株式の譲渡に係る承認決議(会社法139条)

会社法139条は、譲渡制限株式の譲渡について会社が承認・不承認の決定をするための手続きについて定めています。具体的には、承認・不承認の決定は定款に別段の定めがない限り株主総会又は取締役会の決議により行い、譲渡承認を請求した者に対し、その決定内容を通知しなければなりません。

この記事では会社法139条の条文を紹介し、株式の譲渡に係る承認決議に関する問題点を解説します。

(譲渡等の承認の決定等)
第百三十九条 株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

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譲渡承認を行う機関

譲渡承認請求がなされた場合、取締役会設置会社においては取締役会決議により、それ以外の会社では株主総会決議により譲渡承認を行うのが原則です(会社法1391項)。

定款による承認機関の変更について

もっとも、定款で譲渡承認機関を別途定めることも可能とされており(会社法1391項但書)、非公開会社においては取締役会設置会社であっても譲渡承認の機関を株主総会とする、又は譲渡制限種類株式についてその種類株主総会を承認機関とする例もあります。

定款による承認機関の変更には限界があり、代表取締役や執行役を承認機関とすることは可能であるものの、一定の基準を定めてその基準に従って承認するか否かを決定する必要があるとする考えが有力です。譲渡制限制度の趣旨からは原則として株主が株主総会決議により誰を仲間にするか決定するべきところを、時間的制約から取締役会を承認機関とすることが認められています。したがって、会社法は取締役会のさらに下位機関を承認機関とすることは想定しないと考えられるからです。

公開会社における承認機関

なお、譲渡承認請求の日から2週間以内に譲渡不承認の通知をしなかった場合は譲渡承認をしたとみなされてしまいます(会社法1451号)。従って、株主総会の招集期限が2週間とされている公開会社においては、譲渡承認機関を株主総会とすると、譲渡不承認の決議を得て通知することがスケジュール上できないため、常にみなし承認されて実質的に譲渡制限が無意味なものとなるので注意が必要です。

譲渡承認・不承認の判断基準

取締役会が譲渡承認機関である場合、譲渡承認・不承認の判断について善管注意義務・忠実義務を負うことになります。しかし、譲渡の承認・不承認の判断について取締役に与えられた裁量は大きいものと解されているため、一般論としては譲渡の承認・不承認の判断が誤っていたとして損害賠償請求が認められる可能性は低いものと考えられます。

 

譲渡承認決議における特別利害関係人

取締役会を承認機関とする場合、取締役が譲渡当事者である場合は当該取締役が特別利害関係人に該当して取締役会の議決に加わることができないのではないかが問題となります(会社法3692項)。この点に関しては、取締役が譲渡人株主である場合及び譲受人である場合のいずれの場合でも、当該取締役は特別利害関係に該当するとの見解が有力です(江頭憲治郎「株式会社法(第7版)」237頁)

譲渡承認機関が株主総会である場合、株式を譲渡しようとする株主は決議につき特別の利害関係を有する者に該当します(会社法83113号)。但し、株主総会決議の特別利害関係人は、特別利害関係人の議決権行使がなされたことに加え、著しく不当な決議がされた場合にのみ株主総会決議の取消事由となるにすぎません。

 

取締役会設置会社が解散した場合の承認機関

取締役会設置会社が解散決議をした場合、取締役会は消滅するため承認機関が問題となります。解散決議がなされると、株式会社は清算人が経営を行うことになりますが、取締役会設置会社であっても当然に清算人会が設置されるわけではありません(会社法477条)。

従って、取締役会設置会社が解散をした場合は、原則通り株主総会が承認機関となるものと解されます。

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執筆者:坂尾陽弁護士

  • 2009年 京都大学法学部卒業
  • 20011年 京都大学法科大学院修了
  • 2011年 司法試験合格
  • 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
  • 2016年 アイシア法律事務所設立

 

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