会社法65条から83条は、募集設立における創立総会について、招集、通知、招集手続の省略、創立総会参考書類、議決権、決議要件、代理行使、書面・電磁的方法による議決権行使、議事録、決議省略・報告省略を定める条文です。
創立総会は、発起人以外の者が設立時募集株式を引き受ける募集設立で登場する、設立前の総会です。発起設立では通常問題になりませんが、募集設立では、払込みの後、設立時株主を構成員として設立に関する事項を確認し、必要な決議を行うため、会社成立前の株主関係と登記実務をつなぐ重要な手続になります。
特に、創立総会の決議要件は通常の株主総会と同じではありません。創立総会の決議は、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であり、かつ、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数が必要です。書面投票や電磁的方法による投票を使う場合は、招集通知、参考書類、議決権行使書面、備置書類まで含めて整理する必要があります。
本記事では、会社法65条から83条について、創立総会の招集時期、招集通知、手続省略、議決権数、決議要件、代理・書面・電磁的方法による議決権行使、説明義務、議長権限、議事録、決議省略・報告省略を、募集設立の実務に沿って整理します。
- 会社法65条は、設立時募集株式の募集をする場合に、発起人が払込期日又は払込期間末日後、遅滞なく創立総会を招集することを定めています。
- 会社法67条・68条は、創立総会の日時・場所・目的事項、書面投票・電磁的方法による投票の有無、招集通知の時期と方法を定めています。
- 会社法72条・73条は、設立時株主の議決権と創立総会の決議要件を定めています。通常の株主総会の普通決議・特別決議と混同しないことが重要です。
- 会社法74条から77条は、代理行使、書面投票、電磁的方法による投票、議決権の不統一行使を定めています。
- 会社法81条から83条は、創立総会議事録、決議省略、報告省略を定めています。省略した場合でも、同意書面等や議事録の備置きが問題になります。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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会社法65条〜83条の位置づけ
会社法65条から83条は、会社法第2編第1章第9節「募集による設立」の第二款「創立総会等」に置かれています。前段階では、会社法57条から62条により設立時募集株式の募集・申込み・割当て・引受けが行われ、会社法63条・64条により払込みと払込金保管証明が問題になります。
その後、発起人は創立総会を招集し、設立時株主に対して設立に関する事項を報告し、必要な決議を行います。創立総会の後には、設立時取締役等の選任・調査、必要な定款変更、種類創立総会、設立登記へ進むため、会社法65条から83条は、募集設立の中間地点ではなく、設立登記に進むための重要な確認手続といえます。
条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で会社法65条から83条を確認してください。創立総会議事録の記載事項は、e-Gov法令検索「会社法施行規則」の会社法施行規則16条も併せて確認します。
| 条文 | 主な内容 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 会社法65条 | 創立総会の招集 | 募集設立の場合、払込期日又は払込期間末日後に遅滞なく招集する |
| 会社法66条 | 創立総会の権限 | 設立に関する事項、設立廃止、創立総会の終結などに限られる |
| 会社法67条・68条 | 招集の決定・通知 | 日時、場所、目的事項、書面投票・電磁的方法の有無、通知期限、通知方法 |
| 会社法69条〜71条 | 招集手続省略、参考書類、議決権行使書面 | 全員同意による手続省略、書面投票・電磁的方法を使う場合の資料交付 |
| 会社法72条・73条 | 議決権数と決議要件 | 1株1議決権を原則とし、決議要件は総議決権過半数と出席議決権3分の2以上 |
| 会社法74条〜77条 | 議決権行使方法 | 代理行使、書面投票、電磁的方法による投票、不統一行使 |
| 会社法78条〜80条 | 説明義務、議長権限、延期・続行 | 発起人の説明、議長の秩序維持、延期又は続行時の手続 |
| 会社法81条 | 議事録 | 議事録作成、10年間備置き、閲覧・謄写請求 |
| 会社法82条・83条 | 決議省略・報告省略 | 全員の書面又は電磁的記録による同意、同意書面等の保存、みなし議事録 |
会社法84条以降では、種類創立総会、設立に関する事項の報告、設立時取締役等の選任・解任、募集設立における調査、定款変更などが続きます。本記事では、創立総会の招集・議決権・議事録・省略という基本手続に範囲を絞ります。
創立総会をいつ・誰が招集するか
会社法65条は、設立時募集株式の募集をする場合には、発起人が創立総会を招集しなければならないと定めています。ここでいう設立時株主は、会社成立時に株主となる者を意味します。創立総会は、会社成立前に、発起人が設立時株主を集めて開催する総会です。
招集時期は払込み後が原則
創立総会は、会社法58条1項3号の払込期日又は払込期間の末日のうち、最も遅い日以後、遅滞なく招集します。つまり、設立時募集株式の引受人が払込みをする前に、創立総会だけを先に進めるのではありません。
払込みが終わっていない段階では、創立総会の構成員となる設立時株主、議決権数、失権の有無が確定しません。会社法63条3項により、払込みをしない引受人は、払込みによって設立時募集株式の株主となる権利を失うため、創立総会の招集時には、誰が実際に設立時株主として議決権を行使できるかを確認する必要があります。
発起人は必要があるときにも招集できる
会社法65条2項は、発起人が必要があると認めるときは、いつでも創立総会を招集できると定めています。たとえば、設立に関する事項の確認、設立時役員等の選任、定款変更、設立廃止の判断など、設立手続上の重要事項について、設立時株主の意思決定が必要になる場面が考えられます。
募集設立の全体像は、募集設立とは|設立時募集株式・創立総会・払込までの実務フローで整理しています。創立総会だけを独立して考えるのではなく、募集事項、引受け、払込み、保管証明、設立登記までを一連で確認することが重要です。
創立総会で決議できる事項
会社法66条は、創立総会の権限を限定しています。創立総会は、会社法の募集設立に関する節に規定された事項と、株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項に限って決議できます。
創立総会は、設立後の株主総会と似ていますが、会社がまだ成立していない段階の総会です。そのため、設立後の通常の業務執行や事業運営全般を自由に決める場ではありません。決議できる事項は、設立手続と会社成立に必要な事項に限定されます。
| 事項 | 創立総会で扱う理由 | 関連する主な記事 |
|---|---|---|
| 設立時役員等の選任 | 募集設立では、創立総会で設立時取締役等を選任する場面がある | 会社法88条〜92条 |
| 設立手続の調査・報告 | 払込み、現物出資、設立手続の適法性確認につながる | 会社法93条・94条 |
| 定款変更・設立廃止 | 募集設立では創立総会決議で定款変更や設立廃止が問題になる | 会社法95条〜102条 |
| 種類創立総会が必要な事項 | 種類株式の設計により、種類創立総会決議が必要になることがある | 会社法84条〜87条 |
| 創立総会の終結 | 募集設立の手続終了と設立登記の準備につながる | 株式会社の成立時期 |
会社法73条4項は、創立総会が招集決定事項に掲げられた目的事項以外の事項について決議できないと定めています。ただし、定款変更又は株式会社の設立廃止については例外があります。招集通知や目的事項の設計を曖昧にすると、議事録や登記添付書面の整合性にも影響します。
招集の決定事項と招集通知
創立総会を招集する場合、発起人は、会社法67条に基づき、創立総会の日時・場所、目的事項、書面による議決権行使を認めるか、電磁的方法による議決権行使を認めるかなどを決めます。設立時株主が1000人以上の場合は、書面による議決権行使を認める旨を定める必要があります。
通知期限は2週間前が原則
会社法68条1項により、創立総会を招集するには、原則として創立総会の日の2週間前までに設立時株主へ通知を発します。ただし、書面投票又は電磁的方法による投票を定めていない場合で、設立しようとする株式会社が公開会社でないときは、1週間前までに短縮されます。さらに、取締役会設置会社でない非公開会社で定款にこれを下回る期間を定めた場合は、その期間によることができます。
もっとも、書面投票又は電磁的方法による投票を定めた場合は、通知期限や参考書類の交付が重くなるため、単に「手続を便利にするため」とだけ考えて導入するのは危険です。設立時株主の人数、所在、議案の内容、同意取得の見込みを踏まえて選択します。
| 場面 | 通知期限 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 原則 | 創立総会の日の2週間前まで | 公開会社、書面投票・電磁的方法を定める場合は特に余裕を持つ |
| 非公開会社で、書面投票・電磁的方法を定めない場合 | 創立総会の日の1週間前まで | 中小企業の募集設立ではこの整理になることがある |
| 取締役会非設置の非公開会社で、定款にさらに短い期間を定めた場合 | 定款で定めた期間 | 定款記載と招集通知、議事録の整合性を確認する |
| 設立時株主全員が同意する場合 | 招集手続を省略できることがある | 会社法69条の例外に注意し、全員同意の証拠を残す |
書面通知が必要な場合
会社法68条2項は、書面投票又は電磁的方法による投票を定めた場合、または設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には、招集通知を書面でしなければならないと定めています。設立時株主の承諾を得れば、一定の方法で電磁的方法による通知に代えることもできます。
通知には、会社法67条1項各号の事項を記載又は記録します。通知先は、定款記載の住所や申込時の住所、又は設立時株主が別に通知した場所・連絡先に宛てて発すれば足り、通常到達すべき時に到達したものとみなされます。
招集手続の省略と参考書類・議決権行使書面
会社法69条は、設立時株主全員の同意があるときは、創立総会を招集手続なしに開催できると定めています。全員が集まれる小規模な募集設立では、招集通知の形式よりも、全員同意を明確に残すことが実務上重要です。
ただし、会社法67条1項3号又は4号、つまり書面による議決権行使又は電磁的方法による議決権行使を定めた場合には、招集手続の省略はできません。書面投票・電磁的方法による投票を定めた場合は、設立時株主に参考書類や議決権行使書面を交付又は提供する必要があるためです。
書面投票を定めた場合
会社法70条は、書面による議決権行使を定めた場合に、発起人が、招集通知に際して、創立総会参考書類と議決権行使書面を設立時株主に交付しなければならないと定めています。設立時株主が招集通知の電磁的方法による通知に承諾している場合は、これらの事項を電磁的方法で提供できる場合があります。
電磁的方法による投票を定めた場合
会社法71条は、電磁的方法による議決権行使を定めた場合の創立総会参考書類や議決権行使書面に記載すべき事項の提供を定めています。電子メールやシステムで手続を行う場合でも、発起人の承諾、設立時株主の承諾、提供方法、提出期限、記録保存を整理しなければなりません。
会社法69条は「招集手続」を省略する制度です。会社法82条は「決議」を省略する制度で、会社法83条は「報告」を省略する制度です。いずれも全員同意が関係しますが、要件、対象、残すべき書面、議事録の作り方が異なります。
設立時株主の議決権と創立総会の決議要件
会社法72条は、設立時株主が、原則として、引き受けた設立時発行株式1株につき1個の議決権を有すると定めています。単元株式数を定款で定めている場合は、1単元の設立時発行株式につき1個の議決権を有します。
もっとも、成立後の株式会社がその経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして法務省令で定める設立時株主は、議決権から除外されます。また、種類株式発行会社で議決権制限のある種類の設立時発行株式を発行する場合には、創立総会で議決権を行使できる事項が制限されることがあります。ただし、株式会社の設立廃止については、設立時株主は引き受けた設立時発行株式について議決権を行使できます。
基本の決議要件
会社法73条1項は、創立総会の決議要件を定めています。創立総会の決議は、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数で行います。
この要件は、設立後の株主総会の普通決議と同じではありません。出席者の中だけで多数を取ればよいのではなく、議決権を行使できる設立時株主全体の議決権の過半数も必要です。書面又は電磁的方法で行使された議決権は、会社法75条2項・76条3項により、出席した設立時株主の議決権数に算入されます。
| 総議決権 | 出席議決権 | 必要な賛成数の考え方 | 実務上の見方 |
|---|---|---|---|
| 100個 | 60個 | 全体過半数は51個以上、出席3分の2は40個以上 | 51個以上の賛成が必要 |
| 100個 | 90個 | 全体過半数は51個以上、出席3分の2は60個以上 | 60個以上の賛成が必要 |
| 300個 | 180個 | 全体過半数は151個以上、出席3分の2は120個以上 | 151個以上の賛成が必要 |
定款変更には重い要件がある
会社法73条2項は、定款を変更して、その発行する全部の株式について譲渡による株式取得に会社の承認を要する旨の定めを設ける場合に、より重い決議要件を定めています。この場合、議決権を行使できる設立時株主の半数以上であり、かつ、その議決権の3分の2以上に当たる多数が必要です。
さらに、会社法73条3項は、定款を変更して、会社法107条1項3号に掲げる事項、すなわち一定の事由が生じた場合に会社が株式を取得できる旨の定めを設ける場合などについて、設立時株主全員の同意を要求しています。募集設立で定款変更をする場合は、どの条文の定款変更かによって決議要件が変わる点に注意してください。
設立後の株主総会の招集手続や決議要件との比較は、株主総会の招集手続も参照してください。創立総会は、株主総会と似ていますが、会社成立前の設立時株主を構成員とする点で、手続の前提が異なります。
議決権の代理行使・書面行使・電磁的方法・不統一行使
会社法74条から77条は、創立総会で設立時株主がどのように議決権を行使できるかを定めています。募集設立では、設立時株主が複数いることが前提になるため、代理出席、書面投票、電磁的方法による投票、不統一行使を使う可能性があります。
代理人による議決権行使
会社法74条により、設立時株主は代理人によって議決権を行使できます。この場合、設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面を発起人に提出する必要があります。代理権の授与は、創立総会ごとに行います。
代理権を証明する書面は、創立総会の日から3か月間、発起人が定めた場所に備え置きます。会社成立後は本店に備え置くことになります。設立時株主は、定められた時間内に、代理権を証明する書面や電磁的記録の閲覧・謄写を請求できます。
書面による議決権行使
会社法75条は、書面による議決権行使を定めています。設立時株主は、議決権行使書面に必要事項を記載し、会社法施行規則で定める時までに発起人へ提出して議決権を行使します。書面により行使された議決権数は、出席した設立時株主の議決権数に算入されます。
発起人は、提出された議決権行使書面を創立総会の日から3か月間備え置き、設立時株主は閲覧又は謄写を請求できます。書面投票を採用する場合は、議決権行使書面の様式、提出期限、賛否の記載方法、集計方法を事前に整えておく必要があります。
電磁的方法による議決権行使
会社法76条は、電磁的方法による議決権行使を定めています。発起人の承諾を得て、所定の時までに議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供して行います。電磁的方法によって行使された議決権数も、出席した設立時株主の議決権数に算入されます。
電子メールやオンラインフォームで議決権行使を受ける場合でも、本人確認、到達時刻、記録保存、改ざん防止、議決権数の集計が問題になります。便利さだけで採用せず、創立総会議事録や備置書類との整合性を確認してください。
議決権の不統一行使
会社法77条は、設立時株主が議決権を統一しないで行使できることを定めています。この場合、設立時株主は、創立総会の日の3日前までに、発起人に対してその旨と理由を通知しなければなりません。
もっとも、当該設立時株主が他人のために設立時発行株式を引き受けた者でないときは、発起人は不統一行使を拒むことができます。不統一行使は例外的な場面で問題になりやすいため、単に複数の意見があるというだけで安易に使える制度ではない点に注意が必要です。
発起人の説明義務・議長の権限・延期又は続行
創立総会では、設立時株主から説明を求められることがあります。会社法78条は、発起人が、創立総会において設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならないと定めています。
ただし、説明事項が創立総会の目的事項に関しない場合、説明することにより設立時株主の共同の利益を著しく害する場合、その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合には、説明を拒むことができます。会社法施行規則15条は、調査が必要な場合、他者の権利侵害となる場合、同一事項の繰り返し説明要求などを定めています。
会社法79条は、創立総会の議長が、創立総会の秩序を維持し、議事を整理すると定めています。議長は、その命令に従わない者や秩序を乱す者を退場させることもできます。議長の権限は、議事運営のための権限であり、議案の内容や設立時株主の権利を不当に制限するためのものではありません。
会社法80条は、創立総会で延期又は続行について決議があった場合には、会社法67条と68条の規定を適用しないと定めています。これは、いったん適法に招集された創立総会について、延期又は続行を決議した場合に、改めて招集決定や招集通知をやり直す必要がないことを意味します。
創立総会議事録と備置き・閲覧
会社法81条は、創立総会の議事について、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと定めています。創立総会議事録は、設立時株主の意思決定を証明するだけでなく、募集設立の登記添付書面としても重要です。
会社法施行規則16条は、創立総会議事録を、書面又は電磁的記録で作成すること、開催日時・場所、議事の経過の要領と結果、出席した発起人・設立時役員等の氏名又は名称、議長の氏名、議事録作成に係る職務を行った発起人の氏名又は名称などを記載事項として定めています。
| 議事録で確認する事項 | 主な内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 日時・場所 | 創立総会が開催された日時と場所 | 招集通知、出席記録、登記書類と整合させる |
| 議事の経過と結果 | 議案、説明、質疑、決議結果 | 決議要件を満たしたことが分かるように記載する |
| 出席者 | 発起人、設立時取締役、設立時監査役等 | 設立時役員の調査・報告や就任承諾と整合させる |
| 議長 | 議長がいる場合の氏名 | 議長選任方法や定款の定めも確認する |
| 議事録作成者 | 議事録作成に係る職務を行った発起人 | 発起人の氏名又は名称を明確にする |
| 省略手続の場合 | みなし決議・みなし報告の内容と日付 | 同意書面等と議事録の内容を一致させる |
発起人は、創立総会の日から10年間、議事録を発起人が定めた場所に備え置かなければなりません。会社成立後は、その本店に備え置く必要があります。設立時株主は、会社成立後には株主及び債権者として、定められた時間内に議事録の閲覧又は謄写を請求できます。
募集設立の設立登記では、創立総会議事録が添付書類として問題になります。法務局の株式会社設立登記申請書の募集設立記載例でも、株式申込書、払込金保管証明書、創立総会議事録などが添付書類として示されています。設立登記の期限や成立時期は、会社法911条の設立登記も確認してください。
創立総会の決議省略・報告省略
会社法82条は、創立総会の目的事項について、発起人が提案をし、その提案について議決権を行使できる設立時株主全員が書面又は電磁的記録により同意したときは、その提案を可決する創立総会決議があったものとみなすと定めています。
これは、いわゆるみなし決議です。実際に会場に集まって創立総会を開催しなくても、全員の書面又は電磁的記録による同意があれば、決議があったものとして扱われます。ただし、単に口頭で了承を得ただけでは足りません。同意書面又は電磁的記録を残し、議事録も会社法施行規則16条に沿って作成する必要があります。
発起人は、会社法82条により創立総会の決議があったものとみなされた日から10年間、同意書面又は電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置きます。設立時株主は、定められた時間内に閲覧又は謄写を請求できます。会社成立後の親会社社員も、権利行使のため必要があるときは、裁判所の許可を得て閲覧・謄写請求ができる場合があります。
報告省略との違い
会社法83条は、発起人が設立時株主全員に対して創立総会に報告すべき事項を通知し、その事項を創立総会に報告することを要しないことについて、設立時株主全員が書面又は電磁的記録により同意したときは、その事項の創立総会への報告があったものとみなすと定めています。
決議省略は、創立総会の目的事項について「可決する旨の決議」があったものとみなす制度です。これに対し、報告省略は、報告すべき事項について「報告があったもの」とみなす制度です。設立に関する事項の報告、設立時取締役等の調査結果の報告など、報告事項を省略する場合は、どの事項が報告省略の対象なのかを明確にして同意を取得します。
| 制度 | 根拠条文 | 要件 | 残すべき資料 |
|---|---|---|---|
| 招集手続の省略 | 会社法69条 | 設立時株主全員の同意。ただし書面投票・電磁的方法を定めた場合は不可 | 全員同意の証拠、開催議事録 |
| 決議省略 | 会社法82条 | 発起人の提案について、議決権を行使できる設立時株主全員が書面又は電磁的記録で同意 | 同意書面等、みなし決議議事録、10年間の備置き |
| 報告省略 | 会社法83条 | 報告事項を通知し、報告不要について設立時株主全員が書面又は電磁的記録で同意 | 通知、同意書面等、みなし報告議事録 |
創立総会を開催しない方法を選ぶ場合でも、同意書面、電磁的記録、議事録、備置き書類は必要です。「全員が分かっているから大丈夫」という運用にすると、設立登記、成立後の株主関係、後日の紛争対応で証拠が不足します。
会社法65条〜83条の実務チェックリスト
会社法65条から83条を実務で確認するときは、条文を順番に読むだけでなく、創立総会の前・当日・後に分けて書類と判断事項を整理すると事故を防ぎやすくなります。
| 時点 | 確認事項 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 創立総会前 | 設立時株主と議決権数 | 引受け、払込み、失権、種類株式、単元株式の有無を確認する |
| 創立総会前 | 招集決定事項 | 日時、場所、目的事項、書面投票・電磁的方法の有無を決める |
| 創立総会前 | 招集通知・参考書類 | 通知期限、書面通知の要否、創立総会参考書類、議決権行使書面を確認する |
| 創立総会前 | 招集省略・決議省略の要否 | 全員同意の取得方法、書面又は電磁的記録の保存方法を確認する |
| 創立総会当日 | 出席・議決権集計 | 代理、書面、電磁的方法、不統一行使を含めて集計する |
| 創立総会当日 | 説明義務と議事運営 | 質問事項、説明拒否の理由、議長の権限行使を整理する |
| 創立総会後 | 議事録作成 | 会社法施行規則16条に沿って、決議結果と議事経過を記録する |
| 創立総会後 | 備置き・登記書類 | 議事録、委任状、議決権行使書面、同意書面等の保存と設立登記添付を確認する |
募集設立では、発起人以外の者が会社成立時から株主になるため、創立総会の手続不備は、単なる設立前の形式ミスにとどまりません。成立後の株主名簿、議決権割合、役員選任、定款内容、設立登記、投資契約・株主間契約にも影響します。
会社法65条〜83条に関するよくある質問
創立総会は発起設立でも必要ですか?
通常、創立総会が問題になるのは募集設立です。発起設立では、発起人が設立時発行株式の全部を引き受けるため、会社法65条の創立総会招集手続は通常登場しません。発起設立の手続は、定款作成、発起人の出資履行、設立時役員選任、設立登記を中心に整理します。
創立総会は払込み前に開催できますか?
会社法65条1項は、払込期日又は払込期間末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく創立総会を招集すると定めています。払込み前では、設立時株主や議決権数、失権の有無が確定しないため、払込み後に創立総会を行うのが原則です。
創立総会の決議要件は株主総会の普通決議と同じですか?
同じではありません。会社法73条1項では、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であり、かつ、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数が必要です。出席者の過半数だけで足りると誤解しないようにしてください。
創立総会で目的事項にない議案を決議できますか?
原則としてできません。会社法73条4項は、創立総会が、招集決定事項に掲げられた目的事項以外の事項について決議できないと定めています。ただし、定款変更又は株式会社の設立廃止については例外があります。
招集通知を省略すれば、議事録も不要になりますか?
不要にはなりません。招集手続の省略は、設立時株主全員の同意がある場合に招集手続を経ずに開催できる制度です。開催した創立総会の議事については、会社法81条と会社法施行規則16条に従って議事録を作成し、備え置く必要があります。
決議省略を使う場合、創立総会議事録は不要ですか?
決議省略を使う場合でも、みなし決議に関する議事録を作成します。会社法施行規則16条は、決議があったものとみなされた事項の内容、提案者、みなされた日、議事録作成に係る職務を行った発起人などを記載事項として定めています。
創立総会議事録はどこに保存しますか?
会社法81条2項により、発起人は、創立総会の日から10年間、議事録を発起人が定めた場所に備え置きます。株式会社成立後は、その本店に備え置きます。同意書面等を用いるみなし決議についても、会社法82条2項により10年間の備置きが必要です。
創立総会の議事録は設立登記に使いますか?
募集設立では、創立総会議事録が設立登記の添付書類として問題になります。設立時役員の選任、設立に関する報告、定款変更、設立時代表取締役の選定書面など、他の添付書面との整合性も確認する必要があります。
創立総会と種類創立総会は同じですか?
同じではありません。創立総会は設立時株主全体の総会です。種類創立総会は、種類株式発行会社で、特定の種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員として開かれる総会です。種類創立総会については、会社法84条〜87条で整理します。
創立総会で役員報酬を決める必要がありますか?
設立後の取締役報酬の決定は、成立後の株主総会や定款の定めとの関係で整理します。創立総会は設立に関する事項を扱う総会であり、設立後の経営全般を自由に決める場ではありません。役員選任、就任承諾、報酬決定、税務上の定期同額給与の扱いを混同しないようにしてください。
まとめ
会社法65条から83条は、募集設立における創立総会の基本手続を定める条文です。創立総会は、払込み後、会社成立前に、設立時株主を構成員として行われる総会であり、招集通知、議決権、決議要件、議事録、省略手続を正確に整理する必要があります。
- 会社法65条は、募集設立において発起人が創立総会を招集する義務を定めています。
- 会社法67条・68条は、創立総会の日時・場所・目的事項、通知期限、書面通知や電磁的方法による通知を定めています。
- 会社法72条・73条は、設立時株主の議決権と創立総会の決議要件を定めています。総議決権過半数と出席議決権3分の2以上という要件を確認します。
- 会社法74条から77条は、代理行使、書面行使、電磁的方法、不統一行使を定めています。各書類・記録の備置きも忘れてはいけません。
- 会社法81条から83条は、議事録、決議省略、報告省略を定めています。省略した場合でも、同意書面等と議事録の保存が必要です。
募集設立は、外部株主を会社成立時から参加させられる一方、発起設立よりも手続負担が重くなります。会社法65条から83条の段階では、設立時株主、議決権数、招集通知、決議要件、議事録、登記添付書類を一体で確認し、成立後の株主関係に疑義が残らないように進めることが重要です。
坂尾陽弁護士
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