会社法28条は、株式会社の設立時に、定款に記載又は記録しなければ効力を生じない事項を定める条文です。一般に「変態設立事項」と呼ばれ、現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用が対象になります。
これらは、設立前の発起人の判断だけで成立後の会社財産を減少させたり、資本金を実質より大きく見せたりする危険がある事項です。そのため、定款への記載又は記録だけでなく、会社法33条の検査役調査やその例外、設立時取締役等の調査、価額不足責任まで含めて確認する必要があります。
- 会社法28条は、変態設立事項を定款に記載又は記録しなければ効力を生じないと定める
- 対象は、現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、会社が負担する設立費用の4類型である
- 現物出資・財産引受けでは、財産の内容、価額、出資者又は譲渡人を具体的に特定する必要がある
- 会社法33条の検査役調査が原則となるが、現物出資財産等の総額が500万円以下などの例外がある
- 定款記載漏れがあると、その事項は会社に効力を生じないため、設立後の財産帰属・契約関係で紛争になり得る
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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会社法28条の位置づけ
会社法28条は、株式会社を設立する場合に、一定の事項を定款に記載又は記録しなければ、その事項の効力を生じないと定めています。公式条文は、e-Gov法令検索の会社法で確認できます。
定款の記載事項は、大きく分けると、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項に整理されます。会社法28条の変態設立事項は、相対的記載事項の一種です。つまり、定款に記載しないと定款全体が直ちに無効になるというよりも、その特定の事項について、会社に対する効力が認められないという関係で理解するのが基本です。
| 区分 | 根拠条文 | 主な内容 | 会社法28条との関係 |
|---|---|---|---|
| 絶対的記載事項 | 会社法27条 | 目的、商号、本店所在地、出資財産価額、発起人など | 定款に必ず入れる基本事項 |
| 変態設立事項 | 会社法28条 | 現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用 | 定款に入れないとその事項の効力が生じない |
| 任意的記載事項等 | 会社法29条 | 会社法に違反しない範囲で定款に記載できる事項 | 会社運営上の任意ルールを置く場面で問題になる |
| 検査役調査 | 会社法33条 | 定款に記載された28条事項の調査 | 変態設立事項を置いた後の手続として問題になる |
定款の絶対的記載事項は、会社法27条|定款の記載又は記録事項で整理しています。定款記載事項の全体像を確認する場合は、定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項と作成の実務ポイントも参照してください。
「変態設立事項」という言葉は、通常の金銭出資による設立とは異なり、会社財産の形成や発起人の利益に特殊な影響を与える事項を指す実務上の呼び方です。言葉は特殊ですが、実務では「定款に書かないと効かない設立時の重要事項」と理解すると分かりやすくなります。
会社法28条で定款記載が必要となる4類型
会社法28条が定める事項は、次の4類型です。いずれも、成立後の会社財産や株主・債権者の利害に影響しやすいため、定款であらかじめ明らかにすることが求められます。
| 類型 | 定款に記載又は記録する主な事項 | 典型例 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|
| 現物出資 | 出資者の氏名又は名称、財産、価額、割り当てる設立時発行株式数 | 車両、機械、在庫、知的財産、債権、有価証券などを出資する場合 | 財産評価、引渡し・移転、検査役調査の要否を確認する |
| 財産引受け | 成立後に譲り受ける財産、価額、譲渡人の氏名又は名称 | 設立後の会社が、発起人や第三者から事業用資産を買い取る約束を設立前にする場合 | 設立前契約として会社に効力を及ぼせるかが問題になる |
| 発起人の報酬・特別利益 | 報酬その他特別利益の内容、発起人の氏名又は名称 | 設立事務の対価として発起人に報酬を支払う場合など | 通常の役員報酬と混同しない。設立により発起人が受ける利益が対象 |
| 設立費用 | 会社が負担する設立に関する費用 | 設立事務所費用、創立総会費用、特殊な設立準備費用など | 定款認証手数料や一定の法定費用等は除外される |
法務省の発起設立手続の説明でも、定款記載事項は絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項に分けられ、会社法28条の変態設立事項として4類型が整理されています。設立手続全体を確認する場合は、法務省の株式会社の設立手続(発起設立)についても参考になります。
会社法28条の事項は、「定款に書いた方がよい事項」ではなく、定款に書かないと効力を生じない事項です。ひな形定款を使う場合でも、現物出資や財産引受けを予定しているなら、ひな形に該当欄があるか、記載内容が足りているかを必ず確認してください。
現物出資とは
現物出資とは、金銭ではなく、物や権利などの財産を出資することです。会社法28条1号は、金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額、その者に対して割り当てる設立時発行株式の数を定款に記載又は記録することを求めています。
現物出資で定款に記載する事項
現物出資では、少なくとも次の事項を定款上明確にします。種類株式発行会社の場合には、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数も問題になります。
- 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称
- 現物出資の目的となる財産の内容
- その財産の価額
- 出資者に割り当てる設立時発行株式の数
- 種類株式発行会社では、種類及び種類ごとの数
現物出資の記載では、「パソコン一式」「車両一台」のような曖昧な書き方では、財産の特定や価額の相当性が問題になりやすくなります。車両であれば車台番号や登録番号、知的財産であれば権利の内容、債権であれば債務者・債権額・発生原因など、第三者から見て特定できる程度の記載を検討します。
現物出資の対象財産
現物出資の対象は、会社に移転でき、財産的価値を把握できるものが中心です。実務では、車両、機械、在庫、パソコン、ソフトウェア、知的財産権、有価証券、債権、不動産などが候補になります。
もっとも、現物出資に向いているかは、単に価値があるかだけでは決まりません。譲渡制限がある権利、評価が難しい権利、契約上移転に相手方承諾が必要な権利は、定款に書く前に、移転可能性と評価根拠を確認する必要があります。
現物出資は500万円以下でも定款記載が必要
実務で誤解が多いのが、「500万円以下なら何もしなくてよい」という理解です。会社法33条の検査役調査の例外として、現物出資財産等について定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合があります。しかし、これは検査役調査の例外であって、会社法28条1号の定款記載自体が不要になるわけではありません。
現物出資を使う場合は、価額が小さくても、定款記載、財産の給付、設立時取締役等の調査、登記添付書類、会計処理を一体で確認する必要があります。現物出資・財産引受けの実務手順は、現物出資・財産引受け(変態設立事項)|検査役・評価・リスクを実務解説で詳しく整理しています。
財産引受けとは
財産引受けとは、株式会社の成立後に特定の財産を譲り受けることを、設立前の段階で約束することです。会社法28条2号は、成立後に譲り受けることを約した財産、その価額、譲渡人の氏名又は名称を定款に記載又は記録することを求めています。
現物出資との違い
現物出資は、財産を出資として会社に入れ、その対価として設立時発行株式を取得する仕組みです。これに対し、財産引受けは、会社成立後に会社が財産を買い取るなど、財産を譲り受ける契約を設立前に約束する仕組みです。
| 項目 | 現物出資 | 財産引受け |
|---|---|---|
| 財産を会社に入れる方法 | 出資として給付する | 成立後の会社が譲り受ける |
| 対価 | 設立時発行株式 | 売買代金その他の対価 |
| 定款記載 | 出資者、財産、価額、割当株式数 | 財産、価額、譲渡人 |
| 典型場面 | 創業者の車両・設備・知財を出資する | 設立後の会社が創業者や第三者から設備・在庫・営業財産を買い取る約束をする |
| 主なリスク | 価額の過大評価、移転不能、価額不足責任 | 会社に不利益な高額買取り、開業準備契約の効力 |
設立前契約としての注意点
財産引受けで特に重要なのは、会社がまだ存在しない時点で、誰がどのような契約をしたのかという点です。発起人が設立後の会社のために事業用資産を買い取る約束をしても、会社法28条2号の要件を満たさなければ、成立後の会社に当然に効力が及ぶわけではありません。
最高裁昭和28年12月3日判決は、旧商法下の事案ですが、定款に記載のない財産引受けは、会社成立後に株主総会が特別決議で承認しても有効にならないと判断しました。また、最高裁昭和38年12月24日判決は、発起人は会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為であっても原則として行うことができず、原始定款に記載され法定要件を満たした財産引受けだけが例外的に認められる趣旨を示しています。
会社が成立した後に、会社自身が取締役の権限で通常の売買契約を締結する場合は、会社法28条2号の財産引受けとは別に整理されます。問題になるのは、設立前の段階で、成立後の会社が財産を譲り受けることを約束している場合です。
発起人の報酬・特別利益とは
会社法28条3号は、株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益と、その発起人の氏名又は名称を定款に記載又は記録することを求めています。
発起人は、会社設立に向けて定款作成、出資の調整、登記準備などを進める立場です。しかし、発起人が自分の裁量で成立後の会社から高額な報酬や特別利益を受けられると、設立後の会社財産が不当に流出し、他の株主や債権者を害するおそれがあります。そのため、会社法28条3号により定款上の明示が求められます。
役員報酬との違い
発起人の報酬・特別利益は、会社の成立によって発起人が受ける利益です。設立後に取締役として勤務し、会社法上の手続に従って役員報酬を受ける場合とは別に整理します。
| 項目 | 発起人の報酬・特別利益 | 設立後の役員報酬 |
|---|---|---|
| 発生時期 | 会社の成立により発起人が受ける | 会社成立後、役員としての職務に対して受ける |
| 根拠 | 会社法28条3号 | 会社法上の役員報酬決定手続、定款・株主総会決議等 |
| 定款記載 | 記載又は記録がなければ効力を生じない | 会社の機関設計・決議手続に従って決める |
| 実務上の典型 | 設立事務の成功報酬、特別な財産的利益 | 月額報酬、賞与、退職慰労金等 |
中小企業やスタートアップの設立では、発起人がそのまま取締役になることが多いため、発起人報酬をわざわざ会社法28条3号で設ける必要性は高くないことが多いです。設立後の役員報酬として整理できるものを、あえて発起人の特別利益として定款に置くべきかは慎重に検討してください。
会社が負担する設立費用とは
会社法28条4号は、株式会社の負担する設立に関する費用を定款に記載又は記録することを求めています。ただし、定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものは除かれます。
会社法施行規則5条は、会社法28条4号の法務省令で定めるものとして、定款に係る印紙税、設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払う手数料・報酬、検査役の報酬、設立登記の登録免許税を定めています。施行規則の原文は、e-Gov法令検索の会社法施行規則で確認できます。
| 費用の種類 | 会社法28条4号の扱い | 実務上の整理 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 条文上、除外される | 定款に記載しなくても会社負担として整理しやすい |
| 定款に係る印紙税 | 会社法施行規則5条で除外 | 紙定款の場合に問題になる |
| 払込取扱金融機関の手数料・報酬 | 会社法施行規則5条で除外 | 金銭払込みの取扱費用として整理する |
| 検査役の報酬 | 会社法施行規則5条で除外 | 裁判所が決定する検査役報酬 |
| 設立登記の登録免許税 | 会社法施行規則5条で除外 | 設立登記で通常発生する法定費用 |
| 特殊な開業準備費、設立事務所費、創立総会費用等 | 内容により28条4号の対象になり得る | 会社負担にする根拠を定款で整理する |
設立費用は、税務・会計上会社経費にできるかという問題と、会社法28条4号により定款記載が必要かという問題を分けて考える必要があります。特に、発起人が立替えた費用を成立後の会社に負担させる場合は、法定除外費用に当たるのか、それ以外の設立費用として定款記載が必要なのかを確認してください。
会社法33条の検査役調査との関係
会社法28条の変態設立事項を定款に記載又は記録した場合、次に問題になるのが会社法33条の検査役調査です。発起人は、定款に28条各号の事項があるときは、公証人の認証後遅滞なく、裁判所に対して検査役の選任を申し立てるのが原則です。
もっとも、現物出資・財産引受けについては、一定の場合に検査役調査が不要になります。法務省の説明でも、現物出資財産等の価額総額が500万円を超えない場合、市場価格のある有価証券について定款価額が市場価格を超えない場合、弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合などが整理されています。
| 場面 | 検査役調査の要否 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 現物出資財産等の定款記載価額の総額が500万円以下 | 不要となる場合がある | 総額の判定。定款記載自体は必要 |
| 市場価格のある有価証券 | 市場価格を超えない等の要件で不要となる場合がある | 市場価格の根拠資料を残す |
| 専門家証明を受ける場合 | 価額が相当であることの証明により不要となる場合がある | 不動産では不動産鑑定士の鑑定評価も問題になる |
| 発起人の報酬・特別利益 | 原則として慎重な検討が必要 | そもそも設立後の役員報酬で処理できないか確認する |
| 定款記載が必要な設立費用 | 原則として慎重な検討が必要 | 法定除外費用か、それ以外の会社負担費用かを切り分ける |
検査役の選任申立ては、時間と費用がかかるため、実務では、検査役調査が不要となる範囲で現物出資・財産引受けを設計することがあります。ただし、検査役調査を避けること自体を目的にして、財産価額や契約実態を不自然に調整することは避けるべきです。
検査役調査や設立時発行株式との関係は、会社法32条・33条|設立時発行株式の決定・定款事項の検査役調査で詳しく整理します。出資の履行は、会社法34条〜37条|出資の履行・株主となる権利・発行可能株式総数も確認してください。
定款記載漏れがある場合の効力とリスク
会社法28条の事項を定款に記載又は記録しなかった場合、その事項は効力を生じません。これは、設立後の会社に対して、その現物出資、財産引受け、発起人報酬、設立費用の負担を当然に主張できないことを意味します。
定款全体の問題と、その事項の効力は分けて考える
会社法28条の事項は相対的記載事項です。そのため、定款に28条事項がないことだけで、定款全体が直ちに無効になると考えるのではなく、その特定の事項が会社に効力を生じるかを検討します。
ただし、実務上の影響は小さくありません。たとえば、発起人が設立前に会社のためとして資産買取り契約を結んだのに、財産引受けとして定款に記載していなければ、成立後の会社にその契約の効果を帰属させられるかが問題になります。相手方からすれば、誰に履行を求めるのか、発起人個人が責任を負うのかという紛争につながります。
設立後の追認では治らない場合がある
財産引受けについては、定款記載がないまま設立後に会社が追認すればよい、と考えるのは危険です。最高裁昭和28年12月3日判決は、定款に記載のない財産引受けについて、会社成立後に株主総会の特別決議で承認しても有効にはならないと判断しました。
また、最高裁昭和61年9月11日判決は、営業譲渡契約が財産引受けに当たるのに原始定款に記載しなかったため無効となる場合でも、長期間にわたり履行が進み、利害関係人も問題にしていなかったなどの事情のもとで、譲受会社が無効を主張することは信義則に反し許されないと判断しています。もっとも、これは例外的な事情に基づく判断であり、最初から「後で何とかなる」と考えるべきではありません。
会社法28条の定款記載漏れは、設立登記の補正だけで済むとは限りません。財産の帰属、代金支払義務、発起人個人の責任、設立後の会計処理、株主・債権者への説明に波及します。
実務でよく問題になる場面
会社法28条は、抽象的な条文のように見えますが、中小企業・スタートアップの設立でも具体的に問題になります。特に、創業者個人の資産や既存事業を会社に移す場面では注意が必要です。
創業者の車両・パソコン・在庫を会社に入れる場合
創業者が個人で持っている車両、パソコン、工具、在庫などを会社に入れる場合、金銭出資で会社を設立してから会社が買い取るのか、現物出資にするのか、財産引受けにするのかを切り分けます。
現物出資にするなら、定款記載、価額評価、財産の給付、調査報告、登記添付書類が必要になります。会社成立後に買い取る予定を設立前に約束するなら、財産引受けの該当性を検討します。
個人事業を法人成りする場合
個人事業を法人成りする場合、設備、在庫、売掛債権、契約上の地位、屋号、ウェブサイト、知的財産などをどのように会社へ移すかが問題になります。営業財産を一括して会社に移す設計では、財産引受けや事業譲渡、債務引受、契約上の地位の移転、許認可の承継可否を個別に確認する必要があります。
財産引受けに該当するのに定款に記載しないまま進めると、成立後の会社に契約の効力が及ばないリスクがあります。法人成りでは、税務・会計だけでなく、会社法28条の観点からも資産移転の方法を整理してください。
スタートアップで知的財産を会社へ移す場合
創業者が個人で作成したソフトウェア、著作物、特許を受ける権利、商標、ドメイン、ノウハウなどを会社に入れる場合、現物出資にするのか、譲渡契約にするのか、使用許諾にするのかを検討します。
知的財産は評価が難しく、権利の帰属や第三者との契約制限も問題になりやすい領域です。投資家が入る前の段階で権利関係が曖昧だと、デューデリジェンスや資金調達で問題になることがあります。
設立費用を会社負担にしたい場合
発起人が立て替えた費用を設立後の会社に負担させる場合は、法定除外費用に当たるか、それ以外の設立費用として会社法28条4号の記載が必要かを確認します。登録免許税や定款認証手数料などの通常費用と、特殊な開業準備費用を同じ扱いにしないことが重要です。
会社法28条のチェックリスト
定款案を作成する段階では、次のチェックを行うと、変態設立事項の見落としを防ぎやすくなります。
| チェック項目 | 確認内容 | 該当する場合の対応 |
|---|---|---|
| 金銭以外の財産を出資する予定があるか | 車両、在庫、知財、債権、不動産、有価証券など | 現物出資として28条1号の記載、33条の検査役要否を確認する |
| 成立後の会社が設立前の約束に基づき財産を譲り受けるか | 創業者や第三者から設備・在庫・営業財産を買い取る約束 | 財産引受けとして28条2号の記載を検討する |
| 発起人が成立により報酬・特別利益を受けるか | 設立成功報酬、特別な財産的利益 | 28条3号の記載を検討し、必要性を再確認する |
| 会社に負担させる設立費用があるか | 通常の法定費用以外の特殊な設立費用 | 28条4号の対象か、施行規則5条等の除外費用かを確認する |
| 検査役調査を避けられる要件があるか | 500万円以下、市場価格ある有価証券、専門家証明など | 定款記載は維持したうえで、33条の例外を確認する |
| 設立時取締役等の調査で説明できるか | 価額、給付、証明、手続の適法性 | 調査報告書や添付資料を整える |
設立時取締役等は、現物出資財産等の価額や証明、出資の履行、設立手続の法令・定款適合性を調査します。調査の詳細は、会社法46条|設立時取締役等による調査で確認してください。価額不足がある場合の責任は、会社法52条|出資された財産等の価額が不足する場合の責任も関係します。
会社法28条に関するよくある質問
変態設立事項とは何ですか?
変態設立事項とは、会社法28条が定款への記載又は記録を要求する、現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、会社が負担する設立費用のことです。定款に記載又は記録しなければ、その事項は効力を生じません。
現物出資が500万円以下なら、定款に書かなくてもよいですか?
いいえ。500万円以下という基準は、会社法33条の検査役調査が不要となる例外に関係するものであり、会社法28条1号の定款記載を不要にするものではありません。現物出資をするなら、価額が少額でも定款記載が必要です。
会社成立後に普通に資産を買う場合も財産引受けですか?
会社成立後に、会社自身が通常の業務判断として売買契約を締結する場合は、通常、会社法28条2号の財産引受けとは別に整理されます。財産引受けで問題になるのは、設立前の段階で、成立後の会社が特定の財産を譲り受けることを約束している場合です。
定款認証手数料や登録免許税も会社法28条4号の設立費用として定款記載が必要ですか?
定款認証手数料は会社法28条4号の括弧書で除外されています。また、会社法施行規則5条は、定款に係る印紙税、払込取扱金融機関の手数料・報酬、検査役報酬、設立登記の登録免許税を定めています。これらは、通常、28条4号の定款記載を要する設立費用とは別に扱われます。
定款に書き忘れた財産引受けを、設立後に株主総会で承認すれば有効になりますか?
そのように単純には考えられません。最高裁昭和28年12月3日判決は、定款に記載のない財産引受けは、会社成立後に株主総会が特別決議で承認しても有効にはならないと判断しています。設立前に財産引受けを予定する場合は、定款作成段階で整理する必要があります。
現物出資と財産引受けのどちらにすべきか迷う場合はどう考えますか?
財産を出資として会社に入れ、その対価として設立時発行株式を受けるなら現物出資です。成立後の会社が財産を買い取るなど、出資とは別の対価で譲り受ける約束なら財産引受けが問題になります。税務・会計・許認可・契約承継も関係するため、個人事業の法人成りや知的財産の移転では早めに整理してください。
発起人が立て替えた費用はすべて会社に請求できますか?
すべて当然に請求できるわけではありません。定款認証手数料や登録免許税などの通常費用は別として、特殊な設立費用を会社負担にする場合は、会社法28条4号の定款記載が必要になることがあります。費用の性質ごとに整理する必要があります。
まとめ
会社法28条は、株式会社の設立時に特に注意すべき変態設立事項を定める条文です。現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用は、成立後の会社財産に影響するため、定款記載と検査役調査の要否を確認しながら進める必要があります。
- 会社法28条の事項は、定款に記載又は記録しなければ効力を生じない
- 現物出資では、出資者、財産、価額、割当株式数を具体的に記載する
- 財産引受けでは、設立前の約束を成立後の会社に効力として及ぼせるかが問題になる
- 発起人の報酬・特別利益や設立費用は、会社財産の流出を防ぐ観点から慎重に扱う
- 会社法33条の検査役調査、46条の設立時取締役等の調査、52条の価額不足責任まで接続して確認する
変態設立事項は、設立登記の添付書類だけでなく、会社財産の帰属、発起人責任、設立後の資本政策にも影響します。金銭出資だけで設立する場合と違う処理を予定しているときは、定款認証前に必ず確認してください。
坂尾陽弁護士
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