【会社法88条〜92条】設立時取締役等の選任・解任|条文の要点と実務ポイント

会社法88条から92条は、募集設立における設立時取締役等の選任・解任を定める条文です。発起設立では、出資の履行後に発起人が設立時役員等を選任するのが基本ですが、募集設立では、設立時募集株式を引き受けた設立時株主が参加する創立総会を中心に、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を選任します。

特に重要なのは、会社法88条の「創立総会決議による選任」、会社法89条の「累積投票」、会社法90条の「種類創立総会による選任」、会社法91条・92条の「会社成立前の解任」の関係です。役員を誰にするかは、会社成立後のガバナンスだけでなく、設立登記、就任承諾書、設立時取締役等による調査にもつながります。

募集設立は、発起人以外の引受人を広く入れる設立方法です。そのため、設立時役員等の選任についても、発起人だけで決めるのではなく、創立総会という会社成立前の意思決定機関を通す設計になっています。種類株式を発行する場合には、役員選任権付種類株式や種類創立総会の有無も確認しなければなりません。

本記事では、会社法88条から92条について、募集設立における設立時取締役等の選任方法、累積投票、種類創立総会による選任、会社成立前の解任、議事録・登記実務上の注意点を整理します。

  • 会社法88条は、募集設立で設立時取締役等を創立総会決議により選任することを定めています。
  • 会社法89条は、設立時取締役を2人以上選任する場合の累積投票請求と投票方法を定めています。
  • 会社法90条は、役員選任権付種類株式を発行する場合に、種類創立総会で設立時取締役等を選任する場面を定めています。
  • 会社法91条・92条は、会社成立前に設立時取締役等を解任できる場合と、創立総会・種類創立総会の使い分けを定めています。
  • 実務では、定款、募集事項、創立総会議事録、種類創立総会議事録、就任承諾書、設立登記添付書類を整合させることが重要です。

坂尾陽弁護士

募集設立では、設立時役員等の選任を「発起人だけで決めればよい」と処理してしまうと、会社法88条との関係で手続が崩れます。創立総会で誰をどの役職に選任するのか、種類株式がある場合に種類創立総会が必要かを、設立登記前に確認しましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法88条〜92条の位置づけ

会社法88条から92条は、会社法第2編第1章第9節「募集による設立」の第四款「設立時取締役等の選任及び解任」に置かれています。募集設立では、設立時募集株式の募集、申込み、割当て、払込みの後に創立総会が開かれ、その創立総会で会社成立前の重要事項を決定します。

会社法65条から83条は創立総会の基本手続を定め、会社法84条から86条は種類創立総会を定めています。会社法88条から92条は、その創立総会・種類創立総会の枠組みを使って、会社成立時に取締役等となる者を選任し、必要があれば会社成立前に解任するための規定です。

条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で会社法88条から92条を確認してください。募集設立の手続全体は、募集設立とは|設立時募集株式・創立総会・払込までの実務フローもあわせて確認すると整理しやすくなります。

条文 主な内容 実務上の確認事項
会社法88条 設立時取締役等の選任 募集設立では、設立時取締役等を創立総会決議で選任する
会社法89条 累積投票による設立時取締役の選任 2人以上の設立時取締役を選任する場合、定款に別段の定めがなければ累積投票請求に注意する
会社法90条 種類創立総会決議による選任 役員選任権付種類株式を発行する場合、種類創立総会で選任すべき役員がいないか確認する
会社法91条 創立総会決議による解任 会社成立前に、会社法88条で選任された設立時役員等を創立総会で解任できる
会社法92条 種類創立総会決議による解任 会社法90条により選任された設立時取締役・設立時監査役の解任機関を確認する
会社成立前の役員選任ルールです

会社法88条から92条は、会社成立前の設立段階における選任・解任ルールです。会社成立後の取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任・解任は、株主総会や種類株主総会など会社成立後の機関決定の問題として整理します。


募集設立における設立時取締役等とは

設立時取締役等とは、株式会社の設立に際して、会社成立後に取締役等となる予定の者をいいます。会社法88条では、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人が対象になっています。

会社法上は、発起設立と募集設立で選任方法が異なります。発起設立では、発起人が出資の履行後に設立時役員等を選任するのが基本です。これに対し、募集設立では、設立時募集株式の引受人が設立時株主になるため、設立時役員等の選任は創立総会の決議で行わなければなりません。

設立方法 設立時役員等の選任方法 主な参照条文 実務上のポイント
発起設立 発起人の決定又は定款の定め 会社法38条〜45条 定款で定めた者は、出資の履行完了時に選任されたものとみなされる
募集設立 創立総会の決議 会社法88条 発起人だけで決めず、創立総会議事録で選任を明確に残す
種類株式を使う募集設立 種類創立総会の決議が必要になる場合がある 会社法90条 役員選任権付種類株式や定款の種類株式内容を確認する

設立時役員等の資格や欠格事由は、会社成立後の役員資格ともつながります。たとえば、取締役の欠格事由、会計参与の資格、監査役の資格、会計監査人の資格を確認せずに創立総会で選任すると、就任承諾書や設立登記の段階で補正が必要になることがあります。設立時取締役・監査役の基本実務は、設立時取締役・監査役の選任方法|就任承諾・印鑑・欠格事由を整理も参照してください。

選任後は調査・代表者選定・登記へ進む

募集設立で設立時取締役等を選任した後は、会社法93条・94条の調査、設立時代表取締役の選定、設立登記へ進みます。つまり、会社法88条から92条は、単に役員候補者を決めるだけの規定ではなく、会社成立前の最終確認と登記実務に接続する規定です。

創立総会議事録には、誰をどの役職に選任したか、監査等委員会設置会社の場合には設立時監査等委員である設立時取締役とそれ以外の設立時取締役を区別したか、種類株式がある場合には種類創立総会決議との関係をどう処理したかが分かるように記録します。


会社法88条|設立時取締役等の選任

会社法88条1項は、会社法57条1項の募集をする場合、つまり募集設立の場合には、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人の選任を、創立総会の決議によって行わなければならないと定めています。

ここでのポイントは、発起人が募集事項を決め、設立時募集株式の申込み・割当てを行った後であっても、設立時役員等の選任は創立総会の決議事項になるという点です。発起人が候補者を準備することはありますが、選任の効力は創立総会決議に基づいて発生します。

対象者 会社法88条での扱い 実務上の書類・確認
設立時取締役 創立総会決議で選任 候補者氏名、就任承諾、本人確認証明書、印鑑証明書の要否を確認する
設立時会計参与 会計参与を置く場合に選任 資格、就任承諾、登記事項を確認する
設立時監査役 監査役設置会社等で選任 欠格事由、任期、監査役設置の定款・機関設計を確認する
設立時会計監査人 会計監査人設置会社で選任 資格、就任承諾、登記事項、定款設計を確認する

会社法88条2項は、設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時取締役の選任を、設立時監査等委員である設立時取締役と、それ以外の設立時取締役とを区別して行わなければならないと定めています。

監査等委員会設置会社では、成立後の取締役の中に監査等委員である取締役とそれ以外の取締役が存在します。そのため、会社成立前の段階でも、創立総会で単に「設立時取締役を選任する」とだけ記録するのではなく、監査等委員である設立時取締役かどうかを区別して選任する必要があります。

発起人決定だけでは足りない場合があります

募集設立であるにもかかわらず、発起設立の書式を流用し、発起人決定書だけで設立時取締役等を選任したように処理すると、会社法88条との整合性が問題になります。募集設立では、創立総会議事録に選任決議を明確に残してください。


会社法89条|累積投票による設立時取締役の選任

会社法89条は、創立総会で2人以上の設立時取締役を選任する場合に、設立時株主が累積投票による選任を請求できることを定めています。累積投票とは、複数の取締役を選任する際に、株式数に選任人数を掛けた議決権を株主に与え、1人の候補者に集中して投票することも、複数の候補者に分けて投票することも認める制度です。

会社法89条1項では、定款に別段の定めがあるときを除き、設立時株主は発起人に対し、会社法89条3項から5項までの方法で設立時取締役を選任すべきことを請求できます。請求できるのは、設立時取締役の選任について議決権を行使できる設立時株主です。

会社法89条2項は、この請求を創立総会の日の5日前までにしなければならないとしています。発起人側は、創立総会の招集通知を出した後でも、累積投票請求があり得ることを踏まえて、議決権行使書面、候補者、議決権集計方法を準備しておく必要があります。

項目 会社法89条の内容 実務上の注意点
対象 創立総会の目的事項が2人以上の設立時取締役の選任である場合 1人だけの選任では累積投票の問題は通常生じない
請求権者 設立時取締役の選任について議決権を行使できる設立時株主 議決権制限株式や種類株式がある場合は議決権を確認する
期限 創立総会の日の5日前まで 招集通知・候補者資料・集計準備に影響する
議決権数 1株又は1単元につき、選任する設立時取締役数と同数 議決権の集中投票・分散投票を処理できるようにする
選任方法 得票数の多い者から順に選任 通常の賛否集計と異なるため議事録にも注意する

累積投票は、少数株主が特定候補者に票を集中し、取締役選任に影響を及ぼす余地を確保する制度です。募集設立では、発起人以外の設立時株主が存在するため、創立総会においてもこの制度が問題になります。

ただし、会社法89条1項は「定款に別段の定めがあるときを除き」としています。累積投票を排除又は調整する定款の定めを置く場合は、設立時株主の利害、種類株式の内容、会社成立後の取締役選任ルールとの整合性を確認する必要があります。

監査等委員会設置会社では区別して考える

監査等委員会設置会社では、会社法89条1項が、設立時監査等委員である設立時取締役と、それ以外の設立時取締役を区別して扱っています。2人以上の選任かどうか、累積投票の対象がどちらの区分かを確認してください。


会社法90条|種類創立総会の決議による設立時取締役等の選任

会社法90条は、役員選任権付種類株式を発行する場合の特則です。会社法108条1項9号は、種類株式の内容として、取締役又は監査役の選任に関する事項を定めることができることを予定しています。募集設立でそのような種類株式を発行する場合には、通常の創立総会だけでなく、種類創立総会による選任が必要になることがあります。

会社法90条1項は、会社法88条にかかわらず、会社の設立に際して、取締役に関する会社法108条1項9号の事項について定めがある種類株式を発行する場合には、設立時取締役を、その種類の設立時発行株式の設立時種類株主で構成する種類創立総会の決議で選任しなければならないと定めています。

会社法90条2項は、監査役に関する会社法108条1項9号の事項について定めがある種類株式を発行する場合にも、同じ考え方を準用します。つまり、役員選任権付種類株式の内容が取締役に関するものか監査役に関するものかによって、種類創立総会で選任する対象が変わります。

種類株式の内容 会社法90条での選任対象 決議機関 確認事項
取締役の選任に関する種類株式 設立時取締役 当該種類の設立時種類株主による種類創立総会 定款上の選任数・選任方法・対象役職を確認する
監査等委員会設置会社における取締役の種類 設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役 種類創立総会 監査等委員かどうかを区別して選任する
監査役の選任に関する種類株式 設立時監査役 種類創立総会 監査役設置会社での機関設計・任期・欠格事由を確認する

種類創立総会の招集・決議要件は、会社法85条、86条の規定と組み合わせて確認します。種類創立総会が必要な場面では、創立総会議事録だけでなく、種類創立総会議事録又は決議省略書面も整備しなければなりません。種類創立総会の基本は、会社法84条〜87条|種類創立総会・設立に関する事項の報告で整理しています。

種類株式の内容と議事録を一致させる

役員選任権付種類株式を発行する場合、定款では種類株式の内容を定めているのに、実際の創立総会・種類創立総会の議事録では通常の創立総会で全員を一括選任したように記録してしまうミスが起こり得ます。定款の種類株式内容と選任決議の機関を一致させてください。


会社法91条|設立時取締役等の解任

会社法91条は、会社法88条により創立総会で選任された設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を、株式会社の成立時までの間、創立総会の決議によって解任できると定めています。

募集設立では、創立総会で設立時役員等を選任した後、会社成立までに一定の期間が生じることがあります。その間に、候補者の就任意思が変わった、欠格事由が判明した、機関設計や種類株式設計を変更した、設立時取締役等による調査との関係で人選を見直す必要が生じた、という場面があり得ます。このような場合に、会社法91条に基づいて創立総会で解任することができます。

会社法91条の対象は、会社法88条の規定により選任された者です。会社法90条により種類創立総会で選任された者については、会社法92条の特則を確認します。

解任対象 選任根拠 解任機関 注意点
設立時取締役 会社法88条 創立総会 会社成立後は取締役としての解任手続へ移行する
設立時会計参与 会社法88条 創立総会 資格・就任承諾の再確認が必要
設立時監査役 会社法88条 創立総会 監査役設置会社か、機関設計と整合するかを確認する
設立時会計監査人 会社法88条 創立総会 会計監査人設置会社の定款・登記事項と整合させる

実務では、解任決議だけでなく、新たな設立時役員等を選任する必要があるかを同時に確認します。設立時取締役が不足すると、会社法93条の調査、設立時代表取締役の選定、設立登記に進めないことがあります。解任と補充選任を同じ創立総会で処理する場合は、議案の順序と議決権集計を明確にしてください。


会社法92条|種類創立総会で選任された設立時取締役等の解任

会社法92条は、会社法90条により種類創立総会で選任された設立時取締役等の解任について定めています。会社法90条により、特定の種類の設立時種類株主が設立時取締役を選任した場合、その解任も原則として、その選任に係る種類の設立時発行株式の設立時種類株主で構成する種類創立総会の決議で行います。

会社法92条1項は、会社法90条1項により選任された設立時取締役を、株式会社成立時までの間、その選任に係る種類の種類創立総会決議で解任できると定めています。これは、種類株式に付された選任権を尊重し、選任した種類の設立時種類株主が解任にも関与する仕組みです。

一方で、会社法92条2項は、定款に、会社法41条1項の規定により選任された取締役又は種類創立総会・種類株主総会で選任された取締役を株主総会決議で解任できる旨の定めがある場合には、会社法90条1項で選任された設立時取締役を創立総会決議で解任できると定めています。つまり、定款の定めによって、種類創立総会ではなく創立総会による解任が認められる場合があります。

場面 原則の解任機関 例外・補足
会社法90条1項で選任された設立時取締役 当該種類の種類創立総会 会社法92条1項
定款で、種類選任取締役を株主総会決議で解任できる旨の定めがある場合 創立総会 会社法92条2項により、会社成立前は創立総会で解任できる
監査等委員会設置会社の場合 区分に応じて読み替え 監査等委員である取締役か、それ以外の取締役かを区別する
会社法90条2項により選任された設立時監査役 会社法92条1項・2項を準用 設立時監査役についても種類創立総会・創立総会の関係を確認する

種類株式を使う会社では、成立後の株主総会・種類株主総会の運用だけでなく、会社成立前の創立総会・種類創立総会の運用も整えておく必要があります。設立時点の議事録が不明確だと、会社成立後の役員の正当性や登記事項に疑義が生じるおそれがあります。


創立総会で設立時役員等を選任・解任する実務フロー

会社法88条から92条を実務に落とし込む場合は、条文だけを見るのではなく、創立総会の準備から設立登記までを一連の流れとして確認します。

  1. 定款で機関設計、設立時発行株式、種類株式の内容を確認する
  2. 募集事項、申込み、割当て、払込みの完了状況を確認する
  3. 創立総会の議案として、設立時取締役等の選任を設計する
  4. 種類株式がある場合は、会社法90条・92条に基づく種類創立総会の要否を確認する
  5. 候補者の資格、欠格事由、就任承諾、必要な本人確認証明書・印鑑証明書を確認する
  6. 創立総会議事録・種類創立総会議事録・決議省略書面等を作成する
  7. 設立時取締役等による調査、設立時代表取締役の選定、設立登記へ進む

設立登記では、選任を証する書面、就任承諾書、本人確認証明書、印鑑証明書などが問題になります。具体的な添付書類は、会社の機関設計、取締役会設置会社かどうか、代表取締役の選定方法、本人確認証明書の要否によって変わります。登記事項の全体像は、会社法911条|株式会社の設立登記・登記事項も確認してください。

確認書類 確認する内容 会社法88条〜92条との関係
定款 機関設計、種類株式、役員選任権付種類株式の有無 会社法88条・90条・92条の適用を判断する前提
創立総会議事録 設立時役員等の選任・解任、議決権数、決議要件 会社法88条・91条の選任解任を証する中心書類
種類創立総会議事録 種類株主による選任・解任、種類ごとの議決権 会社法90条・92条の決議を証する書類
就任承諾書 候補者が就任を承諾しているか 選任決議だけでなく本人の承諾が必要
本人確認証明書・印鑑証明書 登記添付書類として必要か 役員の種類、代表権、機関設計に応じて確認する
議事録は登記だけでなく紛争予防にも重要

創立総会議事録や種類創立総会議事録は、設立登記の添付書類としてだけでなく、成立後に役員選任の有効性や種類株主の権利を確認する資料にもなります。候補者名、役職、議決権、決議要件、議案の内容を曖昧にしないことが重要です。


会社法88条〜92条で起こりやすいミス

会社法88条から92条は、条文数としては多くありませんが、発起設立の実務、募集設立の創立総会、種類株式、設立登記が重なるため、書類作成の段階でミスが起こりやすい領域です。

発起設立の書式を募集設立に流用してしまう

最も典型的なミスは、発起設立用の「発起人決定書」や「発起人会議事録」の感覚で、募集設立でも設立時役員等を発起人だけで選んだように処理してしまうことです。募集設立では、会社法88条により創立総会決議が必要です。発起人が候補者を準備する場合でも、選任決議は創立総会で行います。

累積投票請求への対応を準備していない

2人以上の設立時取締役を選任する場合、定款に別段の定めがなければ、設立時株主から累積投票請求を受ける可能性があります。創立総会の日の5日前までの請求期限、議決権数の計算、候補者別の得票集計を準備していないと、当日の議事運営が混乱します。

役員選任権付種類株式を見落とす

種類株式発行会社を設立する場合、定款に会社法108条1項9号の定めがあるかを確認します。役員選任権付種類株式がある場合には、会社法90条により種類創立総会で選任すべき設立時取締役又は設立時監査役が存在する可能性があります。

監査等委員である設立時取締役を区別していない

監査等委員会設置会社では、設立時監査等委員である設立時取締役と、それ以外の設立時取締役を区別して選任する必要があります。議事録や就任承諾書でも、どの候補者がどの区分で選任されたかを明確にしておくべきです。

解任と補充選任を一体で整理していない

会社成立前に設立時役員等を解任する場合、単に解任決議をするだけでは足りないことがあります。取締役会設置会社で設立時取締役が3人未満になる、監査役設置会社で設立時監査役が不足する、調査や登記に必要な体制を満たせない、といった問題がないかを確認します。


関連条文とのつながり

会社法88条から92条は、単独で完結する条文ではありません。募集設立の創立総会、種類創立総会、設立時取締役等による調査、設立登記と連続して理解する必要があります。

関連条文・記事 関係する内容 確認する理由
会社法65条〜83条 創立総会の招集、議決権、決議、議事録、省略 会社法88条・91条の創立総会決議の前提
会社法84条〜87条 種類創立総会と設立事項報告 会社法90条・92条の種類創立総会決議の前提
会社法93条・94条 設立時取締役等による調査 設立時取締役等を選任した後に行う調査手続
会社法108条 異なる種類の株式 役員選任権付種類株式の内容確認
会社法327条 機関設計 取締役会、監査役、会計監査人等の設置義務を確認する
会社法331条 取締役の資格・欠格事由 設立時取締役候補者の資格確認に関係する
会社法911条 株式会社の設立登記 設立時役員等の登記事項・添付書類に関係する

募集設立で種類株式を使う場合には、株式分野の記事との横断確認も必要です。種類株式の内容設計は、種類株式とは|内容・設計・定款変更のポイントで整理しています。会社成立後の取締役選任や任期の実務は、取締役の選任・任期・就任手続も参照してください。


会社法88条〜92条に関するよくある質問

募集設立でも発起人が設立時取締役を決められますか?

候補者を準備することはできますが、会社法88条により、募集設立では設立時取締役等の選任は創立総会の決議によって行わなければなりません。発起人だけの決定で選任したように処理しないでください。

定款で設立時取締役を定めておけば、募集設立でも創立総会決議は不要ですか?

募集設立では会社法88条が適用されるため、創立総会決議による選任を確認する必要があります。発起設立で定款に定めた者が選任されたものとみなされる仕組みと混同しないようにしてください。

設立時取締役を2人以上選任すると必ず累積投票になりますか?

必ず累積投票になるわけではありません。会社法89条は、設立時株主が発起人に累積投票による選任を請求できる制度を定めています。定款に別段の定めがある場合や、請求が期限までにされない場合には、通常の創立総会決議で処理することになります。

累積投票請求はいつまでにする必要がありますか?

会社法89条2項により、創立総会の日の5日前までに請求する必要があります。発起人側は、請求期限、受付方法、議決権集計、候補者資料を管理できるようにしておく必要があります。

種類株式を発行する場合、設立時取締役は必ず種類創立総会で選任しますか?

必ずではありません。会社法90条は、会社法108条1項9号の取締役又は監査役の選任に関する定めがある種類株式を発行する場合に問題になります。単に配当優先や取得条項などの種類株式を発行するだけで、当然に会社法90条が適用されるわけではありません。

会社成立前に設立時取締役を解任できますか?

できます。会社法91条は、会社法88条で選任された設立時取締役等を、株式会社成立時までの間、創立総会決議で解任できると定めています。会社法90条で種類創立総会により選任された者については、会社法92条の特則を確認します。

種類創立総会で選任された設立時取締役は誰が解任しますか?

原則として、その選任に係る種類の設立時種類株主で構成する種類創立総会の決議で解任します。ただし、定款に、種類選任の取締役を株主総会決議で解任できる旨の定めがある場合には、会社成立前は創立総会決議で解任できることがあります。

会社法88条〜92条の議事録は設立登記で使いますか?

使う場面があります。設立時取締役等の選任を証する書面として、創立総会議事録や種類創立総会議事録が重要になります。就任承諾書、本人確認証明書、印鑑証明書などとあわせて、登記添付書類の整合性を確認してください。

創立総会の決議を省略して設立時取締役等を選任できますか?

会社法82条の決議省略の要件を満たす場合には、創立総会決議があったものとみなされる制度を使えることがあります。ただし、全員の同意、書面又は電磁的記録の保存、議事録・同意書面の管理が必要です。単に会議を開かなかっただけでは足りません。

設立時取締役等の資格確認はどこまで必要ですか?

会社成立後の役員として就任できるかを確認する必要があります。取締役、会計参与、監査役、会計監査人には、それぞれ資格・欠格事由・兼任規制があります。選任決議後に資格問題が判明すると、解任や再選任、登記補正が必要になることがあります。


まとめ

会社法88条から92条は、募集設立において、会社成立時の取締役等をどの機関で選任し、会社成立前に必要があればどの機関で解任するかを定める条文です。創立総会、種類創立総会、累積投票、役員選任権付種類株式が絡むため、募集設立の中でも手続設計を丁寧に確認すべき領域です。

  • 募集設立では、設立時取締役等の選任は会社法88条により創立総会決議で行います。
  • 2人以上の設立時取締役を選任する場合には、会社法89条の累積投票請求に注意します。
  • 役員選任権付種類株式を発行する場合には、会社法90条により種類創立総会で選任すべき者がいないか確認します。
  • 会社成立前の解任は、会社法91条・92条により、選任機関や定款の定めに応じて創立総会又は種類創立総会で行います。
  • 議事録、就任承諾書、本人確認証明書、印鑑証明書、設立登記添付書類を一体で確認することが重要です。

募集設立では、発起人、設立時株主、種類株主、設立時役員等という複数の立場が関係します。設立時取締役等の選任を形式的に処理すると、成立後の役員資格、登記、種類株主の権利、設立時取締役等による調査に影響します。創立総会の設計段階で、会社法88条から92条の適用関係を確認しておきましょう。

坂尾陽弁護士

設立時役員等の選任は、設立登記の直前に書類だけ整えればよい手続ではありません。募集設立では、創立総会の議案設計、種類株式の内容、累積投票請求の可能性、就任承諾・資格確認まで含めて、早い段階で確認することが重要です。

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