情報公開法に基づく企業情報の開示請求・開示決定への対応|意見照会・反対意見書

情報公開法に基づく行政文書開示請求では、企業が行政機関に提出した資料、報告書、申請書類、入札・補助金関係資料、技術資料、行政調査・行政処分に関する資料などが、第三者からの開示請求の対象になることがあります。

情報公開法は、行政機関が保有する情報を広く公開し、行政の説明責任を果たすための制度です。一方で、開示対象となる文書に企業の営業情報や技術情報が含まれる場合、企業側では、情報公開制度の趣旨を踏まえつつ、守るべき情報を期限内に具体的に主張する必要があります。

この記事では、請求者側の一般的な情報公開請求方法ではなく、企業が第三者として情報公開請求・開示決定に対応する場面に絞って、意見照会書、反対意見書、法人情報・営業秘密、開示決定後の争訟、国・独立行政法人・自治体条例の違いまでを横断的に整理します。

  • 企業が行政機関に提出した資料も、行政文書として開示請求の対象になり得ます。
  • 意見照会書が届いたら、根拠法令・期限・対象文書・開示予定部分を最初に確認します。
  • 不開示を求めるには、営業秘密や社外秘という表示だけでなく、具体的な不利益の説明が必要です。
  • 反対意見書では、文書・ページ・記載部分ごとに、開示されると何が推知されるかを整理します。
  • 開示決定後は時間が限られるため、審査請求・取消訴訟・執行停止を早急に検討します。

坂尾陽弁護士

情報公開請求への企業側対応では、「制度を理解すること」と「期限内に守るべき情報を具体化すること」の両方が重要です。まずは、自社がどの段階にいるのかを確認しましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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情報公開法で企業情報が問題になる場面

行政機関の保有する情報の公開に関する法律は、行政文書の開示請求権を定める法律です。行政機関が職務上作成・取得し、組織的に用いるものとして保有している文書、図画、電磁的記録などは、開示請求の対象になり得ます。

企業側で問題になりやすいのは、自社が行政機関に提出した資料が、行政機関内部で保有・利用されている場面です。たとえば、許認可申請、補助金申請、入札・技術提案、行政調査への回答、行政処分に関する資料、環境・エネルギー関係の報告、共同研究資料などが考えられます。

情報公開法は、行政機関が保有する行政文書を原則として開示する制度です。そのため、企業が「自社で作った資料だから開示されない」「社外秘と書いてあるから必ず不開示になる」と考えるのは危険です。行政機関が保有する文書となっている以上、開示請求の対象になり、不開示情報に当たるかどうかを個別に判断されます。

請求者側の制度解説ではなく、第三者企業側の対応が重要

検索結果では、情報公開法について、請求者がどのように開示請求をするか、請求書をどこへ出すか、手数料はいくらかといった制度説明が多く見られます。しかし、企業側で重要なのは、開示請求そのものの手続を知ることだけではありません。

自社情報が含まれる行政文書について開示請求がされた場合、企業は、第三者意見照会、反対意見書、部分開示・マスキング、開示決定後の不服申立て・訴訟といった流れの中で対応することになります。この記事では、この第三者企業側の対応を中心に扱います。

発信者情報開示請求・個人情報開示請求・証券開示とは別の問題

「情報開示」「開示請求」という言葉は、インターネット投稿者の発信者情報開示請求、本人が自己情報を求める保有個人情報開示請求、上場会社の証券開示・適時開示などでも使われます。

しかし、行政文書開示請求における企業側対応は、これらとは根拠法令、当事者、判断基準、手続期限が異なります。行政機関から届いた書面を読むときは、まず、情報公開法、独立行政法人等情報公開法、自治体の情報公開条例など、どの根拠に基づく手続なのかを確認する必要があります。


企業側対応の全体像

情報公開法に基づく企業側対応では、現在の段階に応じて、確認すべき書面と取るべき対応が変わります。入口段階で制度全体を確認したいのか、意見照会書が届いて期限対応が必要なのか、反対意見書を作成する段階なのか、開示決定後に止める必要があるのかを分けて整理しましょう。

段階 企業側で起こること 主な対応 詳しい記事
開示請求の入口 自社提出資料が行政文書として問題になる どの資料が対象になり得るかを把握する 行政文書開示請求とは
第三者意見照会 意見照会書・意見書提出機会付与の通知が届く 期限、対象文書、開示予定部分、根拠法令を確認する 意見照会書が届いた企業の初動対応
反対意見書 開示に反対する理由を行政機関へ提出する 不開示理由、マスキング案、疎明資料を整理する 反対意見書の書き方
不開示理由の整理 法人情報、営業秘密、任意提供情報などを検討する 開示による具体的不利益と推知可能性を説明する 情報公開法5条2号の法人情報・営業秘密とは
開示決定後 反対意見書を出しても開示決定がされる 審査請求、取消訴訟、執行停止を検討する 開示決定後の審査請求・取消訴訟・執行停止
適用法令の確認 国、独立行政法人、自治体で根拠が異なる 通知書の根拠法令・条例、期限、様式を確認する 国の情報公開法・独立行政法人情報公開法・自治体条例の違い

入口段階では「どの資料が行政文書になるか」を把握する

企業が行政機関に提出した資料は、提出した瞬間にすべて公開されるわけではありません。しかし、行政機関が職務上取得し、組織的に用いるものとして保有している場合、開示請求の対象になる可能性があります。

自社の資料がどのような場面で行政文書開示請求の対象になり得るかを確認したい場合は、行政文書開示請求とは|企業が提出した資料が開示対象になる場面で詳しく整理しています。

意見照会段階では期限と対象文書を最優先する

第三者意見照会書が届いた段階では、まだ開示が確定していないことがあります。この段階で重要なのは、書面に記載された回答期限、対象文書、開示予定部分、行政機関の担当部署、根拠法令・条例を確認することです。

期限管理や初動の確認項目は、情報公開法の意見照会書が届いた企業の初動対応で詳しく解説しています。

反対意見書段階では不利益を文書ごとに具体化する

反対意見書では、単に「開示に反対する」「営業秘密である」と書くだけでは足りません。行政機関が判断しやすいように、文書・ページ・記載部分ごとに、どの不開示事由に当たるのか、開示されるとどのような不利益が生じるのかを整理します。

反対意見書の構成、添付資料、マスキング案は、反対意見書の書き方|企業情報の不開示を求める資料整理で詳しく確認できます。

開示決定後は開示実施日前の対応が中心になる

反対意見書を提出しても、行政機関が開示決定をすることがあります。この場合、企業側では、開示実施日までに、審査請求、取消訴訟、執行停止の要否を判断する必要があります。

開示決定後の対応は時間的余裕が少ないため、開示決定後に企業が取るべき審査請求・取消訴訟・執行停止で、通知書の読み方と緊急対応を確認してください。


企業が提出した資料が開示対象になる典型例

情報公開法対応で問題になりやすい資料は、行政機関との関係がある限られた業種だけに限られません。許認可、補助金、入札、行政調査、報告義務、行政処分、共同研究など、行政機関に資料を提出する場面がある企業では、開示請求への対応が必要になることがあります。

資料の例 開示請求で問題になりやすい情報 企業側の確認ポイント
許認可申請書・届出書 事業内容、設備、運用体制、担当者、添付資料 公表済み情報と非公表の営業・技術情報を分ける
補助金・助成金資料 事業計画、収支計画、技術概要、実績報告 採択情報として公表される部分と詳細資料を切り分ける
入札・技術提案資料 提案手法、原価、積算、協力会社、実施体制 競業者が利用できる情報かを具体的に整理する
行政調査への回答 事故原因、社内管理、取引先、改善計画 行政処分・安全・公益に関わる情報とのバランスを確認する
環境・エネルギー報告 使用量、効率、設備稼働、製造工程に関する情報 数値から原価や技術水準が推知されるかを検討する
契約書・覚書・協定書 価格、契約条件、履行体制、秘密保持条項 相手方名や金額だけでなく、条件全体からの推知可能性を見る

行政機関に提出した時点で「公開前提」になるわけではない

企業が行政機関に提出した資料であっても、不開示情報に該当する部分があれば、その部分について不開示又は部分開示が問題になります。重要なのは、資料全体をまとめて「秘密」と扱うのではなく、開示してよい部分、マスキングすべき部分、全面的に争うべき部分を分けることです。

行政機関側の審査基準でも、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合、区分して除くことができるときは、不開示情報部分を除いて開示するという考え方が示されています。企業側でも、全面不開示だけでなく、部分開示・マスキング案を現実的に検討する必要があります。

提出前から情報管理をしておくことも重要

情報公開請求への対応は、意見照会書が届いてから始まるものですが、実務上は、行政機関へ提出する前の情報管理も重要です。提出資料に非公表情報が含まれる場合は、どの部分が営業秘密・技術情報・取引先情報なのか、行政機関にどのような条件で提供するのか、後から説明できるようにしておく必要があります。

もっとも、非公開表示を付けただけで、情報公開法上当然に不開示になるわけではありません。表示や秘密管理は補助事情にとどまり、最終的には、法令・条例上の不開示事由に当たるかどうかが問題になります。


不開示を求める中心論点は法人情報・営業秘密・部分開示

企業側が不開示を求める際に中心となるのは、情報公開法5条2号の法人情報です。特に、法人等に関する情報のうち、公にすることにより権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものに当たるかが重要です。

厚生労働省の判断基準でも、5条2号イの「競争上の地位」は公正な競争関係における地位を指し、「その他正当な利益」はノウハウや信用など法人等の運営上の地位を広く含むものとされています。また、「害するおそれ」の判断では、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められるとされています。

そのため、反対意見書では、抽象的に「競争上不利になる」と書くだけではなく、どの情報が公開されると、競業者、取引先、需要者、供給者、報道機関、周辺住民などが何を把握でき、どのような不利益が生じるのかを説明する必要があります。法人情報・営業秘密の整理は、情報公開法5条2号の法人情報・営業秘密とはで詳しく解説しています。

情報の種類 反対意見書で整理すべきこと 注意点
原価・価格・積算情報 価格交渉、入札、取引条件にどのように影響するか 金額単体ではなく、組合せで何が推知されるかを見る
技術情報・ノウハウ 製造方法、設備、品質管理、効率性が推知されるか 特許公報や公表資料との差分を確認する
取引先・協力会社情報 調達先、販売先、協力体制が競業者に利用されるか 既に公表されている取引関係かを確認する
事業計画・補助金資料 将来戦略、投資計画、収益見通しが明らかになるか 採択概要と詳細計画を分けて検討する
行政処分・事故対応資料 信用低下や取引影響だけでなく公益性も検討する 安全・環境・住民利益が絡むと開示方向に働き得る

営業秘密と情報公開法上の不開示情報は同じではない

企業側では「営業秘密だから開示できない」と説明したくなる場面があります。しかし、不正競争防止法上の営業秘密と、情報公開法5条2号の不開示情報は、重なる部分はあっても同一ではありません。

情報公開法上は、行政文書に記録された情報が、法令・条例上の不開示情報に当たるかが問題になります。営業秘密として管理している事情は重要ですが、それだけで足りるわけではなく、開示による具体的な不利益や推知可能性を説明する必要があります。

裁判例では「何が推知されるか」が重視される

最高裁平成23年10月14日判決では、工場単位の燃料・電気使用量などの数値情報について、これが公にされることにより、エネルギーコスト、製造原価、省エネルギー技術水準、価格交渉材料などが推知され得る点が問題となりました。

この考え方は、反対意見書を作成する際にも参考になります。企業側では、「この情報自体を知られたくない」だけでなく、「この情報が開示されると、どの情報が推知され、誰がどのように利用できるか」を具体化することが重要です。


意見照会書が届いたときの初動対応

第三者意見照会書が届いたら、最初に期限を確認します。社内で内容確認や資料収集をしているうちに回答期限を過ぎると、反対理由やマスキング案を行政機関に十分伝えられないまま、開示・不開示の判断が進むおそれがあります。

注意

意見照会書が届いた段階で、まだ開示が確定していない場合でも、期限を過ぎると企業側の主張を十分に反映してもらう機会を失うおそれがあります。書面を受け取った部署だけで抱え込まず、法務・総務・事業部門へ早めに共有してください。

初動では、次の項目を確認します。

  • 発出機関と担当部署:国の行政機関、独立行政法人、自治体のどこから届いたかを確認します。
  • 根拠法令・条例:情報公開法、独立行政法人等情報公開法、自治体条例のどれに基づく手続かを確認します。
  • 回答期限:書面到達日、社内受領日、提出期限、延長相談の余地を確認します。
  • 対象文書:どの申請書、報告書、契約書、技術資料、添付資料が対象かを特定します。
  • 開示予定部分:全面開示なのか、一部開示なのか、マスキング予定部分があるのかを確認します。

意見照会書が届いた後の具体的な初動フローは、情報公開法の意見照会書が届いた企業の初動対応で詳しく解説しています。

行政機関への確認は、主張の方向性を決める前に行う

対象文書の範囲や開示予定部分が不明確なまま反対意見書を作成すると、重要部分を落としたり、不要な部分に時間を使ったりするおそれがあります。必要に応じて、行政機関の担当者に、対象文書の特定、請求内容、開示予定部分、提出すべき資料、期限延長の可否を確認します。

ただし、行政機関への連絡では、感情的に抗議するのではなく、開示・不開示判断に必要な資料を整理するための確認として行うことが重要です。やり取りの内容は、後日の争訟や社内説明に備えて記録しておきます。

社内ヒアリングでは文書の作成経緯まで確認する

反対理由を整理するには、法務部門だけで対象文書を読むのでは足りないことがあります。作成部署、提出部署、営業部門、技術部門、経理部門などに確認し、文書の作成目的、提出経緯、非公表部分、公表済み情報との差分、競業者に知られた場合の影響を把握します。

特に、数値情報、取引条件、技術提案、原価・積算、協力会社情報などは、当該部署でなければ推知可能性や競争上の不利益を説明しにくいことがあります。反対意見書の説得力は、社内ヒアリングの具体性に左右されます。


反対意見書で整理すべき内容

反対意見書では、開示に反対する意思と理由を、行政機関が判断できる形で示します。単に「開示しないでください」と書くのではなく、対象文書、対象部分、不開示事由、開示による不利益、部分開示・マスキング案、添付資料を整理します。

国の情報公開法13条では、第三者に関する情報が記録された行政文書について、行政機関が第三者に意見書提出の機会を与える手続が定められています。開示に反対する意見書を提出したにもかかわらず開示決定がされる場合には、その第三者に通知され、開示決定日と開示実施日の間に一定の期間が置かれます。

項目 記載する内容 弱い記載例
対象文書・対象部分 文書名、ページ、項目、行、表、添付資料を特定する 資料全体が秘密です
不開示事由 法人情報、個人情報、任意提供情報、事務事業支障などを整理する 社外秘なので出せません
具体的不利益 開示されると誰が何を推知し、どの不利益が生じるかを書く 競争上不利になります
疎明資料 公表状況、社内管理、取引実態、技術資料、契約条件などを示す 秘密管理しています
マスキング案 開示可能部分と不開示部分を分けて提案する 全面不開示のみを求める

反対意見書の書き方は、反対意見書の書き方|企業情報の不開示を求める資料整理で、具体的な構成と資料整理の観点を説明しています。

全面不開示だけでなく、部分開示・マスキング案を検討する

企業側としては、資料全体の不開示を求めたい場面があります。しかし、行政機関は、文書の一部に不開示情報が含まれる場合でも、その部分を除いて開示できるかを検討します。そのため、全面不開示にこだわるだけでなく、どの部分であれば開示可能か、どの部分はマスキングすべきかを具体的に提案することが有効です。

マスキング案を示すと、行政機関に対して、企業側が情報公開制度を踏まえて現実的な提案をしていることを伝えやすくなります。また、後に開示決定を争う場合にも、企業側がどの部分をどの理由で争っていたかを明確にできます。


開示決定が出た後の審査請求・取消訴訟・執行停止

反対意見書を提出しても、行政機関が開示決定をすることがあります。この段階では、企業側の関心は「開示決定が不当である」と主張するだけでなく、実際に開示実施を止められるかに移ります。

開示決定に対しては、審査請求や取消訴訟を検討することがあります。ただし、審査請求や取消訴訟をしただけで、当然に開示実施が止まるわけではありません。開示実施日前に情報が請求者へ渡ると、営業秘密や取引情報の性質上、後から完全に回復することが難しい場合があります。

そのため、開示を止める必要がある場合は、執行停止の申立てを含めた緊急対応を検討します。詳しくは、開示決定後に企業が取るべき審査請求・取消訴訟・執行停止で解説しています。

開示決定通知で確認すべき事項

開示決定通知が届いたら、次の事項を直ちに確認します。

  • 開示決定日:審査請求や取消訴訟の期限管理に関わります。
  • 開示実施日:実際に情報が開示される前に対応するための最重要日です。
  • 開示対象部分:反対意見書で争った部分がどの範囲で開示されるのかを確認します。
  • 不開示とされた部分:一部は守られている場合、争う範囲を絞ります。
  • 理由付け:行政機関がなぜ開示可能と判断したのかを確認します。

開示されると回復困難な不利益を具体的に説明する

執行停止を検討する場合、企業側では、開示されるとどのような損害が生じ、それが後から金銭賠償や信用回復だけでは十分に回復できないのかを具体的に整理する必要があります。

たとえば、原価構造が競業者に知られる、入札戦略が推知される、取引先との価格交渉に利用される、未公表の技術水準や設備能力が明らかになる、行政処分関係資料が文脈を離れて利用され信用毀損が広がる、といった不利益が考えられます。抽象的な信用低下だけでなく、情報の性質と利用可能性を結び付けて説明することが重要です。


国の情報公開法・独立行政法人情報公開法・自治体条例の違い

企業が受け取る通知書には、国の行政機関に関する情報公開法だけでなく、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律や、自治体の情報公開条例が根拠として記載されていることがあります。

たとえば、国の省庁に提出した資料であれば国の情報公開法、独立行政法人や国立大学法人に提出した資料であれば独立行政法人等情報公開法、都道府県・市区町村に提出した資料であれば各自治体の情報公開条例が問題になります。

基本的な考え方には共通点がありますが、条番号、様式、期限、担当窓口、審査会への諮問手続、開示実施までの運用などは異なることがあります。国・独立行政法人・自治体条例の切り分けは、国の情報公開法・独立行政法人情報公開法・自治体条例の違いで詳しく整理しています。

通知書の根拠法令・条例を最初に確認する

同じ「意見照会書」「開示決定通知」という名称でも、根拠法令・条例が異なれば、確認すべき条文、提出様式、期限、連絡先が変わることがあります。自治体条例では、条例名や実施機関、第三者意見照会の様式、回答期限が自治体ごとに異なることもあります。

そのため、対応の最初に、通知書の表題だけでなく、根拠法令・条例、条番号、担当部署、問い合わせ先を確認します。過去に別の行政機関で対応した経験があっても、同じ様式・期限であるとは限りません。


企業が情報公開請求に備えて平時から整理しておくこと

情報公開請求への対応は、通知書が届いてから短期間で行う必要があります。そのため、行政機関に資料を提出する企業では、平時から、どの資料にどのような非公表情報が含まれるのかを整理しておくことが重要です。

平時の整理項目 目的 実務上のポイント
提出資料一覧 どの行政機関に何を提出したかを把握する 申請、報告、補助金、入札、調査回答を部署横断で管理する
非公表情報のマーキング 意見照会時に重要部分を早く特定する 社外秘表示だけでなく、理由を簡単に残す
公表済み情報との差分 不開示主張の説得力を高める プレスリリース、IR、Webサイト、特許公報等との違いを確認する
提出経緯・条件 任意提供情報や行政機関との合意を確認する 非公開条件や提出依頼のメールを保存する
社内連絡ルート 期限内対応を可能にする 総務・法務・事業部門・広報・経営層の役割を決める

行政提出資料の保存場所を部署任せにしない

行政機関に提出した資料は、事業部門、総務、法務、経理、広報など複数部署に分散していることがあります。意見照会書が届いてから対象文書の控えを探すと、期限内に十分な確認ができないおそれがあります。

特に、補助金・入札・許認可・行政調査関係の資料は、提出時の最終版、添付資料、修正履歴、行政機関とのメール、非公開条件の有無を含めて整理しておくと、開示請求対応がしやすくなります。

秘密管理と情報公開対応を分けて考える

企業内で営業秘密として管理している情報であっても、情報公開法上当然に不開示になるわけではありません。他方で、秘密管理の実態、公表状況、アクセス制限、取引上の重要性は、不開示を求める際の重要な補助事情になります。

平時から、社内の営業秘密管理と、行政機関に提出した資料の管理をつなげておくことで、意見照会時に「なぜ守る必要がある情報なのか」を具体的に説明しやすくなります。


よくある質問

情報公開法では企業の資料も開示されますか

企業が作成した資料であっても、行政機関が職務上取得し、組織的に用いるものとして保有している場合、行政文書として開示請求の対象になり得ます。ただし、法人情報、個人情報、任意提供情報などの不開示情報に当たる部分は、不開示又は部分開示が問題になります。

意見照会書を無視するとどうなりますか

意見照会書を無視したからといって、直ちに制裁があるとは限りません。しかし、行政機関に対して、開示に反対する理由、マスキング案、具体的不利益を伝える機会を失うおそれがあります。開示に反対したい場合は、期限内に対応することが重要です。

反対意見書を出せば必ず不開示になりますか

反対意見書を提出しても、行政機関が開示決定をすることはあります。反対意見書は、行政機関の判断材料になる書面であり、提出すれば当然に不開示になるものではありません。だからこそ、対象部分ごとに不開示理由と具体的不利益を整理する必要があります。

社外秘や営業秘密と書いておけば足りますか

社外秘表示や営業秘密としての管理は重要な事情ですが、それだけで情報公開法上の不開示が認められるとは限りません。開示により、どのような競争上・営業上の不利益が生じるのか、誰がどのように利用できる情報なのかを具体的に説明する必要があります。

開示決定後でも止められる可能性はありますか

開示決定後でも、審査請求、取消訴訟、執行停止などを検討する余地があります。ただし、開示実施日までの時間は限られます。開示されると回復困難な不利益がある場合は、通知書、対象文書、反対意見書、疎明資料を早急に整理する必要があります。


まとめ

情報公開法に基づく企業情報の開示請求・開示決定への対応では、制度の一般論を理解するだけでなく、自社がどの段階にいるのかを見極め、期限内に必要な資料を整理することが重要です。

  • 企業が行政機関に提出した資料は、行政文書として開示請求の対象になり得ます。
  • 意見照会書が届いたら、根拠法令、期限、対象文書、開示予定部分を確認します。
  • 不開示を求めるには、営業秘密や社外秘ではなく、具体的不利益を文書ごとに整理します。
  • 反対意見書では、部分開示・マスキング案と疎明資料をセットで検討します。
  • 開示決定後は、開示実施日前に審査請求・取消訴訟・執行停止を検討します。

情報公開請求への対応は、対象文書と期限によって進め方が大きく変わります。通知書が届いた場合は、まず対象文書を確認し、守るべき情報と開示してよい情報を切り分けた上で、反対意見書や争訟対応の要否を検討しましょう。

坂尾陽弁護士

情報公開請求は、放置しても自然に解決する問題ではありません。企業情報を守る必要がある場合は、対象文書、期限、開示予定部分を確認し、早めに対応方針を決めることが大切です。

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