会社設立の「目的」の決め方|定款目的の書き方・許認可・リスクを解説

定款の「目的」は、会社がどのような事業を行うのかを示す定款の基本事項です。株式会社の定款では目的を記載又は記録する必要があり、設立登記でも目的は登記事項として公示されます。

会社設立の実務では、目的欄を「今すぐ行う事業」だけで狭く書きすぎても、反対に思いつく事業を大量に並べすぎても、後の手続で困ることがあります。特に、許認可が必要な業種、金融機関や取引先の審査、将来の事業追加、定款変更・変更登記のコストまで見据えて設計することが重要です。

  • 定款の目的は、会社法27条の絶対的記載事項であり、設立登記でも公示される重要項目です。
  • 目的は、適法性・明確性・事業性を意識し、第三者が事業内容を理解できる粒度で書きます。
  • 許認可が必要な事業では、業法や行政窓口が求める文言との整合性を事前に確認します。
  • 将来事業を入れることはできますが、広げすぎると審査・取引・信用面でマイナスになることがあります。
  • 設立後に目的を追加・変更する場合は、定款変更と変更登記が必要になるのが通常です。

坂尾陽弁護士

定款目的は、会社設立のひな形の中でも補正や手戻りが起きやすい項目です。許認可、資金調達、取引先審査、将来の事業展開まで見据えて、最初の段階で整えておくことが大切です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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この記事の前提

この記事では、非上場・中小規模の株式会社を設立する場面を中心に、定款の目的の決め方と書き方を整理します。個別の許認可要件は業種・地域・申請先によって異なるため、実際に申請する場合は、管轄行政庁や専門家への確認が必要です。


定款の目的とは何か

定款の目的とは、会社が営む事業内容を定款に記載したものです。株式会社を設立する場合、目的は定款の絶対的記載事項の一つであり、欠けると定款の有効性に関わります。定款の基本構造は、定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項と作成の実務ポイントでも整理しています。

また、目的は設立登記でも登記されます。つまり、定款の内部的なルールにとどまらず、登記事項証明書を通じて、金融機関、取引先、許認可庁、投資家など第三者にも見られる情報です。条文上の位置づけは、会社法27条の定款記載事項会社法911条の設立登記を確認すると理解しやすくなります。

目的欄は、単に「どんなビジネスをしたいか」を自由に書く欄ではありません。設立手続を通すためだけでなく、設立後の営業、許認可申請、契約、融資、補助金申請、M&A、事業譲渡、株主間の説明にも影響するため、実務上は会社の事業計画と連動させて作成します。

観点 目的欄で確認すること 実務上の意味
定款 会社の事業内容として記載されているか 定款の絶対的記載事項としての整理
登記 登記事項証明書に表示されても分かりやすいか 金融機関・取引先・許認可庁への説明
許認可 業法上求められる目的文言と整合するか 申請前の補正や目的変更を防ぐ
事業計画 現在の事業と近い将来の事業を過不足なく含むか 設立後すぐの定款変更・変更登記を避ける

定款目的を決めるときの基本ルール

定款目的を決めるときは、まず「適法性」「明確性」「事業性」の3つを確認します。これらは、登記実務や許認可実務で目的欄を見るときの基本的なチェックポイントです。

適法性|法令に反する事業を目的にしない

当然ですが、法令に反する事業を会社の目的にすることはできません。反社会的な事業、法令で禁止されている行為、行政上の許可や登録を受けなければ行えない事業を無限定に記載することは避けるべきです。

許認可が必要な事業については、「許可を受ける前でも目的に書けるか」と「許可申請時に目的文言として足りるか」を分けて考えます。設立時点では許可取得前であっても、申請予定の事業を目的に入れることはありますが、業法上必要な文言が不足していると、許認可申請の段階で目的変更を求められることがあります。

明確性|第三者が事業内容を理解できる書き方にする

目的は、登記事項として第三者に示される情報です。そのため、あまりに抽象的な表現だけでは、どのような事業を行う会社なのか分かりにくくなります。

たとえば、「サービス業」「物品販売業」「インターネット事業」だけでは広すぎることがあります。実務では、「インターネットを利用した通信販売業」「ソフトウェアの企画、開発、販売及び保守」「経営コンサルティング業」など、事業内容がある程度分かる表現にするのが一般的です。

事業性|営利会社としての事業内容に沿っているか

株式会社は営利法人です。そのため、目的欄には、会社として行う事業内容を記載します。社会貢献、研究、教育、コミュニティ活動などが関係する場合でも、会社として提供するサービス、販売する商品、受託する業務、運営する事業として整理できる形に落とし込む必要があります。

目的欄は広ければよいわけではありません

「将来やるかもしれない事業」をすべて並べると、会社の事業内容が不明確になり、金融機関や取引先から説明を求められることがあります。主要事業、近い将来の事業、許認可上必要な事業を中心に、過不足のない範囲で設計します。


会社設立時の目的の決め方

会社設立時の目的は、事業アイデアをそのまま文章にするのではなく、現在事業、近い将来の事業、許認可、周辺事業の順に整理すると作りやすくなります。

まず現在行う事業を具体化する

最初に、設立直後から実際に行う事業を洗い出します。商品を販売するのか、ソフトウェアを開発するのか、広告運用を受託するのか、店舗を運営するのか、コンサルティングを提供するのかを、売上が発生する単位で整理します。

この段階では、社内で使っているサービス名やプロジェクト名ではなく、第三者が読んで分かる一般的な事業名に置き換えることが重要です。

近い将来に行う予定の事業を加える

設立後すぐに事業を拡張する予定がある場合は、近い将来の事業も目的に入れておくことを検討します。たとえば、システム開発会社が、開発受託だけでなく、SaaS提供、保守、コンサルティング、関連商品の販売を予定している場合は、目的欄で一定程度カバーしておくと後の手戻りを避けやすくなります。

ただし、まだ具体化していない遠い将来の事業を大量に入れると、目的欄が散らかります。設立時点で入れるか迷う事業は、事業計画、許認可の必要性、資金調達予定、取引先への説明のしやすさを基準に判断します。

許認可が必要な事業を先に確認する

建設業、不動産業、人材派遣・職業紹介、古物営業、酒類販売、旅行業、介護・福祉、運送業などは、目的欄の文言が許認可申請に影響することがあります。

許認可が必要な事業を予定している場合は、定款作成前に、申請先の手引き、管轄窓口、行政書士・司法書士・弁護士等の専門家に、必要な目的文言を確認しておく方が安全です。目的欄を後から直す場合、定款変更と変更登記が必要になり、費用と時間がかかります。

最後に付帯関連事業を入れる

多くの定款では、最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」といった包括的な文言を入れます。これは、各目的に付随する周辺業務を一定程度カバーするためのものです。

もっとも、この文言があれば何でもできるという意味ではありません。主たる目的が不明確なまま包括文言だけを置いても、許認可申請や取引先説明の場面では足りないことがあります。あくまで、具体的な目的を補う位置づけとして使います。

整理順 確認する内容 目的欄への反映
1 設立直後に売上が発生する事業 最も具体的に記載する
2 1〜2年程度で実施予定の関連事業 将来の変更コストを踏まえて追加を検討する
3 許認可が必要な事業 業法・窓口が求める文言を確認して記載する
4 主たる事業に付随する業務 包括的な付帯関連事業の文言で補う

定款目的の書き方|実務で使いやすい表現にする

定款目的の書き方では、読んだ人が事業内容を理解できること、許認可や登記の補正を避けられること、設立後の事業展開に耐えられることを意識します。

「商品・サービス」+「行為」で書く

目的は、「何を」「どうする事業か」が分かるように書くと整理しやすくなります。たとえば、単に「アプリ事業」と書くのではなく、「スマートフォンアプリケーションの企画、開発、販売及び運営」と書くと、事業内容が具体的になります。

同じように、ECであれば「インターネットを利用した商品の販売」、コンサルティングであれば「経営、財務、人事及び営業に関するコンサルティング業」のように、対象と行為を組み合わせます。

同じ事業を細かく分けすぎない

目的を細かく分けすぎると、定款全体が読みづらくなります。たとえば、同じEC事業について、衣料品、雑貨、食品、デジタルコンテンツなどをすべて別々に列挙する必要があるかは、事業内容や許認可の有無によって判断します。

幅広く商品を扱う場合は、「各種商品の企画、製造、販売及び輸出入」などの表現で足りることもあります。一方で、酒類、医薬品、古物、食品など、法令上の確認が必要なものは、個別に目的として明示した方がよい場合があります。

定款・登記・許認可書類の文言をそろえる

目的欄は、定款だけでなく、登記申請、許認可申請、事業計画書、契約書、銀行口座開設書類にも影響します。これらの書類で事業内容の表現が大きくずれると、説明や補正が必要になることがあります。

特に許認可事業では、定款目的、登記事項証明書、申請書、事業計画書の記載が整合しているかを確認します。定款認証の段階で目的案を確定する前に、許認可担当者や申請窓口に確認しておくと、設立後の目的変更を避けやすくなります。定款認証の流れは、定款認証とは|公証役場の手続・費用・電子定款の注意点も参考になります。

悪い例 改善例 理由
インターネット事業 インターネットを利用した通信販売業 何を行う事業かが分かりやすい
アプリ事業 スマートフォンアプリケーションの企画、開発、販売及び運営 対象と行為が明確になる
不動産事業 不動産の売買、賃貸、仲介及び管理 宅建業等の確認につなげやすい
人材サービス 労働者派遣事業及び有料職業紹介事業 許認可上の事業類型を示しやすい

業種別の定款目的の記載例

ここでは、定款目的の書き方を考えるための例を示します。実際に使う場合は、会社の事業内容、許認可の有無、将来展開、商号やブランドとの関係を踏まえて調整してください。

業種 目的の記載例 注意点
IT・システム開発 ソフトウェア、ウェブサイト及びスマートフォンアプリケーションの企画、開発、販売、運営及び保守 受託開発、SaaS、保守、コンサルを分けるか検討する
EC・小売 インターネットを利用した各種商品の販売及び輸出入 食品、酒類、医薬品、古物などは個別規制を確認する
コンサルティング 経営、財務、人事、営業及びマーケティングに関するコンサルティング業 士業法や金融商品取引法等に触れる業務を含まないか確認する
広告・メディア 広告、宣伝、販売促進及びマーケティングに関する企画、制作、運営及び代理業 媒体運営、広告代理、制作受託を分けるか検討する
飲食業 飲食店、カフェ及びレストランの経営 食品衛生、酒類提供、深夜営業等の許認可・届出を確認する
不動産業 不動産の売買、賃貸、仲介、管理及びコンサルティング 宅地建物取引業免許との関係を確認する
建設・リフォーム 建築工事、内装仕上工事及びリフォーム工事の設計、施工、請負及び管理 建設業許可の業種区分と整合するか確認する
人材事業 労働者派遣事業、有料職業紹介事業及び人材育成に関する研修事業 派遣・職業紹介の許可要件を事前に確認する
古物・リユース 古物の売買、交換、委託販売及び輸出入 古物商許可の対象になるか確認する
介護・福祉 介護保険法に基づく居宅サービス事業及び介護予防サービス事業 自治体ごとの指定要件、事業種別、施設基準を確認する
記載例の使い方

上記は、目的文言を考えるための一般的な例です。許認可が関係する業種では、例文をそのまま使うのではなく、実際に申請する許認可の手引きや窓口確認に合わせて調整してください。


許認可が必要な事業目的の注意点

許認可が必要な事業では、目的欄を「設立登記で通る表現」にするだけでは不十分です。許認可庁が、定款目的や登記事項証明書を見て、申請対象事業が会社の目的に含まれていると判断できる必要があります。

業法上の事業名を確認する

許認可のある業種では、法律上の事業名や行政手続上の事業名があることが多くあります。たとえば、人材関連では「労働者派遣事業」「有料職業紹介事業」、リユースでは「古物の売買」など、一般的な呼び方だけでは足りないことがあります。

「人材マッチングサービス」「リユース事業」「不動産サービス」などの表現は、事業の説明としては分かりやすい一方で、許認可申請上は追加説明や補正が必要になることがあります。事業名は、顧客向けのサービス名ではなく、法的・行政手続上の事業類型に寄せて整理します。

許認可の取得時期と目的変更のタイミングを逆算する

設立後すぐに許認可申請をする場合は、設立前の定款作成段階で目的文言を整える必要があります。設立後に目的不足が判明すると、株主総会で定款変更を行い、変更登記をしてから、改めて許認可申請に進むことになります。

設立日、営業開始予定日、許認可申請日、金融機関口座開設日、賃貸借契約日を逆算し、目的欄の確定時期を早めに設定することが重要です。

複数の許認可が絡む場合は目的を分ける

一つの事業に複数の許認可が絡むこともあります。たとえば、飲食店で酒類販売や深夜営業が絡む場合、ECで食品・酒類・古物を扱う場合、不動産事業で売買仲介と賃貸管理を行う場合などです。

このような場合は、目的欄で各事業の関係が分かるように整理します。許認可ごとに必要文言が異なる場合は、一つの抽象的な目的でまとめず、必要に応じて目的を分けて記載します。

確認項目 確認する理由 見落とした場合のリスク
許認可の種類 必要な業法・申請先を特定するため 営業開始が遅れる
目的欄に必要な文言 定款・登記と申請書を整合させるため 目的変更・変更登記が必要になる
申請に必要な体制 人的要件・場所要件・財産要件を確認するため 目的はあっても許認可が取れない
営業開始までの期限 設立、登記、口座開設、許認可の順序を決めるため 契約や採用スケジュールに影響する

目的を広げすぎるリスク・狭すぎるリスク

定款目的は、狭すぎても広すぎても問題が生じます。重要なのは、現在の事業を確実にカバーしつつ、近い将来の事業拡張に耐えられる範囲で、第三者に分かりやすく記載することです。

狭すぎる目的のリスク

目的を狭く書きすぎると、設立後に少し事業を広げるだけで目的変更が必要になります。たとえば、「ウェブサイト制作」だけを目的にした会社が、広告運用、システム保守、SaaS提供、マーケティング支援を始める場合、目的欄に含まれているかが問題になります。

目的変更をするには、定款変更、変更登記、必要書類の作成、登録免許税や専門家費用が発生します。設立直後の忙しい時期に手続が増えると、営業開始や契約締結に影響することがあります。

広すぎる目的のリスク

一方で、目的を広げすぎると、会社が何をする会社なのか分かりにくくなります。金融機関口座の開設、融資、補助金、投資家対応、取引先の反社チェックや与信審査で、事業内容の説明を求められることがあります。

目的欄に多くの業種を並べる場合でも、主たる事業が何か、すぐに行う事業はどれか、許認可を取る予定がある事業はどれかを、事業計画書や取引先説明で補えるようにしておく必要があります。

会社の目的の範囲は判例上広く見られるが、実務では別問題

会社の目的の範囲については、最高裁昭和45年6月24日大法廷判決が、定款に明示された目的自体に限らず、その目的を遂行するうえで直接又は間接に必要な行為も含まれるという考え方を示しています。

もっとも、この考え方を理由に、目的欄を粗く作ってよいわけではありません。判例上、目的の範囲が広く解される場面があるとしても、登記、許認可、金融機関、取引先、株主への説明では、目的欄が具体的で分かりやすいことが重要です。

状態 メリット リスク 実務対応
狭すぎる 事業内容が明確 少し拡張するだけで目的変更が必要になりやすい 近い将来の関連事業まで含める
広すぎる 将来事業をカバーしやすい 会社の実態が分かりにくく信用審査で説明が必要になりやすい 主たる事業を中心に整理し、不要な列挙を避ける
許認可文言不足 設立時は簡潔に見える 許認可申請前に目的変更が必要になることがある 設立前に申請窓口・専門家へ確認する

目的を追加・変更する場合の手続

設立後に新しい事業を始める場合、定款目的の追加又は変更が必要になることがあります。目的は定款事項であり、登記事項でもあるため、単に社内で事業計画を変えるだけでは足りない場合があります。

定款変更の決議を行う

株式会社が定款を変更するには、原則として株主総会の特別決議が必要です。目的の追加や変更も定款変更に当たるため、株主総会議事録を作成し、変更後の目的を確定します。

定款変更一般の手続は、定款変更の手続会社法466条の定款変更でも確認できます。共同創業者がいる会社、種類株式を発行している会社、株主間契約がある会社では、定款変更前に株主間の合意や拒否権条項も確認する必要があります。

変更登記を申請する

目的は登記事項であるため、目的を変更した場合は変更登記を申請します。法務局の申請書様式でも、目的変更では変更部分だけではなく、変更後のすべての目的を記録する扱いが示されています。

目的変更の登記では、登録免許税や添付書類が必要になります。商号変更、本店移転、役員変更など他の変更事項も同時期にある場合は、申請のタイミングをまとめることで、手続負担を整理できることがあります。

許認可・契約・届出の変更も確認する

目的変更をしただけで、すべての行政手続や契約関係が自動的に整うわけではありません。許認可事業では、許認可庁への変更届、事業所情報の変更、契約書の事業内容条項、金融機関への説明、補助金・助成金の要件なども確認します。

特に、目的変更をして新規事業を始める場合は、定款・登記・許認可・契約・社内規程の順に、どの書類を更新する必要があるかを一覧化しておくと漏れを防ぎやすくなります。

手続 主な内容 注意点
定款変更 株主総会特別決議で目的を追加・変更する 議事録、株主リスト、定款の整合性を確認する
変更登記 変更後の目的を登記する 変更後の目的全体を記録する
許認可対応 申請、変更届、指定更新などを確認する 目的変更だけでは営業可能にならない場合がある
対外説明 金融機関、取引先、投資家へ必要に応じて説明する 事業計画書や契約書との整合性を確認する

定款目的でよくあるミス

定款目的は、ひな形を流用しやすい一方で、会社ごとの事情が出やすい項目です。次のようなミスは、設立後の手戻りにつながりやすいため注意が必要です。

  • サービス名やブランド名だけを書き、一般的な事業内容が分からない。
  • 許認可が必要な事業について、業法上の文言を確認していない。
  • 現在行う事業だけを書き、近い将来の関連事業を入れていない。
  • 将来の可能性だけで、関連性の薄い目的を大量に並べている。
  • 定款、登記、許認可申請書、事業計画書の表現が一致していない。
  • 目的変更が必要なのに、株主総会決議や変更登記をしていない。

特に、許認可が絡む会社では、定款認証を受けて設立登記を終えた後に、許認可申請の段階で目的不足に気づくことがあります。この場合、再度株主総会を開き、目的変更登記をしてから申請をやり直すことになり、営業開始が遅れる可能性があります。

また、共同創業や投資家出資がある会社では、目的欄が会社の事業範囲をめぐる合意の前提になることがあります。将来のピボットや新規事業に備える一方で、株主が想定していない事業へ過度に広げないよう、株主間の合意とも整合させる必要があります。


よくある質問

定款の目的は何個まで書けますか?

会社法上、目的の個数について一律の上限が定められているわけではありません。ただし、目的が多すぎると、会社の主たる事業が分かりにくくなります。実務では、現在の主要事業、近い将来の関連事業、許認可上必要な事業を中心に、読みやすい範囲で整理します。

将来やるかもしれない事業も目的に入れてよいですか?

近い将来に具体的に予定している事業であれば、設立時から目的に入れることがあります。もっとも、具体化していない遠い将来の事業を大量に入れると、事業内容が不明確になります。事業計画や許認可の必要性を基準に、入れるものと後で変更するものを分けて判断します。

目的にない事業をしたら契約は無効になりますか?

目的にないように見える事業をしたからといって、直ちにすべての契約が無効になると単純に考えるべきではありません。会社の目的の範囲は、判例上、目的遂行に直接又は間接に必要な行為も含めて広く解される場面があります。ただし、許認可、登記、取引先審査、株主への説明では別問題が生じるため、目的欄を整えておくことが重要です。

許認可が必要か分からない場合はどうすればよいですか?

事業内容、取扱商品、提供方法、営業地域、顧客層を整理したうえで、管轄行政庁や専門家に確認します。許認可が必要な場合は、目的欄に必要な文言、人的・場所的・財産的要件、申請時期を合わせて確認します。

「前各号に附帯関連する一切の事業」は入れるべきですか?

多くの定款では、最後に付帯関連事業の文言を入れます。主たる目的に付随する周辺業務を一定程度カバーするためです。ただし、この文言だけで許認可が必要な事業や全く別分野の事業まで当然にカバーできるわけではありません。

目的変更はどのタイミングで必要ですか?

新しい事業が現在の目的から明らかに外れる場合、許認可申請で目的欄の記載が必要な場合、金融機関や取引先から目的との整合性を求められる場合には、目的変更を検討します。目的は登記事項でもあるため、変更する場合は定款変更と変更登記をセットで確認します。

英語やカタカナのサービス名だけを目的にできますか?

サービス名やブランド名だけでは、第三者が事業内容を理解しにくいことがあります。目的欄では、サービス名ではなく、提供する商品・サービスの内容と行為を一般的な日本語で説明するのが基本です。必要に応じて、サービス名は事業説明資料や契約書で補足します。


まとめ|定款の目的は許認可・登記・将来事業まで見据えて決める

定款の目的は、会社設立時に必ず検討すべき重要項目です。現在の事業を正確に示すだけでなく、許認可、登記、金融機関、取引先、将来の事業展開にも影響します。

  • 目的は、定款の絶対的記載事項であり、設立登記でも公示されます。
  • 書き方は、適法性・明確性・事業性を意識し、第三者が分かる表現にします。
  • 許認可が必要な事業では、必要な目的文言を設立前に確認します。
  • 目的は狭すぎても広すぎてもリスクがあるため、現在事業と近い将来の事業を中心に整理します。
  • 設立後に目的を追加・変更する場合は、定款変更と変更登記を確認します。

会社設立では、目的、商号、本店所在地、出資、株式、役員構成を並行して決める必要があります。目的欄だけを先に決めるのではなく、事業計画、許認可、資金調達、契約予定と合わせて確認すると、設立後の手戻りを避けやすくなります。

坂尾陽弁護士

定款目的は、設立後の事業運営の「入口」になる情報です。許認可や取引開始の直前に不足が分かると、変更登記からやり直すことになります。設立準備の早い段階で、目的案を具体的に確認しておきましょう。

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