行政機関や自治体から「意見照会書」「第三者意見照会書」「第三者に対する意見書提出の機会の付与」といった書面が届いた場合、自社が過去に提出した資料や報告書、申請書類、入札資料、補助金関係資料などについて、情報公開請求がされている可能性があります。
この書面は、インターネット投稿者に届く発信者情報開示請求の意見照会書とは別の問題です。ここでは、情報公開法・行政文書開示請求・公文書開示請求に関する企業側の初動対応に絞って解説します。
- まず、発出機関、根拠法令・条例、回答期限、対象文書、開示予定部分を確認します。
- 無視すると、反対理由やマスキング案を行政機関に伝える機会を逃すおそれがあります。
- 反対意見書では、文書・記載部分ごとに、開示により生じる具体的な不利益を整理します。
- 営業秘密、原価、技術情報、取引先情報、入札・補助金資料が含まれるときは早期対応が重要です。
- 開示決定が出た後の争訟対応は時間が限られるため、初動段階から証拠化を意識します。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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情報公開法の意見照会書とは
情報公開法の意見照会書とは、開示請求の対象となった行政文書に、企業など第三者に関する情報が含まれている場合に、行政機関がその第三者に意見書提出の機会を与えるために送る書面です。
国の行政機関については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律13条が、第三者に意見書提出の機会を与える手続を定めています。独立行政法人や自治体についても、独立行政法人等情報公開法や各自治体の情報公開条例に、同種の手続が置かれていることがあります。
意見照会書が届いたこと自体は、直ちに違法行為や行政処分を意味するものではありません。むしろ、行政機関が開示・不開示を判断する前に、自社の情報が開示されることによる不利益や、マスキングすべき部分を説明する機会と捉えるべきです。
発信者情報開示請求の意見照会書とは別の問題
検索結果で多く見られる「意見照会書」は、プロバイダから投稿者に送られる発信者情報開示請求関係の説明です。しかし、企業が行政機関から受け取る情報公開法上の意見照会書は、行政文書や公文書の開示をめぐる手続です。
そのため、同じ「意見照会書」という名称でも、回答書の選択肢、主張すべき内容、相手方、根拠法令、期限管理の意味が異なります。企業側では、まず書面に記載された根拠法令・条例と発出機関を確認し、発信者情報開示請求の記事やテンプレートをそのまま流用しないことが重要です。
意見照会書が届いた当日に確認すべき事項
最初に行うべきことは、反対意見書を書き始めることではなく、届いた書面の意味と対象文書を正確に把握することです。特に、次の項目は当日中に確認するのが望ましいです。
| 確認事項 | 見るべき理由 | 初動対応 |
|---|---|---|
| 発出機関・担当部署 | 国、独立行政法人、自治体のどの手続かで根拠法令や様式が変わるため | 担当者名、電話番号、メール、文書番号を控える |
| 根拠法令・条例 | 情報公開法、独立行政法人等情報公開法、自治体条例で条番号や期限が異なるため | 書面に記載された条文、要綱、様式名を確認する |
| 回答期限 | 反対意見や資料提出の準備期間が短いことが多いため | 社内期限を外部期限より前に設定し、延長相談の要否を判断する |
| 対象文書の表示 | どの申請書、報告書、契約資料、技術資料が問題かを特定するため | 提出時期、提出部署、原本、添付資料を社内で探す |
| 開示予定部分 | 全面開示なのか部分開示なのか、マスキング案が必要かを判断するため | 開示予定範囲、不開示予定範囲、黒塗り予定部分を確認する |
| 開示請求の内容 | 請求対象が広いのか、特定の資料・事業・案件に限られるのかを知るため | 必要に応じて行政機関へ対象範囲の説明を求める |
この段階で、行政機関に対して「どの資料のどの部分が開示検討対象なのか」「意見書でどの範囲まで意見を出せるのか」「添付資料の提出方法はどうするのか」を確認しておくと、社内調査と反対意見書作成を進めやすくなります。
意見照会書の期限は、書面に記載された提出期限を基準に管理します。期限に間に合わない可能性がある場合も、放置せず、早めに行政機関へ連絡して提出方法や追加資料の扱いを確認しましょう。
無視してよいかを最初に判断しない
意見照会書が届いたときに、「回答しなくてもよいのか」「無視しても罰則はないのか」と考える企業もあります。しかし、情報公開法上の第三者意見照会では、単に罰則の有無だけで判断すべきではありません。
期限までに反対意見を出さないと、行政機関は自社から具体的な反対理由が示されていない状態で開示・不開示を判断することになります。また、開示に反対する意思を表示した意見書を提出している場合には、開示決定後に第三者へ通知され、開示決定日と開示実施日の間に少なくとも一定期間が置かれる手続につながります。
つまり、意見照会書への対応は、単なる「回答するかしないか」ではなく、将来の開示決定後対応まで見据えた入口です。とくに自社の営業秘密、原価情報、取引条件、顧客・取引先名、技術資料、入札戦略が含まれる可能性がある場合は、無視ではなく、少なくとも反対意見書提出の要否を検討すべきです。
「全部開示反対」とだけ書くのも危険
一方で、対象文書を確認しないまま「すべて営業秘密である」「すべて不開示にしてほしい」とだけ回答しても、十分な反対意見にならないことがあります。行政機関は、文書全体ではなく、情報の部分ごとに不開示情報該当性や部分開示の可否を判断するためです。
反対意見書では、どの記載部分について、誰に、何が推知され、どのような競争上・取引上の不利益が生じるのかを具体化する必要があります。詳しい書き方は、反対意見書の書き方で整理します。
対象文書と開示対象部分を特定する
企業側の初動で最も重要なのは、対象文書の特定です。行政機関に提出した資料は、社内で使う資料名と行政機関側の文書名が一致しないことがあります。たとえば、社内では「技術提案書」と呼んでいても、行政機関側では「企画提案書」「添付資料一式」「補助事業実績報告書の別紙」と管理されている場合があります。
対象文書が曖昧なままでは、どの部署から資料を集めるべきか、どの記載が営業秘密に当たるのか、どこをマスキングすべきかを判断できません。まず、行政機関から通知された文書の表示をもとに、提出時期、案件名、担当部署、提出担当者、提出経路を社内で突き合わせます。
対象文書の原本と提出版を照合する
社内に残っている原本と、行政機関に提出した版が同じとは限りません。提出前に一部修正した資料、押印済みの最終版、メール添付のPDF、紙で提出した添付資料、行政機関側の受付印がある版など、複数の版が存在することがあります。
反対意見書を作る前に、少なくとも次の資料を確認します。
- 提出版の特定:行政機関に実際に提出したPDF、紙、電子申請データ、添付資料を確認します。
- 社内原本との違い:提出版だけに記載された価格、工程、図面、担当者名、取引先名を確認します。
- 公開済み情報との違い:ホームページ、入札公告、決算公告、プレスリリース等で既に公開されている情報と非公開情報を分けます。
- 不開示を求める部分:文書全体ではなく、ページ、表、項目、数値、名称ごとに整理します。
開示対象部分とマスキング案を確認する
行政機関が部分開示を予定している場合、どの部分を黒塗りし、どの部分を開示する想定なのかを確認します。企業側の実務では、「文書全体を不開示にしてほしい」と主張するだけでなく、少なくともマスキングすべき部分を具体的に示すことが重要です。
たとえば、契約書全体の不開示が難しい場合でも、単価、数量、仕入先、値引条件、技術仕様、担当者の個人情報など、部分的な不開示を求める余地があります。行政機関が判断しやすいように、ページ番号、項目名、表の行列、図面番号を特定して説明します。
社内ヒアリングで集める資料
意見照会書への回答は、法務部門だけで完結しないことが多いです。対象文書の作成部署、営業部門、技術部門、経理部門、入札担当、補助金担当、行政対応担当などから、開示された場合の不利益を具体的に聞き取る必要があります。
| 文書・情報の例 | 確認すべき不利益 | 集める資料の例 |
|---|---|---|
| 見積書・単価表・原価資料 | 競業者や取引先に価格交渉上の弱みを知られるおそれ | 価格決定資料、取引条件、非公開の社内基準 |
| 技術提案書・仕様書・図面 | ノウハウ、工程、設備能力、技術水準を推知されるおそれ | 秘密管理資料、技術説明、公開済み資料との差分 |
| 補助金・許認可・報告書 | 事業計画、投資計画、収支見込みを競業者に把握されるおそれ | 事業計画書、収支資料、社内承認資料 |
| 取引先名・委託先名 | 取引関係、供給網、外注先、協力会社との関係が推知されるおそれ | 契約書、秘密保持条項、取引先との合意内容 |
| 事故・行政調査・処分関係資料 | 信用低下や取引停止リスクがある一方、公益上開示されやすい場面もある | 事実経過、再発防止策、既公表資料、行政機関とのやり取り |
社内ヒアリングでは、「知られたくない」という感覚だけでなく、開示によってどの第三者がどのように情報を利用できるのかを具体化します。競業者、需要者、供給者、取引先、金融機関、報道機関、地域住民など、情報を利用し得る相手を想定して整理すると、反対意見書の説得力が上がります。
「社外秘」「confidential」と書かれているだけでは、当然に不開示になるとは限りません。どの情報が、どのような理由で、開示により正当な利益を害するおそれがあるのかを説明できるように整理しましょう。
反対意見書を提出すべき場面
反対意見書を提出すべきかは、対象文書に含まれる情報の性質、既に公開されている情報との違い、開示された場合の不利益、公益上の開示必要性、部分開示で足りるかによって判断します。
国の情報公開法5条2号は、法人等に関する情報について、公にすることにより、権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを不開示情報として定めています。また、行政機関の要請を受けて、公にしない条件で任意に提供された情報についても、条件の合理性などが問題になります。
具体的には、次のような事情がある場合には、反対意見書の提出を検討します。
- 競争上の不利益:原価、単価、仕入条件、製造能力、設備稼働状況などが競業者に推知される場合。
- 取引上の不利益:取引先、供給者、外注先、販売先との条件や関係が知られ、価格交渉や契約更新に影響する場合。
- 技術・ノウハウの流出:技術提案、図面、工程、品質管理手法、研究開発内容が第三者に利用される場合。
- 秘密条件付き提供:行政機関の要請を受け、非公表を前提に任意提供した資料である場合。
- 部分開示で足りる場合:文書全体の不開示ではなく、特定部分の黒塗りで不利益を避けられる場合。
情報公開法5条2号の法人情報・営業秘密の考え方は、情報公開法5条2号の法人情報・営業秘密で詳しく整理します。本記事では、意見照会書が届いた時点の初動に絞ります。
反対意見書には結論だけでなく理由を書く
反対意見書では、「開示に反対します」という結論だけでは足りません。対象文書のどの部分について、どの不開示事由に当たり、どのような具体的不利益があるのかを、資料とともに説明する必要があります。
また、文書全体の不開示を求める場合でも、行政機関が部分開示を検討できるように、代替的なマスキング案を示すことがあります。全面不開示、部分不開示、開示可能部分を整理しておくと、行政機関とのやり取りが進めやすくなります。
行政機関への連絡で確認するポイント
意見照会書が届いたら、必要に応じて行政機関の担当者に連絡します。ただし、電話だけで重要事項を済ませるのではなく、確認した内容は社内メモやメールで残すことが大切です。
特に、次の事項は早めに確認します。
- 対象文書の範囲:通知書だけでは分からない場合、どの資料一式が対象かを確認します。
- 開示予定部分:行政機関が既に不開示予定としている部分と、なお開示検討中の部分を確認します。
- 提出期限と提出方法:郵送、持参、メール、電子申請など、受付方法と到達扱いを確認します。
- 添付資料の扱い:社内資料、秘密管理資料、契約書、補足説明書を提出できるかを確認します。
- 追加提出の可否:期限内に概略意見を出し、後日補足資料を提出できるかを相談します。
行政機関の担当者は、開示請求者と第三者企業の利害を踏まえて、法令・条例に基づいて判断します。企業側としては、担当者に感情的に抗議するのではなく、判断に必要な情報を整理して提出する姿勢が重要です。
電話で確認した場合も、日時、担当者名、確認内容、提出期限、追加資料の扱いをメモ化します。後に開示決定後の対応へ進む場合、この初動記録が社内説明や弁護士相談で役立ちます。
期限に間に合わないときの対応
回答期限までに十分な反対意見書を作成できない場合でも、放置は避けるべきです。まず、行政機関に連絡し、提出期限、提出方法、追加資料の扱いを確認します。期限延長が当然に認められるわけではありませんが、対象文書が多い、技術資料の確認が必要、複数部署の確認を要するなどの事情がある場合には、早めに相談することが重要です。
期限直前であっても、最低限、開示に反対する意思、対象文書のうち問題となる部分、追加資料を提出する予定、連絡先を示すことで、その後の対応につなげられる場合があります。
期限後でも決定前なら連絡する
期限を過ぎてしまった場合も、開示決定がまだ出ていない可能性があります。期限経過に気づいた時点で、行政機関に連絡し、今から提出できるか、決定予定日がいつか、開示予定部分がどこかを確認します。
もっとも、期限後の提出が考慮されるかは、法令・条例、行政機関の運用、事案の進行状況によります。期限を過ぎてから対応するよりも、届いた当日に社内期限を設定し、早期に資料収集へ動く方が安全です。
国・独立行政法人・自治体条例の違いに注意する
意見照会書の根拠は、国の行政機関であれば情報公開法、独立行政法人等であれば独立行政法人等情報公開法、都道府県や市区町村であれば各自治体の情報公開条例であることが多いです。
基本的な考え方は似ていますが、条番号、様式、期限、通知の文言、審査請求先、情報公開審査会の名称、オンライン手続の有無などは異なります。書面に記載された根拠法令・条例を確認し、自治体条例の場合はその自治体の最新の公式ページや条例本文を確認します。
国、独立行政法人、自治体条例の切り分けは、国の情報公開法・独立行政法人情報公開法・自治体条例の違いで詳しく整理します。
弁護士に相談すべきケース
すべての意見照会書で弁護士対応が必要とは限りません。しかし、開示されると取り返しがつきにくい情報が含まれる場合や、期限が迫っている場合には、早期に相談した方がよい場面が多くあります。
特に、次のような場合は、初動段階で弁護士に相談することを検討してください。
- 回答期限が迫っている場合:社内調査、行政機関への確認、反対意見書作成を短期間で進める必要があります。
- 営業秘密・技術情報が含まれる場合:開示範囲、推知可能性、マスキング案を具体的に整理する必要があります。
- 入札・補助金・許認可資料が対象の場合:価格、事業計画、収支見込み、競争条件が問題になりやすいです。
- 行政処分・事故・調査関係資料が対象の場合:企業側の不利益と公益上の開示必要性の双方を見て判断する必要があります。
- 既に開示決定が出ている場合:審査請求、取消訴訟、執行停止を含め、短期間で方針決定が必要です。
反対意見書を出したにもかかわらず開示決定がされた場合には、開示実施日前に対応を検討する必要があります。開示決定後の対応は、開示決定後に企業が取るべき審査請求・取消訴訟・執行停止で詳しく整理します。
相談前に準備しておく資料
弁護士へ相談する際は、次の資料を可能な範囲で準備しておくと、初回相談で論点整理が進みやすくなります。
- 届いた意見照会書、封筒、添付資料、行政機関からのメール。
- 対象文書として特定されている申請書、報告書、契約書、技術資料、添付資料。
- 行政機関に提出した版と、社内で保管している原本・ドラフト。
- 非公開として扱ってきたことが分かる社内規程、秘密保持契約、管理ルール。
- 開示されると困る部分を示したメモ、マスキング案、関係部署の意見。
- 行政機関との電話・メールのやり取り、回答期限、決定予定日のメモ。
よくある質問
情報公開法の意見照会書は、必ず回答しなければなりませんか
回答しなかったことだけで直ちに行政罰が生じるとは限りません。しかし、回答しないと、自社の反対理由、マスキング案、開示による不利益を行政機関に伝えないまま判断されるおそれがあります。営業秘密や競争上重要な情報が含まれる可能性がある場合は、少なくとも反対意見書提出の要否を検討すべきです。
反対意見書を出せば必ず不開示になりますか
必ず不開示になるわけではありません。行政機関は、情報公開法や条例に基づき、不開示情報に当たるか、部分開示で足りるか、公益上開示すべき事情があるかを判断します。反対意見書は、行政機関が判断するための重要な資料ですが、結論を拘束するものではありません。
開示請求者の目的が不当なら不開示にできますか
情報公開制度は、原則として広く開示請求を認める制度です。そのため、開示請求者の目的や属性だけを理由に不開示を求めるのは難しいことがあります。企業側では、目的の不当性を強調するだけでなく、開示される情報の内容と、開示によって生じる具体的な不利益を中心に整理します。
対象文書が多すぎる場合はどうすればよいですか
まず、行政機関に対象文書の範囲、開示予定部分、提出期限、追加資料の扱いを確認します。そのうえで、文書の重要度に応じて優先順位を付け、営業秘密、価格、技術、取引先、個人情報など、開示リスクの高い部分から検討します。
情報公開法と個人情報開示請求は同じですか
同じではありません。情報公開法・情報公開条例は、行政機関や自治体が保有する行政文書・公文書の開示をめぐる制度です。個人情報の本人開示請求や、発信者情報開示請求とは、根拠法令、対象情報、手続、当事者の立場が異なります。
まとめ
情報公開法の意見照会書が届いた場合、企業側は、開示が確定したと考えて慌てるのではなく、期限内に対象文書と不開示理由を整理することが重要です。
- 書面の根拠法令・条例、回答期限、対象文書、開示予定部分を当日中に確認する。
- 発信者情報開示請求の記事やテンプレートを流用せず、情報公開法・条例の第三者意見照会として扱う。
- 社内の原本、提出版、公開済み情報、秘密管理資料を集め、文書・記載部分ごとに整理する。
- 無視や抽象的な反対ではなく、開示による具体的不利益とマスキング案を示す。
- 開示決定後は時間が限られるため、初動段階から弁護士相談と争訟対応の可能性も見据える。
行政機関に提出した資料は、企業の内部資料であっても、行政文書として情報公開請求の対象になることがあります。意見照会書が届いた段階で、対象文書、期限、開示予定部分、反対理由を整理し、必要に応じて早めに専門家へ相談してください。
坂尾陽弁護士
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