【会社法57条〜62条】設立時募集株式の募集・申込み・割当て・引受け|条文の要点と実務ポイント

会社法57条から62条は、募集設立で発起人以外の者に設立時発行株式を引き受けてもらうための、募集・申込み・割当て・引受けの手続を定める条文です。募集設立では、発起人が設立時発行株式の全部を引き受けるのではなく、外部の投資家、事業協力者、役職員、関係会社などに設立時から株主として参加してもらうことがあります。

もっとも、設立時募集株式は、会社が成立した後の募集株式の発行とは別の制度です。まだ会社が成立していない段階で、発起人が募集事項を決め、申込者に必要事項を通知し、申込みを受け、割当て又は総数引受契約によって引受人を確定させます。ここを曖昧にすると、払込み、払込金保管証明、創立総会、設立登記の前提が崩れます。

会社成立後の募集株式発行は、募集株式の発行(増資)会社法199条〜202条の2の逐条解説で扱う論点です。本記事では、会社成立前の設立時募集株式に範囲を絞って整理します。

本記事では、会社法57条から62条について、募集をする旨の決定、設立時募集株式の募集事項、申込者への通知、申込み、割当て、総数引受契約、引受人の確定を、募集設立の実務に沿って整理します。

  • 会社法57条は、設立時発行株式を引き受ける者を募集する旨を、発起人全員の同意で定める規定です。
  • 会社法58条は、募集する株式数、払込金額、払込期日又は払込期間、一定の日までに登記されない場合の取消しの定めなどを決める規定です。
  • 会社法59条・60条は、申込者に対する通知、申込書又は電磁的方法による申込み、割当て、割当通知を定めています。
  • 会社法61条・62条は、総数引受契約による特則と、誰が設立時募集株式の引受人になるかを定めています。
  • 募集設立では、57条から62条の手続後に払込み、払込金保管証明、創立総会、設立登記へ進むため、募集段階の書類整理が重要です。

坂尾陽弁護士

設立時募集株式の手続は、外部株主を会社成立時から入れるための入口です。申込みや割当てを形式的に処理すると、後で「誰が何株を引き受けたのか」「どの条件で払い込むのか」が争点になり得ます。募集事項、申込書、割当通知、総数引受契約を早い段階で整えましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法57条〜62条の位置づけ

会社法57条から62条は、会社法第2編第1章第9節「募集による設立」のうち、第一款「設立時発行株式を引き受ける者の募集」に置かれています。募集設立のうち、外部の引受人を確定させるための入口部分です。

条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で会社法57条から62条を確認してください。会社法57条から62条は、募集をするかどうかを決める段階から、設立時募集株式の引受人が確定する段階までを扱います。

条文 主な内容 実務上の確認事項
会社法57条 設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨の決定 発起人全員の同意、募集設立を選ぶ理由、発起設立との違い
会社法58条 設立時募集株式に関する事項の決定 株式数、払込金額、払込期日又は払込期間、取消しの定め、募集条件の均等性
会社法59条 申込者への通知と申込み 通知事項、申込書、電磁的方法、変更通知、通知先の管理
会社法60条 設立時募集株式の割当て 割当対象者、割当株数、申込数より少ない割当て、割当通知期限
会社法61条 申込み・割当てに関する特則 総数引受契約を使うか、申込み・割当て手続を省略できるか
会社法62条 設立時募集株式の引受け 誰が何株について引受人になるか、払込み義務につながる範囲
57条〜62条は払込み前の手続

設立時募集株式の払込みそのものは、会社法63条以降で扱われます。会社法57条から62条は、払込みの前に、誰に、何株を、どの条件で引き受けてもらうかを確定させる段階です。


募集設立で設立時募集株式を使う場面

株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立があります。発起設立は、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法です。これに対し、募集設立は、発起人以外の者にも設立時発行株式を引き受けてもらう方法です。

会社法57条から62条が問題になるのは、募集設立を選び、発起人以外の者に設立時募集株式を引き受けてもらう場面です。単に設立後に第三者割当増資をする場合や、成立後に新株を発行する場合とは、手続の主体、株式の性質、払込みの時期、株主になる時期が異なります。成立後の募集株式発行は、募集株式の発行(増資)として別に整理します。

比較項目 発起設立 募集設立
設立時発行株式の引受人 発起人が全部を引き受ける 発起人以外の者にも引き受けてもらう
57条〜62条の適用 通常は問題にならない 募集、申込み、割当て、引受けの中心規定になる
外部株主の参加時期 設立後の株式譲渡や増資で参加することが多い 会社成立時から株主として参加する
創立総会 通常不要 設立時募集株式の払込み後に必要になる
払込金保管証明 通常は払込証明書で処理される場面が多い 払込金保管証明書が問題になる

募集設立の全体像は、募集設立とは|設立時募集株式・創立総会・払込までの実務フローで整理しています。本記事では、そのうち、設立時募集株式の募集から引受人確定までに絞って解説します。


会社法57条|募集をする旨の決定

会社法57条1項は、発起人が、この款の定めるところにより、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができるとしています。つまり、募集設立では、まず発起人側で「発起人以外の者を募集する」ことを決める必要があります。

会社法57条2項は、この募集をする旨を定めようとするときは、発起人全員の同意を得なければならないと定めています。発起人の一部だけで外部引受人を募集することはできません。

確認事項 実務上のポイント
募集設立を選ぶ理由 外部出資者を設立時から入れる必要があるか、設立後増資では足りないかを検討する
発起人全員の同意 発起人全員の同意書又は議事録的な書面で証拠化する
発起人の引受株式との関係 発起人が引き受ける設立時発行株式と、外部に募集する設立時募集株式を区別する
投資家との合意 株式数、払込金額、払込時期、設立中止時の扱いを事前に共有する
設立スケジュール 募集、申込み、割当て、払込み、創立総会、登記までを逆算する
発起人全員の同意を必ず証拠化する

募集設立では、外部引受人の参加によって株主構成や支配関係が変わります。発起人間で後日争いが起きないように、募集をする旨の決定は、発起人全員の同意書、発起人決定書、設立手続に関する合意書などで明確に残しておくことが重要です。


会社法58条|設立時募集株式に関する事項の決定

会社法58条は、発起人が設立時募集株式の募集をしようとするときに、その都度、設立時募集株式について定めなければならない事項を定めています。ここでいう設立時募集株式とは、募集に応じて設立時発行株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる設立時発行株式をいいます。

募集事項は、申込者が投資判断をする前提であり、後の払込み、創立総会、設立登記にも影響します。曖昧なまま募集を進めると、申込みの有効性、割当て、払込金額、設立中止時の返還・取消しをめぐって紛争化するおそれがあります。

決定事項 内容 実務上の注意点
設立時募集株式の数 募集する株式の数。種類株式発行会社の場合は種類及び種類ごとの数 発起人引受分、発行可能株式総数、設立後の議決権比率と整合させる
払込金額 設立時募集株式1株と引換えに払い込む金銭の額 発起人の払込金額、資本金・資本準備金、投資条件と整合させる
払込期日又は払込期間 設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又は期間 割当通知期限、払込金保管証明、創立総会日程を逆算する
設立登記がされない場合の取消し 一定の日までに設立登記がされない場合に引受けを取り消せることとするなら、その旨と一定の日 設立スケジュールが不確実な場合は、取消し可能日を慎重に設計する

会社法58条2項により、これらの事項を定めるには、発起人全員の同意が必要です。また、同条3項により、払込金額その他の募集条件は、当該募集ごとに均等に定めなければなりません。種類株式発行会社の場合には、種類及び募集ごとに均等性を確認します。

設立時発行株式の株数、払込金額、資本金・資本準備金の設計は、設立時発行株式とは|株数・払込金額・資本金/資本準備金の決め方でも整理しています。募集事項を決める前に、会社全体の資本政策を確認してください。

取消しの定めは設立遅延リスクへの備え

一定の日までに設立登記がされない場合の引受け取消しの定めは、投資家・引受人側の保護として重要です。設立が長引く可能性がある場合は、契約書や募集事項に、取消可能日、返金方法、費用負担、利息の有無を整理しておくと後日の混乱を防ぎやすくなります。


会社法59条|申込者への通知と申込み

会社法59条は、設立時募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対する通知事項と、申込みの方法を定めています。募集を受ける側が、会社の基本情報、設立条件、募集条件、払込みの場所を確認できるようにするための規定です。

申込み前に通知すべき事項

発起人は、申込みをしようとする者に対し、次のような事項を通知しなければなりません。

  • 定款の認証の年月日及びその認証をした公証人の氏名
  • 会社法27条各号の定款記載事項
  • 会社法28条各号の変態設立事項
  • 会社法32条1項各号の設立時発行株式に関する事項
  • 会社法58条1項各号の設立時募集株式に関する事項
  • 発起人が出資した財産の価額
  • 払込みの取扱いの場所
  • その他法務省令で定める事項

通知事項は、設立時募集株式を引き受けるかどうかを判断するための基礎資料です。特に、定款の目的・商号・本店所在地、発起人の出資内容、現物出資・財産引受けの有無、払込金額、払込期日、払込みの取扱場所は、申込者の判断に直結します。

発起人の出資履行との関係

発起人のうち出資の履行をしていない者がある場合、発起人は、会社法36条1項に規定する期日後でなければ、会社法59条1項の通知をすることができません。募集設立では、外部引受人に払込みを求める前提として、発起人側の出資履行の状況も確認する必要があります。

発起人の出資履行や払込みは、出資の履行(払込み)と払込証明|払込口座・保管証明・仮装のリスクで整理しています。募集設立では、発起人の払込みと設立時募集株式の引受人の払込みを、時期・証明資料・保管証明の観点から分けて管理します。

申込みの方法

設立時募集株式の引受けの申込みをする者は、氏名又は名称及び住所、引き受けようとする設立時募集株式の数を記載した書面を発起人に交付します。発起人の承諾を得れば、書面の交付に代えて電磁的方法により提供することもできます。

書類・データ 主な記載事項 実務上のポイント
募集事項通知 定款認証情報、会社基本事項、募集事項、払込み場所など 申込者に事前提示し、送付日・送付先・内容を記録する
株式申込書 申込者の氏名又は名称・住所、引受希望株式数 署名押印又は電子署名、本人確認、法人代表権を確認する
電磁的方法による申込み 書面に記載すべき事項 発起人の承諾、提供方法、記録保存を明確にする
変更通知 通知事項に変更があった旨及び変更内容 募集事項や定款事項の変更があれば直ちに通知する

会社法59条5項は、通知事項に変更があったときは、直ちに、その旨及び変更事項を申込者に通知しなければならないと定めています。申込み後に払込期日、払込みの取扱場所、募集株式数、定款事項などが変わる場合は、変更内容を確実に伝える必要があります。

申込者への通知は投資判断の前提になる

申込者への通知を軽く扱うと、後から「重要な情報を知らされていなかった」と主張されるおそれがあります。通知事項、通知日、通知先、添付資料、変更通知を一覧化し、申込書・割当通知・払込証拠と一緒に保管しておくことが重要です。


会社法60条|割当てと割当通知

会社法60条は、発起人が申込者の中から設立時募集株式の割当てを受ける者を定め、その者に割り当てる設立時募集株式の数を定めなければならないとしています。申込みをしただけで当然に希望株数すべてを引き受けられるわけではありません。

発起人は、申込者に割り当てる設立時募集株式の数を、その申込者が申し込んだ数よりも減少させることができます。たとえば、100株を申し込んだ者に50株だけ割り当てることができます。一方、申込みのない者に割り当てる、申込数を超えて割り当てる、といった処理は、通常の申込み・割当ての枠組みでは慎重に避けるべきです。

論点 結論・実務処理 注意点
申込者全員に割り当てる必要があるか 申込者の中から割当てを受ける者を定める 誰に何株割り当てたかを明確にする
申込数より少なく割り当てられるか 少ない数を割り当てることができる 端数処理、議決権比率、投資契約との整合を確認する
割当通知の期限 払込期日の前日まで、払込期間を定めた場合はその初日の前日までに通知する 払込期間の末日ではなく初日の前日が基準になる点に注意する
割当通知の証拠化 通知書、メール、電子契約記録などを保管する 通知が通常到達すべき時期、通知先を確認する

割当通知の期限は、設立時募集株式の払込期日又は払込期間と連動します。払込期間を定めた場合には、払込期間の初日の前日までに、申込者に対して割り当てる株式数を通知しなければなりません。払込期間の途中で通知すれば足りると考えないように注意が必要です。

割当通知は払込みの前提書類

割当通知が曖昧だと、申込者が何株分を払い込めばよいのかが分からなくなります。募集設立では、割当通知、払込金額、払込期日又は払込期間、払込みの取扱場所を同じ資料セットとして管理すると、払込み・保管証明・創立総会への接続が安定します。


会社法61条|総数引受契約を使う場合

会社法61条は、設立時募集株式を引き受けようとする者が、その総数の引受けを行う契約を締結する場合には、会社法59条と60条の規定を適用しないと定めています。これは、一般的な申込み・割当てではなく、設立時募集株式の総数を契約でまとめて引き受ける方法です。

総数引受契約を使うと、個別の申込みを受け、発起人が申込者ごとに割り当てるという流れをとりません。設立時募集株式の総数を誰がどれだけ引き受けるかを、契約で確定させます。

方式 手続の特徴 向いている場面
通常の申込み・割当て方式 申込者が申込み、発起人が割当てを決める 申込者が複数おり、発起人側で配分を調整したい場合
総数引受契約方式 設立時募集株式の総数を契約により引き受ける 特定の投資家又はグループに総数を確定的に引き受けてもらう場合

総数引受契約を使う場合でも、会社法58条の募集事項の決定は必要です。また、総数引受契約書は、誰が何株をどの条件で引き受けたかを示す重要書類になります。契約書には、引受株式数、払込金額、払込期日又は払込期間、払込みの取扱場所、設立不成立・設立遅延時の扱いを明確にしておくことが重要です。

総数引受契約でも募集事項の設計は省略できない

総数引受契約を使うと、申込み・割当てに関する59条・60条の流れは適用されません。しかし、募集事項の決定、払込み、払込金保管証明、創立総会、設立登記の流れがなくなるわけではありません。契約で引受人を確定させるだけでなく、設立手続全体との整合性を確認してください。


会社法62条|設立時募集株式の引受人が確定する時点

会社法62条は、どの者が、どの数の設立時募集株式について引受人になるかを定めています。通常の申込み・割当て方式では、申込者は、発起人が割り当てた設立時募集株式の数について、設立時募集株式の引受人となります。

総数引受契約方式では、その契約により設立時募集株式の総数を引き受けた者が、その者が引き受けた設立時募集株式の数について、設立時募集株式の引受人となります。

ルート 引受人になる者 引受株式数 主な証拠書類
申込み・割当て 申込者のうち発起人から割当てを受けた者 発起人が割り当てた設立時募集株式の数 申込書、割当決定書、割当通知書
総数引受契約 総数引受契約により引き受けた者 その者が契約で引き受けた設立時募集株式の数 総数引受契約書、発起人全員の同意書

引受人になると、次の段階として、会社法63条に基づき、払込期日又は払込期間内に、発起人が定めた払込みの取扱場所で払込金額の全額を払い込む必要があります。払込みをしない場合には、設立時募集株式の株主となる権利を失います。

払込みと払込金保管証明については、会社法63条・64条|設立時募集株式の払込み・払込金の保管証明で詳しく整理しています。57条から62条で引受人を確定させた後、速やかに63条・64条の払込み実務へ接続してください。


57条〜62条の実務フロー

会社法57条から62条の手続は、個別の条文を読むだけでなく、募集設立の時系列の中で整理すると理解しやすくなります。

手順 主な作業 根拠条文 作成・保管する主な資料
1 募集設立を選び、募集をする旨を決定する 57条 発起人全員の同意書、設立手続合意書
2 設立時募集株式の数、払込金額、払込期日又は払込期間などを決定する 58条 募集事項決定書、資本政策表
3 申込みをしようとする者に必要事項を通知する 59条1項・2項 募集事項通知書、定款、通知記録
4 申込者から申込書又は電磁的方法による申込みを受ける 59条3項・4項 株式申込書、電子申込記録、本人確認資料
5 申込者の中から割当先と割当株式数を決める 60条1項 割当決定書、割当表
6 払込期日又は払込期間初日の前日までに割当通知をする 60条2項 割当通知書、送付記録
7 総数引受契約を使う場合は契約で引受人を確定する 61条・62条 総数引受契約書
8 引受人を確定し、払込みへ進む 62条・63条 引受人一覧、払込依頼、払込先情報
9 払込み後、払込金保管証明を取得し、創立総会へ進む 63条〜65条 払込金保管証明書、創立総会資料

57条から62条の手続が不十分だと、63条の払込みや65条以降の創立総会に進む際に、引受人、株式数、払込金額、議決権数が確定できません。募集段階の書類は、創立総会議事録、設立登記申請書類、株主名簿の基礎資料としても使う前提で整理します。


設立時募集株式の手続で起きやすいミス

設立時募集株式の手続では、発起設立の感覚で処理してしまうことによるミスが起きやすいです。特に、外部株主が入る場合は、単なる社内メモではなく、株主関係の基礎資料として使える精度の書類が必要です。

ミス 何が問題になるか 予防策
発起人全員の同意を残していない 募集をする旨、募集事項の決定の有効性が争点になる 発起人全員の同意書を作成する
募集事項が曖昧 株式数、払込金額、払込期日、取消しの定めが不明確になる 会社法58条の各事項を募集事項決定書に整理する
申込者への通知が不足 投資判断に必要な情報を示していないと主張される 通知事項チェックリストを作り、送付記録を残す
申込書がない 誰が何株を申し込んだか確認できない 株式申込書又は電子申込記録を保管する
割当通知が遅い 払込み前提が崩れ、引受人との紛争になり得る 払込期日又は払込期間初日から逆算して通知する
総数引受契約の内容が薄い 引受株式数、払込条件、設立不成立時の処理が曖昧になる 契約書で株式数、金額、期限、返金・取消しを明記する
投資契約と募集事項がずれている 会社法上の手続書類と投資家との契約条件が矛盾する 投資契約、株主間契約、募集事項を同時に確認する

特に、外部投資家を入れる募集設立では、会社法上の募集手続と、投資契約・株主間契約・種類株式設計が密接に関係します。投資契約で合意した議決権比率、優先配当、拒否権、株式譲渡制限が、定款・募集事項・割当結果と一致しているかを確認します。

募集設立は株主名簿作成の前段階

設立時募集株式の引受人、引受株数、払込みの有無は、会社成立後の株主名簿の基礎になります。申込書、割当通知、総数引受契約、払込証明のいずれかが欠けると、会社成立後に株主名簿の記載根拠が弱くなります。


会社法57条〜62条と関連条文のつながり

会社法57条から62条は、募集設立の入口に位置するため、前後の条文と一体で理解する必要があります。特に、63条・64条の払込みと払込金保管証明、65条以降の創立総会、102条の設立時募集株式の引受人の権利、102条の2の払込仮装責任、103条の発起人責任との関係が重要です。

関連条文・記事 つながり 確認する理由
会社法63条・64条 引受人確定後の払込みと払込金保管証明 募集設立では払込金保管証明が重要になる
会社法65条〜83条 払込み後の創立総会 引受人が設立時株主となり、創立総会の構成員になる
会社法84条〜87条 種類創立総会・設立に関する事項の報告 種類株式を発行する場合に確認する
会社法95条〜102条 定款変更、引受取消し、成立後の株主となる権利 設立が遅れた場合や創立総会で定款変更する場合に関係する
会社法102条の2・103条 払込仮装責任・発起人の責任 引受人の払込みが仮装された場合や募集設立の責任を確認する
募集株式の発行(増資) 会社成立後の株式発行手続 設立時募集株式と成立後の募集株式を混同しないために確認する
会社法199条〜202条の2 成立後の募集株式の募集事項等 会社法57条〜62条とは主体・時点・既存株主保護が異なる

設立時募集株式の記事だけで完結させようとすると、払込み、創立総会、成立後の株主権、責任規定が見落とされます。本記事では57条から62条に絞っていますが、実務では、募集事項の決定時点から払込み・創立総会・登記までを一つのプロジェクトとして管理することが重要です。


会社法57条〜62条に関するよくある質問

発起人全員の同意はどの場面で必要ですか?

設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定める場面と、設立時募集株式に関する事項を定める場面で、発起人全員の同意が必要です。募集設立では、株主構成に大きく影響するため、一部の発起人だけで外部引受人を募集したり、募集条件を決めたりすることはできません。

設立時募集株式の募集事項には何を書きますか?

主な事項は、設立時募集株式の数、払込金額、払込期日又は払込期間、一定の日までに設立登記がされない場合に引受けを取り消せることとするならその旨及びその一定の日です。種類株式発行会社の場合は、種類及び種類ごとの数も整理します。

申込者全員に希望株数を割り当てる必要がありますか?

ありません。発起人は、申込者の中から割当てを受ける者を定め、割り当てる株式数を決めます。また、申込者が申し込んだ数より少ない数を割り当てることもできます。ただし、誰に何株を割り当てたかを明確にし、割当通知を期限までに行う必要があります。

割当通知はいつまでに必要ですか?

払込期日を定めた場合は、その期日の前日までに、払込期間を定めた場合は、その期間の初日の前日までに、申込者に割り当てる設立時募集株式の数を通知しなければなりません。払込期間の末日ではなく、初日の前日が基準になる点に注意が必要です。

総数引受契約を使うと申込書や割当通知は不要ですか?

会社法61条により、設立時募集株式の総数引受契約を締結する場合には、会社法59条・60条の申込み・割当てに関する規定は適用されません。そのため、通常の申込書・割当通知の流れは不要になります。ただし、総数引受契約書、募集事項、発起人全員の同意、払込み関係書類は必要です。

申込みをした時点で株主になりますか?

申込みをしただけでは、会社成立後の株主になるわけではありません。通常のルートでは、発起人から割当てを受けた数について設立時募集株式の引受人となり、その後、会社法63条に従って払込みを行い、会社が成立することで株主となる流れです。

払込みをしなかった引受人はどうなりますか?

会社法63条3項により、設立時募集株式の引受人が払込みをしないときは、その払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失います。払込みを仮装した場合には、会社法102条の2や103条の責任が問題になるため、払込証拠と保管証明を適切に整える必要があります。

発起設立でも会社法57条〜62条を確認する必要がありますか?

通常は、発起設立では発起人が設立時発行株式を全部引き受けるため、会社法57条から62条の募集手続は問題になりません。ただし、設立時から外部株主を入れる設計に変更する場合は、発起設立ではなく募集設立として57条から62条の手続を確認する必要があります。


まとめ

会社法57条から62条は、募集設立において、設立時発行株式を引き受ける者を募集し、申込みを受け、割当て又は総数引受契約により、設立時募集株式の引受人を確定させるための規定です。募集設立を選ぶ場合、この段階で誰が何株をどの条件で引き受けるかを明確にしておく必要があります。

  • 会社法57条では、発起人全員の同意により、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めます。
  • 会社法58条では、設立時募集株式の数、払込金額、払込期日又は払込期間、設立遅延時の取消しの定めなどを決定します。
  • 会社法59条では、申込者への通知事項と申込みの方法を確認します。
  • 会社法60条では、発起人が割当先と割当株数を決め、払込み前に割当通知をします。
  • 会社法61条・62条では、総数引受契約を使う場合の特則と、引受人の確定を整理します。

設立時募集株式の手続は、払込み、払込金保管証明、創立総会、設立登記、会社成立後の株主名簿につながる基礎部分です。募集設立を検討する場合は、募集事項、申込書、割当通知、総数引受契約、払込証拠を一体で整備し、設立後の株主関係に疑義が残らないように進めることが重要です。

坂尾陽弁護士

募集設立は、設立時から外部株主を入れる実務的な選択肢ですが、その分、発起人だけで完結する発起設立よりも書類と証拠化が重くなります。57条から62条の段階で、株数・金額・期限・引受人を確定させてから、払込みと創立総会へ進みましょう。

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