【会社法106条】共有者による権利の行使|条文の要点と実務ポイント

坂尾陽弁護士

会社法106条は、株式が2人以上の共有に属するときに、誰が株主権を行使するかを定める条文です。共同相続で株式が準共有になった場合、権利行使者の指定・会社への通知・会社の同意の限界を誤ると、株主総会決議や閲覧請求などの有効性が争われることがあります。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法106条の要点

会社法106条は、共有株式について、共有者が株主権をバラバラに行使することを防ぎ、会社が誰を相手にすればよいかを明確にするための規定です。特に、非上場会社のオーナー株主が死亡し、遺産分割前の株式を共同相続人が準共有する場面で重要になります。

確認項目 要点 実務上の意味
対象 株式が2人以上の共有に属するとき 共同相続、共同取得、名義・実体が分かれる場面で問題になります。
原則 共有者は、株式についての権利を行使する者1人を定め、会社に通知します。 権利行使者を定めて通知しなければ、原則として株主権を行使できません。
会社の同意 会社が権利行使に同意した場合は、指定・通知がなくても権利行使できる余地があります。 ただし、共有者間の決定が民法の共有ルールに反する場合、会社の同意だけでは適法になりません。
典型紛争 共同相続株式をめぐる議決権行使、取締役選任、決議取消し、帳簿閲覧など 支配権争いでは、誰の議決権を算入するかが会社の経営権に直結します。

株式の基本的な位置づけは、株式とは|株主の責任・権利・平等(会社法104条〜109条)を整理も併せて確認してください。株主の権利一般は会社法105条で整理しています。

会社法106条の条文

第百六条 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

条文の原文や最新の法令表示を確認する場合は、会社法(e-Gov法令検索)を確認してください。

106条のポイントは、共有者の内部関係と会社に対する外部的な権利行使を分けて理解することです。共有者間で誰を権利行使者にするかを決め、その氏名又は名称を会社に通知して初めて、会社との関係でその者が株主権を行使することが原則になります。

共有株式とは何か

株式が複数人に帰属する状態

共有株式とは、1つの株式又は株式群が2人以上の者に帰属している状態をいいます。会社法106条は「共有」と表現していますが、相続により遺産分割前の株式が共同相続人に帰属する場面では、実務上、準共有として問題になります。

株式は、配当を受ける権利、残余財産分配を受ける権利、議決権、閲覧請求権、差止請求権など、複数の権利を含む株主の地位です。そのため、共有者それぞれが別々に権利を行使すると、会社は誰の行使を有効に扱うべきか判断できなくなります。

共同相続で問題になりやすい

非上場会社では、創業者やオーナー株主が多数の株式を保有していることがあります。その株主が死亡し、遺産分割が未了のまま株主総会が近づくと、相続人の誰が議決権を行使できるかが問題になります。

特に、被相続人が過半数株式を保有していた場合、権利行使者の選定だけで取締役選任、定款変更、役員報酬、株主代表訴訟対応などに影響が出ることがあります。会社側は、相続関係・株主名簿・遺産分割の進行状況を確認し、議決権の取扱いを慎重に整理する必要があります。

共有株式の問題は議決権だけではない

会社法106条は、株主総会の議決権だけを対象にする規定ではありません。「当該株式についての権利」を行使する場面全般が問題になります。

権利行使の場面 問題になること 会社側の確認ポイント
株主総会の議決権 誰の賛否を議決権行使として扱うか 権利行使者指定通知の有無、会社の同意の有無、共有者間の決定方法
株主提案・招集請求 少数株主権の保有要件を満たすか 保有割合、保有期間、共有持分、通知書面
帳簿・株主名簿の閲覧請求 共有者の一人が単独で請求できるか 請求権の根拠、権利行使者の指定、調査目的
株式買取請求・価格決定申立て 誰が反対通知・請求・申立てをするか 期限、議決権行使、保有株式の帰属、手続主体
会社からの通知・催告 誰に通知すれば会社の手続として足りるか 会社法126条4項、権利行使者通知、株主名簿上の記載

権利行使者の指定・通知の手続

共有者の中から1人を定める

会社法106条本文は、共有者が「当該株式についての権利を行使する者一人」を定めることを求めています。ここでいう権利行使者は、会社に対して株主権を行使する窓口です。

権利行使者は、必ずしも共有者全員の代表者としてすべての内部利害を調整し終えた者である必要はありません。もっとも、後日の紛争を防ぐためには、共有者間で誰を権利行使者にするか、その者がどの株主権をどの範囲で行使するかを明確にしておくことが重要です。

会社に氏名又は名称を通知する

共有者間で権利行使者を定めただけでは、会社との関係では足りません。会社法106条は、株式会社に対して、その者の氏名又は名称を通知することを求めています。

通知は、後日の証拠化のため、書面で行うのが通常です。実務上は「共有株式権利行使者指定通知書」「共有株主代表者届」などの名称で、次の事項を記載して会社へ提出します。

  • 対象株式:株式数、株式の種類、株券番号がある場合は番号を記載します。
  • 共有者:共有者全員の氏名・住所・持分割合を整理します。
  • 権利行使者:権利行使者として指定する者の氏名又は名称を記載します。
  • 指定の根拠:遺産分割未了、共同取得、共有契約など、共有状態の原因を記載します。
  • 同意・決定資料:共有者全員の署名押印、又は持分過半数で決した資料を添付します。
  • 権利行使の範囲:特定の株主総会、議決権行使、閲覧請求など、必要に応じて範囲を明記します。

会社側が通知を受けた場合は、受付日、提出者、添付資料、対象株式、権利行使者の氏名を記録し、株主総会議事録や招集手続資料と整合するよう管理します。

権利行使者をいつまでに通知すべきか

会社法106条自体は、権利行使者の指定通知について一律の期限を定めていません。しかし、株主総会の議決権を行使する場合、会社が議決権の有無・数を判断できる時点までに通知されていなければ、実務上、議決権行使を認めるかどうかが問題になります。

株主総会が近い場合は、招集通知発送前、遅くとも議決権行使書面・委任状の取扱いを確定する前に、権利行使者の指定・通知を済ませることが望ましいです。株主総会手続の基本は、株主総会の招集手続も確認してください。

共有者間ではどのように権利行使者を決めるか

原則として持分価格の過半数で決める

会社法106条は、権利行使者を共有者間でどのように決めるかまでは明記していません。裁判例では、有限会社の持分について、権利行使者の指定は持分の価格に従いその過半数で決することができるとされています(最高裁平成9年1月28日判決)。

株式についても、共有者間の権利行使者の指定は、共有物の管理に関する行為として、民法252条の考え方により持分価格の過半数で決めるのが基本です。ただし、共有者間の協議状況、議案の性質、権利行使の目的によっては、権利濫用や手続の相当性が問題になることがあります。

全共有者に参加機会を与える

持分過半数で足りるとしても、少数持分の共有者を完全に無視してよいわけではありません。権利行使者の指定は、共有者の利害に大きく影響するため、原則として全共有者に協議・選定に参加する機会を与えるべきです。

実務では、共有者全員に対して、権利行使者候補、対象株式、権利行使の予定、回答期限を記載した書面を送付し、協議の機会を確保します。紛争が予想される場合は、送付記録、回答内容、協議経過を保存しておくことが重要です。

実務メモ

共有者全員の署名押印が得られる場合は、会社側の確認が容易です。他方、相続人間で対立がある場合は、持分過半数の資料だけでなく、少数共有者に参加機会を与えたこと、回答期限が相当であったこと、議案内容を説明したことを資料化します。

議決権行使の内容は別に問題になる

権利行使者を指定することと、個々の株主総会でどのように賛否を投じるかは、理論上区別されます。有効に権利行使者として指定・通知された者については、他の共有者と意見が異なる場合でも、自己の判断で株主権を行使できるとした裁判例があります(最高裁昭和53年4月14日判決)。

もっとも、内部的にどのような合意があったか、権利行使者が共有者に対して責任を負うか、権利行使者の指定自体が濫用的でないかは別問題です。特に会社支配権を左右する議案では、権利行使者の指定過程と議決権行使の目的が争われることがあります。

会社法106条ただし書|会社の同意の意味と限界

会社が同意すれば指定・通知がなくても権利行使できる余地がある

会社法106条ただし書は、株式会社が当該権利の行使に同意した場合には、権利行使者の指定・通知がなくても、共有株式についての権利行使を認める余地を定めています。

このただし書は、会社側の事務処理の便宜を重視したものです。会社が、特定の共有者による権利行使を受け入れても支障がないと判断する場合に、指定・通知を欠くことだけを理由に権利行使を排斥しない余地を認めています。

会社の同意だけで何でも有効になるわけではない

会社の同意は万能ではありません。最高裁平成27年2月19日判決は、共有株式について会社法106条本文の指定・通知を欠いたまま権利行使がされた場合、その権利行使が民法の共有に関する規定に従っていないときは、会社が106条ただし書の同意をしても適法にはならないと判断しました。

同判決は、共有株式についての議決権行使は、議決権行使によって直ちに株式を処分し、又は株式内容を変更するような特段の事情がない限り、株式の管理に関する行為として、民法252条本文により持分価格の過半数で決せられるとしています。

場面 会社の同意の効果 注意点
共有者間の決定が適法にされている 指定・通知を欠く点を会社が同意により受け入れる余地があります。 同意の有無・範囲を議事録や受付記録に残します。
共有者間の決定が民法の共有ルールに反する 会社の同意だけでは権利行使は適法になりません。 議決権行使を認めると決議取消し等のリスクがあります。
共有者間で支配権争いがある 安易な同意は避け、資料提出・協議状況の確認を求めます。 会社が一方当事者に加担したと見られないよう中立性を確保します。

会社は安易に「同意」しない

会社側が共有株式の権利行使に同意する場合、後から決議取消し、決議不存在確認、役員責任、株主間紛争に巻き込まれる可能性があります。

そのため、会社は、単に共有者の一人から「自分が相続人だから議決権を行使する」と言われただけで議決権を認めるのではなく、相続関係、持分割合、他の共有者への連絡状況、権利行使者指定通知の有無、議案の性質を確認すべきです。

共同相続株式をめぐる実務上の注意点

遺産分割前は暫定的な状態である

共同相続により株式が準共有となっている状態は、遺産分割協議、調停、審判により株式の最終的な帰属が決まるまでの暫定的な状態です。権利行使者を指定できるとしても、その制度を利用して相続人間の暫定的な力関係を固定化するような運用には注意が必要です。

会社側は、遺産分割未了の株式について、相続人の一部だけを事実上の支配株主として扱うことがないよう、資料確認と手続の透明性を確保します。株主側は、遺産分割の協議・調停と並行して、当面の株主総会での議決権行使をどう扱うかを整理します。

権利行使者の指定・議決権行使が権利濫用になることがある

大阪高裁平成20年11月28日判決は、同族会社で共同相続により準共有状態となった株式について、権利行使者の指定経緯等に照らし、株主総会における議決権行使が権利濫用に当たると判断した裁判例です。

この裁判例は、持分過半数で形式的に権利行使者を指定できるとしても、共有株式制度の趣旨を濫用して、他の共有者や会社の運営に不当な影響を及ぼすような権利行使は許されない場合があることを示しています。

遺言執行者がいれば当然に株主権を行使できるわけではない

遺言で株式の帰属が定められている場合でも、遺言執行者が当然に会社に対して株主権を行使できるとは限りません。東京地裁昭和57年1月26日判決は、遺言執行者による計算書類・株主名簿の閲覧請求について、原告適格を否定した裁判例です。

遺言執行者が関与する相続案件では、遺言の内容、遺言執行者の権限、株主名簿、権利行使者指定通知、遺産分割の状況を分けて確認します。

会社側が確認すべき実務ポイント

共有株式がある場合、会社側は、株主総会・通知・閲覧請求・株式買取請求などの場面で、誰を株主権の行使主体として扱うかを事前に整理する必要があります。

  • 株主名簿を確認する:株主名簿上の株主、死亡の有無、相続関係、名義書換の状況を確認します。
  • 共有状態を確認する:戸籍、遺産分割協議書、相続関係説明図、株式譲渡関係資料を確認します。
  • 権利行使者指定通知を求める:共有者全員又は持分過半数による指定資料の提出を求めます。
  • 共有者間の協議状況を確認する:全共有者に参加機会があったか、議案内容が共有されているかを確認します。
  • 議案の性質を確認する:通常の議決権行使か、株式の処分・内容変更に近い特段の事情があるかを検討します。
  • 同意の可否を慎重に判断する:会社法106条ただし書の同意をする場合は、理由と範囲を記録します。
  • 株主総会資料に反映する:議決権数、委任状、議決権行使書面、議事録との整合性を確認します。

支配権争いがある場合、会社が一方の相続人の議決権行使を安易に認めると、会社自身が紛争の当事者になります。議決権行使を認めるかどうかを迷う場合は、株主総会前に法的検討を済ませ、必要に応じて仮処分・決議取消しのリスクも見込んで対応します。

株主側が確認すべき実務ポイント

共有株式の株主側では、権利行使者を早めに決め、会社に通知し、権利行使の証拠を整えることが重要です。

  • 対象株式が誰との共有・準共有になっているか確認する
  • 共有者全員の持分割合を確認する
  • 権利行使者を誰にするか協議する
  • 議決権行使・閲覧請求・買取請求など、行使したい権利を特定する
  • 持分過半数で決する場合でも、全共有者に参加機会を与える
  • 権利行使者指定通知書を会社へ提出する
  • 会社が通知を受け付けた日付・担当者・提出資料を記録する
  • 株主総会や請求期限がある場合は、期限から逆算して準備する

相続人間で対立している場合は、権利行使者の指定通知だけでなく、遺産分割協議、遺留分、会社支配権、役員選任、株式評価などが同時に問題になることがあります。株主総会直前になってから対応すると、議決権行使の可否が不安定になりやすいため、早めに資料を整えることが必要です。

会社法106条に関する主要裁判例

会社法106条は条文が短い一方で、共有株式の権利行使をめぐる裁判例が実務上重要です。代表的な裁判例を整理すると、次のとおりです。

裁判例 主なポイント 実務上の示唆
最高裁平成9年1月28日判決 有限会社の持分について、権利行使者の指定は持分価格の過半数で決することができるとしました。 共有者全員一致でなければ権利行使者を指定できないわけではありません。
最高裁昭和53年4月14日判決 権利行使者は、共有者間に意見の相違があっても、自己の判断で株主権を行使できるとしました。 有効な指定・通知後の外部的権限と、内部関係の責任を分けて考えます。
最高裁平成27年2月19日判決 指定・通知を欠く権利行使が民法の共有規定に従っていない場合、会社の同意があっても適法にならないとしました。 106条ただし書の同意だけに頼る運用は危険です。
大阪高裁平成20年11月28日判決 共同相続株式の権利行使者指定・議決権行使が権利濫用に当たると判断しました。 形式的に持分過半数があっても、指定経緯や目的が問題になります。
最高裁平成3年2月19日判決 権利行使者の指定・通知を欠く共同相続人について、特段の事情の下で合併無効の訴えの原告適格を認めました。 指定・通知がない場合でも、会社が手続を前提に動いている場合の信義則・特段事情に注意します。

裁判例を踏まえると、会社法106条の実務では、「通知があるか」だけでなく、「共有者間で適法に決まっているか」「会社が同意してよい場面か」「権利行使が濫用的でないか」を順に確認することが重要です。

会社法106条と周辺条文の関係

共有株式の権利行使は、株主権、株主平等、株主名簿、株主総会手続と密接に関係します。

条文・論点 テーマ 106条との関係
会社法105条 株主の権利 共有株式について行使される権利の内容を確認します。
会社法126条4項 共有者に対する通知・催告 共有株式について、会社からの通知・催告を誰にすればよいかが問題になります。
会社法125条 株主名簿の閲覧謄写請求 共有株式を前提に、株主として閲覧請求できる主体が問題になることがあります。
会社法132条〜134条 株主名簿の名義書換請求 株式取得・相続後に会社へ対抗できるか、名義書換の要否を確認します。
会社法109条 株主の平等 共有株式をめぐる権利行使の取扱いが、特定株主の差別的取扱いにならないかを確認します。
株主総会の招集手続 招集通知・議決権行使 共有株式の議決権を算入するかどうかが、決議の成否に影響します。

会社法106条だけを読んでも、株主総会の実務対応は完結しません。株主名簿、基準日、議決権行使書面、委任状、招集通知、決議要件を一体で確認することが重要です。

よくある質問

共同相続した株式は、相続人の一人が単独で議決権を行使できますか。

原則として、単独では行使できません。共同相続により株式が準共有となっている場合、共有者は権利行使者を1人定め、会社に通知する必要があります。会社が同意する場合でも、共有者間の決定が民法の共有ルールに従っていないと、適法な権利行使と認められないことがあります。

権利行使者の指定は共有者全員の同意が必要ですか。

常に全員一致が必要というわけではありません。裁判例上、権利行使者の指定は、持分価格の過半数で決することができるとされています。ただし、全共有者に参加機会を与えたか、指定の目的が濫用的でないかは別に問題になります。

会社が同意すれば、権利行使者の通知がなくても議決権を認めてよいですか。

会社法106条ただし書により、会社が同意した場合は指定・通知を欠いても権利行使を認める余地があります。しかし、最高裁平成27年2月19日判決は、権利行使が民法の共有規定に従っていない場合、会社の同意があっても適法にはならないと判断しています。紛争がある場合、会社は安易に同意すべきではありません。

権利行使者は他の共有者の指示に必ず従う必要がありますか。

有効に権利行使者として指定・通知された者については、他の共有者と意見が異なる場合でも、自己の判断で株主権を行使できるとした裁判例があります。ただし、共有者間の合意違反、信義則違反、権利濫用、損害賠償などの内部関係の問題が別に生じる可能性はあります。

相続人間で争いがある場合、会社はどちらの議決権を認めるべきですか。

会社は、相続人の一方の主張だけで議決権を認めるのではなく、相続関係、持分割合、権利行使者指定通知、全共有者への参加機会、議案の性質を確認すべきです。判断が難しい場合は、株主総会前に法的助言を受け、議決権算入のリスクを整理します。

権利行使者の指定通知がない場合、会社からの通知・催告はどうすればよいですか。

会社法126条4項により、株式が2人以上の共有に属する場合、共有者が会社に通知を受ける者を通知していないときは、会社の通知又は催告は共有者の一人に対してすれば足りるとされています。ただし、株主総会や支配権争いが絡む場合は、後日の紛争を避けるため、可能な範囲で共有者全員への連絡を検討します。

権利行使者の指定通知書には何を書けばよいですか。

対象株式、共有者全員、持分割合、権利行使者の氏名又は名称、指定日、指定方法、行使する権利の範囲を記載します。相続の場合は、戸籍、相続関係説明図、遺産分割未了であることを示す資料、共有者の署名押印又は持分過半数で決した資料を添付すると、会社側が確認しやすくなります。

権利行使者の指定が権利濫用になるのはどのような場合ですか。

形式的には持分過半数で指定されていても、他の共有者との真摯な協議を欠き、暫定的な準共有状態を利用して会社支配権を不当に覆すなど、制度趣旨を濫用する事情がある場合は、権利濫用が問題になります。大阪高裁平成20年11月28日判決は、そのような観点から権利行使者の指定・議決権行使を問題にした裁判例です。

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会社法106条は、株主の権利、株主名簿、株主総会、種類株式、株主平等と密接に関係します。関連する記事も併せて確認してください。

まとめ

会社法106条は、株式が2人以上の共有に属するときに、株主権を行使する者を1人定め、会社に通知することを求める条文です。共同相続で株式が準共有となる場面では、議決権行使、閲覧請求、株式買取請求、会社からの通知・催告などに広く影響します。

実務では、権利行使者の指定・通知があるか、共有者間で適法に決定されているか、会社が106条ただし書の同意をしてよい場面か、権利行使が濫用的でないかを順に確認することが重要です。特に非上場会社の相続・事業承継・株主間紛争では、会社法106条の処理を誤ると、株主総会決議の効力や会社支配権に直結するため、早期に資料を整え、慎重に対応する必要があります。

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