【会社法56条】株式会社不成立の場合の責任|条文の要点と実務ポイント

会社法56条は、株式会社が設立登記に至らず成立しなかった場合に、発起人がどのような責任を負うかを定める条文です。会社が成立すれば、設立に関する行為や費用は、原則として成立後の会社に帰属する余地があります。しかし、会社が成立しなければ、責任を引き受ける会社そのものが存在しません。

そのため、会社法56条は、発起人が連帯して、株式会社の設立に関してした行為について責任を負い、設立に関して支出した費用を負担すると定めています。定款認証後に設立を取りやめた場合、払込みを受けた後に設立登記へ進まなかった場合、募集設立で引受人から払込みを受けた後に設立が廃止された場合などでは、発起人側で返還・精算・契約処理を行う必要があります。

本記事では、会社法56条について、株式会社不成立の意味、発起人の連帯責任、設立費用の負担、払込金返還、設立無効との違い、募集設立や疑似発起人との関係を、設立実務に沿って整理します。

  • 会社法56条は、株式会社が成立しなかったときの発起人の責任を定める条文です。
  • 責任主体は原則として発起人であり、発起人は連帯して、設立に関してした行為の責任と設立費用の負担を負います。
  • 会社が一度成立した後に設立無効が問題になる場合は、会社法56条の「不成立」とは区別して整理します。
  • 不成立時は、払込金、定款認証費用、専門家費用、募集関係費用、対外契約の処理を早期に棚卸しすることが重要です。

坂尾陽弁護士

会社設立が途中で止まった場合、「まだ会社がないから誰も責任を負わない」という処理にはなりません。発起人は、設立手続の中心人物として、外部の契約先や出資者との関係を整理し、費用・返還・解除・精算の記録を残す必要があります。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法56条の位置づけ

会社法56条は、会社法第2編第1章第8節「発起人等の責任等」に置かれている規定です。同じ節には、現物出資財産等の価額不足を扱う会社法52条、出資履行の仮装を扱う会社法52条の2、発起人等の損害賠償責任を扱う会社法53条、連帯責任を扱う会社法54条、責任免除を扱う会社法55条があります。

条文を確認する場合は、e-Gov法令検索「会社法」で会社法56条を確認してください。会社法56条の要点は、株式会社が成立しなかったときに、発起人が、設立に関する行為と設立費用について連帯して責任を負うという点にあります。

項目 会社法56条のポイント 実務上の確認事項
発動場面 株式会社が成立しなかったとき 設立登記に至らなかった理由、いつ中止が確定したか
責任主体 発起人 定款に署名又は記名押印した発起人、募集設立の疑似発起人の有無
責任内容 設立に関してした行為についての責任 契約先、払込金、預り金、募集関係者、専門家との関係
費用負担 設立に関して支出した費用の負担 定款認証費用、専門家費用、募集費用、登記準備費用など
責任の性質 発起人の連帯責任 発起人間の内部負担・求償・精算合意
会社法56条は「会社がない場合」の後始末を定める規定

会社法52条から55条は、会社が成立したことを前提に、成立後の会社や第三者に対する責任を整理する場面が中心です。これに対し、会社法56条は、そもそも株式会社が成立しなかった場面で、設立手続の中心人物である発起人に責任を帰属させる規定として理解すると整理しやすくなります。


「株式会社が成立しなかったとき」とは

株式会社は、本店所在地において設立の登記をすることによって成立します。したがって、会社法56条の「株式会社が成立しなかったとき」は、設立手続が進められたものの、最終的に設立登記に至らず、株式会社として成立しなかった場合を指すのが基本です。

株式会社の成立時期そのものは、株式会社の成立時期や、会社法49条・50条の逐条解説で詳しく整理しています。会社法56条を検討するときも、まず「設立登記によって会社が成立したか」を確認します。

設立登記に至らない典型例

会社不成立が問題になる典型例としては、次のような場面があります。

  • 定款認証を受けた後に、発起人間の合意が崩れて設立を取りやめた場合
  • 払込みを受けたが、設立登記申請をしないまま設立を中止した場合
  • 許認可、出資、役員選任、本店所在地などの問題により設立手続が止まった場合
  • 募集設立で引受人から払込みを受けた後、創立総会等の過程で設立を廃止した場合
  • 設立登記申請が受理されず、補正や再申請にも進まないまま設立が断念された場合

実務上は、「設立を中止する」と口頭で決めただけでは、外部関係者に対する説明や精算が曖昧になりがちです。発起人間で、中止日、理由、返還対象、費用負担、対外通知の担当者を記録化しておくことが重要です。

設立無効とは区別する

会社が成立しなかった場合と、いったん会社が成立した後に設立無効が問題になる場合は、区別して整理します。会社法56条が直接扱うのは、会社が成立しなかった場合です。設立登記により会社が成立した後、設立手続の重大な瑕疵を理由に会社の設立無効の訴えが問題になる場合は、会社法828条以下の組織行為無効訴訟として検討します。

設立無効の訴えは、会社法828条の逐条解説で扱う領域です。会社法56条の「不成立」と混同すると、責任主体、手続、相手方、効果の整理を誤るおそれがあります。

会社不存在との違いにも注意する

会社の「不存在」は、登記上の外観はあるものの、設立手続の実体が極めて乏しい場合などに問題となることがある概念です。会社法56条の「不成立」は、設立登記に至らず会社が成立していない場面を中心に扱います。登記が存在する場合には、不成立、設立無効、会社不存在のどれとして整理すべきかを個別に検討する必要があります。

まず確認すべき分岐

会社法56条を検討するときは、最初に「設立登記がされたか」を確認してください。登記がされていないなら不成立の処理が中心になります。登記がされているなら、設立無効・不存在・成立後の役員責任など、別の制度で整理する可能性があります。


会社法56条で責任を負う者

会社法56条の直接の責任主体は発起人です。発起人とは、会社設立時の定款に発起人として署名又は記名押印した者を指します。共同発起人がいる場合、会社法56条により、発起人は連帯して責任を負います。

発起人が連帯して責任を負う

連帯責任とは、外部の相手方から見ると、複数の発起人のうち一部の者に対して全部の履行を求められる可能性がある責任関係です。例えば、設立のために専門家へ依頼した費用や、引受人へ返還すべき払込金について、相手方が発起人の一人に全額を請求する場面があり得ます。

もっとも、発起人の一人が全額を負担した場合でも、発起人間の内部関係では、合意や負担割合に応じて求償・精算が問題になります。発起人が複数いる場合は、設立手続の開始時点で、設立中止時の費用負担、返還事務、外部対応の担当を定めておくと紛争を避けやすくなります。

設立時取締役・設立時監査役は56条の直接主体ではない

会社法56条は、「発起人」が責任を負うと定めています。そのため、発起人ではない設立時取締役や設立時監査役は、会社法56条の文言上、直接の責任主体ではありません。

ただし、設立時取締役や設立時監査役が発起人を兼ねている場合は、発起人として会社法56条の責任を負うことがあります。また、発起人でない関係者であっても、自ら契約当事者になっている場合、虚偽説明や不法行為がある場合、専門家としての委任契約上の義務違反がある場合などには、別途責任が問題になることがあります。

募集設立では疑似発起人にも注意する

募集設立では、定款に発起人として署名していない者であっても、募集の広告その他募集に関する書面又は電磁的記録に、自己の氏名・名称と株式会社の設立を賛助する旨を記載・記録することを承諾した者は、発起人とみなされる場合があります。会社法103条4項のいわゆる疑似発起人の問題です。

募集設立の場合は、募集設立の実務フロー創立総会の手続会社法102条の2・103条の逐条解説も併せて確認する必要があります。


発起人が負う責任の内容

会社法56条で発起人が負う責任は、大きく分けると、設立に関してした行為についての責任と、設立に関して支出した費用の負担です。どちらも「会社が成立しなかった場合に、その後始末を誰が負うのか」という観点から理解できます。

設立に関してした行為についての責任

「株式会社の設立に関してした行為」とは、設立手続を進めるために行われた行為をいいます。典型的には、定款作成、定款認証、設立時発行株式の引受け、払込み、払込取扱金融機関とのやり取り、設立登記準備、創立総会の招集・開催、設立に必要な専門家への依頼などが含まれます。

会社が成立すれば、これらの行為の一部は成立後の会社との関係で整理されます。しかし、会社が成立しなければ、会社が契約上・手続上の責任を引き受けることができません。そのため、発起人が外部の相手方、出資予定者、引受人、専門家などとの関係を整理する必要があります。

行為・関係 不成立時に問題になること 実務対応
定款認証 認証費用や電子定款作成費用の負担 発起人間で負担割合を整理し、領収書を保管する
出資の払込み 払込金・預り金の返還 払込者、金額、入金日、返還先口座を確認する
専門家依頼 司法書士・弁護士・行政書士・税理士等への報酬 委任契約、見積書、請求書、業務範囲を確認する
募集設立 引受人への説明・返還・通知 引受人一覧、払込状況、創立総会記録を確認する
設立前契約 契約の帰属、解除、損害賠償 契約名義と相手方への説明内容を確認する

設立に関して支出した費用の負担

会社法56条は、発起人が、株式会社の設立に関して支出した費用を負担すると定めています。設立費用には、定款認証費用、電子定款関連費用、設立登記準備費用、専門家報酬、募集手続に関する費用、創立総会関係費用などが含まれ得ます。

注意すべきなのは、設立費用を誰かが一時的に立て替えていることが多い点です。会社が成立すれば設立費用として会社側で処理する余地がありますが、不成立の場合は会社が存在しないため、発起人間で精算する必要があります。

払込金・預り金の返還

発起人や引受人から払込みを受けた後に会社が成立しなかった場合、資本金として会社に帰属する前提が失われます。払込取扱口座、発起人代表者名義の口座、引受人からの入金記録などを確認し、誰にいくら返還すべきかを明確にします。

返還時には、返還先口座、返還日、返還額、振込手数料の負担、返還理由を記録しておくべきです。後日、払込金が返還されていない、返還額が違う、誰が費用を負担するのか分からないといった紛争を避けるためです。


責任の性質と範囲

会社法56条の責任は、発起人が設立手続を主導したことを前提に、会社が成立しなかった場合のリスクを発起人に負わせる制度です。発起人の過失の有無だけで責任が左右されるものではなく、一般に無過失責任として整理されます。

無過失責任として整理される

発起人が注意を尽くしていたとしても、会社が成立しなかった以上、会社法56条に基づく費用負担や設立関係行為の責任を免れるとは限りません。これは、会社不成立の場面では、外部の相手方や引受人から見ると、会社ではなく設立手続を進めた発起人こそが責任を負うべき立場にあるためです。

会社法52条や52条の2では、責任主体や免責要件が細かく定められています。これに対し、会社法56条は、会社が成立しなかった場合の包括的な後始末として、発起人の連帯責任を定めている点に特徴があります。

内部負担は発起人間の合意で整理する

会社法56条は、外部との関係で発起人が連帯して責任を負うことを定める規定です。他方で、発起人同士の内部関係では、誰がどの割合で負担するか、誰の事情で設立が中止になったか、どの費用が必要だったかを踏まえて精算することになります。

発起人間で事前合意がある場合は、その合意を確認します。合意がない場合でも、発起人の数、出資予定額、各人の関与度、設立中止の原因、立替額などを踏まえて、求償・精算を協議することになります。

設立に関する行為と開業準備行為の線引き

会社法56条の責任範囲を考えるときは、「設立に関してした行為」と、設立後の営業開始を見越した開業準備行為を区別する必要があります。発起人が、会社成立前に事業用不動産の賃貸借契約、仕入契約、雇用契約、設備購入契約などを進めた場合、それが会社設立自体に必要な行為なのか、成立後の営業のための行為なのかが問題になります。

最高裁昭和38年12月24日判決は、発起人は会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為であっても原則としてなし得ないと判断しています。この考え方からも、会社成立前の契約を安易に「将来会社が引き継ぐ」と考えるのは危険です。設立前に対外契約を行う場合は、契約名義、停止条件、成立後の承継方法、成立しなかった場合の解除・費用負担を明確にしておく必要があります。

設立前契約は名義と条件を確認する

設立前に契約をする場合、発起人個人名義なのか、設立中の会社名義なのか、成立を条件とする契約なのかを確認してください。会社が成立しなかった場合、発起人個人に契約責任が残る可能性があります。


会社不成立が問題になる典型場面

会社法56条の問題は、会社設立を取りやめる場面だけでなく、発起人間の紛争、出資者との関係、許認可・事業計画の変更、募集設立の不成立など、複数の場面で生じます。典型場面ごとに、何を確認すべきかを整理します。

定款認証後に設立を中止する場合

定款認証後に設立を中止した場合、すでに定款認証費用、電子定款作成費用、専門家費用などが発生していることがあります。これらは会社が成立していない以上、発起人側で負担・精算する必要があります。

定款認証の手続や電子定款の注意点は、定款認証とはで詳しく整理しています。会社不成立時には、認証費用の返還可否だけでなく、誰が最終負担するかを発起人間で確認します。

払込み後に設立登記へ進まない場合

払込み後に設立登記へ進まない場合、払込金をどのように返還するかが重要になります。払込証明書や通帳写しが作成済みであっても、会社が成立しなければ資本金として会社に帰属する前提がなくなります。

出資の履行と払込証明については、出資の履行(払込み)と払込証明で整理しています。不成立時には、払込者ごとの返還額、返還時期、振込手数料、返還後の通帳記録を確認します。

許認可・目的・本店所在地の問題で頓挫する場合

許認可事業では、定款目的、本店所在地、役員構成、資本金額などが許認可要件に影響することがあります。設立手続を進めた後に許認可取得が難しいことが判明し、会社設立自体を中止する場合もあります。

この場合、単に「設立しない」と決めるだけでなく、許認可申請準備費用、専門家費用、事務所契約、設備契約などの外部関係を棚卸しします。設立目的や本店所在地の設計は、会社設立の目的の決め方本店所在地の決め方も併せて確認してください。

募集設立で引受人がいる場合

募集設立では、発起人以外の引受人から払込みを受けることがあります。会社が成立しなかった場合、引受人に対する返還、説明、通知、資料保存が重要です。募集広告・申込証・割当通知・払込証明・創立総会資料などを確認し、返還漏れや説明不足がないように対応します。

募集設立に関する条文は、会社法57条〜62条の逐条解説、払込み・保管証明は会社法63条・64条の逐条解説、創立総会は会社法65条〜83条の逐条解説で整理します。


会社不成立時に取るべき実務対応

会社不成立が確定した場合は、感情的な発起人間の対立や、外部への説明不足により、紛争が拡大しやすくなります。まずは、設立手続のどこまで進んでいたか、誰に対してどのような責任があるかを事実ベースで整理します。

設立手続の進行状況を確認する

最初に、定款作成、定款認証、発起人の出資引受け、払込み、設立時役員の選任、調査、設立登記申請、募集設立の場合の募集・申込み・割当て・払込み・創立総会など、どの段階まで進んでいたかを確認します。

確認資料 確認する内容
定款・認証済定款 発起人、設立目的、本店所在地、設立時発行株式、設立費用の記載
発起人決定書・同意書 発起人間の合意、設立時役員、本店所在場所、出資内容
払込資料 入金者、入金額、入金日、払込口座、返還状況
専門家との契約資料 委任範囲、報酬額、請求済み費用、未払費用
募集関係資料 募集広告、申込証、割当通知、引受人一覧、創立総会資料
対外契約資料 賃貸借、仕入、業務委託、雇用、許認可申請準備の契約名義

外部関係者への説明と精算を行う

会社不成立時には、発起人間の内部処理だけでなく、外部関係者への説明も必要です。引受人、払込者、契約先、専門家、金融機関、許認可申請先など、設立手続に関与した者を洗い出し、誰に何を通知すべきかを整理します。

特に、払込金や預り金の返還は、金額と時期が明確でないと紛争化しやすい部分です。返還を行った場合は、返還先、返還額、振込控え、相手方への通知文、合意書などを保存します。

発起人間で精算合意を作る

発起人が複数いる場合、外部への支払や返還を誰が先に行うか、最終的な内部負担をどうするかを決める必要があります。口頭合意だけで処理すると、後から「自分は負担しないはずだった」「その費用は不要だった」と争われることがあります。

精算合意書には、設立を中止すること、発生済み費用の一覧、返還すべき金額、各発起人の負担割合、支払期限、資料引継ぎ、外部通知の担当、今後の商号・事業計画の利用可否などを記載することを検討します。


他の設立責任規定との違い

会社法56条は、発起人等の責任に関する規定の一つですが、会社法52条、52条の2、53条〜55条、102条の2・103条とは役割が異なります。どの規定で処理すべきかを誤ると、責任主体や免責の有無を誤ってしまいます。

規定 主な場面 会社法56条との違い
会社法52条 現物出資財産等の価額不足 会社成立時の価額不足責任を扱う
会社法52条の2 出資の履行を仮装した場合 出資仮装による支払・給付義務と株主権行使制限を扱う
会社法53条〜55条 発起人等の任務懈怠責任・連帯責任・責任免除 会社又は第三者に生じた損害賠償責任等を扱う
会社法102条の2・103条 募集設立における払込仮装責任・疑似発起人 募集設立特有の責任や発起人みなしを扱う
会社法56条 株式会社が成立しなかった場合 会社が存在しない場面で、発起人が設立関係行為・設立費用を負担する

実務では、会社が成立したのか、成立していないのか、募集設立か発起設立か、出資仮装や財産評価不足があるのかを順番に確認します。会社不成立の場面でも、払込みの仮装や不適切な募集広告があった場合には、会社法56条だけでなく、関連規定や一般法理も併せて検討します。


会社法56条に関するよくある質問

会社法56条はどのような場合に問題になりますか?

株式会社の設立手続が進んだものの、設立登記に至らず会社が成立しなかった場合に問題になります。定款認証後の設立中止、払込み後の中止、募集設立で引受人がいる場合の設立廃止などが典型例です。

会社が成立しなかった場合、発起人は過失がなくても責任を負いますか?

会社法56条の責任は、一般に無過失責任として整理されます。発起人が注意を尽くしていたとしても、会社が成立しなかった場合には、設立に関してした行為についての責任や設立費用の負担を負うことがあります。

設立時取締役も会社法56条の責任を負いますか?

会社法56条の文言上、直接の責任主体は発起人です。設立時取締役が発起人を兼ねている場合は発起人として責任を負いますが、発起人でない設立時取締役については、会社法56条ではなく、契約責任、不法行為責任、説明義務違反など別の根拠を検討します。

会社不成立と設立無効は同じですか?

同じではありません。会社不成立は、設立登記に至らず会社が成立していない場面です。設立無効は、いったん設立登記により会社が成立した後、その設立に無効原因があるとして訴えで争う場面です。設立無効は会社法828条以下で検討します。

払込みを受けた後に会社が成立しなかった場合、払込金はどうしますか?

会社が成立しなければ、払込金が資本金として会社に帰属する前提がなくなります。誰がいくら払い込んだかを確認し、返還先、返還額、返還日、手数料負担を明確にして返還・精算します。返還記録は必ず残すべきです。

発起人が複数いる場合、費用は誰が負担しますか?

外部との関係では、発起人が連帯して責任を負います。内部的には、発起人間の合意、立替額、関与度、設立中止の原因などを踏まえて精算します。事前に負担割合を決めていない場合は、後日紛争化しやすいため、精算合意書を作成することが望ましいです。

募集設立で氏名を広告に出しただけの人も責任を負いますか?

募集設立では、募集広告その他の募集に関する書面・電磁的記録に、自己の氏名・名称と株式会社の設立を賛助する旨を記載・記録することを承諾した者は、会社法103条4項により発起人とみなされる場合があります。単なる協力者のつもりでも、表示内容によっては責任範囲が広がるため注意が必要です。

会社設立を中止した場合、どの資料を残すべきですか?

定款、認証済定款、発起人決定書、払込資料、通帳写し、専門家との契約書・請求書、募集関係資料、創立総会資料、対外契約書、返還記録、発起人間の精算合意書を保存します。後日、費用負担や返還の有無が争われたときの証拠になります。


まとめ

会社法56条は、株式会社が成立しなかった場合に、発起人が連帯して、設立に関してした行為について責任を負い、設立に関して支出した費用を負担することを定める規定です。会社が成立しなければ、会社という責任主体が存在しないため、設立手続を主導した発起人が後始末を担うことになります。

  • 会社法56条は、株式会社不成立時の発起人の連帯責任を定めています。
  • 不成立とは、原則として設立登記に至らず会社が成立しなかった場合です。
  • 会社法56条の直接主体は発起人であり、設立時取締役等は発起人を兼ねるか別の責任根拠があるかを確認します。
  • 不成立時は、払込金、預り金、設立費用、対外契約、募集関係者への説明を早期に整理します。
  • 設立無効、会社不存在、募集設立の疑似発起人、出資仮装責任とは区別して検討します。

会社設立を途中で中止する場合、発起人間の合意だけで済ませず、外部契約、払込金返還、費用負担、通知、証拠化まで整理する必要があります。特に複数発起人・募集設立・許認可事業・設立前契約がある場合は、会社法56条を起点に責任範囲を確認することが重要です。

坂尾陽弁護士

会社不成立の場面では、設立手続のどこで止まったか、誰から何を受け取ったか、誰にどの費用を支払うべきかを一覧化することが出発点です。口頭処理で終わらせず、返還・精算・合意内容を記録に残しておくことが、後日の紛争予防につながります。

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