【会社法25条・26条】株式会社の設立・定款の作成|条文の要点と実務ポイント

会社法25条・26条は、株式会社設立の「入口」を定める条文です。会社法25条は、株式会社を設立する方法として、発起設立と募集設立を定め、各発起人が設立時発行株式を1株以上引き受けることを求めています。会社法26条は、株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、発起人全員が署名又は記名押印することを定めています。

実務では、まず発起設立で進めるのか、募集設立で進めるのかを決め、発起人を確定し、定款を作成するという順序で整理します。定款の具体的な記載事項、変態設立事項、定款認証、備置き・閲覧などは会社法27条以下でさらに定められるため、本条は設立手続全体の出発点として理解することが重要です。

  • 会社法25条は、発起設立と募集設立という2つの設立方法を定める
  • 各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受ける必要がある
  • 会社法26条は、発起人による定款作成と、発起人全員の署名又は記名押印を定める
  • 電子定款を使う場合は、署名又は記名押印に代わる電子署名等の措置が必要になる
  • 25条・26条の不備は、株主構成、定款認証、設立登記、設立後の紛争に影響し得る

坂尾陽弁護士

会社法25条・26条は、条文だけを見ると短い規定です。しかし、実務では「誰が発起人か」「誰が株式を引き受けるか」「どの定款に誰が署名するか」という設立後の株主関係にも直結します。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法25条・26条の位置づけ

会社法25条・26条は、株式会社設立手続の最初に確認する条文です。公式条文は、e-Gov法令検索の会社法で確認できます。発起設立の一般的な手続の流れは、法務省の株式会社の設立手続(発起設立)についても参考になります。

条文 定めていること 実務上の意味
会社法25条1項1号 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法 一般的な中小企業・スタートアップで多い発起設立の根拠になる
会社法25条1項2号 発起人が株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者を募集する方法 設立段階で外部引受人を募集する募集設立の根拠になる
会社法25条2項 各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない 発起人を単なる名義人ではなく、株式引受けを伴う立場として扱う
会社法26条1項 発起人が定款を作成し、発起人全員が署名又は記名押印する 定款作成者と発起人の一致、全員の関与を確認する
会社法26条2項 定款は電磁的記録で作成でき、その場合は署名又は記名押印に代わる措置が必要 電子定款を利用する場合の根拠になる

会社法25条・26条だけで設立手続が完結するわけではありません。定款の絶対的記載事項は会社法27条、変態設立事項は会社法28条、任意的記載事項・定款認証・備置き閲覧は会社法29条〜31条で確認する必要があります。


会社法25条の要点:株式会社の設立方法

会社法25条は、株式会社の設立方法を大きく2つに分けています。1つは発起設立、もう1つは募集設立です。条文上の表現では、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法が発起設立に当たり、発起人以外の引受人を募集する方法が募集設立に当たります。

発起設立は、発起人が設立時発行株式を全部引き受ける方法

発起設立では、設立時発行株式を発起人だけで全部引き受けます。中小企業やスタートアップの設立では、創業者が発起人となり、少人数で株式を引き受ける形が多く使われます。

発起設立では、募集設立に比べて創立総会などの手続が不要となるため、実務上は比較的シンプルに設立しやすい方法です。もっとも、簡単に見える場合でも、発起人、株式数、払込金額、資本金、設立時役員、定款記載事項を正確に整える必要があります。

手続全体の流れは、株式会社設立の流れ(発起設立・募集設立)で整理しています。発起人の意味や人数、責任は、発起人とは|役割・人数・要件・責任も確認してください。

募集設立は、発起人以外の引受人も設立時に募集する方法

募集設立では、発起人が設立時発行株式を引き受けるだけでなく、発起人以外の引受人を募集します。設立段階から外部投資家や多数の引受人を入れる場合に問題となります。

募集設立は、設立時募集株式の募集、申込み、割当て、払込み、創立総会など、発起設立よりも重い手続になります。そのため、設立時点では発起設立で会社を成立させ、成立後に募集株式の発行などで資金調達する設計が選ばれることもあります。

募集設立固有の手続は、募集設立とは|設立時募集株式・創立総会・払込までの実務フロー創立総会の手続で確認してください。

比較項目 発起設立 募集設立
株式の引受け 発起人が全部引き受ける 発起人のほか、発起人以外の引受人もいる
典型場面 創業者・少人数での設立 設立段階で外部引受人を入れる場合
手続負担 比較的軽い 募集・創立総会などが加わる
設立後の資金調達 成立後の募集株式発行等で対応しやすい 設立時点で出資者を広げられるが手続は重い

各発起人が1株以上引き受ける意味

会社法25条2項は、各発起人が、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないと定めています。これは、発起人が単なる設立協力者や名義人ではなく、設立時発行株式の引受けを伴う立場であることを示す規定です。

したがって、実務では、発起人ごとに次の事項を整理する必要があります。

  • 誰を発起人とするか
  • 各発起人が何株を引き受けるか
  • 1株当たりいくらを払い込むか
  • 発起人間の議決権比率をどうするか
  • 会社成立後の株主構成をどうするか

設立時発行株式の数、払込金額、資本金・資本準備金の決め方は、設立時発行株式とは|株数・払込金額・資本金の決め方で詳しく整理しています。

注意

「とりあえず名前だけ発起人に入れる」「実際の出資者とは別人名義で株式を引き受ける」といった処理は避けるべきです。後日、誰が株主か、誰が議決権を行使できるか、出資金の原資は何かをめぐる紛争につながることがあります。

発起人・株主・取締役は同じとは限らない

一人会社では、発起人、株主、設立時取締役、代表取締役が同じ人になることが多くあります。しかし、法律上はそれぞれ別の立場です。発起人は設立手続上の立場、株主は株式を有する立場、取締役・代表取締役は会社成立後の会社運営を担う立場です。

この区別を曖昧にすると、定款、就任承諾書、払込証明、設立登記の添付書面に不整合が出ることがあります。複数人で設立する場合や、法人が発起人になる場合は、特に整理が必要です。


会社法26条の要点:定款の作成

会社法26条は、株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員が定款に署名又は記名押印しなければならないと定めています。定款は、会社の目的、商号、本店所在地、出資、発起人など、会社の基本ルールを定める文書です。

定款は発起人が作成する

会社法26条1項では、定款の作成主体が「発起人」とされています。実務上、司法書士、行政書士、弁護士などが定款案の作成を支援することはありますが、会社法上の定款作成者は発起人です。

発起人が複数いる場合は、発起人全員が定款に関与し、署名又は記名押印をします。発起人の一部だけが作成したような外形や、実際には関与していない人の名義を入れる運用は、後日の証明や株主関係の整理で問題になります。

電子定款も作成できる

会社法26条2項は、定款を電磁的記録で作成できることを定めています。いわゆる電子定款です。電子定款を用いる場合は、紙の定款に署名又は記名押印する代わりに、法務省令で定める措置をとる必要があります。

実務上は、電子署名、公証人による定款認証、オンライン申請の準備などが関係します。電子定款は印紙税の負担との関係でメリットがある一方、電子署名環境や公証役場との事前調整が必要です。詳しくは、定款認証とは|公証役場の手続・費用・電子定款の注意点を参照してください。

定款の中身は27条以下で確認する

会社法26条は、定款を誰がどの形式で作成するかを定める条文です。定款に何を記載又は記録しなければならないかは、会社法27条以下を確認します。

論点 主な条文 確認すべき内容
絶対的記載事項 会社法27条 目的、商号、本店所在地、出資財産の価額又は最低額、発起人の氏名又は名称及び住所
変態設立事項 会社法28条 現物出資、財産引受け、発起人の特別利益、設立費用
任意的記載事項 会社法29条 法律に違反しない範囲で定款に定める事項
定款認証 会社法30条 株式会社設立時の定款は公証人の認証を受ける
定款の備置き・閲覧 会社法31条 設立手続中の定款備置き・閲覧等

定款の基本的な考え方は、定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項でも解説しています。


25条・26条から見た設立実務の流れ

会社法25条・26条を実務に落とし込むと、最初に確認すべき流れは次のとおりです。

順番 作業 確認ポイント
1 設立方法を決める 発起設立か募集設立かを選ぶ
2 発起人を確定する 各発起人が1株以上引き受ける前提で、株主構成を整理する
3 設立時発行株式を決める 株数、払込金額、資本金・資本準備金を整理する
4 定款案を作成する 27条の絶対的記載事項、28条の変態設立事項、任意的記載事項を確認する
5 発起人全員が署名又は記名押印する 電子定款の場合は電子署名等の措置を確認する
6 定款認証を受ける 公証役場と事前調整し、認証後の変更リスクを避ける
7 出資の履行・役員選任へ進む 払込証明、設立時取締役等の選任、調査、登記書類を整える
8 設立登記を申請する 本店所在地での設立登記により株式会社が成立する

出資の履行は出資の履行(払込み)と払込証明、設立時役員等の選任は設立時取締役・監査役の選任方法、設立登記は会社法911条|株式会社の設立の登記商業登記の申請手続も確認してください。


定款作成・発起人名義で問題になりやすい点

会社法25条・26条の段階で問題になりやすいのは、形式的な書類作成よりも、発起人・株式引受人・実際の出資者の関係です。設立時点では関係者の合意があるように見えても、会社成立後に経営権や株式の帰属をめぐって争いになることがあります。

発起人を定款上明確に特定する

発起人の氏名又は名称及び住所は、会社法27条の絶対的記載事項でもあります。旧商法下の裁判例ですが、大審院昭和8年9月12日判決は、発起人の氏名住所について、定款の記載自体から特定の者が発起人であることを確認できる程度に記載すれば足りるとの趣旨を示しています。

現在の実務でも、発起人を定款上明確に特定し、発起人全員が定款作成に関与したことを説明できる状態にしておくことが重要です。

名義貸しは株主権紛争につながる

他人名義で株式を引き受ける場面では、誰が実質的な株主かが争われることがあります。東京地裁令和4年2月15日判決は、他人の承諾を得てその名義を用い株式を引き受けた場合について、名義貸与者ではなく、実質上の引受人が株主となると解するのが相当であるとの判断を示しています。

もっとも、これは名義貸しを推奨するものではありません。名義人、実際の出資者、会社、他の株主、税務・金融機関との関係で説明が複雑になります。設立時から、実際の出資者と株主名義を一致させ、必要な場合は株主間契約や種類株式、議決権設計など正面から検討する方が安全です。


実務チェックリスト

会社法25条・26条の観点から、定款作成前に少なくとも次の点を確認してください。

  • 発起設立と募集設立のどちらで進めるか決めたか
  • 各発起人が1株以上の設立時発行株式を引き受ける設計になっているか
  • 発起人の氏名又は名称・住所が定款上正確に記載されているか
  • 実際の出資者と株主名義が一致しているか
  • 設立時発行株式の数、払込金額、資本金・資本準備金を整理したか
  • 定款に27条の絶対的記載事項が漏れなく入っているか
  • 現物出資・財産引受け・発起人の特別利益・設立費用がある場合に28条対応を確認したか
  • 電子定款を利用する場合、電子署名と定款認証の準備ができているか
  • 定款認証後に大きな変更が生じないよう、役員・本店・事業目的・株式設計を事前に固めたか
定款認証前の確認が重要

定款認証後に目的、商号、本店、発起人、出資設計などを変更すると、定款の作り直し、再認証、決定書の追加作成、登記書類の修正が必要になることがあります。設立スケジュールを優先して不確定なまま進めると、かえって時間と費用が増えることがあります。


よくある質問

会社法25条と26条だけを見れば株式会社を設立できますか?

いいえ。25条・26条は入口規定です。実際には、定款記載事項、定款認証、出資の履行、設立時役員等の選任・調査、設立登記などの条文と手続を確認する必要があります。

発起人は一人でもよいですか?

一人でも構いません。会社法25条2項は各発起人が1株以上を引き受けることを定めていますが、発起人が複数必要であるとはしていません。一人会社では、発起人が全株式を引き受け、設立時取締役・代表取締役を兼ねることもあります。

発起人以外の人に設立時から出資してもらう場合はどうなりますか?

設立時に発起人以外の引受人を入れる場合は、募集設立の手続が問題になります。もっとも、実務上は、まず発起設立で会社を成立させ、会社成立後に募集株式の発行や株式譲渡で資本参加を受ける設計も検討されます。どの方法が適切かは、投資家の関与時期、契約内容、許認可、税務、登記スケジュールによって変わります。

電子定款にすれば定款への署名押印は不要ですか?

紙の定款に署名又は記名押印する代わりに、電子定款では法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置が必要です。実務上は電子署名が問題になります。単にWordやPDFで定款案を作成しただけでは、会社法26条2項の要件を満たす電子定款とはいえません。

定款作成後に発起人や株式数を変更できますか?

変更内容と手続段階によります。定款認証前であれば作り直しで対応しやすいことがありますが、定款認証後や出資の履行後は、定款変更、発起人全員の同意、決定書の作成、登記書類の修正などが問題になります。後で直す前提ではなく、定款作成前に発起人と株式設計を固めることが重要です。

発起人と取締役を別の人にしてもよいですか?

別の人にしても構いません。発起人は設立手続上の立場であり、取締役は会社成立後の機関です。発起人が取締役を兼ねることもできますが、必ず兼ねなければならないわけではありません。


まとめ

会社法25条・26条は、株式会社をどの方法で設立するか、誰が発起人として株式を引き受けるか、誰が定款を作成するかを決める出発点です。

  • 会社法25条は、発起設立と募集設立という設立方法を定める
  • 各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受ける必要がある
  • 会社法26条は、発起人による定款作成と全員の署名又は記名押印を定める
  • 電子定款を使う場合は、署名押印に代わる電子的な措置が必要になる
  • 発起人名義・株式引受名義・出資者を曖昧にすると、設立後の株主権紛争につながり得る

株式会社設立では、定款の文言だけでなく、発起人、株式数、出資金、役員構成、登記後の運用まで一体で設計する必要があります。特に複数人で設立する場合、外部投資家が関与する場合、法人や外国人が発起人になる場合は、定款認証前に設計を整理しておくことが重要です。

坂尾陽弁護士

会社法25条・26条は短い条文ですが、設立後の株主構成と会社運営の出発点です。発起人名義、出資比率、定款内容に少しでも迷いがある場合は、定款認証前に確認することをおすすめします。

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