【会社法63条・64条】設立時募集株式の払込み・払込金の保管証明|条文の要点と実務ポイント

会社法63条・64条は、募集設立において、設立時募集株式の引受人が払込金額を払い込み、発起人が払込金保管証明書の交付を請求する場面を定める条文です。会社法57条から62条で、募集、申込み、割当て、総数引受契約により設立時募集株式の引受人が確定した後、会社法63条に従って払込みを行い、会社法64条に基づく払込金保管証明を整える流れになります。

募集設立では、発起人以外の者が会社成立前から株主として参加するため、払込金が実際に払い込まれ、会社成立後の資本として確保されるかが重要です。単に入金の外形があるだけでは足りず、払込期日又は払込期間、払込取扱場所、払込金額の全額、保管証明書、創立総会、設立登記までを一体で確認する必要があります。

発起設立の払込み一般は、出資の履行(払込み)と払込証明で扱う論点です。本記事では、募集設立に固有の会社法63条・64条を中心に、設立時募集株式の払込み、失権、払込金保管証明書、発起設立との違い、登記実務上の注意点、仮装払込みのリスクを整理します。

  • 会社法63条は、設立時募集株式の引受人が、発起人の定めた銀行等の払込取扱場所で、払込金額の全額を払い込む義務を定めています。
  • 払込みをしない引受人は、その払込みによって設立時募集株式の株主となる権利を失います。
  • 会社法64条は、発起人が払込取扱銀行等に対し、払込金の保管証明書の交付を請求できることを定めています。
  • 募集設立では、発起設立と異なり、設立登記で払込金保管証明書が重要な添付書面になります。
  • 見せ金や一時的な外形だけの払込みは、払込みの有効性や発起人等の責任に直結するため、証拠化と資金移動の実体を確認する必要があります。

坂尾陽弁護士

会社法63条・64条は、募集設立の「お金が本当に入ったか」を確認する中核です。募集事項や割当てを整えても、払込みと保管証明が崩れると、創立総会や設立登記の前提も揺らぎます。募集設立では、払込期日、払込取扱場所、入金者、金額、保管証明書をセットで管理しましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法63条・64条の位置づけ

会社法63条・64条は、会社法第2編第1章第9節「募集による設立」の第一款「設立時発行株式を引き受ける者の募集」に置かれています。前段階では、会社法57条から62条により、設立時募集株式の募集、申込み、割当て、総数引受契約、引受人の確定が行われます。

条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で会社法63条・64条を確認してください。会社法63条は払込みそのものを、会社法64条は払込金保管証明を扱います。

条文 主な内容 実務上の確認事項
会社法63条1項 設立時募集株式の引受人による払込金額の全額払込み 払込期日又は払込期間、払込取扱場所、入金者、金額、払込証拠
会社法63条2項 払込みにより株主となる権利の譲渡の対抗制限 会社成立前の権利移転を前提にした取引を安易に組まない
会社法63条3項 払込みをしない引受人の失権 払込未了者、再募集の要否、創立総会前の株主構成の確認
会社法64条1項 発起人による払込金保管証明書の交付請求 発起人分と募集引受人分の払込みを含めて、払込取扱銀行等に証明を請求
会社法64条2項 証明書を交付した銀行等の対抗制限 証明内容の虚偽や返還制限を、成立後の会社に対抗できない点を確認
会社法63条・64条は、募集設立の手続全体の中では「引受人の確定後、創立総会前」の資金確認部分に位置づけられます。会社法65条の創立総会は、払込期日又は払込期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく招集されます。

募集設立における払込みの流れ

募集設立の払込みは、単に銀行口座に入金するだけの手続ではありません。設立時募集株式の募集事項で定めた払込期日又は払込期間、発起人が定めた払込取扱場所、割当て又は総数引受契約で確定した引受株式数に対応して、引受人が払込金額の全額を払い込む必要があります。

会社法57条〜62条から会社法63条・64条へ進む

まず、発起人は設立時発行株式を引き受ける者を募集する旨を決め、設立時募集株式の数、払込金額、払込期日又は払込期間などの募集事項を決定します。その後、申込み、割当て、総数引受契約により、誰が何株の設立時募集株式の引受人になるかが確定します。

引受人が確定した後は、会社法63条に従って払込みを行い、発起人は会社法64条に基づいて払込金保管証明書の交付を請求します。その後、創立総会を経て、設立時取締役等の選任、調査、設立登記へ進みます。

発起設立との違いを意識する

発起設立では、発起人が設立時発行株式を全部引き受けるため、一般的な中小企業の設立では、代表者個人の口座に払込みを行い、通帳写し等を添付した払込みがあったことを証する書面を作成する実務が多く見られます。

これに対し、募集設立では、発起人以外の設立時募集株式の引受人も関与します。そのため、払込金保管証明書を通じて、払込金が保管されていることを確認する仕組みが重視されます。発起設立の払込証明と、募集設立の払込金保管証明書を混同しないことが重要です。

項目 発起設立 募集設立
設立時発行株式の引受人 発起人が全部を引き受ける 発起人以外の者にも募集して引き受けてもらう
払込みの中心条文 会社法34条 会社法63条
払込証拠 払込みがあったことを証する書面、通帳写し等が中心 払込金保管証明書が中心
創立総会 通常不要 原則として必要
実務上の注意 払込時期、払込口座、通帳記録、仮装払込み 払込取扱場所、保管証明書、引受人失権、創立総会との接続

会社法63条:設立時募集株式の払込金額の払込み

会社法63条の要点

会社法63条1項は、設立時募集株式の引受人が、会社法58条1項3号の期日又は期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの設立時募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならないと定めています。

ここで重要なのは、引受人ごとに、引き受けた設立時募集株式について、払込金額の全額を、定められた時期・場所で払い込むという点です。募集事項で定めた払込期日又は払込期間と、実際の入金記録が一致しているかを確認します。

払込みをする者は設立時募集株式の引受人

会社法63条の払込み義務を負うのは、会社法62条により設立時募集株式の引受人となった者です。通常の申込み・割当てルートでは、発起人から割当てを受けた申込者が、その割当株数について引受人になります。総数引受契約を締結した場合は、その契約により総数を引き受けた者が引受人になります。

実務では、申込書、割当通知、総数引受契約書、募集事項決定書面、払込記録を突き合わせ、誰が何株について、いくらを払い込むべきかを確認します。ここが曖昧だと、払込みの不足、株主名簿、創立総会の議決権、設立後の株主関係に波及します。

払込みは発起人が定めた銀行等の払込取扱場所で行う

会社法63条1項は、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所で払込みを行うことを求めています。発起人の手元で現金を受け取る運用にすると、払込金の実在性や保管証明の前提が不明確になります。

募集設立では、払込取扱銀行等を早めに確定し、払込期日又は払込期間、入金名義、入金額、証明書発行の可否、証明書発行までの日数を確認しておくことが重要です。銀行等によっては、設立時の募集設立の保管証明に慎重な運用をとることもあります。

払込金額は全額の払込みが必要

会社法63条1項は「払込金額の全額」の払込みを求めています。一部だけを払い込んだ場合、原則としてそのまま完全な払込みとは扱えません。引受人ごとの引受株数と払込単価をもとに、払込金額の全額が入金されているかを確認します。

複数の引受人がいる場合、1人の不足を他の引受人の超過入金で当然に補えるわけではありません。誰の何株についての払込みかを明確にし、必要に応じて入金依頼書や払込一覧表で管理します。

株主となる権利の譲渡は成立後の会社に対抗できない

会社法63条2項は、払込みをすることにより設立時発行株式の株主となる権利の譲渡について、成立後の株式会社に対抗できないと定めています。会社成立前の段階では、まだ株式そのものが成立していないため、株主となる地位の移転を前提に複雑な取引を組むことには注意が必要です。

設立時から出資者を変更したい場合は、権利譲渡で処理するのではなく、募集事項、割当て、総数引受契約、払込み、創立総会、設立後の株主名簿との整合性を見て、手続として正しく組み直すことを検討します。

払込みをしない引受人は株主となる権利を失う

会社法63条3項は、設立時募集株式の引受人が払込みをしないときは、その払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失うと定めています。これは、払込みをしない引受人が、後から当然に株主の地位を主張できるわけではないという意味です。

払込未了者が出た場合は、失権後の株主構成、募集設立を続行できるか、再募集が必要か、創立総会の議決権数、定款や募集事項との整合性を確認する必要があります。単に「後で払ってもらう」とするだけでは、会社法63条3項との関係で問題が残ります。


会社法64条:払込金の保管証明

会社法64条の要点

会社法64条1項は、会社法57条1項の募集をした場合に、発起人が、会社法34条1項及び会社法63条1項の払込みを取り扱った銀行等に対し、これらの規定により払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求できると定めています。

この証明書が、一般に払込金保管証明書と呼ばれるものです。募集設立では、発起人が引き受けた設立時発行株式の払込みと、設立時募集株式の引受人による払込みの双方が、保管証明の対象になり得ます。

発起人が払込取扱銀行等に請求する

保管証明書の交付を請求できるのは発起人です。設立時募集株式の引受人が個別に証明書を請求して登記に使うというより、発起人が設立手続の一環として、払込取扱銀行等に証明書の交付を求める構造です。

実務では、発起人代表、設立時代表取締役候補者、司法書士、金融機関との間で、証明書の請求者、請求書式、添付資料、証明対象金額、証明日、発行手数料、発行までの所要日数を確認します。

保管証明は発起人分と募集引受人分を含む

会社法64条1項は、会社法34条1項の払込みと会社法63条1項の払込みの双方を対象にしています。つまり、募集設立では、発起人が引き受けた設立時発行株式の払込みだけでなく、設立時募集株式の引受人が行った払込みも含めて、保管証明の対象になります。

そのため、発起人分と募集引受人分の入金額を区別して管理しつつ、最終的に設立時発行株式全体について必要な払込金が保管されているかを確認します。金額の内訳表を作成しておくと、登記書類や創立総会資料との整合性を確認しやすくなります。

銀行等は証明内容の虚偽や返還制限を会社に対抗できない

会社法64条2項は、保管証明書を交付した銀行等が、証明書の記載が事実と異なることや、払い込まれた金銭の返還に関する制限があることを、成立後の株式会社に対抗できないと定めています。

この規定は、払込金保管証明書が単なる参考資料ではなく、会社成立後の会社・債権者・株主の利益に関わる重要な証明であることを示しています。銀行等が証明書を交付する以上、証明内容に反する事情を後から会社に主張して、払込金の保管を否定することは許されません。

保管証明書は募集設立の登記実務で重要になる

募集設立では、発起設立よりも払込関係書類が重くなります。設立登記では、募集設立であること、設立時募集株式の払込みが完了していること、払込金保管証明書が整っていることを前提に、創立総会議事録、設立時取締役等の選任関係書類、調査報告書などと整合させます。

法務局の株式会社設立登記申請書の記載例でも、募集設立では払込金保管証明書が登記添付書類として扱われます。具体的な添付書類は会社の機関設計、定款内容、募集設立の進め方により変わるため、登記実務では司法書士・法務局の最新様式も確認する必要があります。


払込金保管証明書と発起設立の払込証明の違い

会社設立の払込みという点では、発起設立と募集設立は似ています。しかし、払込証拠の作り方は同じではありません。発起設立では、通帳写し等を添付した払込みがあったことを証する書面で足りる場面が多い一方、募集設立では払込金保管証明書が中心になります。

発起設立で使う払込証明書を、そのまま募集設立の保管証明書の代わりに使えると考えると、登記段階で補正や手続のやり直しにつながります。

比較項目 発起設立の払込証明 募集設立の払込金保管証明書
制度の対象 発起人が設立時発行株式を全部引き受ける設立 発起人以外の者にも設立時発行株式を募集する設立
根拠条文の中心 会社法34条 会社法63条・64条
証明主体 設立時代表取締役等が作成する払込証明書と通帳写し等が中心 払込取扱銀行等が作成する保管証明書が中心
証明の意味 払込みがあった事実を示す 払込金に相当する金銭が保管されていることを示す
注意点 払込日、入金名義、払込口座、通帳記録を確認 銀行等の証明書発行、証明対象金額、保管状態、登記添付書類を確認
募集設立を発起設立と同じ感覚で進めると、払込金保管証明書の取得が遅れ、創立総会や設立登記の日程に影響することがあります。募集設立を選ぶ場合は、設立スケジュールの早い段階で金融機関に確認しておくべきです。

募集設立の払込み・保管証明の実務フロー

会社法63条・64条の実務は、募集事項の決定、申込み・割当て、払込み、保管証明、創立総会、登記をつなげて管理することが重要です。どこか一つの書類だけを整えても、他の書類と日付・金額・株数・当事者がずれていると、後で説明が難しくなります。

実務フロー

  1. 発起人全員の同意により、設立時発行株式を引き受ける者を募集する旨を決定する。
  2. 設立時募集株式の数、払込金額、払込期日又は払込期間、その他の募集事項を決定する。
  3. 申込者への通知、申込書の受領、割当て又は総数引受契約により、設立時募集株式の引受人を確定する。
  4. 発起人が払込取扱銀行等と払込取扱場所を確認し、引受人に払込方法を案内する。
  5. 引受人が会社法63条に従い、払込期日又は払込期間内に払込金額の全額を払い込む。
  6. 発起人が会社法64条に基づき、払込取扱銀行等に払込金保管証明書の交付を請求する。
  7. 払込金保管証明書を踏まえて、創立総会、設立時取締役等の調査、設立登記の添付書類を整える。

書類チェックリスト

  • 募集事項決定書面又は発起人全員の同意書で、払込期日又は払込期間が明確になっているか。
  • 申込書、割当通知、総数引受契約書から、引受人ごとの株数と払込金額を確認できるか。
  • 払込取扱銀行等と払込取扱場所が、会社法63条の要件に沿っているか。
  • 引受人ごとの入金名義、入金日、入金額が、募集事項と整合しているか。
  • 払込金保管証明書の証明対象金額が、発起人分と募集引受人分を含めた必要額と一致しているか。
  • 創立総会議事録、設立時取締役等の調査報告書、設立登記申請書の記載と矛盾していないか。

設立スケジュールとの関係

募集設立では、払込みが完了してから創立総会を招集する流れになります。会社法65条は、払込期日又は払込期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく創立総会を招集することを定めています。そのため、払込期間の設定が長すぎると、創立総会と設立登記の日程も後ろ倒しになります。

外部投資家や事業協力者を設立時株主に入れる場合、投資契約、株主間契約、定款、募集事項、払込スケジュール、創立総会、登記希望日を逆算して設計する必要があります。


仮装払込み・見せ金のリスク

会社法63条・64条では、払込金額の全額が、会社成立後の資本として実質的に確保されることが重要です。形式上、銀行口座に一時的に入金した外形があっても、当初から会社資金として確保する意思がなく、すぐに返済や払戻しをする設計であれば、仮装払込みや見せ金の問題が生じます。

最高裁判例が示す「実質的な払込み」の重要性

最高裁昭和38年12月6日判決は、当初から真実の株式払込みとして会社資金を確保する意図がなく、一時的借入金によって払込みの外形を整え、会社成立後すぐにその払込金を払い戻して借入先に返済した場合には、有効な株式払込みがあったとはいえないと判断しています。

現在の会社法63条・64条の場面でも、実務上は同じ問題意識が重要です。払込金保管証明書があるかどうかだけでなく、各引受人から現実に払込みがされ、その資金が会社成立後の会社資金として確保される実体があるかを確認する必要があります。

払込金保管証明書があっても安心しきらない

保管証明書は重要な証明書ですが、設立関係者が払込みの実体を軽視してよいという意味ではありません。見せ金、預合い、入金直後の不自然な払戻し、引受人本人以外の不明確な立替え、資金の出所が説明できない入金などは、後日、発起人等の責任や払込仮装責任の問題につながります。

払込みを仮装した場合の責任は、募集設立では会社法102条の2・103条が中心になります。発起設立の仮装払込みについては、会社法52条の2の問題として整理されます。募集設立での責任関係は、会社法102条の2・103条も併せて確認してください。

実務上の予防策

  • 引受人ごとに、自己資金又は正当な資金調達に基づく払込みであるかを確認する。
  • 払込み直後に、借入先や関係者へ予定された返金をする設計にしない。
  • 入金名義、入金日、入金額、引受株数を一覧化し、募集事項・割当通知と照合する。
  • 金融機関に保管証明書の発行可否と証明対象金額を事前確認する。
  • 払込金の使用開始時期、設立登記前の資金移動、発起人の立替精算を慎重に管理する。

設立登記・創立総会との関係

募集設立の払込みと保管証明は、設立登記だけでなく、創立総会、設立時取締役等の調査、設立後の株主関係にも関わります。会社法63条・64条を単独の条文として読むだけでなく、後続手続との接続を確認することが重要です。

創立総会の前提になる

募集設立では、払込期日又は払込期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく創立総会を招集する流れになります。払込みをしなかった引受人は失権するため、創立総会における設立時株主、議決権数、選任手続にも影響します。

創立総会の手続は、創立総会の手続及び会社法65条〜83条で整理しています。

設立時取締役等の調査にも関係する

募集設立では、設立時取締役等による調査でも、法令・定款違反の有無、払込みの履行、変態設立事項などが問題になります。払込関係書類に不備があると、調査報告、創立総会、設立登記の各段階で説明が必要になります。

設立時取締役等の調査については、設立時取締役等による調査及び会社法93条・94条も参照してください。

会社成立後の株主名簿・資本金にもつながる

会社が成立すると、設立時株主は会社成立時の株主として扱われます。払込み、失権、割当て、創立総会の議決権が整理されていないと、成立後の株主名簿、資本金、投資契約、株主間契約、議決権割合に影響します。

設立時募集株式を使う場合は、会社成立前の資本政策と、成立後の募集株式の発行(増資)を混同しないことも重要です。成立後に追加出資を受ける場合は、会社法199条以下の募集株式発行として整理します。


会社法63条・64条に関するよくある質問

会社法63条は発起設立にも適用されますか?

会社法63条は、募集設立における設立時募集株式の引受人の払込みを定める条文です。発起設立では、発起人の出資の履行として会社法34条が中心になります。もっとも、払込みの実体が必要であるという考え方は共通します。

発起設立でも払込金保管証明書は必要ですか?

通常の発起設立では、募集設立の払込金保管証明書は不要とされ、払込みがあったことを証する書面や通帳写し等で対応する実務が一般的です。募集設立では、会社法64条に基づく払込金保管証明書が重要になります。

払込金保管証明書は誰が請求しますか?

会社法64条1項では、発起人が、払込みの取扱いをした銀行等に対して、払込金保管証明書の交付を請求できるとされています。実務では、発起人代表や司法書士が金融機関と調整し、必要書類や証明対象金額を確認します。

払込期日を過ぎてから払った場合はどうなりますか?

会社法63条3項により、払込みをしない引受人は、払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失います。期日後の入金で当然に地位が復活するとは考えず、失権、再募集、創立総会の議決権、登記書類への影響を個別に確認する必要があります。

一部だけ払い込んだ場合でも株主になれますか?

会社法63条1項は、払込金額の全額の払込みを求めています。一部払込みだけでは、原則として完全な払込みとはいえません。引受人ごとに、引き受けた株数に対応する全額が払い込まれているかを確認してください。

払込金保管証明書があれば見せ金の問題は起きませんか?

保管証明書があることは重要ですが、それだけで払込みの実体が常に問題にならないわけではありません。一時的借入金で外形を作り、会社成立後すぐに返済するような見せ金的な処理は、払込みの有効性や発起人等の責任の問題を生じさせます。

銀行が証明書の内容と違う事情を後から主張できますか?

会社法64条2項により、保管証明書を交付した銀行等は、証明書の記載が事実と異なることや、払込金の返還に関する制限があることを、成立後の株式会社に対抗できません。このため、金融機関にとっても保管証明書の発行は重い意味を持ちます。

募集設立で払込みが終わった後、すぐに会社のお金として使えますか?

会社成立前の払込金は、会社成立後の会社資金として確保されるべきものです。設立登記前の資金移動、発起人の立替精算、借入返済、関係者への返金を安易に行うと、払込みの実体や保管証明の趣旨に反するおそれがあります。設立登記前後の資金移動は慎重に管理してください。

会社成立後の増資でも会社法63条・64条を使いますか?

会社成立後の増資は、会社法199条以下の募集株式発行として整理します。会社法63条・64条は、会社成立前の募集設立における設立時募集株式の払込みと保管証明を扱う条文です。成立前の設立時募集株式と、成立後の募集株式発行を区別することが重要です。


まとめ

会社法63条・64条は、募集設立で設立時募集株式の引受人が払込みを行い、発起人が払込金保管証明書を取得するための規定です。募集設立では、発起人以外の者が設立時から株主として参加するため、払込みの実体と保管証明が特に重要になります。

  • 会社法63条は、設立時募集株式の引受人が、払込期日又は払込期間内に、払込取扱場所で払込金額の全額を払い込む義務を定めています。
  • 払込みをしない引受人は、払込みによって設立時募集株式の株主となる権利を失います。
  • 会社法64条は、発起人が払込取扱銀行等に対し、払込金保管証明書の交付を請求できることを定めています。
  • 保管証明書を交付した銀行等は、証明内容の虚偽や返還制限を成立後の会社に対抗できません。
  • 募集設立では、払込み・保管証明・創立総会・設立登記を一体で管理し、見せ金や仮装払込みを避ける必要があります。

募集設立は、外部投資家や事業協力者を会社成立時から株主に入れられる一方、発起設立よりも手続と書類の負担が重くなります。会社法63条・64条の段階では、払込期日、払込取扱場所、引受人ごとの払込額、保管証明書、創立総会の議決権を確認し、成立後の株主関係に疑義が残らないように進めることが重要です。

坂尾陽弁護士

募集設立では、払込みと払込金保管証明書が資本形成の証拠になります。外部株主を入れる設計ほど、株数・金額・入金者・証明書・創立総会議決権の整合性が重要です。会社設立前から資本政策と登記実務を同時に確認しておきましょう。

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