発起人とは|役割・人数・要件・責任(会社法25条・52条等)を整理

発起人とは、株式会社の設立を企画し、定款を作成して署名又は記名押印し、設立時発行株式の引受けや出資の履行などを中心となって進める人をいいます。

誤解しやすいのは、発起人は「会社の代表者」と同じ意味ではないという点です。発起人は会社成立前の設立手続上の立場であり、会社成立後は、引き受けた株式について株主になります。取締役や代表取締役になるかどうかは、別途、役員として選任されるかで決まります。

  • 株式会社の設立には、少なくとも発起人が必要になる
  • 発起人は、定款作成、設立時発行株式の引受け、出資、設立時役員等の選任などに関わる
  • 発起人は1人でも複数人でもよく、法人が発起人になることもできる
  • 発起人は会社成立後、原則として株主になるが、当然に取締役になるわけではない
  • 名義貸し、共同発起人、現物出資、仮装払込みでは後日トラブルになりやすい

坂尾陽弁護士

発起人は、会社設立の「最初の株主候補」であり、設立手続を動かす中心人物です。誰を発起人にするかは、単なる名義の問題ではなく、出資比率・議決権・責任・将来の経営権にも影響します。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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発起人とは何か

会社法25条は、株式会社の設立方法を、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法と、発起人が設立時発行株式を引き受けるほかに引受人を募集する方法に分けています。また、会社法26条は、発起人が定款を作成し、これに署名又は記名押印することを定めています。条文を確認する場合は、e-Gov法令検索の会社法も参照してください。

つまり、発起人は、単に「会社を作りたいと言い出した人」ではなく、会社法上、定款作成と設立時発行株式の引受けを通じて、株式会社の設立手続を開始する立場です。

用語 意味 発起人との違い
発起人 会社成立前に、定款作成・株式引受け・出資などを行う人 設立手続上の立場。会社成立後は株主として扱われる
株主 会社の株式を有する人 発起人は、設立時発行株式を引き受け、会社成立後に株主になる
設立時取締役 会社成立時に取締役となる予定の人 発起人と兼ねることはできるが、当然に同一ではない
代表取締役 会社を代表する取締役 会社成立後の代表者。発起人であっても、選定されなければ代表取締役ではない
創業者 事業を立ち上げた人という一般的な呼び名 法律上の地位ではない。発起人・株主・取締役と一致しないことがある

株式会社設立全体の流れは、株式会社設立の流れ(発起設立・募集設立)で整理しています。会社法25条・26条の条文上の要点は、会社法25条・26条|株式会社の設立・定款の作成も確認してください。

発起人は代表者とは限らない

一人会社では、発起人・株主・取締役・代表取締役が同じ人になることが多いため、用語が混同されがちです。しかし、複数人で設立する場合や法人が発起人になる場合は、それぞれの立場を分けて整理する必要があります。


発起人は何人必要か・誰がなれるか

株式会社の設立では、発起人は1人でも足ります。複数人で発起人になることもできますが、人数が増えるほど、定款作成、設立時発行株式の割当て、出資の履行、設立後の株主構成について合意すべき事項が増えます。

発起人については、会社法上、取締役の欠格事由のような形で一般的な資格制限が細かく置かれているわけではありません。個人だけでなく、法人が発起人になることもあります。ただし、実務上は、本人確認、印鑑証明、法人代表者の権限、未成年者の場合の法定代理人の同意など、書類面・能力面の確認が必要になります。

発起人の候補 可否・実務上の見方 注意点
個人 一般的な形。創業者が発起人になることが多い 印鑑証明、住所、氏名、出資金の原資を確認する
法人 法人も発起人になり得る 法人は取締役にはなれないため、設立時取締役は別途個人を選任する
外国人・海外居住者 発起人になり得る 署名証明、住所証明、翻訳、送金、本人確認に時間がかかることがある
未成年者 直ちに一律不可とはいえない 法定代理人の同意、印鑑登録・印鑑証明、手続能力の確認が必要になる
単なる協力者 出資しないなら発起人にしない設計が自然 名義だけ発起人にすると、株主権や責任をめぐる紛争につながる

発起人を1人にするか複数にするかは、単に「設立書類に名前を載せる人数」の問題ではありません。会社成立後の株主構成、議決権比率、将来の増資、創業者間の離脱、株式譲渡制限、株主間契約まで見据えて決めるべきです。


発起人の主な役割

発起人の役割は、設立前の準備全体を動かすことです。もっとも、すべてを発起人本人だけで行う必要はなく、司法書士、税理士、弁護士、行政書士などの専門家に依頼することもあります。ただし、設立内容を決め、法的な責任を負う中心は発起人です。

段階 発起人の役割 関連する確認事項
基本事項の決定 商号、目的、本店所在地、資本金、株式、役員、事業年度などを決める 許認可、金融機関、株主構成、将来の資本政策
定款の作成 定款を作成し、署名又は記名押印する 絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項
定款認証 公証人の認証を受ける手続を進める 電子定款、実質的支配者申告、公証役場との調整
設立時発行株式の決定 株数、払込金額、資本金・資本準備金、各発起人の引受けを整理する 議決権比率、1株の金額、将来の増資余地
出資の履行 金銭の払込み又は現物出資の給付を行う 払込口座、払込証明、見せ金・仮装払込みの回避
設立時役員等の選任 設立時取締役、監査役等を選任する 就任承諾、印鑑証明、本人確認証明書、機関設計
設立登記への接続 登記申請に必要な内容を整える 会社は本店所在地での設立登記により成立する

定款記載事項の整理は定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項、定款認証は定款認証とは|公証役場の手続・費用・電子定款の注意点で詳しく整理しています。

また、設立時発行株式や資本金の設計は設立時発行株式とは|株数・払込金額・資本金の決め方、出資の履行は出資の履行(払込み)と払込証明、設立時役員は設立時取締役・監査役の選任方法を確認してください。

設立登記の登記事項や会社成立時期との関係は、会社法911条|株式会社の設立の登記も重要です。


発起人と株主・取締役・創業者の違い

発起人を理解するには、会社成立前と会社成立後を分けることが重要です。発起人は、会社がまだ成立していない段階で設立手続を進める人です。会社が成立すると、発起人という設立手続上の役割は終わり、引き受けた株式について株主となります。

発起人と株主の違い

発起人は、会社成立前に設立時発行株式を引き受け、出資の履行をする立場です。会社が成立すると、その株式について株主になります。したがって、発起人の設計は、会社成立後の株主構成の設計でもあります。

共同創業者の持株比率を後で調整しようとすると、株式譲渡、贈与税・所得税、株主間紛争、議決権の問題が生じることがあります。発起人段階で、誰が何株を引き受けるのかを明確にすることが重要です。

発起人と取締役の違い

取締役は、会社成立後に会社の業務執行や意思決定を担う役員です。発起人が取締役を兼ねることはできますが、発起人だから当然に取締役になるわけではありません。

法人が発起人になる場合、その法人自体は取締役にはなれません。そのため、設立時取締役として個人を選任し、就任承諾書などの登記添付書類を整える必要があります。

発起人と創業者の違い

創業者は、事業を始めた人を指す一般的な言葉です。会社法上の地位ではありません。実際には、事業アイデアを出した人が創業者であっても、資本政策上は別の人や法人が発起人になることがあります。

ただし、創業者と発起人がずれる場合は、なぜその設計にするのか、株式・知的財産・役員権限・報酬・退職時の処理を文書で整理しておかないと、後日「誰の会社か」という争いに発展しやすくなります。


共同発起人にする場合の注意点

複数人で発起人になる場合、共同発起人全員で会社設立を進めることになります。友人、共同創業者、家族、初期投資家を発起人に入れること自体は珍しくありませんが、名前だけを借りるような設計は避けるべきです。

出資比率と議決権比率を最初に決める

発起人は、設立時発行株式の引受けを通じて、会社成立後の株主になります。共同発起人の出資比率は、そのまま議決権比率や支配権に影響します。単に「一緒に始めるから半分ずつ」という設計にすると、後から意思決定が止まることがあります。

発起人全員の同意が必要になる場面を意識する

会社法32条では、定款作成後、設立時発行株式に関する一定事項を発起人全員の同意で定めることが予定されています。複数人で設立する場合は、定款認証前後の変更、出資時期、払込証明、役員構成などについて、誰か一人の都合で手続が止まらないように準備する必要があります。

名義貸し・名義借りは株主権紛争になりやすい

発起人や株主の名義を、実際の出資者とは別の人にする運用は危険です。最高裁昭和42年11月17日判決は、他人の承諾を得てその名義を用いて株式を引き受けた場合、名義貸与者ではなく、実質上の引受人が株主となると判断しています。

近時の裁判例でも、設立時や増資時に他人名義を用いた株式引受けについて、払込金の原資、実質的な経営・株主権行使、名義貸与の認識などが細かく検討されています。名義と実態がずれると、株主名簿、議決権、配当、株式譲渡、経営権の争いに直結します。

注意

「とりあえず名義だけ借りる」「実際の出資者を表に出さない」という設計は、税務・金融機関・許認可・株主権確認訴訟のリスクがあります。事情がある場合でも、発起人・株主・資金原資・議決権の帰属は、設立前に専門家へ確認してください。

創業者間契約・株主間契約も検討する

複数の共同創業者で設立する場合、会社法上の設立書類だけでは、創業者の離脱、競業、株式譲渡、役割分担、報酬、知的財産の帰属、デッドロックを十分に処理できません。必要に応じて、設立前後に創業者間契約や株主間契約を検討してください。


発起人の責任

発起人は、設立前の中心人物であるため、会社法上も一定の責任を負います。本記事では全体像にとどめ、具体的な要件は発起人等の責任(会社法52条〜56条・103条)で詳しく整理します。

責任の類型 主な場面 実務上の注意
出資された財産等の価額不足責任 現物出資・財産引受けなどで、定款記載額に比べて実際の価額が不足する場合 現物出資や財産引受けは、評価資料・検査役手続・定款記載を慎重に確認する
出資の履行を仮装した場合の責任 払込みや現物出資の外形だけを作り、実際には会社財産を確保していない場合 見せ金、預合い、払込直後の不自然な資金移動に注意する
任務懈怠による損害賠償責任 発起人が設立手続上の任務を怠り、会社に損害を与えた場合 定款、出資、役員選任、登記書類の不備を軽視しない
連帯責任 複数の発起人等が責任を負う場合 共同発起人だからといって、自分に関係ないと考えない
会社不成立の場合の責任 株式会社が成立しなかった場合 設立費用、出資金返還、準備契約の処理を発起人側で負担する可能性がある

現物出資・財産引受けは、現物出資・財産引受け(変態設立事項)で詳しく整理しています。価額不足責任の条文上の要点は会社法52条|出資された財産等の価額が不足する場合の責任、仮装出資は会社法52条の2|出資の履行を仮装した場合の責任等も確認してください。

また、発起人等の損害賠償責任・連帯責任・責任免除は会社法53条〜55条|発起人等の損害賠償責任・連帯責任・責任免除、株式会社不成立の場合の責任は会社法56条|株式会社不成立の場合の責任に整理しています。

責任の深掘りは別記事へ

発起人の責任は、現物出資、財産引受け、仮装払込み、募集設立、会社不成立などで分岐します。本記事では発起人を決めるための全体像を示し、各責任の要件・効果は個別記事に分けています。


発起人を決める前のチェックリスト

発起人を決めるときは、単に「誰の名前で設立するか」ではなく、設立後の支配関係と責任を含めて確認してください。

  • 誰がいくら出資し、何株を引き受けるか
  • 発起人と取締役・代表取締役を兼ねる人は誰か
  • 法人発起人がいる場合、代表者権限と必要書類は整っているか
  • 外国人・海外法人が関与する場合、署名証明・住所証明・送金のスケジュールに問題はないか
  • 共同創業者が離脱した場合の株式・競業・知的財産の扱いを決めているか
  • 現物出資、財産引受け、発起人報酬、設立費用などの変態設立事項がないか
  • 払込資金が見せ金・預合いと評価されるような動きになっていないか
  • 設立後すぐに投資、融資、許認可、株主間契約が必要になる予定はないか

発起人を決めた後に株主構成を修正することは可能ですが、株式譲渡、税務、他株主の同意、譲渡制限、登記・契約の修正などが必要になることがあります。特に共同創業者がいる場合は、定款認証前に資本政策と役員構成を確認しておくべきです。


発起人に関するよくある質問

発起人は一人でもよいですか?

一人でも株式会社を設立できます。一人会社では、発起人がすべての設立時発行株式を引き受け、会社成立後に一人株主となり、同じ人が取締役・代表取締役を兼ねることもあります。

発起人は法人でもよいですか?

法人が発起人になることもあります。ただし、法人は取締役にはなれないため、会社成立後の業務執行を担う設立時取締役は個人から選任する必要があります。また、法人代表者の権限、印鑑証明、実質的支配者、グループ内取引なども確認が必要です。

発起人と代表取締役は同じ人でよいですか?

同じ人でも構いません。むしろ、一人会社や小規模な株式会社では、発起人が設立時取締役・代表取締役を兼ねることが多いです。ただし、発起人としての立場と、会社成立後の取締役・代表取締役としての立場は別です。

発起人は途中で辞められますか?

定款に署名又は記名押印する前であれば、発起人として関与しない設計にすることは比較的容易です。しかし、定款作成後、定款認証後、設立時発行株式の引受け後は、発起人全員の合意、定款変更、出資・書類のやり直しが問題となり、簡単には処理できません。安易に名義を入れないことが重要です。

出資しない人を発起人にできますか?

発起人は設立時発行株式を引き受け、出資の履行に関わる立場です。出資しない人を形式的に発起人にするのは、会社成立後の株主権や責任関係を不明確にします。単なる協力者、役員候補、顧問、外部支援者であれば、発起人とは別の立場として整理するのが通常です。

発起人が報酬を受け取ることはできますか?

発起人が報酬や特別利益を受ける設計にする場合、会社法28条の変態設立事項として定款に記載し、検査役調査などが問題になります。通常の中小企業設立では、手続が重くなるため、発起人報酬を設けないことが多いです。

名義だけ発起人・株主にしても問題ありませんか?

問題になる可能性が高いです。実際の出資者と名義人がずれると、誰が株主か、誰が議決権を行使できるか、資金原資は何かという争いになります。外部に出したくない事情がある場合でも、名義貸しで処理するのではなく、法的・税務的に説明可能な設計を検討してください。


まとめ

発起人とは、株式会社の設立を企画し、定款作成、設立時発行株式の引受け、出資の履行、役員選任などを通じて設立手続を進める人です。発起人は会社成立後に株主となりますが、当然に取締役や代表取締役になるわけではありません。

  • 発起人は株式会社設立に不可欠な設立手続上の立場である
  • 発起人は1人でもよいが、複数人にする場合は株主構成と合意形成に注意する
  • 発起人・株主・取締役・代表取締役は役割が異なる
  • 法人・外国人・未成年者を発起人にする場合は、必要書類や同意を慎重に確認する
  • 名義貸し、現物出資、仮装払込み、共同発起人の離脱はトラブル化しやすい

発起人を誰にするかは、会社設立の書類作成だけでなく、会社成立後の支配権、株主間トラブル、資金調達、役員責任にも影響します。複数人で設立する場合や、法人・外国人・外部投資家が関与する場合は、定款認証前に資本関係と責任関係を整理しておくことが重要です。

坂尾陽弁護士

発起人は「会社を作るための名義」ではなく、設立時の株主構成と責任の出発点です。後から直す前提ではなく、最初の設計で無理がないかを確認しましょう。

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