【会社法107条】株式の内容についての特別の定め|条文の要点と実務ポイント

坂尾陽弁護士

会社法107条は、株式会社が発行する全部の株式について、譲渡制限、取得請求権、取得条項という特別の内容を定めるための条文です。107条は「全部の株式」に共通する定めであり、内容の異なる複数の種類株式を設計する108条とは役割が異なります。定款記載事項、定款変更手続、既存株主への影響を分けて確認することが重要です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法107条の要点

会社法107条は、株式の内容について特別の定めを置くことを認める規定です。ここでいう特別の定めは、会社が発行する全部の株式に共通して付される内容を意味します。

107条で定めることができる内容は、譲渡制限、取得請求権、取得条項の3つです。いずれも株主の投資回収、会社の株主構成、資本政策に大きく影響するため、定款への記載内容と導入手続を慎重に確認する必要があります。

確認項目 要点 実務上の意味
対象 発行する全部の株式の内容として定める事項です。 単一種類の株式だけを発行している会社で問題になりやすく、種類株式発行会社では108条との切り分けが必要です。
定められる内容 譲渡制限、取得請求権、取得条項の3つです。 株主構成の固定、株主の出口、会社による取得権限を設計できます。
定款記載事項 107条2項は、各内容について定款に定めるべき事項を列挙しています。 抽象的な方針だけでは足りず、承認を要する旨、取得対価、取得期間、取得事由などを具体化します。
108条との違い 107条は全部の株式、108条は内容の異なる二以上の種類の株式を前提にします。 普通株式と優先株式などを分ける設計は、原則として108条側で検討します。
手続の注意 定款変更、特殊決議、株主全員の同意、種類株主総会などが問題になります。 内容によって必要な決議・同意が変わるため、110条・111条や株主総会手続を確認します。

株式の基本的な位置づけは、株式とは|株主の責任・権利・平等(会社法104条〜109条)を整理も併せて確認してください。種類株式全体の設計は種類株式とは|内容・設計・定款変更のポイントで整理しています。

会社法107条の条文

第百七条 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。

一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。

一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項

イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨

ロ 一定の場合においては株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合

二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項

イ 株主が当該株式会社に対して当該株主の有する株式を取得することを請求することができる旨

ロ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類(第六百八十一条第一号に規定する種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

ハ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

ニ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

ホ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。以下同じ。)以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

ヘ 株主が当該株式会社に対して当該株式を取得することを請求することができる期間

三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項

イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその株式を取得する旨及びその事由

ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨

ハ イの事由が生じた日にイの株式の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する株式の一部の決定の方法

ニ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

ホ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

ヘ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのニに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのホに規定する事項

ト イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

条文の原文や最新の法令表示を確認する場合は、会社法(e-Gov法令検索)を確認してください。

会社法107条で定められる3つの内容

譲渡制限株式

107条1項1号は、譲渡による株式の取得について、会社の承認を要する旨を定めることを認めています。中小企業・同族会社では、好ましくない第三者が株主になることを防ぎ、会社の閉鎖性や人的関係を維持するために重要です。

ここで承認の対象になるのは、条文上「譲渡による当該株式の取得」です。株式譲渡契約そのものの効力と、会社に対して株主として扱ってもらうための会社法上の承認・名義書換の問題は、分けて考える必要があります。

定款では、当該株式を譲渡により取得することについて会社の承認を要する旨を定めます。また、一定の場合には会社が承認したものとみなすときは、その旨と一定の場合も定めます。たとえば、既存株主への譲渡、親族間の譲渡、会社があらかじめ認める一定の譲渡について、みなし承認の設計を検討することがあります。

実際の譲渡承認手続は、107条だけでは完結しません。株主からの承認請求は会社法136条以降、株式取得者からの承認請求や買取手続は会社法137条〜140条以降も確認します。

取得請求権付株式

107条1項2号は、株主が会社に対して、その株式の取得を請求できる旨を定めることを認めています。株主側から見ると、一定の場合に会社へ株式を引き取ってもらう出口を持つ設計です。

非上場会社の株式は市場で売却しにくいため、投資家・少数株主・退職予定者などに一定の回収手段を用意する目的で、取得請求権が検討されることがあります。ただし、会社が株式を取得する場面では、対価、財源、会計・税務、既存株主との公平、資金繰りへの影響を併せて確認する必要があります。

定款では、株主が会社に取得を請求できる旨、取得と引換えに交付する対価、取得請求ができる期間などを定めます。107条では、社債、新株予約権、新株予約権付社債、株式等以外の財産などが対価として問題になりますが、発行会社の株式を対価とする設計は108条の種類株式側と切り分けて検討します。

取得請求権付株式の具体的な取得請求と効力発生は、会社法166条〜167条の手続にもつながります。

取得条項付株式

107条1項3号は、会社が一定の事由の発生を条件として、その株式を取得できる旨を定めることを認めています。取得請求権付株式が株主側からの請求を出発点とするのに対し、取得条項付株式は会社側から取得できる点に特徴があります。

取得条項は、株主の意思にかかわらず会社が株式を取得できる強い効果を持つため、導入・変更の手続が特に重要です。定款変更によって、全部の株式に取得条項を付す場合や取得条項の内容を変更する場合は、会社法110条による株主全員の同意が問題になります。

定款では、一定の事由が生じた日に会社が株式を取得する旨とその事由、別に定める日が到来することを事由とする場合の定め、一部取得をする場合の決定方法、取得対価などを具体的に定めます。取得事由があいまいだと、取得の効力、株主平等、支配権への影響をめぐって紛争化しやすくなります。

取得条項付株式の取得日の決定や一部取得の方法は、会社法168条〜169条も確認します。

会社法107条と108条の違い

107条と108条は、どちらも株式の内容を設計する規定ですが、対象と設計の幅が異なります。107条は、会社が発行する全部の株式に共通する内容を定める規定です。これに対し、108条は、内容の異なる二以上の種類の株式を発行するための規定です。

比較項目 会社法107条 会社法108条
対象 発行する全部の株式 内容の異なる二以上の種類の株式
典型例 全株式を譲渡制限株式にする、全株式に取得請求権又は取得条項を付す 普通株式と優先株式、議決権制限株式、拒否権付種類株式などを分ける
定められる内容 譲渡制限、取得請求権、取得条項 配当、残余財産、議決権、譲渡制限、取得請求、取得条項、全部取得条項、拒否権、役員選任など
対価としての株式 取得請求権・取得条項の対価として発行会社の株式を交付する設計は基本的に108条側で検討します。 他の種類の株式を対価とする取得請求権・取得条項の設計が可能です。
実務での使い分け 会社の全株式に同じ制約・取得権を付ける場合 投資家、創業者、従業員、金融機関などで権利内容を分ける場合

たとえば、会社が普通株式だけを発行しており、その全部に譲渡制限を付ける場合は107条が中心になります。これに対し、普通株式と優先株式を発行し、優先株式だけに取得請求権を付ける場合は108条の種類株式設計として考えます。

108条の詳細は、会社法108条(異なる種類の株式)で整理しています。107条の記事では、種類株式全体へ広げすぎず、「全部の株式に共通する特別の定め」に焦点を当てて理解すると整理しやすくなります。

定款に定めるべき事項

会社法107条2項は、107条1項の内容を定める場合に、定款に定めなければならない事項を列挙しています。実務では、単に「譲渡制限株式とする」「取得請求権を付ける」と書くだけでは足りず、条文が求める事項を落とさないことが重要です。

内容 定款で確認する主な事項 記載漏れがある場合のリスク
譲渡制限 会社の承認を要する旨、みなし承認を置く場合の内容 譲渡承認の要否や承認機関をめぐって、名義書換・議決権行使が争われます。
取得請求権 株主が取得請求できる旨、対価の内容・数・額・算定方法、請求期間 株主がいつ、どの条件で会社に取得を請求できるか不明確になります。
取得条項 取得事由、取得日、一部取得の方法、対価の内容・数・額・算定方法 会社が取得できる時期・範囲・対価が不明確となり、強制取得の効力が争われます。

定款記載事項は、登記や議事録の体裁だけの問題ではありません。株主の投資判断、譲渡の可否、会社による取得の可否、株主間の公平に直接影響します。特に取得条項は株主の地位を会社側から失わせる設計になり得るため、取得事由・対価・一部取得の方法を曖昧にしないことが重要です。

定款変更手続で注意すべきこと

譲渡制限を付す場合は特殊決議を確認する

すべての株式に譲渡制限を付す定款変更は、株主の投下資本回収に大きな制約を与えます。そのため、通常の定款変更の特別決議だけで足りるとは限らず、会社法309条3項の特殊決議が問題になります。

また、譲渡制限を付すと公開会社でなくなる場合があります。会社の機関設計、取締役会の要否、監査役設置、登記、株券発行会社の株券提出手続、反対株主の株式買取請求など、周辺手続も併せて確認します。

取得条項を付す場合は株主全員の同意を確認する

発行する全部の株式に取得条項を付す場合、会社は一定の事由により株主から株式を取得できるようになります。既存株主にとっては、本人の意思に反して株主の地位を失う可能性がある重大な変更です。

そのため、会社法110条は、種類株式発行会社でない会社が、発行する全部の株式の内容として107条1項3号の定めを設ける場合や、その内容を変更する場合について、株主全員の同意を求めています。取得条項を廃止する場合とは扱いが異なるため、議案の内容を具体的に確認します。

株主総会資料と定款案をセットで確認する

107条に関する定款変更では、株主総会招集通知、議案、参考書類、定款変更案、効力発生日、反対株主対応を一体で確認します。株主にとって不利益な変更であるほど、手続説明が不十分だと、決議取消し、無効主張、買取請求、損害賠償などの紛争につながりやすくなります。

株主総会の基本的な招集・決議手続は、株主総会の招集手続も確認してください。107条の定款変更手続の特則は、会社法110条・111条で整理しています。

会社法107条を使う場面

中小企業で株主構成を安定させたい場合

中小企業・同族会社では、経営に関与しない第三者や競合会社が株主になると、会社運営に支障が生じることがあります。このような場合、全株式に譲渡制限を付して、株式の移転に会社承認を必要とする設計が検討されます。

もっとも、譲渡制限を過度に硬直的にすると、相続、事業承継、少数株主の退出、M&Aの場面で株式移転が進まなくなることがあります。承認機関、みなし承認、指定買取人、売買価格決定手続とのつながりを設計しておくことが重要です。

投資家に出口を用意したい場合

非上場会社に投資する株主にとって、株式をいつ、どのように換金できるかは重要です。取得請求権付株式を利用すると、一定期間経過後、一定条件達成時、上場・M&A未達成時などに、株主から会社へ取得を請求できる設計を置くことが考えられます。

ただし、会社に十分な資金がない時期に取得請求が集中すると、資金繰りや債権者保護との関係で問題が生じます。投資契約、株主間契約、優先株式設計、財務制限条項と合わせて検討する必要があります。

一定事由で会社が株式を取得したい場合

取得条項付株式は、株主の死亡、退職、競業、一定期間の経過、契約違反、上場やM&Aの実行など、一定の事由が生じたときに会社が株式を取得する設計として検討されることがあります。

もっとも、取得条項は会社側に強い権限を与えます。株主平等原則、少数株主保護、対価の公正性、取得事由の明確性を欠くと、株主間紛争を激化させるおそれがあります。特定の株主だけを狙い撃ちするような運用にならないか、会社法109条(株主の平等)との関係も確認します。

実務チェックリスト

会社法107条の定款設計・定款変更を検討するときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

チェック項目 確認する内容 注意点
株式の種類 単一種類か、種類株式発行会社か 107条で処理するのか、108条で処理するのかを先に決めます。
対象株式 全部の株式に付すのか、一部の種類に付すのか 全部なら107条、一部の種類なら108条・111条を確認します。
定款事項 107条2項の記載事項を満たしているか 取得対価、期間、取得事由、一部取得方法の漏れに注意します。
決議・同意 特別決議、特殊決議、株主全員同意、種類株主総会の要否 取得条項や譲渡制限は通常の定款変更より重い手続が必要になることがあります。
株主への影響 投資回収、議決権、支配権、取得対価への影響 反対株主対応や説明資料を準備します。
登記・周辺手続 登記事項、株券提出、株主名簿、契約書の修正 定款変更だけで終わらず、会社の実務運用へ反映します。

特に、既存株主の権利内容を変更する場面では、「会社にとって便利だから」という理由だけでは足りません。変更の目的、必要性、相当性、代替手段、既存株主への説明、対価や退出機会を慎重に検討します。

よくある質問

会社法107条と種類株式は同じですか。

同じではありません。107条は、発行する全部の株式に共通する特別の定めです。内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合は、会社法108条の種類株式として検討します。もっとも、譲渡制限、取得請求権、取得条項という論点は107条と108条の双方に出てくるため、対象が全部の株式なのか特定の種類なのかを確認することが重要です。

全株式に譲渡制限を付ければ、株式譲渡は無効になりますか。

当然に譲渡契約そのものが無効になるわけではありません。会社法上は、譲渡による株式の取得について会社の承認を要するという形で整理されます。会社に対して株主として扱ってもらうには、譲渡承認、名義書換、株主名簿の記載などを確認する必要があります。

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いは何ですか。

取得請求権付株式は、株主が会社に対して取得を請求できる株式です。取得条項付株式は、一定事由が生じたときに会社が株式を取得できる株式です。誰が取得のきっかけを作るかが大きな違いです。取得条項は株主の意思に反して取得が進む可能性があるため、導入・変更手続が特に重くなります。

107条の取得対価として発行会社の株式を交付できますか。

107条の取得請求権・取得条項では、対価として社債、新株予約権、新株予約権付社債、株式等以外の財産を定款で定める構造になっており、発行会社の株式を対価とする設計は基本的に108条の種類株式側で検討します。株式を対価にした転換型の設計をしたい場合は、種類株式として108条を確認してください。

取得条項を後から付けるには株主全員の同意が必要ですか。

種類株式発行会社でない会社が、発行する全部の株式の内容として107条1項3号の取得条項を定款に設ける場合や、その内容を変更する場合は、会社法110条により株主全員の同意が問題になります。通常の定款変更決議だけで進めないように注意してください。

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会社法107条は、種類株式、譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式、定款変更手続、株主平等と密接に関係します。関連する記事も併せて確認してください。

まとめ

会社法107条は、株式会社が発行する全部の株式について、譲渡制限、取得請求権、取得条項という特別の内容を定めるための規定です。会社の株主構成を安定させる、株主の出口を設計する、一定事由で会社が株式を取得できるようにするなど、実務上重要な機能を持ちます。

一方で、107条の定めは、株主の投資回収、株主の地位、支配権に大きな影響を与えます。107条と108条の違い、定款記載事項、特殊決議・株主全員同意・種類株主総会の要否、反対株主対応を整理したうえで、定款案、株主総会資料、株主名簿、投資契約・株主間契約まで一体として確認することが重要です。

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