設立時発行株式は、株式会社が成立するときに発行される最初の株式です。会社設立時の株数、1株あたりの払込金額、払込総額、資本金・資本準備金の額、発起人ごとの持株比率は、この設立時発行株式の設計によって決まります。
実務では、「設立時発行株式は何株にすればよいか」「1株いくらにすべきか」「資本金をいくらにするか」「資本準備金に回してよいか」「発行可能株式総数とどう違うのか」が問題になります。これらは単なる登記書類上の数字ではなく、議決権、将来の増資、創業者間の支配関係、税務、許認可、金融機関・取引先からの見え方に影響します。
- 設立時発行株式は、会社成立時に最初に発行される株式で、発起人は少なくとも1株を引き受けます。
- 株数と払込金額は、発起人の持株比率、将来の増資・株式譲渡、資本金額と連動して設計します。
- 払込総額のうち、2分の1を超えない額は資本金に計上しないことができ、その額は資本準備金になります。
- 資本金は、信用・許認可・税務・登録免許税に関係するため、節税だけで決めるのは危険です。
- 発行可能株式総数は、将来発行できる株式数の上限であり、設立時発行株式とは別に確認します。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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この記事では、非上場・中小規模の株式会社を発起設立で設立する場面を中心に、設立時発行株式の意味、株数・払込金額・資本金・資本準備金・発行可能株式総数の決め方を整理します。募集設立、種類株式、資本政策、税務、許認可が関係する場合は、個別事情により設計が変わります。
設立時発行株式とは何か
設立時発行株式とは、株式会社の設立に際して発行する株式をいいます。会社法25条では、発起設立は発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法、募集設立は発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者を募集する方法として整理されています。条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で最新の条文を確認できます。
発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません。発起人の役割全体は、発起人とは|役割・人数・要件・責任で整理しています。
設立時発行株式は、会社が成立した後の「発行済株式」の出発点になります。誰が何株を持つかによって、議決権割合、配当を受ける割合、将来の支配関係が変わるため、設立時の数字であっても軽く扱うべきではありません。
| 用語 | 意味 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 設立時発行株式 | 会社成立時に発行される最初の株式 | 発起人の引受株数、払込金額、持株比率、資本金設計の基礎になる |
| 発行済株式総数 | 会社が既に発行している株式の総数 | 会社成立時には、通常、設立時発行株式の総数が発行済株式総数になる |
| 発行可能株式総数 | 定款で定める、会社が発行できる株式数の上限 | 将来の増資や株式発行の余地に関係する |
| 設立時募集株式 | 募集設立で、発起人以外の者に引受けを募集する設立時発行株式 | 発起設立より手続が重く、創立総会や払込保管証明などの確認が必要になる |
会社設立の全体像は、株式会社設立の流れで確認してください。本記事では、その中でも設立時発行株式と資本金設計に絞って解説します。
設立時発行株式について決める事項
会社法32条は、発起人が設立時発行株式に関して決める事項を定めています。定款に定めがある事項を除き、発起人の全員の同意により、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、その株式と引換えに払い込む金銭の額、成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項を定めます。
法務省も、発起設立の手続について、定款に定めがない場合には発起人全員の同意によりこれらを定める必要があること、各発起人が1株以上の設立時発行株式を引き受ける必要があることを案内しています。公式情報は、法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」でも確認できます。
| 決める事項 | 内容 | 実務上の確認点 |
|---|---|---|
| 各発起人の引受株数 | 誰が何株を引き受けるか | 持株比率、議決権割合、共同経営のバランスに直結する |
| 払込金額 | 設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額 | 払込総額、1株あたりの金額、資本金額と整合させる |
| 資本金・資本準備金 | 会社成立後の資本金と資本準備金の額 | 登録免許税、税務、信用、許認可、会計処理に影響する |
| 種類株式の内容 | 種類株式発行会社の場合の株式内容 | 普通株式だけで設立するか、種類株式を使うかで設計が大きく変わる |
これらをすべて定款に書くこともできますが、実務上は、定款と発起人の同意書・決定書をどのように使い分けるかを確認します。定款の記載事項全体は、定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項で解説しています。
設立時発行株式の株数の決め方
設立時発行株式を何株にするかについて、会社法上の一律の正解はありません。重要なのは、株数そのものではなく、株数を通じて誰がどの割合で会社を支配し、将来どの程度柔軟に株式を発行・譲渡できるかです。
たとえば、1人会社であれば100株や1,000株など、管理しやすい数にすることが多いです。共同創業では、出資額、役割、将来の意思決定、退任時の扱いを踏まえ、持株比率を先に決めてから株数に落とし込む方が安全です。
株数は持株比率から逆算する
発起人が複数いる場合、まず確認すべきなのは、誰が何%を持つかです。たとえば2人で50%ずつ持つのか、代表者が過半数を持つのか、外部協力者に少数株を持たせるのかによって、必要な株数は変わります。
| 設計例 | 株数の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1人会社 | 100株又は1,000株を代表者が全部引受け | 意思決定は単純。将来の譲渡や増資に備えて、少なすぎない株数にすることが多い |
| 2人共同創業で同率 | 各500株、合計1,000株 | 対等だが、意見対立時にデッドロックが生じやすい |
| 代表者が過半数 | 代表者600株、共同創業者400株など | 代表者が普通決議を通しやすいが、少数株主との合意設計が重要 |
| 少数出資者を入れる | 代表者900株、少数出資者100株など | 将来の資金調達や退任時の買戻し条件を別途検討する必要がある |
共同創業で50対50にすると、公平に見える一方、役員選任、重要契約、増資、事業方針で対立した場合に意思決定が止まることがあります。会社設立時には、持株比率だけでなく、株式譲渡制限、役員選任、退任時の株式処理、株主間契約の要否も検討しましょう。
株数が少なすぎると将来の調整がしにくい
設立時発行株式が極端に少ないと、将来、少数株主を入れる、株式を一部譲渡する、役員・従業員にインセンティブを設計する、といった場面で細かな割合調整が難しくなります。たとえば発行済株式が10株しかない会社では、1株が10%を意味するため、1%単位の調整ができません。
一方で、株数を多くしすぎても、株主管理や名簿管理が不必要に複雑になることがあります。非上場・中小会社では、将来の株式移動の可能性を見ながら、管理しやすく、かつ比率調整にも困りにくい株数にするのが実務的です。
1株の払込金額と払込総額の決め方
設立時発行株式の設計では、「株数」と「払込金額」をセットで考えます。実務上は、1株あたりの払込金額を決め、これに設立時発行株式数を掛けて払込総額を計算する形で整理すると分かりやすいです。
現在の会社法では、昔の額面株式のように「1株の額面」を前提に考える必要はありません。したがって、「1株5万円でなければならない」「1株1万円でなければならない」という固定ルールがあるわけではありません。ただし、設立書類、会計処理、株主管理、将来の増資条件との整合性を考える必要があります。
| 設計例 | 計算 | 払込総額 | コメント |
|---|---|---|---|
| 100株・1株1万円 | 100株×1万円 | 100万円 | 小規模設立で分かりやすい。持株比率の調整もしやすい |
| 1,000株・1株1万円 | 1,000株×1万円 | 1,000万円 | 資本金1,000万円ラインに関係するため、税務面の確認が必要 |
| 100株・1株10万円 | 100株×10万円 | 1,000万円 | 株数は少なめだが、1株あたりの比率が大きくなりやすい |
| 10,000株・1株100円 | 10,000株×100円 | 100万円 | 細かな比率調整はしやすいが、株数が大きくなり管理上の説明が必要 |
払込総額は、会社に実際に入る資金の基礎です。会社設立直後には、登記費用、専門家費用、事務所費用、仕入、広告費、人件費、システム費用などが発生します。1株あたりの払込金額は、見た目のきれいさだけでなく、設立後数か月の運転資金を確保できるかという観点から決めるべきです。
資本金1円設立は可能でも、実務上は慎重に考える
最低資本金制度は廃止されているため、法制度上は、非常に少額の資本金で株式会社を設立することも可能です。しかし、資本金が極端に少ない会社は、取引先、金融機関、許認可庁から、事業継続に必要な資金があるのかを厳しく見られることがあります。
特に、法人名義の銀行口座、融資、許認可、補助金、大口取引を予定している場合は、節税や設立費用だけでなく、信用面、事業計画、初期費用を踏まえて資本金を決める必要があります。
払込金額を大きく見せるだけの設計は避ける
設立時の払込金額は、実際に出資として会社に入ることが前提です。単に登記上の資本金を大きく見せるため、一時的な借入金で払込の外形だけを作り、会社成立後すぐに払い戻すような処理は危険です。
最高裁昭和38年12月6日判決は、当初から真実の株式払込として会社資金を確保する意図がなく、一時的借入金で払込の外形を整え、会社成立手続後直ちに払込金を払い戻して借入先に返済した事案について、有効な株式払込がされたものとはいえない旨を示しています。払込手続と仮装のリスクは、出資の履行(払込み)と払込証明で詳しく整理します。
資本金と資本準備金の決め方
設立時発行株式と引換えに払い込まれた金額は、原則として資本金の額になります。ただし、会社法445条により、払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができます。この資本金に計上しない額は、資本準備金として計上しなければなりません。
資本金・準備金・剰余金の全体像は、資本金・準備金・剰余金の違い、会社法445条の条文解説は会社法445条〜448条の逐条解説で確認できます。
| 払込総額 | 資本金にできる額の例 | 資本準備金にできる額の例 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 100万円 | 0円 | 払込総額を全額資本金にする基本形 |
| 100万円 | 50万円 | 50万円 | 資本金に計上しない額を上限まで使う例 |
| 1,000万円 | 1,000万円 | 0円 | 対外的には資本金1,000万円の会社となる |
| 1,000万円 | 500万円 | 500万円 | 払込総額は1,000万円でも、登記上の資本金を500万円にする例 |
資本準備金を使うと、払込総額を確保しつつ、登記上の資本金額を抑える設計が可能になります。ただし、資本準備金は自由に配当できる単なる余剰資金ではありません。資本準備金の減少や資本金の額の減少には、別途手続が必要になることがあります。
資本金は登録免許税にも影響する
株式会社設立登記の登録免許税は、資本金の額に1000分の7を乗じた金額です。ただし、その額が15万円に満たない場合は、申請件数1件につき15万円になります。法務省の発起設立手続案内でも同様の説明がされています。
したがって、資本金を100万円にしても、1,000万円にしても、登録免許税が最低額の範囲に収まる場合は、登録免許税だけを理由に資本金を細かく調整しても実益が小さいことがあります。もっとも、資本金額は税務、信用、許認可に影響するため、登録免許税だけで判断しないことが重要です。
資本金1,000万円ラインは消費税でも確認する
国税庁は、基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人について、新設法人として納税義務が免除されない旨を案内しています。詳しくは、国税庁「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」を確認してください。
ただし、資本金を1,000万円未満にすれば常に消費税の負担を避けられるわけではありません。特定期間の課税売上高や給与等支払額、インボイス登録、特定新規設立法人の該当性など、別の要素で課税事業者になる場合があります。税務判断は、税理士等とあわせて確認することが安全です。
発行可能株式総数との関係
設立時発行株式と混同しやすいのが、発行可能株式総数です。発行可能株式総数は、会社が将来発行できる株式数の上限であり、定款で定める事項です。会社法37条は、発起人が株式会社成立の時までに定款を変更して発行可能株式総数を定めなければならない場面を定めています。
発行可能株式総数は、設立時発行株式数より多く設定するのが通常です。設立時発行株式数と同じ数にしてしまうと、将来、新たに株式を発行して資金調達や役員・従業員へのインセンティブ設計を行う際、先に定款変更が必要になりやすくなります。
| 項目 | 設立時発行株式 | 発行可能株式総数 |
|---|---|---|
| 意味 | 設立時に実際に発行される株式 | 将来発行できる株式数の上限 |
| 会社成立時の効果 | 発行済株式となり、株主・議決権割合を決める | それだけで株主が増えるわけではない |
| 増資との関係 | 既に発行済みの株式として既存株主の割合を形成する | 上限の範囲内で将来の株式発行を検討しやすくなる |
| 注意点 | 株数が少なすぎると比率調整が難しい | 公開会社では法定上限等の制約があるため、譲渡制限の有無も確認する |
会社法34条〜37条の出資・発行可能株式総数の条文解説は、会社法34条〜37条の逐条解説で確認できます。
発起人ごとの割当てと持株比率の考え方
設立時発行株式の割当ては、発起人の出資額だけでなく、会社の意思決定権限を決める重要な設計です。普通株式だけで設立する場合、原則として株式数が議決権割合に直結します。そのため、誰が何株を持つかは、将来の経営支配、役員選任、株主総会決議に影響します。
出資額と持株比率を一致させるか
もっとも単純なのは、出資額に応じて株式を割り当てる方法です。たとえば、Aが600万円、Bが400万円を出資し、1株1万円で合計1,000株を発行する場合、Aが600株、Bが400株を引き受けます。この場合、出資割合と持株比率が一致します。
他方で、出資額だけでなく、事業アイデア、営業力、技術、経営責任などを踏まえて、代表者に多めの株式を持たせたいという場面もあります。この場合でも、株式は原則として出資と引換えに発行されるため、金銭出資、現物出資、役員報酬、業務委託、株主間契約など、どの法的手段で調整するのかを整理する必要があります。
共同創業ではデッドロックと離脱時の扱いを確認する
共同創業で発起人が複数いる場合、設立時の関係が良好でも、後に意見対立や役割変更が生じることがあります。特に50対50の持株比率は、重要事項の合意形成が止まるリスクを伴います。
- 誰が代表者として最終決定権を持つのか
- 普通決議・特別決議を誰が通せる設計にするのか
- 創業者が退任・離脱した場合に株式をどう扱うのか
- 第三者への株式譲渡をどこまで制限するのか
- 将来の増資で創業者の持株比率がどの程度薄まるのか
これらは定款だけで完結しないこともあります。必要に応じて、株主間契約、譲渡制限株式、種類株式、役員契約、退任時の買取り条件を検討します。
発起設立と募集設立で設計が変わる点
多くの中小企業では、発起人だけで設立時発行株式を引き受ける発起設立が利用されます。この場合、設立時発行株式の株数、払込金額、資本金・資本準備金は、発起人側で比較的シンプルに設計できます。
これに対し、募集設立では、発起人以外の者にも設立時発行株式の引受けを募集します。そのため、設立時募集株式の募集、申込み、割当て、払込み、創立総会など、発起設立より手続が重くなります。募集設立の全体像は、募集設立とは、創立総会の手続は創立総会の手続で確認してください。
| 項目 | 発起設立 | 募集設立 |
|---|---|---|
| 株式の引受人 | 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける | 発起人のほか、募集に応じた引受人が加わる |
| 手続の重さ | 比較的シンプル | 募集・割当て・創立総会などが必要になりやすい |
| 資金調達 | 発起人の資金を中心に設計する | 設立段階から外部資金を入れやすい |
| 注意点 | 発起人間の持株比率と払込実務が中心 | 申込人・引受人との関係、払込保管証明、創立総会の手続を確認する |
募集設立の条文解説は、会社法57条〜62条、払込みと保管証明は会社法63条・64条も参照してください。
設立登記・定款・払込証明とのつながり
設立時発行株式の設計は、最終的に定款、発起人の同意書、払込証明、設立登記申請書、登記すべき事項に反映されます。数字が相互に食い違うと、登記補正や書類作り直しにつながります。
法務局の株式会社設立登記申請書の記載例では、設立に際して発起人が割当てを受けるべき株式数及び払い込むべき金額、株式発行事項又は発行可能株式総数、資本金及び資本準備金の額が定款に定められていない場合には、発起人の同意書が必要になる旨が示されています。記載例は、法務局の株式会社設立登記申請書記載例で確認できます。
| 書類・手続 | 設立時発行株式との関係 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 定款 | 設立時発行株式、発行可能株式総数、資本金等を定める場合がある | 定款に書いた事項と別書類が矛盾していないか |
| 発起人の同意書・決定書 | 定款に定めない事項を発起人全員の同意で決める | 全員同意が必要な事項を漏らしていないか |
| 払込証明 | 設立時発行株式に対応する払込がされたことを示す | 払込人、払込額、払込時期、通帳コピー等が整合しているか |
| 設立登記 | 資本金の額、発行済株式総数、発行可能株式総数等が登記に関係する | 登記すべき事項と定款・同意書・払込証明が一致しているか |
株式会社の成立時期と株主となる権利は、株式会社の成立時期、会社法49条・50条の逐条解説は会社法49条・50条で確認できます。設立登記の登記事項は、会社法911条の設立登記もあわせて確認してください。
設立時発行株式でよくある失敗
株数を少なすぎる数字にする
1人会社だからといって、1株だけにすると、将来の譲渡、共同創業者の参加、役員・従業員へのインセンティブ、増資時の比率調整が難しくなります。単純さだけでなく、将来の柔軟性も見て株数を決めましょう。
資本金を税務ラインだけで決める
資本金1,000万円未満にするかどうかは、消費税などの税務上重要です。しかし、資本金は信用、許認可、融資、取引先審査にも影響します。税務だけでなく、事業に必要な運転資金と対外的な説明可能性をあわせて検討する必要があります。
共同創業者の持株比率を曖昧に決める
共同創業では、最初の持株比率が後の意思決定を左右します。口頭の役割分担だけで株式を配分すると、退任、貢献度の差、追加出資、事業売却の場面で争いになりやすくなります。設立時から、株式の帰属と離脱時の扱いを整理しておくことが重要です。
発行可能株式総数を設立時発行株式と同じにする
発行可能株式総数を設立時発行株式と同じ数にすると、将来の増資時に先に定款変更が必要になりやすくなります。増資や株式報酬を予定していなくても、一定の余地を設ける設計を検討しましょう。
現物出資を軽く扱う
金銭ではなく車両、不動産、知的財産、債権などを出資する場合、現物出資として定款記載、評価、検査役、価額不足責任が問題になります。現物出資や財産引受けは、現物出資・財産引受け(変態設立事項)で詳しく整理します。
設立時発行株式に関するよくある質問
設立時発行株式は何株にすればよいですか
一律の正解はありません。1人会社なら100株や1,000株など管理しやすい数にすることが多く、共同創業では持株比率から逆算します。少なすぎると将来の譲渡・増資・比率調整が難しくなるため、将来の資本政策も見て決めることが大切です。
1株の金額はいくらにすべきですか
法律上、1株1万円でなければならないという固定ルールはありません。実務上は、払込総額、株数、資本金、将来の増資条件、株主管理の分かりやすさを踏まえて決めます。「額面」ではなく、設立時に株式と引換えに払い込む金額として整理してください。
資本金と払込総額は同じですか
常に同じとは限りません。払込総額の全額を資本金にすることもできますが、払込額の2分の1を超えない額は資本金に計上しないことができ、その額は資本準備金になります。
資本準備金を使うメリットは何ですか
払込総額を会社に入れつつ、登記上の資本金額を一定程度抑える設計ができます。ただし、資本準備金は自由に配当できる資金ではなく、減少させる場合には別途手続が問題になります。税務・会計面の扱いも確認してください。
発行可能株式総数は多めにしてよいですか
将来の増資に備えて、設立時発行株式数より多く設定することはよくあります。ただし、会社類型、公開会社かどうか、種類株式の有無、将来の資本政策によって適切な数は変わります。単に大きくすればよいわけではありません。
発起人以外の人に設立時から株式を持たせられますか
発起人以外の者に設立段階から株式を持たせる場合、募集設立を検討することになります。ただし、募集設立は発起設立より手続が重くなります。実務上は、発起設立で会社を成立させた後に株式譲渡や増資を行う設計が適する場合もあります。
資本金は1,000万円未満にした方がよいですか
消費税の新設法人の特例などを考えると、資本金1,000万円ラインは重要です。ただし、税務だけで決めると、信用、融資、許認可、取引先審査で不都合が出ることがあります。事業計画、必要資金、税務、許認可を総合して判断してください。
まとめ
設立時発行株式は、会社成立時の最初の株式であり、株主構成、議決権割合、払込総額、資本金・資本準備金を決める基礎です。設立時の数字は後から変更できる部分もありますが、最初の設計を誤ると、共同創業者間の紛争、増資時の手戻り、税務・許認可・信用面の問題につながります。
- 設立時発行株式は、会社成立時に発行される最初の株式です。
- 株数は、持株比率、議決権、将来の譲渡・増資のしやすさから決めます。
- 払込総額は、株数と払込金額から決まり、会社の初期資金になります。
- 払込額のうち2分の1を超えない額は、資本金ではなく資本準備金にできます。
- 資本金は、税務だけでなく、信用、許認可、登録免許税、融資に影響します。
- 発行可能株式総数は、将来の株式発行余地を見据えて設計します。
会社設立では、定款、発起人、出資、設立時役員、設立登記が連動します。設立時発行株式を決めるときは、単に「何株にするか」ではなく、誰が何%持つのか、会社にいくら資金を入れるのか、将来の増資や共同経営に耐えられるかを確認することが重要です。
坂尾陽弁護士
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