スクイーズアウトとは、少数株主の個別同意を得なくても、会社法上の手続により少数株主の株式を金銭等の対価に転換し、支配株主側へ株式を集約する方法です。M&Aでは、公開買付け後に対象会社を完全子会社化する場面、MBOで上場廃止をする場面、グループ再編で株主構成を整理する場面などで検討されます。
スクイーズアウトは、単に「少数株主を追い出す」手続ではありません。少数株主の財産権に直接影響するため、必要な議決権割合、株主総会決議、通知・公告、反対株主対応、価格算定、公正な手続、裁判所への申立てリスクを踏まえて設計する必要があります。手続を誤ると、差止め、価格決定申立て、決議取消し、損害賠償などに発展することがあります。
この記事では、スクイーズアウトの意味、主な手法である株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換の違い、手続の流れ、価格リスク、少数株主側の対応、実務上のチェックポイントを解説します。
- スクイーズアウトは、少数株主の株式を強制的又は半強制的に整理し、株主構成を支配株主側へ集約する手法
- 90%以上の議決権がある場合は、特別支配株主の株式等売渡請求が有力な選択肢になる
- 90%未満でも、株式併合や全部取得条項付種類株式によりスクイーズアウトを検討できることがある
- TOB後の完全子会社化、MBO、非公開化、事業承継、分散株式の集約で利用される
- 価格算定と公正な手続を軽視すると、少数株主との紛争や価格決定申立てのリスクが高まる
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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スクイーズアウトとは
スクイーズアウトとは、支配株主又は対象会社が、少数株主の保有株式を会社法上の手続により取得し、又は金銭等の対価に転換して、少数株主を株主構成から外す手法です。英語の「squeeze out」から来た表現で、日本語では「少数株主の締出し」「キャッシュアウト」と呼ばれることもあります。
典型例は、買収者がTOBで対象会社の大部分の株式を取得した後、残った少数株主の株式を取得して100%子会社化する場面です。TOBについては、TOB(公開買付け)とは|仕組み・手続・メリット・M&Aでの位置づけも参考になります。
非上場会社でも、相続や過去の名義株、退職役員への株式付与、親族間の分散などにより少数株主が残っている場合、事業承継やM&Aの前提としてスクイーズアウトを検討することがあります。ただし、非上場会社では市場株価がないため、価格算定や手続説明が特に重要になります。
任意買取との違い
任意買取は、少数株主との合意に基づいて株式を買い取る方法です。株主が売却に応じれば、強制的な手続を使わずに株式を集約できます。これに対し、スクイーズアウトは、一定の会社法上の手続により、少数株主の個別同意がなくても株式を取得し、又は金銭対価へ転換する点に違いがあります。
実務では、最初から強制手続に入るのではなく、まず任意交渉で取得できるかを検討します。任意交渉で解決できない場合、議決権割合、株主構成、価格リスク、時間軸を踏まえてスクイーズアウトを検討するのが一般的です。
キャッシュアウトとの違い
キャッシュアウトは、少数株主に金銭を交付して株主でなくすることを指すことが多い表現です。スクイーズアウトは広い概念であり、金銭を対価とする場合だけでなく、親会社株式その他の財産を対価とする再編も含めて説明されることがあります。
もっとも、M&A実務では、少数株主に金銭を交付して完全子会社化・非公開化を実現する取引が多いため、スクイーズアウトとキャッシュアウトは近い意味で使われることがあります。
スクイーズアウトが使われる場面
スクイーズアウトは、株主構成を整理し、意思決定を迅速化し、買収後又は承継後の会社運営を安定させるために使われます。代表的な場面は次のとおりです。
TOB後に完全子会社化する場合
上場会社の買収では、まずTOBで広く株式を取得し、一定割合以上を取得できた後に、残った少数株主をスクイーズアウトして完全子会社化する流れがよく見られます。買収者が90%以上の議決権を取得できれば、株式等売渡請求を使える可能性があります。90%に届かない場合は、株式併合や株式交換などを検討することがあります。
MBO・非公開化を行う場合
MBOでは、経営陣やスポンサーが対象会社を買収し、上場廃止や非公開化を目指すことがあります。この場合、経営陣と少数株主との間に利益相反が生じやすいため、特別委員会、第三者算定機関、十分な情報開示、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件など、公正性を高める手続設計が重要です。MBOの基本は、MBOとは|仕組み・非公開化・事業承継・資金調達と利益相反で詳しく解説しています。
事業承継で分散株式を集約する場合
非上場会社では、創業家以外の親族、退職役員、古い取引先、名義株主、相続人などに株式が分散していることがあります。後継者へ議決権を集中させたい場合、まず任意買取や自己株取得を検討し、それでも集約できないときに株式併合等のスクイーズアウトを検討することがあります。
事業承継文脈での整理は、分散株式を集約する方法|任意買取・自己株取得・種類株式・スクイーズアウト、少数株主がいる会社の事業承継|任意買取・スクイーズアウトの注意点も参考になります。
グループ再編・上場廃止後の株主整理を行う場合
親子上場の解消、グループ再編、共同出資会社の再編、上場廃止後の株主整理でも、完全子会社化や株主構成の単純化のためにスクイーズアウトが検討されます。グループ内での完全子会社化には、株式交換を使うこともあります。
スクイーズアウトの主な手法
スクイーズアウトには複数の手法があります。どの手法を選ぶかは、支配株主の持株比率、対象会社が上場会社か非上場会社か、株主総会決議を通せるか、新株予約権の有無、スケジュール、価格紛争リスクによって変わります。
| 手法 | 主な前提 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 株式等売渡請求 | 特別支配株主が原則90%以上の議決権を有する | 株主総会を経ずに短期で進めやすい。新株予約権も対象になり得る | TOB後に90%以上を取得した場合 |
| 株式併合 | 株主総会特別決議を通せる議決権割合がある | 少数株主に1株未満の端数のみを生じさせ、端数処理で金銭交付する | 90%未満でも3分の2以上を確保できる場合 |
| 全部取得条項付種類株式 | 定款変更・種類株主総会・取得決議等を実行できる | 全株式を取得条項付種類株式にした上で会社が取得する。手続が重い | 旧来型のキャッシュアウト、特殊な対価設計を要する場合 |
| 株式交換 | 完全親会社となる会社を用いる | 対象会社の株式全部を親会社に取得させる組織再編手法 | 既存会社を親会社として完全子会社化したい場合 |
90%以上の議決権を確保できるなら株式等売渡請求、90%未満で特別決議を通せるなら株式併合、親会社を使う完全子会社化なら株式交換、特殊な設計が必要な場合は全部取得条項付種類株式を検討するのが基本です。
ただし、これはあくまで出発点です。実際には、株主構成、種類株式、新株予約権、株主間契約、過去の株式発行・譲渡、上場規則、金融商品取引法、税務、会計、開示スケジュールを含めて判断します。
特別支配株主の株式等売渡請求
特別支配株主の株式等売渡請求とは、対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する特別支配株主が、対象会社の承認を受けて、他の株主に対し、その株式を売り渡すよう請求できる制度です。対象となるのは株式だけでなく、一定の新株予約権等も含まれます。
TOBで90%以上を取得できた後の二段階目の完全子会社化では、この手法が使われることがあります。株主総会を経ずに進めやすく、端数処理の裁判所手続も不要なため、スケジュールを短縮しやすい点が大きな特徴です。
90%以上の議決権が必要
株式等売渡請求を使うには、請求者が特別支配株主である必要があります。一般には、対象会社の総株主の議決権の90%以上を保有していることが前提になります。完全子会社等の保有分を合算できる場合もありますが、単にグループ全体で大株主であるというだけでは足りないことがあります。
そのため、TOBの買付予定数、応募状況、所有割合、新株予約権の処理、種類株式の議決権を事前に確認し、90%要件を満たせるかを慎重に見ます。
手続の流れ
株式等売渡請求の大まかな流れは、次のとおりです。
- 特別支配株主が、取得日、対価、売渡株式等の内容を定める
- 対象会社に対し、株式等売渡請求をする旨を通知する
- 対象会社が承認する。取締役会設置会社では取締役会決議が中心になる
- 対象会社が売渡株主等へ通知又は公告を行う
- 売渡株主等は、必要に応じて差止め又は売買価格決定の申立てを検討する
- 取得日に、特別支配株主が売渡株式等を取得し、対価を支払う
売渡株主等は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所へ売買価格の決定を申し立てることができます。期限が短いため、通知・公告後の対応スケジュールは厳格に管理する必要があります。
メリットと注意点
株式等売渡請求のメリットは、株主総会決議を経ずに進めやすく、90%以上を取得した後の完全子会社化を迅速に実行できる点です。また、新株予約権等も対象に含められる可能性があるため、資本構成を一括して整理しやすいことがあります。
一方で、90%要件を満たさないと使えません。さらに、対価が不当である、情報開示が不十分である、手続が法令に違反しているといった場合には、少数株主から差止めや価格決定申立てを受ける可能性があります。
株式併合によるスクイーズアウト
株式併合によるスクイーズアウトは、株式を一定割合で併合し、少数株主の保有株式が1株未満の端数だけになるように設計したうえで、端数処理により金銭を交付して株主でなくする方法です。
たとえば、大株主が900株、少数株主が10株、5株、3株を保有している会社で、100株を1株に併合すると、少数株主には1株未満の端数だけが生じます。端数株式はそのまま株主権を行使できないため、端数処理によって金銭交付の対象になります。
90%未満でも検討できることがある
株式併合は、株式等売渡請求と異なり、90%以上の議決権を前提とする制度ではありません。株主総会の特別決議を通せる議決権割合があれば、90%未満でも検討できることがあります。そのため、TOBで90%に届かなかった場合や、非上場会社で3分の2以上の議決権を確保している場合に候補になります。
もっとも、株式併合は少数株主の地位に大きな影響を与えるため、併合比率、端数処理、対価算定、説明資料、株主総会手続を慎重に設計する必要があります。
反対株主の株式買取請求に注意する
株式併合により1株未満の端数が生じる場合、反対株主には株式買取請求権が認められます。反対株主が、株主総会に先立って反対通知を行い、株主総会で反対したうえで、所定期間内に請求する必要があります。
会社側は、反対通知の有無、議決権行使、請求期間、価格協議、裁判所への価格決定申立ての可能性を管理しなければなりません。特に非上場株式では市場価格がないため、純資産方式、DCF方式、類似会社比較、配当還元などの算定方法をどう使うかが争点になりやすいです。
非上場会社での注意点
非上場会社の株式併合では、少数株主が会社の情報を十分に入手できないことがあります。そのため、価格算定資料、会社の事業計画、過去の取引価格、配当状況、純資産、税務上の株価などを整理し、なぜその対価が公正といえるのかを説明できる状態にしておくことが重要です。
株式併合は、形式上は株式数をまとめる手続ですが、スクイーズアウト目的で使う場合は少数株主の退出を伴います。単に特別決議を通せるという理由だけで進めると、価格や手続の公正性を争われるリスクがあります。
全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウト
全部取得条項付種類株式とは、会社が株主総会決議により、その種類の株式の全部を取得できる内容の種類株式です。スクイーズアウトでは、普通株式に全部取得条項を付す定款変更を行い、その全部取得条項付種類株式を会社が取得し、少数株主に金銭等の対価を交付する方法が用いられてきました。
手続が重い
全部取得条項付種類株式を用いる場合、定款変更、種類株主総会、全部取得に関する決議、通知・公告、事前備置書類、取得価格決定申立てへの対応など、多くの手続が必要になります。既に種類株式がある会社では、種類株主総会や種類株主ごとの影響も確認する必要があります。
取得価格について不服がある株主は、所定期間内に裁判所へ取得価格決定の申立てをすることがあります。そのため、価格算定と手続公正性の準備は不可欠です。
現在の実務上の位置づけ
現在は、90%以上を取得できる場合は株式等売渡請求、90%未満の場合は株式併合を検討することが多く、全部取得条項付種類株式は以前より利用場面が限定されています。もっとも、過去の上場会社のMBO・非公開化で重要な裁判例が蓄積しており、現在でも価格・公正手続を考えるうえで参考になります。
特に、TOBとその後のキャッシュアウトを組み合わせる二段階取引では、最初のTOB価格と二段階目の取得価格を同額とする設計が多く、手続が一般に公正といえるかが重要な判断要素になります。
株式交換・株式移転等による完全子会社化
スクイーズアウトは、株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式だけでなく、株式交換などの組織再編手法と組み合わせて行われることもあります。
株式交換による完全子会社化
株式交換は、既存の会社が完全親会社となり、対象会社の発行済株式の全部を取得する組織再編手法です。対象会社を完全子会社化したい場合に利用されます。株式交換の基本は、株式交換とは|完全子会社化の仕組み・手続・メリット・デメリットで解説しています。
株式交換では、反対株主の株式買取請求、新株予約権、種類株式、対価の種類、税務・会計、開示手続が問題になります。既存会社を親会社にするのか、新設持株会社を使うのかは、株式交換と株式移転の違い|完全子会社化・持株会社化の使い分けも参考になります。
株式移転は持株会社化の手法
株式移転は、新しく設立する持株会社に既存会社の発行済株式の全部を取得させる手法です。スクイーズアウトそのものというより、持株会社化や共同経営統合の文脈で、既存株主の株式を新設親会社株式に置き換える手法として検討されます。
組織再編を使う場合は、少数株主に金銭で退出してもらうのか、親会社株式を交付するのか、税務上の適格性をどう扱うのかによって、設計が大きく変わります。
スクイーズアウト手続の進め方
スクイーズアウトは、会社法上の手続だけを順に処理すれば足りるものではありません。プロジェクトの初期段階で、株主構成、価格、手続、公正性、税務、開示、紛争対応を一体で設計する必要があります。
株主構成と議決権割合を確認する
最初に確認すべきなのは、株主名簿と議決権割合です。普通株式だけでなく、種類株式、新株予約権、自己株式、単元未満株式、議決権制限株式、名義株、所在不明株主、相続未了株式の有無を確認します。
90%以上で株式等売渡請求が使えるのか、3分の2以上で株式併合等を検討するのか、任意買取を先行すべきかは、この確認結果で大きく変わります。
スキームを選定する
次に、株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換、任意買取、自己株取得などを比較します。選定では、持株比率だけでなく、株主総会を開けるか、反対株主がどの程度いるか、価格算定資料を用意できるか、いつまでに完全子会社化したいかを確認します。
価格算定と公正手続を設計する
スクイーズアウトで最も争われやすいのは価格です。会社側は、第三者算定機関の株式価値算定書、特別委員会、独立役員の関与、利益相反排除、情報開示、少数株主への説明を検討します。
MBOや支配株主による完全子会社化では、買い手側が安く取得したい一方、少数株主は高い価格を求めるため、構造的な利益相反が生じます。価格そのものだけでなく、価格がどのような手続で形成されたかを説明できることが重要です。
決議・通知・公告・備置書類を準備する
採用する手法に応じて、取締役会決議、株主総会決議、種類株主総会、通知、公告、事前備置書類、株主リスト、議決権行使書面、委任状、登記書類、対価支払資料を準備します。上場会社では適時開示、公開買付届出書、意見表明報告書、フェアネス・オピニオン、証券取引所対応も問題になります。
反対株主・価格申立てに対応する
手続中又は手続後に、少数株主から差止め、株式買取請求、売買価格又は取得価格の決定申立て、決議取消し、損害賠償請求を受けることがあります。会社側は、申立期間、必要書類、裁判所対応、仮払額、利息、証拠提出を想定しておく必要があります。
クロージングと株主名簿整理を行う
取得日又は効力発生日には、対価の支払、株主名簿の書換え、端数処理、振替株式の処理、登記、開示、会計処理、税務処理を実行します。非上場会社では、株券発行会社かどうか、株券不所持制度、名義株、相続人代表、所在不明株主への対応も確認します。
価格・公正性・裁判例のポイント
スクイーズアウトでは、最終的に「少数株主にいくら支払うべきか」が争点になりやすいです。価格は、単に会社側が決めればよいものではなく、公正な価格又は適正な売買価格として説明できる必要があります。
価格算定では複数の方法を検討する
株式価値の算定方法には、DCF法、類似会社比較法、類似取引比較法、時価純資産法、配当還元法、過去取引価格、税務上の評価額などがあります。上場会社では市場株価やTOBプレミアムが重要な指標になりますが、非上場会社では市場株価がないため、複数の算定方法と前提条件を検討する必要があります。
少数株主に対しては、算定方法、事業計画、割引率、非流動性ディスカウント、マイノリティ・ディスカウント、シナジーの分配、対価の支払時期をどう説明するかが重要です。
公正な手続は価格判断にも影響する
スクイーズアウトの価格紛争では、裁判所は価格算定式だけでなく、取引条件がどのような手続で形成されたかも重視します。特に、支配株主や経営陣が買い手になる場面では、利益相反を排除するための手続が重要です。
最高裁平成28年7月1日決定は、TOB後に全部取得条項付種類株式を取得する二段階取引について、独立した第三者委員会や専門家の意見聴取、TOBに応募しなかった株主も同額で取得する旨の明示など、一般に公正と認められる手続がある場合には、取引の基礎事情に予期しない変動がない限り、公開買付価格と同額を取得価格とするのが相当と判断しました。
この考え方は、スクイーズアウト全般で「価格だけでなく、手続の公正性を整えるべき」という実務上の重要な示唆を与えます。特別委員会、独立した算定機関、十分な開示、少数株主の判断機会を整えておくことは、紛争予防にもつながります。
売渡請求の申立権者・期限にも注意する
最高裁平成29年8月30日決定は、株式等売渡請求について、会社法上の通知又は公告がされた後に売渡株式を譲り受けた者は、売買価格決定の申立てをすることができないと判断しました。売買価格決定の申立制度は、通知又は公告の時点で意思にかかわらず株式を売り渡すことになる株主に、適正な対価を得る機会を与える制度と位置付けられています。
この点からも、会社側・少数株主側の双方で、基準時、株式取得時期、株主名簿、振替株式、個別株主通知、申立期間を厳格に確認する必要があります。
少数株主側の対応
スクイーズアウトを受ける少数株主側は、手続を止めるのか、価格を争うのか、交渉で売却するのかを早期に判断する必要があります。期限を過ぎると、使える手段が大きく制限されることがあります。
差止めを検討する
法令違反、手続違反、対価の著しい不当、情報開示の不足などがある場合、一定の要件のもとで差止めを検討することがあります。ただし、差止めは迅速な対応が必要であり、取得日・効力発生日が近い場合は仮処分などの準備も必要になります。
価格決定・株式買取請求を検討する
少数株主が「手続自体は止められないが、対価が低すぎる」と考える場合、売買価格決定申立て、取得価格決定申立て、株式買取請求などを検討します。どの制度を使えるかは、株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換など、採用された手法によって異なります。
非上場株式の買取・価格交渉の実務イメージは、少数株主の株式買取請求に対応した解決事例も参考になります。
期限と証拠を管理する
少数株主側では、会社から届いた通知、公告、株主総会招集通知、説明資料、算定書、議決権行使書面、反対通知、配達証明、株式取得時期を整理します。スクイーズアウト関連の申立ては期間制限が厳しいため、通知を受けた時点で期限表を作ることが重要です。
少数株主が価格を争う場合、「安すぎると思う」という主張だけでは足りません。会社の財務資料、過去取引価格、算定方法、手続の公正性、利益相反の有無、情報開示の内容を踏まえて、どの点が不合理かを具体的に整理する必要があります。
スクイーズアウトで確認すべきチェックリスト
会社側でスクイーズアウトを検討する場合は、少なくとも次の事項を確認します。
- 株主名簿、議決権割合、種類株式、新株予約権、自己株式を確認したか
- 90%以上の特別支配株主に該当するか、3分の2以上の特別決議を通せるかを確認したか
- 任意買取、自己株取得、株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換を比較したか
- 少数株主との交渉経緯、価格提示、情報提供の記録を残しているか
- 第三者算定機関、特別委員会、独立役員の関与など公正手続を検討したか
- 株主総会・種類株主総会・取締役会・通知・公告・備置書類の要否を整理したか
- 反対株主の株式買取請求、売買価格決定申立て、取得価格決定申立ての期限を管理しているか
- 非上場会社では、純資産、事業計画、配当、過去取引、税務評価などの算定資料を整理したか
- 上場会社では、TOB価格、プレミアム、適時開示、フェアネス・オピニオン、特別委員会答申を整理したか
- 取得日・効力発生日後の対価支払、株主名簿、登記、会計・税務処理を確認したか
スクイーズアウトは、M&Aのスキーム選択の一部として検討されることも多いです。株式譲渡、株式交換、会社分割などとの比較は、M&Aの種類・手法(スキーム)|株式譲渡・事業譲渡・組織再編の違いと選び方も参考になります。
よくある質問
スクイーズアウトとは簡単にいうと何ですか?
少数株主の株式を、会社法上の手続により金銭等の対価へ転換し、株主構成から外す方法です。完全子会社化、MBO、非公開化、事業承継、分散株式の集約で使われます。
スクイーズアウトには90%の議決権が必要ですか?
株式等売渡請求を使う場合は、原則として90%以上の議決権を有する特別支配株主である必要があります。ただし、株式併合や全部取得条項付種類株式を使う場合、90%未満でも株主総会特別決議を通せる議決権割合があれば検討できることがあります。
少数株主はスクイーズアウトを止められますか?
手続違反、法令違反、対価の著しい不当、情報開示の不足などがある場合、差止めを検討できることがあります。ただし、要件や期限が厳しく、取得日・効力発生日までの時間が短いことが多いため、早期対応が必要です。
少数株主は価格を争えますか?
採用された手法に応じて、売買価格決定申立て、取得価格決定申立て、株式買取請求などを検討できます。いずれも期間制限があるため、通知・公告・招集通知を受けた時点で期限を確認する必要があります。
非上場会社でもスクイーズアウトはできますか?
非上場会社でも、議決権割合や株主総会決議などの要件を満たせば検討できます。ただし、市場株価がないため、株価算定と少数株主への説明、公正な手続、株主名簿・名義株・相続未了株式の確認が特に重要です。
株式併合と全部取得条項付種類株式はどちらを使うべきですか?
現在の実務では、90%に届かない場合のスクイーズアウトとして株式併合が検討されることが多いです。全部取得条項付種類株式は手続が重く、種類株式や定款変更を伴うため、特殊な事情がある場合に検討されます。最終判断は株主構成、種類株式、対価設計、スケジュール、紛争リスクによります。
TOB後にスクイーズアウトする場合、TOB価格と同額でよいですか?
多くの二段階買収では、TOBに応募しなかった株主にもTOB価格と同額を交付する設計が用いられます。ただし、常に当然に同額でよいわけではなく、TOB価格の形成過程、利益相反排除、情報開示、特別委員会、取引後の事情変更などを踏まえて、公正な手続があったかが重要になります。
スクイーズアウトにはどのくらいの期間がかかりますか?
手法により異なります。株式等売渡請求は比較的短期で進めやすい一方、株式併合や全部取得条項付種類株式では株主総会、通知・公告、反対株主対応、端数処理、登記などが必要になり、数か月以上かかることがあります。上場会社のTOB後であれば、TOB期間や開示手続も含めてスケジュールを組みます。
まとめ
- スクイーズアウトは、少数株主の株式を会社法上の手続で整理し、完全子会社化や株主集約を実現する手法
- 90%以上なら株式等売渡請求、90%未満なら株式併合、特殊な場合は全部取得条項付種類株式や株式交換を検討する
- TOB後完全子会社化、MBO、非公開化、事業承継、分散株式集約で利用される
- 少数株主の財産権に関わるため、価格算定と公正な手続が重要になる
- 通知・公告、反対通知、株式買取請求、価格決定申立てには厳格な期限がある
スクイーズアウトは、株主構成を整理し、完全子会社化や事業承継を実現するための有力な手法です。しかし、少数株主の同意なしに株主の地位を失わせるため、会社法上の手続、公正な価格、利益相反排除、情報開示を慎重に整える必要があります。
会社側では、株主名簿と議決権割合を確認したうえで、任意買取、株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換のどれを使うかを比較します。少数株主側では、通知を受けたら期限を確認し、差止め、価格決定、交渉のいずれを選ぶかを早期に判断することが重要です。
坂尾陽弁護士
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