坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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会社法105条の要点
会社法105条は、株主の権利を定める基本規定です。株主は、株式を持つことにより、会社から経済的利益を受ける権利と、会社の意思決定や監督に関与する権利を持ちます。
もっとも、株主の権利はすべて同じように行使できるわけではありません。種類株式、議決権制限、基準日、株主名簿、共有株式、少数株主権の保有要件などにより、行使できる内容や手続が変わります。
| 確認項目 | 要点 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 代表的な株主権 | 剰余金配当、残余財産分配、株主総会の議決権が明示されています。 | 株主の財産的利益と会社運営への関与を確認します。 |
| その他の権利 | 会社法の規定により認められる権利も含まれます。 | 株主提案、閲覧請求、代表訴訟などは個別条文で要件を確認します。 |
| 定款による制限 | 剰余金配当権と残余財産分配権の全部をいずれも与えない定款は無効です。 | 種類株式・属人的定めを設計するときの下限になります。 |
| 議決権との関係 | 議決権は重要な共益権ですが、種類株式等で制限されることがあります。 | 議決権制限株式、自己株式、基準日、株主名簿を確認します。 |
株式の基本全体は、株式とは|株主の責任・権利・平等(会社法104条〜109条)を整理も併せて確認してください。株主の責任は会社法104条で整理しています。
会社法105条の条文
第百五条 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
条文の原文や最新の法令表示を確認する場合は、会社法(e-Gov法令検索)を確認してください。
105条は短い条文ですが、株主の権利の出発点です。配当、残余財産分配、議決権だけを読めば足りるのではなく、「その他この法律の規定により認められた権利」によって、株主総会関連権、閲覧請求権、差止請求権、株主代表訴訟提起権などの個別権利へつながります。
株主の権利とは何か
株式は株主の地位を表す
会社法上、株式は、株式会社における株主の地位を表す単位です。株主は、株式を有することにより、会社に対する財産的な権利や、会社の運営に関与する権利を持ちます。
このため、株主の権利を考えるときは、個々の権利だけを切り離して見るのではなく、「株式という株主の地位に結び付いた権利のまとまり」として把握する必要があります。
自益権と共益権
株主の権利は、説明上、自益権と共益権に分けて整理されます。
| 分類 | 意味 | 代表例 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 自益権 | 株主自身が経済的利益を受けるための権利 | 剰余金配当を受ける権利、残余財産分配を受ける権利、株式買取請求権など | 配当決議、分配可能額、種類株式、買取請求の期限を確認します。 |
| 共益権 | 会社の運営・監督に関与するための権利 | 議決権、株主提案権、帳簿閲覧請求権、株主代表訴訟提起権など | 議決権数、保有割合、保有期間、株主名簿、基準日を確認します。 |
自益権と共益権の区別は、権利の性質を理解するための整理です。実務では、それぞれの権利について、行使主体、行使期限、必要な株式数・議決権割合、会社への通知方法を個別に確認します。
単独株主権と少数株主権
株主の権利は、1株でも行使できる権利と、一定割合以上の株式又は議決権を持つ株主だけが行使できる権利にも分かれます。
たとえば、株主総会での議決権は、議決権を行使できる株式を有する株主であれば基本的に行使できます。他方で、株主総会の招集請求、議題提案、帳簿閲覧請求などは、一定の保有割合や保有期間が要件になることがあります。会社側も株主側も、「株主である」だけで足りるのか、「一定割合以上の株主である」ことが必要なのかを確認する必要があります。
会社法105条1項が挙げる3つの権利
剰余金の配当を受ける権利
剰余金の配当を受ける権利は、会社が株主に対して利益を分配する場面の基本的な権利です。もっとも、株主が常に配当を請求できるわけではありません。実際に配当を受けるには、分配可能額、配当決議、基準日、種類株式の内容などを確認する必要があります。
配当を受ける権利は、105条1項に明示された重要な自益権です。ただし、種類株式の設計により、ある種類の株式について配当を受けない、又は他の株式より優先・劣後する内容を定めることがあります。詳しくは、会社法108条の解説も確認してください。
残余財産の分配を受ける権利
残余財産の分配を受ける権利は、会社が解散・清算され、債務の弁済などを終えた後に残った財産について、株主が分配を受ける権利です。通常の配当とは異なり、会社の終了局面で問題になります。
残余財産分配権も、種類株式で優先・劣後を定めることがあります。たとえば、投資契約や資本政策では、一定の種類株式について残余財産分配を優先させる設計が問題になることがあります。
株主総会における議決権
議決権は、株主総会で議案に賛成・反対の意思を表示し、会社の意思決定に参加する権利です。取締役の選任、定款変更、合併・会社分割など、会社の重要事項は株主総会決議と結び付くことが多く、議決権は株主の共益権の中心です。
もっとも、すべての株式が常に同じ議決権を持つとは限りません。議決権制限種類株式、自己株式、単元未満株式、基準日、株主名簿、共有株式などによって、議決権の有無や行使方法が変わります。株主総会手続との関係は、株主総会の招集手続も確認してください。
「その他この法律の規定により認められた権利」
会社法105条1項は、3つの権利だけを列挙しているわけではありません。「その他この法律の規定により認められた権利」という文言により、会社法上の個別規定で認められる株主権も含まれます。
| 権利の例 | 主な場面 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 株主総会関連の権利 | 招集通知、議案提案、議決権行使、決議取消しなど | 基準日、議決権数、保有割合、通知期限を確認します。 |
| 閲覧・謄写請求 | 定款、株主名簿、計算書類、会計帳簿など | 請求できる資料ごとに要件と拒絶事由が異なります。 |
| 差止請求 | 違法な新株発行、取締役の違法行為など | 差止めの対象、時期、保全手続の必要性を確認します。 |
| 株主代表訴訟 | 取締役等の責任追及 | 提訴請求、保有期間、責任原因、証拠収集を確認します。 |
| 株式買取請求 | 一定の定款変更、組織再編、株式併合などに反対する場面 | 反対通知、議決権行使、請求期間、価格決定申立ての期限を確認します。 |
株主権の行使では、「権利があるか」だけでなく、「誰が」「いつまでに」「どの方法で」「何株・何個の議決権を持って」行使できるかが重要です。特に少数株主権は、保有割合・保有期間・振替株式の個別株主通知などが問題になることがあります。
会社法105条2項|定款で奪えない権利
配当権と残余財産分配権の両方を全部奪う定款は無効
会社法105条2項は、株主に剰余金配当を受ける権利と残余財産分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、効力を有しないと定めています。
これは、株主の財産的権利の最低限を保護する規定です。株主が会社に出資している以上、配当と残余財産分配のいずれについても一切権利がないという設計は、株式としての基本的性質を失わせるため許されません。
一方だけを制限する設計は直ちに無効とは限らない
105条2項は、剰余金配当権と残余財産分配権の両方を全部与えない定款を無効とする規定です。そのため、種類株式の設計として、剰余金配当を受けないが残余財産分配を受ける株式、又は残余財産分配を受けないが剰余金配当を受ける株式を設計する余地があります。
もっとも、実際の種類株式設計では、105条だけでなく、会社法107条・108条、株主平等原則、既存株主への影響、定款変更手続、種類株主総会の要否を確認する必要があります。種類株式の全体像は、種類株式とは|内容・設計・定款変更のポイントを確認してください。
105条2項を反対解釈しすぎない
105条2項が配当権・残余財産分配権の両方を全部奪う定款を無効としているからといって、それ以外の株主権を定款で自由に奪えるわけではありません。会社法上、定款で別段の定めができる場合や種類株式で内容を変えられる場合には、その条文に従って設計する必要があります。
たとえば、議決権の制限は会社法108条の種類株式として設計できる場面がありますが、手続や限界を無視してよいわけではありません。非公開会社で株主ごとに異なる取扱いを定める場合も、会社法109条の株主平等原則・属人的定めとの関係を確認する必要があります。
定款・種類株式で株主権を設計するときの注意点
株主権を制限・変更する場合は、どの権利を、どの条文に基づき、どの手続で変更するのかを明確にします。
| 設計したい内容 | 主な確認条文・論点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 譲渡制限を付ける | 会社法107条・108条 | 全株式に付すか、種類株式として付すかを分けます。 |
| 配当の優先・劣後を定める | 会社法108条、105条2項 | 剰余金配当と残余財産分配の双方を全部奪う設計は避けます。 |
| 議決権を制限する | 会社法108条、株主総会手続 | 議決権制限種類株式の内容、決議事項の範囲、公開会社の制限を確認します。 |
| 株主ごとに異なる取扱いをする | 会社法109条2項、特殊決議 | 非公開会社であっても、目的・手段の合理性、既存株主への影響を確認します。 |
| 取得請求権・取得条項を付ける | 会社法107条・108条 | 取得事由、対価、手続、反対株主の保護を確認します。 |
東京地裁立川支部平成25年9月25日判決は、非公開会社の属人的定めを用いて、特定株主の議決権や剰余金配当を大きく制限した定款変更について、目的の正当性や手段の相当性を欠くとして無効とした例です。属人的定めや種類株式は便利な設計手段ですが、少数株主を排除する目的で濫用すると、決議の効力が争われるリスクがあります。
株主権は個別に処分できるか
株式は、株主としての地位を表す単位です。そのため、株主権をどこまで個別に譲渡・信託・処分できるかは慎重に考える必要があります。
大阪高裁昭和60年4月16日決定は、従業員株主制度の下で、株式信託契約が従業員株主に締結を強制され、しかも株主権のうち共益権のみを対象としていたことなどから、その信託契約を無効と判断した裁判例です。株主権のうち議決権などの共益権だけを切り離して拘束する設計は、株主の地位を著しく害するものとして問題になり得ます。
他方で、株式そのものは財産権として取引対象になります。東京地裁平成21年3月30日判決は、株式ないし株主権が民法163条の「所有権以外の財産権」に含まれ、取得時効の対象になり得ると判断した裁判例です。株式の帰属が争われる場合は、株券、株主名簿、譲渡契約、議決権行使、配当受領など、株主としての権利行使の実態を確認します。
株主権を制限する合意、議決権拘束契約、信託、株主間契約を設計する場合は、株式の権利をどこまで一体として扱うか、会社に対抗できるか、株主総会決議の効力に影響するかを分けて確認します。
会社側が確認すべき実務ポイント
会社側では、株主権を前提に、株主名簿、定款、種類株式、株主総会手続を整えることが重要です。
- 株主名簿を確認する:誰を株主として扱うか、基準日現在の株主は誰かを整理します。
- 定款と登記を確認する:種類株式、譲渡制限、議決権制限、単元株式の有無を確認します。
- 議決権数を確認する:自己株式、単元未満株式、議決権制限株式、共有株式を除外・調整します。
- 配当の前提を確認する:分配可能額、配当決議、基準日、種類株式の優先順位を確認します。
- 株主からの請求に備える:閲覧請求、提案権、招集請求、代表訴訟提訴請求などの窓口と判断基準を整備します。
- 株主権制限の目的を説明できるようにする:属人的定めや種類株式の導入では、少数株主排除目的と見られないよう、合理的な目的・手段・手続を記録します。
特に非上場会社では、株主構成の変化、相続、名義株、株主間対立が生じた後に、株主権の有無や議決権行使の適法性が争われることがあります。株主名簿と実体関係を継続的に整備しておくことが、紛争予防につながります。
株主側が確認すべき実務ポイント
株主側では、自分がどの権利を、どの要件で行使できるかを確認する必要があります。
- 自分が株主名簿上の株主として扱われているかを確認する
- 保有株式が普通株式か種類株式かを確認する
- 議決権制限、譲渡制限、取得条項、単元株式の有無を確認する
- 配当・残余財産分配の優先順位や制限を確認する
- 株主総会の基準日と議決権行使方法を確認する
- 単独株主権か少数株主権か、必要な保有割合・保有期間を確認する
- 株式が共有の場合は、会社法106条の権利行使者指定・通知を確認する
会社との関係が悪化している場合や、定款変更・組織再編・株式併合などに反対する場合は、権利行使の期限を逃さないことが重要です。特に株式買取請求、決議取消し、差止請求は、短い期間制限が問題になることがあります。
会社法105条と周辺条文の関係
会社法105条は、株主権の出発点ですが、実務では周辺条文と一体で確認します。
| 条文 | テーマ | 105条との関係 |
|---|---|---|
| 会社法104条 | 株主の責任 | 株主が負う責任と、株主が持つ権利を対比して整理します。 |
| 会社法106条 | 共有者による権利行使 | 株式が共有の場合、株主権を誰が行使するかを定めます。 |
| 会社法107条 | 株式の内容についての特別の定め | 全株式について譲渡制限・取得請求権・取得条項を定める場合に関係します。 |
| 会社法108条 | 異なる種類の株式 | 配当、残余財産、議決権などについて異なる種類株式を設計する場合に関係します。 |
| 会社法109条 | 株主の平等 | 株主を株式の内容・数に応じて平等に取り扱う原則と、非公開会社の属人的定めを確認します。 |
株主権を正確に整理するには、105条だけでなく、株式の内容、種類株式、株主平等、株主総会、株主名簿を横断的に確認することが重要です。
よくある質問
株主の権利には何がありますか。
会社法105条は、代表的な権利として、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権を挙げています。そのほか、会社法の個別規定により、株主提案権、閲覧請求権、差止請求権、株主代表訴訟提起権、株式買取請求権などが認められます。
自益権と共益権は何が違いますか。
自益権は、配当や残余財産分配など、株主自身が経済的利益を受けるための権利です。共益権は、議決権、株主提案権、閲覧請求権、株主代表訴訟提起権など、会社の運営や監督に関与するための権利です。
配当を受ける権利を全く与えない株式は作れますか。
配当を受ける権利を制限する種類株式を設計する余地はあります。ただし、会社法105条2項により、剰余金配当を受ける権利と残余財産分配を受ける権利の両方を全部与えない定款の定めは無効です。具体的な設計では、会社法108条や種類株主総会の要否も確認します。
議決権のない株式は作れますか。
会社法108条に基づき、議決権を行使できる事項を制限する種類株式を設計できる場合があります。ただし、発行できる会社・手続・公開会社での制限・既存株主への影響を確認する必要があります。議決権を制限する場合でも、105条2項、株主平等原則、定款変更手続を無視することはできません。
株主権を個別に譲渡できますか。
株式は株主の地位を表すものであり、株主権の一部だけを切り離して自由に譲渡・信託・処分できるとは限りません。大阪高裁昭和60年4月16日決定は、共益権のみを対象とする株式信託契約の有効性が問題となった裁判例です。議決権拘束契約や信託を設計する場合は、株主の地位を不当に害しないかを慎重に検討します。
1株だけでも株主の権利を行使できますか。
権利の種類によります。議決権を有する株式であれば、原則として株主総会で議決権を行使できますが、少数株主権には一定の保有割合や保有期間が必要なものがあります。また、単元株式制度、基準日、株主名簿、共有株式の権利行使者通知などにより、実際の行使方法が変わることがあります。
株主名簿に載っていないと権利行使できませんか。
会社に対して株主権を行使するには、株主名簿や振替制度との関係を確認する必要があります。株式を取得した実体があっても、会社に対抗できるか、基準日株主として扱われるか、個別株主通知が必要かは別問題です。株式譲渡や相続の場面では、株主名簿、名義書換、権利行使者の指定を早めに確認してください。
株主権は時効取得されることがありますか。
裁判例には、株式ないし株主権が民法163条の「所有権以外の財産権」に含まれ、取得時効の対象になり得ると判断したものがあります(東京地裁平成21年3月30日判決)。ただし、株式の帰属は個別事情に左右されるため、株券、名義書換、株主総会での議決権行使、配当受領などの資料を具体的に確認する必要があります。
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会社法105条は、株式の基本、共有株式、種類株式、株主平等、株主総会手続と密接に関係します。関連する記事も併せて確認してください。
まとめ
会社法105条は、株主がその有する株式について持つ基本的な権利を定める条文です。代表的な権利として、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権が挙げられます。
実務では、105条の権利を出発点として、種類株式、議決権制限、株主平等、株主名簿、共有株式、少数株主権、配当手続、株主総会手続を横断的に確認することが重要です。特に定款で株主権を制限する場合は、105条2項の限界だけでなく、目的の正当性、手段の相当性、既存株主への影響、必要な決議手続を慎重に確認してください。
企業法務の無料法律相談実施中!
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