【会社法102条の2・103条】払込仮装責任・発起人の責任等|条文の要点と実務ポイント

会社法102条の2・103条は、募集設立で払込みの仮装や現物出資財産等の価額不足があった場合に、設立時募集株式の引受人、発起人、設立時取締役などがどのような責任を負うかを定める条文です。

募集設立では、発起人以外の引受人も設立に参加するため、払込金の保管証明、創立総会、設立時取締役等による調査、設立登記の各段階で、出資の実体と責任関係を確認する必要があります。

特に重要なのは、払込みを仮装した設立時募集株式の引受人は全額支払義務を負うこと、仮装払込みに関与した一定の発起人・設立時取締役は連帯責任を負うこと、募集設立では現物出資財産等の価額不足について発起設立より免責が狭いことです。

本記事では、会社法102条の2・103条について、会社法52条・52条の2との違い、発起人等の責任、払込仮装時の権利制限、免除の要件、実務上の確認ポイントを整理します。

  • 会社法102条の2は、払込みを仮装した設立時募集株式の引受人に、仮装した払込金額全額の支払義務を負わせる規定です。
  • 会社法103条1項は、募集設立で現物出資財産等の価額が著しく不足する場合の免責を、検査役調査を経た場合に限定する方向で調整しています。
  • 会社法103条2項は、仮装払込みに関与した一定の発起人・設立時取締役に、引受人との連帯支払義務を負わせます。
  • 会社法103条3項により、発起人・設立時取締役の責任は、総株主の同意がなければ免除できません。
  • 会社法103条4項により、募集広告等で会社設立を賛助する旨の記載を承諾した者は、発起人とみなされることがあります。

坂尾陽弁護士

会社法102条の2・103条は、募集設立の責任規定の最後に置かれた重要条文です。払込みの実体、現物出資財産等の評価、創立総会での説明、発起人・設立時取締役の関与を、書類だけでなく資金の動きまで確認することが大切です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)

 


会社法102条の2・103条の位置づけ

会社法102条の2・103条は、会社法第2編第1章第9節「募集による設立」の末尾に置かれています。直前の会社法102条は、設立時募集株式の引受人の閲覧請求権、会社成立時に株主となる時期、仮装払込みがあった場合の権利制限などを定めています。

会社法102条の2は、その会社法102条3項の場面、つまり設立時募集株式の引受人が払込みを仮装した場合に、引受人本人が会社に対して負う支払義務を定めます。会社法103条は、募集設立における発起人等の責任を、会社法52条・102条の2との関係で調整する規定です。

条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で会社法102条、102条の2、103条をあわせて確認してください。会社法103条2項の「法務省令で定める者」は、e-Gov法令検索「会社法施行規則」18条の2も確認する必要があります。

条文 主な内容 実務上の確認事項
会社法102条3項・4項 仮装払込みがあった株式の権利行使制限と譲受人の扱い 支払が完了するまで議決権・株主権を行使できるかを確認する
会社法102条の2 払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の支払義務 仮装した払込金額全額の支払義務と免除要件を確認する
会社法103条1項 募集設立における会社法52条2項の読替え 現物出資財産等の価額不足で免責できる場面を確認する
会社法103条2項・3項 仮装払込みに関与した発起人・設立時取締役の連帯責任と免除制限 誰が関与者に当たるか、注意義務の立証余地があるかを確認する
会社法103条4項 募集広告等で設立賛助を承諾した者のみなし発起人化 発起人ではない関係者の氏名・名称を広告等に出す場合のリスクを確認する
この記事の前提

この記事は、主に非上場・中小企業で募集設立を選択する場面を想定しています。実務上は発起設立が多いため、募集設立を選ぶ場合は、設立時募集株式の募集、払込金保管証明、創立総会、設立時取締役等による調査を一体で確認してください。


募集設立で責任規定が問題になる場面

会社設立時の責任は、発起設立でも募集設立でも問題になります。ただし、募集設立では、発起人以外の引受人が参加し、創立総会や払込金保管証明が関係するため、責任関係が複雑になりやすい点に注意が必要です。

会社法102条の2・103条が問題になる典型場面は、主に、設立時募集株式の払込みが仮装された場合、現物出資財産等の価額が定款記載額に著しく不足する場合、募集広告等に発起人以外の賛助者名を出す場合です。

場面 関係する条文 責任・影響の概要
設立時募集株式の引受人が払込みを仮装した 会社法102条3項、102条の2 引受人は仮装した払込金額全額の支払義務を負い、支払まで権利行使が制限される
発起人・設立時取締役が仮装払込みに関与した 会社法103条2項、会社法施行規則18条の2 一定の関与者は引受人と連帯して支払義務を負う
現物出資財産等の価額が著しく不足する 会社法52条、103条1項 募集設立では、職務上の注意を尽くしたことによる免責が制限される
募集広告等に設立賛助者として氏名・名称を出した 会社法103条4項 発起人ではなくても発起人とみなされ、責任規定の適用を受けることがある

仮装払込みについては、最高裁昭和38年12月6日判決が、当初から真実の株式払込みとして会社資金を確保する意図がなく、一時的借入金で払込の外形だけを整え、会社成立後すぐに払込金を引き出して返済した場合には、有効な払込みとはいえないと判断しています。現行会社法では、こうした払込仮装について、支払義務や権利行使制限を通じて会社財産の充実を図っています。

書類だけで判断しない

払込証明書や払込金保管証明書が形式上そろっていても、資金の実体がない場合は責任問題につながります。入金日、払込名義、直後の出金、借入金との対応、創立総会での説明内容まで確認する必要があります。


会社法102条の2|払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の責任

会社法102条の2第1項は、設立時募集株式の引受人が会社法102条3項に規定する場合、すなわち会社法63条1項の払込みを仮装した場合に、株式会社に対し、仮装した払込金額の全額を支払う義務を負うと定めています。

この責任は、払込みを仮装した引受人本人の責任です。実際には会社に資金が入っていない、又は入ったように見せてすぐに外へ出しているにもかかわらず、株式引受の外形だけを作ると、会社成立後の会社財産が不足します。その不足を回復するため、引受人に全額支払義務が課されます。

また、会社法102条の2第2項により、この義務は総株主の同意がなければ免除できません。単なる取締役会決議や株主総会の多数決で免除できるものではなく、株主全員の同意が必要になる点が重要です。

確認事項 ポイント
誰が責任を負うか 払込みを仮装した設立時募集株式の引受人です。
何を支払うか 払込みを仮装した払込金額の全額です。
支払先はどこか 成立した株式会社です。
免除できるか 総株主の同意がなければ免除できません。
権利行使はどうなるか 会社法102条3項により、支払がされるまで設立時株主・株主の権利行使が制限されます。
会社法102条3項との関係

会社法102条の2は、会社法102条3項の権利行使制限とセットで理解します。支払義務を負うだけでなく、支払がされるまで、仮装払込みに係る設立時発行株式について設立時株主・株主の権利を行使できません。


会社法103条|発起人の責任等

会社法103条は、募集設立における発起人の責任等を定める条文です。中心となるのは、現物出資財産等の価額不足に関する会社法52条2項の読替え、仮装払込みに関与した発起人・設立時取締役の連帯責任、発起人とみなされる賛助者の扱いです。

会社法103条1項|募集設立では価額不足責任の免責が狭い

会社法52条1項は、株式会社の成立時における現物出資財産等の価額が、定款に記載又は記録された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役が会社に対して連帯して不足額を支払う義務を負うと定めています。

発起設立では、一定の発起人及び設立時取締役について、検査役の調査を経た場合、又は職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、責任を負わないという免責が認められます。

これに対し、会社法103条1項は、会社法57条1項の募集をした場合、つまり募集設立の場合には、会社法52条2項中の「次に」を「第一号に」と読み替えると定めています。実務上は、募集設立では、職務上の注意を尽くしたことを証明しても、会社法52条2項2号による免責は使えないと整理できます。

設立方法 現物出資財産等の価額不足がある場合の免責 実務上の意味
発起設立 検査役調査を経た場合、又は注意義務を尽くしたことを証明した場合に免責され得る 注意義務を尽くしたことの立証が問題になる
募集設立 会社法103条1項により、会社法52条2項1号、すなわち検査役調査を経た場合に限定される 注意義務を尽くしただけでは免責されず、評価・検査役手続の確認が重要になる

会社法103条2項|仮装払込みに関与した発起人・設立時取締役の連帯責任

会社法103条2項は、会社法102条3項に規定する仮装払込みがある場合に、払込みを仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者が、会社に対し、会社法102条の2第1項の引受人と連帯して、仮装した払込金額全額の支払義務を負うと定めています。

会社法施行規則18条の2では、払込みの仮装に関する職務を行った発起人及び設立時取締役、払込みの仮装が創立総会決議に基づく場合にその議案を提案した発起人、議案提案の決定に同意した発起人、創立総会で説明した発起人及び設立時取締役などが挙げられています。

もっとも、会社法103条2項ただし書により、当該払込みを仮装した者を除き、その者が職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、責任を負いません。したがって、発起人・設立時取締役の責任では、仮装払込みへの関与の有無、担当職務、創立総会での説明内容、注意義務違反の有無が問題になります。

会社法103条3項|総株主の同意がなければ免除できない

会社法103条3項は、会社法103条2項により発起人又は設立時取締役が負う義務について、総株主の同意がなければ免除できないと定めています。仮装払込みは会社財産の充実に直接関わるため、責任免除のハードルは高く設定されています。

会社法103条4項|発起人でない設立賛助者も発起人とみなされることがある

会社法103条4項は、募集設立で、募集広告その他募集に関する書面又は電磁的記録に、自己の氏名又は名称と株式会社の設立を賛助する旨を記載又は記録することを承諾した者は、発起人とみなして責任規定を適用すると定めています。

これは、発起人ではない者であっても、会社設立を後押しする者として氏名・名称を出すことで、引受人に信用を与える場合があるためです。募集設立で第三者の名称を広告、説明資料、ウェブページ、電子的資料に掲載する場合は、その第三者がどの範囲で責任を負い得るかを事前に確認する必要があります。

募集資料に名前を出す場合の注意

単なる取引先紹介や推薦文のつもりでも、募集広告等に「設立を賛助する」趣旨で氏名・名称を出すと、会社法103条4項により発起人とみなされるリスクがあります。募集資料の表現は、法的な位置づけを確認してから作成することが重要です。


発起設立の52条・52条の2との違い

会社法102条の2・103条は、発起設立の責任規定である会社法52条・52条の2と対応します。実務では、発起設立と募集設立で、誰が責任を負うのか、どの責任が免除できるのか、どの場面で権利行使が制限されるのかを比較すると理解しやすくなります。

比較項目 発起設立 募集設立
仮装した出資者本人の責任 会社法52条の2により、発起人が仮装した出資の金銭又は財産について支払・給付義務を負う 会社法102条の2により、設立時募集株式の引受人が仮装した払込金額全額の支払義務を負う
関与者の責任 会社法52条の2第2項・3項により、一定の発起人・設立時取締役が支払義務を負い、連帯債務者となる 会社法103条2項により、一定の発起人・設立時取締役が引受人と連帯して支払義務を負う
権利行使制限 会社法52条の2第4項・5項で、支払等まで権利行使が制限される 会社法102条3項・4項で、支払まで権利行使が制限される
現物出資財産等の価額不足 会社法52条。一定の場合に注意義務を尽くしたことによる免責あり 会社法103条1項により、会社法52条2項2号の注意義務免責が使えない
責任の免除 会社法55条等により総株主の同意が必要 会社法102条の2第2項、103条3項により総株主の同意が必要

発起設立の責任総論は、発起人等の責任(会社法52条〜56条・103条)で横断的に整理しています。会社法52条の価額不足責任は会社法52条の逐条解説、会社法52条の2の仮装出資責任は会社法52条の2の逐条解説も参照してください。

募集設立では責任が重く見える場面があります

募集設立では、発起人以外の引受人を募集するため、現物出資財産等の価額不足について、発起設立よりも免責が狭くなります。募集設立を選ぶ場合は、現物出資・財産引受けの評価を慎重に行い、検査役調査の要否を早めに確認してください。


実務で問題になりやすい仮装払込みのパターン

仮装払込みは、単に「払込みを忘れた」という問題ではありません。外形上は払込みがあるように見えるものの、会社財産として実質的に確保されていない場合に問題になります。募集設立では払込金保管証明書が関係しますが、資金の実体確認を怠ると、成立後の責任追及や権利行使制限に発展するおそれがあります。

パターン 問題点 確認資料
一時借入で払込外形だけを作る 会社資金として確保する意思がなく、設立後すぐ返済すると仮装払込みと評価され得る 入金原資、借入契約、出金記録、返済記録
名義だけを借りて引受人とする 真の引受意思や払込資金の実体が不明確になり、責任主体が争われる 申込書、総数引受契約、本人確認、送金記録
発起人が払込資金を立て替え、直後に回収する 実質的に引受人の出資がない場合、仮装払込み・名義貸しリスクがある 立替合意、資金移動、回収時期、会計処理
創立総会資料で払込状況を形式的に説明する 設立時株主・設立時取締役の判断を誤らせるおそれがある 創立総会参考書類、議事録、説明資料、質問回答記録
払込後すぐに関係者へ貸付・返金する 真正な事業資金として会社に残っているかが問題になる 取締役会資料、資金使途、貸付契約、返金の理由

払込みの実務は、出資の履行(払込み)と払込証明や、募集設立の払込み・払込金保管証明を扱う会社法63条・64条の逐条解説で詳しく整理しています。

見せ金は「設立できたから終わり」ではありません

登記が完了しても、払込みの実体がなければ、会社法102条の2・103条の支払義務、株主権行使の制限、関与者の責任、場合によっては刑事責任が問題になります。資金の流れを説明できる状態にしておくことが重要です。


設立時取締役等の調査・創立総会での確認ポイント

募集設立では、設立時取締役等による調査、創立総会での報告・説明、設立登記添付書類がつながります。会社法102条の2・103条の責任を避けるためには、払込みや現物出資財産等の評価について、設立前に資料をそろえて確認することが重要です。

設立時取締役等による調査については、会社法93条・94条の逐条解説で扱っています。創立総会の招集・決議・議事録は、会社法65条〜83条の逐条解説及び創立総会の手続を確認してください。

段階 確認すべき事項 不備がある場合の対応
募集事項決定・申込み 募集株式数、払込金額、払込期日・期間、申込者情報、総数引受契約の有無 募集事項・申込書・割当通知の整合性を確認する
払込み 払込口座、払込名義、払込金額、払込時期、払込金保管証明書 不足・名義違い・直後出金があれば原因を確認する
現物出資・財産引受け 定款記載、価額算定、検査役調査又は例外要件、証明書の内容 価額不足リスクがあれば再評価・定款変更・引受人説明を検討する
創立総会 払込状況、調査報告、仮装払込みに関する説明、反対者の有無 議事録に説明・質疑・決議内容を明確に残す
設立登記 添付書類、払込金保管証明書、調査報告書、創立総会議事録の整合性 補正が必要な場合は責任関係にも影響するため事実確認を行う
責任規定は設立後の紛争で効いてきます

会社法102条の2・103条は、設立前の手続を進める段階では見落とされやすい条文です。しかし、設立後に資金不足、株主間対立、債権者対応、株主権行使の争いが起きたとき、払込みや評価の実体が問題になります。


責任追及・免除・支払後の効果

会社法102条の2・103条の責任は、会社に対する支払義務として問題になります。誰が支払義務を負うのか、連帯責任になるのか、免除できるのか、支払後に株主権を行使できるようになるのかを分けて整理する必要があります。

論点 整理
責任追及の相手方 払込みを仮装した設立時募集株式の引受人、仮装に関与した一定の発起人・設立時取締役、発起人とみなされる者が問題になります。
連帯責任 会社法103条2項では、一定の発起人・設立時取締役が、会社法102条の2第1項の引受人と連帯して支払義務を負います。
注意義務の抗弁 会社法103条2項ただし書により、一定の関与者は注意を怠らなかったことを証明すれば責任を免れ得ます。ただし、当該払込みを仮装した者は除かれます。
免除 会社法102条の2第2項、103条3項により、総株主の同意がなければ免除できません。
支払後の権利行使 会社法102条3項との関係で、支払がされると、仮装払込みに係る株式について権利行使制限が解消される方向で整理されます。
譲受人の扱い 会社法102条4項により、譲受人は原則として権利を行使できますが、悪意又は重大な過失があるときは制限されます。

なお、発起人等の任務懈怠責任、連帯責任、責任免除の一般的な整理は、会社法53条〜55条の逐条解説で扱っています。会社法102条の2・103条は、募集設立における払込仮装と価額不足に関する特則として位置づけると理解しやすくなります。


成立後の募集株式発行との比較

会社法102条の2・103条は、会社成立前の募集設立に関する責任規定です。これに対し、会社成立後に募集株式を発行する場合には、会社法208条以下、212条、213条、213条の2、213条の3などが問題になります。

両者は似ていますが、募集設立では、まだ株式会社が成立していない段階で、発起人、設立時取締役、創立総会、設立時株主が関与する点が異なります。成立後の増資では、既存株主、取締役会、株主総会、募集株式の引受人、現物出資財産の評価が中心になります。

比較項目 募集設立 成立後の募集株式発行
対象場面 株式会社成立前の設立時募集株式 株式会社成立後の募集株式発行・増資
主な関係者 発起人、設立時取締役、設立時募集株式の引受人、設立時株主 取締役、既存株主、募集株式の引受人
払込仮装の責任 会社法102条の2・103条 会社法213条の2・213条の3
価額不足の責任 会社法52条・103条 会社法213条
確認資料 定款、募集事項、払込金保管証明、創立総会議事録、調査報告書 募集事項決定書、総会・取締役会議事録、払込証明、現物出資資料

成立後の募集株式発行は、募集株式の発行(増資)で全体像を整理しています。価額不足責任は会社法213条の逐条解説、払込仮装に関する成立後の責任は会社法213条の2の逐条解説及び会社法213条の3の逐条解説で扱います。


実務チェックリスト

募集設立で会社法102条の2・103条のリスクを避けるには、設立手続の終盤で形式的に確認するだけでなく、募集開始前から、出資の実体、現物出資財産等の評価、創立総会資料、広告表現を確認しておく必要があります。

チェック項目 確認内容
募集設立を選ぶ必要性 発起設立で足りるか、外部引受人を入れる必要があるかを確認する。
募集事項の整合性 払込金額、払込期日・期間、割当数、総数引受契約の有無を確認する。
払込みの実体 入金原資、払込名義、払込時期、払込後の出金、借入金との対応を確認する。
払込金保管証明 保管証明書の記載と実際の払込状況が一致しているかを確認する。
現物出資・財産引受け 定款記載、価額、検査役調査、専門家証明、証明者責任を確認する。
設立時取締役等の調査 調査対象資料、調査報告、創立総会での説明を記録する。
創立総会資料 払込み・現物出資・財産引受けについて、事実に沿った説明になっているか確認する。
募集広告・説明資料 発起人以外の者を設立賛助者として表示していないか、表示する場合の承諾と責任を確認する。
責任免除の可否 総株主の同意が必要となる責任かを確認する。
設立後の初動 資金不足や株主権行使の争いが起きた場合、支払義務・権利制限・責任追及の整理を行う。

坂尾陽弁護士

募集設立は、発起人以外の引受人を入れる分、出資・説明・責任の確認が増えます。会社法102条の2・103条は、設立時の資金の実体と関与者の責任を後から確認するための重要なチェックポイントです。

会社法102条の2・103条に関するよくある質問

会社法102条の2は誰の責任を定めていますか?

会社法102条の2は、払込みを仮装した設立時募集株式の引受人本人の責任を定めています。引受人は、会社に対し、仮装した払込金額の全額を支払う義務を負います。

会社法103条2項の責任は誰が負いますか?

払込みを仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として、会社法施行規則18条の2で定められる者が責任を負います。具体的には、払込みの仮装に関する職務を行った発起人・設立時取締役、創立総会で仮装に関する議案を提案・説明した者などが問題になります。

会社法103条1項により何が変わりますか?

募集設立では、会社法52条2項の免責が、会社法52条2項1号、つまり検査役調査を経た場合に限定されます。そのため、発起設立と異なり、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明するだけでは、現物出資財産等の価額不足責任を免れません。

仮装払込みをした株式でも議決権を行使できますか?

会社法102条3項により、会社法102条の2第1項又は会社法103条2項の支払がされるまでは、仮装払込みに係る設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使できません。

仮装払込みがあった株式を譲り受けた人はどうなりますか?

会社法102条4項により、譲受人は原則として権利を行使できます。ただし、仮装払込みについて悪意又は重大な過失がある場合は、権利行使できません。

発起人や設立時取締役の責任は免除できますか?

会社法103条3項により、会社法103条2項の責任は、総株主の同意がなければ免除できません。単なる多数決では足りないため、実務上は免除のハードルが高い責任です。

発起人ではない顧問や支援者も責任を負いますか?

通常の助言者や支援者であるだけでは直ちに会社法103条4項の対象になるわけではありません。ただし、募集広告その他の募集に関する書面・電磁的記録に、自己の氏名・名称と会社設立を賛助する旨を記載又は記録することを承諾した場合は、発起人とみなされることがあります。

募集設立では検査役調査を省略してよいですか?

検査役調査の省略要件を満たす場合もありますが、募集設立では価額不足責任の免責が発起設立より狭くなります。現物出資・財産引受けがある場合は、省略要件だけでなく、評価資料、証明書、創立総会での説明、責任リスクまで確認する必要があります。


まとめ

会社法102条の2・103条は、募集設立における払込仮装責任、現物出資財産等の価額不足責任、発起人・設立時取締役の責任、設立賛助者のみなし発起人化を定める重要な条文です。募集設立では、発起人以外の引受人が関与するため、責任規定を発起設立と分けて理解する必要があります。

  • 会社法102条の2により、払込みを仮装した設立時募集株式の引受人は、仮装した払込金額全額の支払義務を負います。
  • 会社法103条1項により、募集設立では現物出資財産等の価額不足責任について、注意義務を尽くしたことによる免責が使えません。
  • 会社法103条2項により、仮装払込みに関与した一定の発起人・設立時取締役は、引受人と連帯して支払義務を負います。
  • 会社法102条の2・103条の責任は、総株主の同意がなければ免除できません。
  • 募集広告等に設立賛助者として氏名・名称を出す場合、会社法103条4項により発起人とみなされるリスクがあります。

募集設立で外部引受人、現物出資、財産引受け、設立賛助者の表示が関係する場合は、設立前の段階で、募集事項、払込み、評価資料、創立総会資料、設立登記書類の整合性を確認しておきましょう。形式的に登記を完了させるだけでなく、資金と財産の実体を説明できる状態にしておくことが、後日の責任追及や株主間紛争を防ぐうえで重要です。

坂尾陽弁護士

会社法102条の2・103条は、募集設立の「責任の出口」を定める条文です。払込仮装や価額不足が起きてから対応するのではなく、募集開始前、払込前、創立総会前の各段階で、責任が生じない設計と証拠化をしておきましょう。

関連記事

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)