式、出資の履行、設立時役員等の選任、設立時取締役等による調査、設立登記へと進みます。定款作成から設立登記までの全体像は、株式会社設立の流れも参照してください。

公式条文は、e-Gov法令検索の会社法で確認できます。また、法務省の発起設立手続の説明でも、定款に定めがない場合の会社法32条の決定事項や、会社法33条の検査役調査の例外が整理されています。実務手順を確認する場合は、法務省の株式会社の設立手続(発起設立)も参考になります。

条文 主な内容 実務上の意味
会社法32条 設立時発行株式に関する事項の決定 発起人が引き受ける株式数、払込金額、資本金・資本準備金等を確定する
会社法33条 定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任 現物出資・財産引受けなどの変態設立事項について、検査役調査を要するかを判断する
会社法34条以降 出資の履行、株主となる権利、発行可能株式総数等 32条で決めた事項を前提に、払込・現物出資・登記へ進む

会社法32条は、出資の「設計」を定める条文です。これに対し、会社法34条は、決定された設計に従って金銭を払い込み、又は現物出資財産を給付する段階を定めます。会社法33条は、会社法28条の変態設立事項がある場合に、その評価や内容を第三者的に確認する制度です。

会社法28条の変態設立事項そのものは、会社法28条の解説で整理しています。本記事では、会社法32条の決定事項と、会社法33条の検査役調査の要否・例外に絞って解説します。


会社法32条:設立時発行株式に関する事項の決定

会社法32条の基本構造

会社法32条1項は、株式会社の設立に際して、一定の事項を定款に定めていない場合に、発起人全員の同意を得て定めなければならないとしています。

会社法32条1項の事項 意味 実務上の確認ポイント
発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数 各発起人が何株を引き受けるか 発起人ごとの持株比率、議決権割合、将来の資金調達余地を確認する
設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額 発起人が引き受ける株式について払い込む金額 1株当たりの払込設計、払込総額、資本金額との整合を確認する
成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項 会社成立時点の資本金・資本準備金の組入れ 登記される資本金、会計処理、許認可・税務・信用面への影響を確認する

これらの事項を定款にすでに定めている場合には、会社法32条1項による別個の決定は不要です。ただし、定款に定めるか、発起人全員の同意書などで定めるかにかかわらず、設立登記や払込証明に使う資料との整合が必要です。

発起人の役割や発起人全員の同意の意味は、発起人とはの記事でも整理しています。

設立時発行株式とは何か

設立時発行株式とは、株式会社の設立に際して発行される株式をいいます。発起設立では、発起人が設立時発行株式の全部を引き受けます。募集設立では、発起人が一部を引き受けたうえで、設立時募集株式を引き受ける者を募集します。

会社法32条が直接扱うのは、主に発起人が割当てを受ける設立時発行株式に関する事項です。募集設立で第三者に設立時募集株式を引き受けてもらう場合には、会社法58条以下の設立時募集株式に関するルールも別途確認します。

株数、払込金額、資本金・資本準備金の設計を実務的に検討する場合は、設立時発行株式とはの記事も参照してください。

発起人全員の同意が必要になる理由

会社法32条1項は、発起人の過半数ではなく、発起人全員の同意を要求しています。設立時発行株式の数や払込金額は、発起人の出資負担、設立後の持株比率、資本金額に直結するためです。

発起人が1人だけであれば、実務上はその発起人が決めることになります。それでも、登記申請や後日の説明のため、発起人決定書、発起人同意書、払込資料、資本金計上証明書などの文書間で矛盾がないようにしておく必要があります。

「発起人全員の同意」は、単なる社内確認ではありません。発起人間で株式数や払込額の認識がずれると、株主構成、払込義務、登記書類に影響します。複数発起人の場合は、後で争いにならないよう同意内容を文書化しておくのが基本です。

資本金・資本準備金の決め方との関係

会社法32条1項3号は、成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項を対象にしています。実務では、払込総額の全部を資本金にするのか、一部を資本準備金にするのかを検討します。

資本金額は、設立登記の登記事項であり、対外的な信用、許認可、税務、社会保険、金融機関対応にも影響し得ます。他方で、資本金は大きければ常に有利というものではなく、資本準備金との配分や将来の増資・減資も考慮して設計します。資本金・準備金・剰余金の制度全体は、資本金・準備金・剰余金の違いも参照してください。

項目 会社法32条との関係 確認すべき実務事項
払込総額 設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額を定める 発起人ごとの払込額、払込口座、払込時期を確認する
資本金 成立後の資本金の額を決める 登記される額、登録免許税、許認可基準、信用面を確認する
資本準備金 払込額の一部を資本準備金とする設計があり得る 会社計算規則・会計処理、将来の資本政策を確認する
資本金計上証明書 登記添付書面として問題になることがある 金銭出資のみか、現物出資を含むかで添付要否を確認する

種類株式発行会社の場合の追加事項

会社法32条2項は、設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合の補足規定です。第1項1号の設立時発行株式が、会社法108条3項前段の定款の定めがあるものであるときは、発起人は、全員の同意により、当該設立時発行株式の内容を定めなければなりません。

種類株式を設立時から使う設計は、普通株式だけで設立する場合よりも複雑です。議決権、配当、残余財産分配、取得条項、拒否権、優先株式などの設計が、定款、登記、投資契約、株主間契約に影響します。スタートアップの資金調達を見据える場合でも、設立時点で種類株式を入れるかは慎重に検討します。

会社法27条・37条との違い

会社法32条を理解するときは、会社法27条と会社法37条との違いを押さえると整理しやすくなります。

条文 対象 会社法32条との違い
会社法27条 定款の絶対的記載事項 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を定款に記載又は記録する
会社法32条 設立時発行株式に関する事項 定款に定めがない株式数、払込額、資本金・資本準備金等を発起人全員の同意で決める
会社法37条 発行可能株式総数 会社成立時までに定款で発行可能株式総数を定める必要がある

会社法27条の絶対的記載事項は、会社法27条の解説で確認してください。発行可能株式総数や出資の履行は、次の記事で扱う会社法34条〜37条の解説で整理しています。


会社法33条:定款事項に関する検査役調査

検査役選任申立てが必要になる場面

会社法33条1項は、定款に会社法28条各号の事項について記載又は記録があるときは、公証人の認証後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対して検査役の選任を申し立てなければならないと定めています。

会社法28条各号の事項は、一般に変態設立事項と呼ばれます。具体的には、現物出資、財産引受け、発起人の報酬その他の特別利益、設立費用です。これらは、会社財産の充実や設立時株主・債権者の利益に影響するため、通常の定款事項よりも慎重な手続が求められます。

会社法28条の事項 会社法33条との関係 実務上の典型例
現物出資 原則として検査役調査の対象 車両、機械、知的財産、不動産などを金銭以外で出資する
財産引受け 原則として検査役調査の対象 会社成立後に特定の事業用資産を譲り受ける契約をする
発起人の報酬・特別利益 検査役調査の対象になり得る 発起人に特別な利益を与える設計をする
設立費用 定款記載が必要な範囲では検査役調査の対象になり得る 会社負担とする設立費用を整理する

現物出資・財産引受けの実務手順や評価の考え方は、現物出資・財産引受けの記事も参照してください。

検査役調査の流れ

会社法33条の流れを実務に落とすと、次のように整理できます。

  1. 発起人が定款に会社法28条各号の事項を記載又は記録する
  2. 定款について公証人の認証を受ける
  3. 発起人が、認証後遅滞なく、裁判所に検査役選任の申立てをする
  4. 裁判所が検査役を選任し、報酬を定めることがある
  5. 検査役が必要な調査を行い、裁判所に報告する
  6. 裁判所が不当と認める場合は、変態設立事項を変更する決定をする
  7. 変更決定があった場合、発起人は一定期間内に引受けの意思表示の取消しや定款変更を検討する

検査役の報告後、裁判所は、報告内容を明瞭にし、又は根拠を確認するため必要があると認めるときは、さらに報告を求めることができます。また、検査役は報告をしたとき、発起人に対して報告書面の写しを交付し、又は電磁的記録の内容を提供する必要があります。

裁判所が不当と認めた場合の効果

会社法33条7項は、裁判所が、検査役の報告を受けた場合において、会社法28条各号の事項を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならないと定めています。

変更決定により会社法28条各号の事項の全部又は一部が変更された場合、発起人は、その決定の確定後1週間以内に限り、設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができます。また、発起人全員の同意により、同じく1週間以内に、変更された事項についての定めを廃止する定款変更をすることができます。

裁判所の変更決定がある場面では、当初の設立スケジュールどおりに進められるとは限りません。現物出資や財産引受けを使う場合は、検査役調査の要否だけでなく、調査に要する期間、費用、評価資料、設立登記の期限への影響を事前に確認する必要があります。

会社法33条10項の検査役調査不要の例外

会社法33条10項は、一定の場合には、検査役調査に関する前各項の規定を適用しないと定めています。実務上特に重要なのは、現物出資財産等の価額が少額の場合と、専門家証明を利用する場合です。

例外 内容 注意点
500万円以下の例外 現物出資財産等について定款記載又は記録価額の総額が500万円を超えない場合 対象は会社法28条1号・2号の現物出資財産等。価額の相当性を別途確認する必要は残る
市場価格のある有価証券 定款記載価額が、法務省令で定める市場価格を超えない場合 市場価格の算定方法と評価時点を確認する
専門家証明 弁護士、公認会計士、監査法人、税理士等の証明を受けた場合 不動産を含む場合は、証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要になる

500万円以下の例外は、小規模な現物出資でよく検討されます。ただし、「検査役調査が不要」というだけで、現物出資財産の評価がどうでもよいという意味ではありません。過大評価があると、発起人や設立時役員等の責任、後日の株主・債権者との紛争につながり得ます。

専門家証明を使う場合の注意点

会社法33条10項3号の専門家証明は、検査役調査に代わる重要な制度です。証明者には、弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人などが含まれます。

もっとも、会社法33条11項は、発起人、会社法28条2号の財産の譲渡人、設立時取締役又は設立時監査役、業務停止中の者など、証明をすることができない者を定めています。証明者の独立性が問題になるため、関係者に近すぎる専門家に形式的に証明してもらう設計は避けるべきです。

現物出資財産等に不動産が含まれる場合は、専門家証明だけでなく、不動産鑑定士の鑑定評価も必要になります。不動産、知的財産、非上場株式など評価が難しい財産を現物出資に使う場合は、設立日程に余裕を持って準備することが重要です。

検査役調査が不要でも設立時取締役等の調査は残る

会社法33条10項の例外により検査役調査が不要となる場合でも、設立時取締役等による調査が当然になくなるわけではありません。法務省の発起設立手続の説明でも、会社法33条10項の一定の場合における現物出資財産等の価額の相当性、出資の履行、設立手続の法令・定款適合性などが設立時取締役等の調査事項として示されています。

設立時取締役等による調査は、会社法46条の解説で扱います。検査役を省略できる場合ほど、発起人・設立時取締役側で評価資料、証明書、鑑定評価、払込資料を整えておく必要があります。


32条・33条と設立手続のつながり

会社法32条・33条は、それぞれ単独で見るよりも、定款作成から設立登記までの時系列で確認すると実務に落とし込みやすくなります。

段階 確認する条文 実務上の作業
定款作成 会社法26条〜29条 絶対的記載事項、変態設立事項、任意的記載事項を整理する
定款認証 会社法30条 公証人の認証を受ける。認証後の成立前定款変更は制限される
設立時発行株式の決定 会社法32条 発起人が引き受ける株式数、払込金額、資本金・資本準備金を確定する
変態設立事項の調査 会社法33条 検査役選任申立ての要否、500万円以下例外、専門家証明を確認する
出資の履行 会社法34条 金銭の払込み又は現物出資財産の給付を行う
発行可能株式総数 会社法37条 成立時までに発行可能株式総数を定款に定める
設立時取締役等の調査 会社法46条 設立手続の法令・定款適合性、出資の履行等を確認する
設立登記 会社法49条・911条 本店所在地で設立登記を申請し、会社が成立する

この流れから分かるとおり、会社法32条で出資設計を確定し、会社法33条で変態設立事項の調査要否を確認したうえで、会社法34条の出資の履行へ進むのが基本です。設立登記の登記事項は、会社法911条の解説も関係します。


実務で見落としやすいポイント

定款に書く事項と発起人同意で決める事項を混同しない

会社法32条の事項は、定款に定めることも、定款に定めがない場合に発起人全員の同意で定めることもできます。実務では、定款、発起人同意書、発起人決定書、払込証明、資本金計上証明書、登記申請書の内容が一致しているかを確認します。

資本金額だけを先に決めない

資本金額は、株式数、払込金額、発起人ごとの持株比率、資本準備金、登録免許税、許認可、将来の増資を踏まえて決める必要があります。資本金だけを先に決めると、株式数や払込額との整合が崩れることがあります。

500万円以下なら何でも安全とは限らない

現物出資財産等の総額が500万円を超えない場合には、会社法33条10項1号により検査役調査が不要になることがあります。しかし、評価が過大であれば、会社財産の充実を害し、発起人や設立時取締役等の責任問題につながる可能性があります。

財産引受けを通常の取引契約と軽く見ない

会社成立後に特定の財産を譲り受ける契約は、財産引受けとして会社法28条2号・33条の問題になることがあります。最高裁昭和38年12月24日判決も、積極消極両財産を含む営業財産を一括して譲り受ける契約が財産引受けに当たり得ることを示しています。開業準備行為として予定している取引でも、会社設立自体に必要な行為なのか、財産引受けとして定款記載・調査が必要なのかを区別する必要があります。

検査役調査を避けるための設計になっていないか確認する

専門家証明や500万円以下の例外は、適正な評価と手続を前提とする制度です。検査役調査を避けるためだけに財産評価を不自然に下げる、契約を分割する、関係者に形式的な証明を依頼する、といった設計はリスクがあります。

登記添付書面まで逆算する

法務省の発起設立手続の説明では、設立登記申請の添付書面として、発起人全員の同意があったことを証する書面、設立時取締役等の調査報告書及び附属書類、払込みがあったことを証する書面、資本金の額が会社法及び会社計算規則に従って計上されたことを証する書面などが示されています。会社法32条・33条の段階で、登記添付書面まで逆算して資料を作成することが大切です。


会社法32条・33条のチェックリスト

設立時発行株式と変態設立事項を確認する際は、次のチェックリストを使うと見落としを防ぎやすくなります。

チェック項目 確認内容 関連条文
発起人が引き受ける株式数を決めたか 各発起人の株式数、持株比率、議決権割合を確認する 会社法32条1項1号
払込金額を決めたか 発起人ごとの払込額、払込総額、払込時期を確認する 会社法32条1項2号
資本金・資本準備金を決めたか 成立後の資本金額、資本準備金額、登記・会計処理との整合を確認する 会社法32条1項3号
発起人全員の同意を証拠化したか 同意書、決定書、定款記載のいずれで処理するかを確認する 会社法32条
種類株式を発行するか 種類株式発行会社の場合、設立時発行株式の内容決定を確認する 会社法32条2項
変態設立事項があるか 現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用を確認する 会社法28条・33条
検査役調査が必要か 会社法33条1項の原則に当たるか、10項の例外に当たるかを確認する 会社法33条
500万円以下例外の対象か 現物出資財産等の定款記載価額の総額が500万円を超えないかを確認する 会社法33条10項1号
専門家証明を使うか 証明者の資格、独立性、不動産鑑定評価の要否を確認する 会社法33条10項3号・11項
設立時取締役等の調査資料を準備したか 評価資料、証明書、鑑定評価、払込資料、調査報告書を整理する 会社法46条

会社法32条・33条に関するよくある質問

会社法32条は何を定める条文ですか?

会社法32条は、設立時発行株式に関する事項の決定を定める条文です。定款に定めがない場合、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、払込金額、成立後の資本金及び資本準備金の額に関する事項を、発起人全員の同意で定める必要があります。

発起人が1人だけの場合も発起人全員の同意が必要ですか?

発起人が1人だけの場合、実務上はその発起人の意思決定で足ります。ただし、後日の登記申請や証拠化のため、発起人決定書や同意書の形で、株式数、払込金額、資本金・資本準備金の内容を明確にしておくのが通常です。

資本金は定款に必ず書く必要がありますか?

会社法27条の絶対的記載事項は「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」であり、資本金額そのものとは区別されます。資本金及び資本準備金の額に関する事項は、会社法32条により、定款に定めがない場合には発起人全員の同意で定めます。

設立時発行株式の株数と発行可能株式総数は同じですか?

同じではありません。設立時発行株式の株数は、設立時に実際に発行される株式の数です。発行可能株式総数は、会社が将来発行できる株式の上限であり、会社法37条により、会社成立時までに定款で定める必要があります。

会社法33条の検査役調査はいつ必要ですか?

定款に会社法28条各号の変態設立事項を記載又は記録する場合、原則として、公証人の認証後遅滞なく、裁判所に検査役の選任を申し立てる必要があります。ただし、会社法33条10項の例外に当たる事項については、検査役調査が不要になることがあります。

現物出資が500万円以下なら検査役は常に不要ですか?

会社法33条10項1号は、現物出資財産等について定款記載価額の総額が500万円を超えない場合に、検査役調査を不要とする例外を定めています。ただし、対象は会社法28条1号・2号の事項であり、評価の相当性や設立時取締役等の調査が不要になるわけではありません。

専門家証明を使えば検査役調査を避けられますか?

会社法33条10項3号の要件を満たす専門家証明を受けた場合、当該証明を受けた現物出資財産等については検査役調査が不要になることがあります。ただし、証明者になれない者の制限があり、不動産を含む場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要です。

発起人の報酬や特別利益にも500万円以下例外はありますか?

会社法33条10項の500万円以下例外は、会社法28条1号・2号の現物出資財産等に関する例外です。発起人の報酬その他の特別利益や、会社の負担する設立費用については、同じ例外で当然に検査役調査を省略できるわけではありません。

検査役調査が不要なら、登記書類も簡略化できますか?

検査役調査が不要な場合でも、出資の履行、資本金の計上、設立時取締役等の調査、登記添付書面の確認は必要です。現物出資や財産引受けを使う場合は、検査役調査の有無とは別に、評価資料や証明書を整理しておくことが重要です。

財産引受けに当たるか迷う場合はどうすべきですか?

会社成立後に特定の財産を譲り受ける約束を設立段階でしている場合、財産引受けに当たる可能性があります。取引契約、事業譲受け、設備購入、不動産取得などが会社設立と結びついている場合は、会社法28条・33条の手続が必要か、設立前に確認するべきです。


まとめ

会社法32条は、設立時発行株式に関する事項を定める条文です。定款に定めがない場合、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、払込金額、成立後の資本金・資本準備金に関する事項を、発起人全員の同意で定める必要があります。

会社法33条は、会社法28条の変態設立事項がある場合の検査役選任申立てを定める条文です。現物出資財産等の総額が500万円を超えない場合や、一定の専門家証明を受けた場合など、検査役調査が不要になる例外もありますが、評価資料や設立時取締役等の調査が不要になるわけではありません。

設立時発行株式の決定と検査役調査の要否は、定款、払込、資本金、登記添付書面までつながります。会社設立をスムーズに進めるためには、株式数・払込金額・資本金設計と、現物出資・財産引受けの有無を早い段階で整理しておくことが大切です。

坂尾陽弁護士

会社法32条・33条は、会社設立の「お金と株式」と「変態設立事項の安全確認」を扱う条文です。特に現物出資や財産引受けを使う場合は、検査役調査の例外に当たるかだけでなく、評価資料・専門家証明・設立時取締役等の調査まで一体で確認しましょう。

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