株式とは|株主の責任・権利・平等(会社法104条〜109条)を整理

坂尾陽弁護士

会社法上の株式とは、単なる投資商品ではなく、株式会社における株主の地位と権利義務を表す単位です。株主の責任、権利、共有株式、株式の内容、株主平等をまとめて押さえると、種類株式・譲渡制限・株主総会・増資の理解にもつながります。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)

 

株式とは|会社法上の意味

株式とは、株式会社における株主としての地位を、細分化された割合的な単位として表したものです。日常的には「株価」「投資商品」として語られることもありますが、会社法上は、株主が会社に対して持つ権利・義務のまとまりを把握するための基本概念です。

会社法上、株式を理解するときは、まず次の3点を分けて考えると整理しやすくなります。

  • 株式は、株式会社における株主の地位を表す
  • 株主の責任は、原則として引受価額を限度とする
  • 株主の権利は、配当・残余財産・議決権などのまとまりとして扱う

このページでは、会社法104条から109条までを中心に、株式の基本、株主の責任・権利、共有株式、株式の内容、株主平等の原則を実務向けに整理します。条文の原文を確認する場合は、最新の法令表示として会社法(e-Gov法令検索)も併せて確認してください。

会社法104条〜109条の全体像

会社法104条から109条までは、株式と株主の地位を理解するための出発点です。各条文の役割を並べると、次のようになります。

条文 テーマ 実務上のポイント 詳しい解説
会社法104条 株主の責任 株主は、その有する株式の引受価額を限度として責任を負います。 会社法104条の解説
会社法105条 株主の権利 剰余金配当、残余財産分配、議決権など、株主に認められる基本的権利を確認します。 会社法105条の解説
会社法106条 共有者による権利行使 株式が共有になった場合、権利を行使する者を定めて会社に通知する必要があります。 会社法106条の解説
会社法107条 株式の内容についての特別の定め 全部の株式について、譲渡制限・取得請求権・取得条項を定めることができます。 会社法107条の解説
会社法108条 異なる種類の株式 配当、議決権、譲渡制限、取得条項、拒否権など、内容の異なる種類株式を設計できます。 会社法108条の解説
会社法109条 株主の平等 会社は、株主を株式の内容と数に応じて平等に取り扱う必要があります。 会社法109条の解説

株式の実務では、これらの条文だけで完結することは多くありません。設立時の出資、株主総会、株主名簿、譲渡制限、種類株式、募集株式、自己株式、組織再編などとつながります。まず104条から109条で「株主とは何を持ち、何に責任を負うのか」を押さえることが重要です。

株式と株券は違う

株式を理解するときは、「株式」と「株券」を混同しないことが大切です。株式は株主の地位を表す法律上の単位であり、株券はその株式を表章する有価証券です。現在の会社実務では、株券を発行しない会社も多く、特に非上場の中小企業では、株券そのものよりも、株主名簿、定款、株式譲渡承認手続、株主総会議事録などの確認が重要になります。

そのため、株主かどうか、何株を保有しているか、議決権を行使できるかを確認するときは、単に「株券を持っているか」だけではなく、株主名簿、株式譲渡の経緯、相続・遺産分割、会社の承認手続の有無などを確認します。

実務メモ

株券の有無だけで株主関係を判断すると、譲渡制限株式、相続株式、名義書換未了の株式、共有株式の場面で誤りやすくなります。株式関係を整理するときは、定款、株主名簿、株主総会議事録、株式譲渡契約書、払込資料をセットで確認してください。

会社法104条:株主の責任

会社法104条は、株主の責任を定める規定です。株主の責任は、原則として、その有する株式の引受価額を限度とします。これは、株式会社の基本である株主有限責任の原則を表すものです。

たとえば、株主が100万円を出資して株式を取得した場合、通常は、その後に会社の債務が増えたとしても、会社債権者から追加で弁済を求められるわけではありません。会社の債務は会社自身が負担し、株主は出資額を超えて会社債務の責任を負わないというのが基本です。

株主に追加出資義務はあるか

株主になった後、会社の資金繰りが悪化したからといって、会社が株主に当然に追加出資を請求できるわけではありません。追加出資を求めるには、新たな募集株式の引受け、株主からの貸付け、第三者割当増資、株主間契約など、別の法律関係が必要です。

もっとも、株主になる前の段階では、設立時発行株式や募集株式の引受人として、出資の履行義務を負う場面があります。設立時の払込みや募集株式の払込みは、株主になった後の追加出資義務とは区別して整理してください。設立手続との関係は、株式会社設立の流れ出資の履行と払込証明も確認すると理解しやすくなります。

支配株主・大株主でも責任は無限にならない

大株主や支配株主であっても、株主であることだけを理由に、会社債務について当然に無限責任を負うわけではありません。ただし、大株主が会社を実質的に支配している場合には、利益相反取引、違法配当、利益供与、株主総会決議の瑕疵、取締役としての責任など、別の制度から責任が問題になることがあります。

したがって、株主の責任を検討するときは、「株主としての有限責任」と「役員・取引当事者・保証人・利益供与の相手方としての責任」を分けて整理することが重要です。

会社法105条:株主の権利

会社法105条は、株主がその有する株式について、会社法上認められる権利を有することを定めています。代表的には、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権が挙げられます。

権利の分類 主な内容 実務上の確認ポイント
自益権 剰余金配当請求権、残余財産分配請求権など 配当・残余財産分配の有無、種類株式の内容、分配可能額を確認します。
共益権 議決権、株主総会関連の権利、帳簿閲覧請求権、株主代表訴訟提起権など 議決権数、基準日、株主名簿、少数株主権の保有要件を確認します。
単独株主権 1株でも行使できる権利 株式数や保有割合が要件になっていないかを確認します。
少数株主権 一定割合・一定個数の株式を保有する株主に認められる権利 議決権割合、保有期間、公開会社・非公開会社の違いを確認します。

株主権は一体として扱われる

株式は、株主としての地位を表すものであり、株主権の総体として理解されます。そのため、配当を受ける権利だけ、議決権だけ、株主総会に出席する権利だけを、株式から切り離して自由に処分できるわけではありません。

裁判例でも、従業員株主制度の下で株主権のうち共益権のみを対象とした株式信託契約について、株主の地位を著しく害することなどを理由に無効と判断した例があります(大阪高裁昭和60年4月16日決定)。株式を譲渡する、信託する、担保に入れる、株主間契約を結ぶといった場面では、株主権の一体性と会社法上の強行規定に注意が必要です。

定款で制限できる権利には限界がある

会社法105条2項は、株主に剰余金配当を受ける権利と残余財産分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは効力を有しないとしています。つまり、定款自治や種類株式の設計が認められるとしても、株主の基本的な経済的権利をすべて奪うことはできません。

種類株式や属人的定めを設計するときは、会社法105条、107条、108条、109条を一体として確認する必要があります。単に「株主総会で多数決を取ればよい」と考えると、株主平等、種類株主総会、反対株主の買取請求などの問題を見落とすおそれがあります。

会社法106条:共有株式と権利行使

株式が共有に属する場合、共有者は、その株式について権利を行使する者を1人定め、会社に通知しなければなりません。典型的には、株主が死亡し、遺産分割が終わるまで相続人が株式を準共有している場面で問題になります。

会社法106条の実務上のポイントは、次のとおりです。

  • 共有者が複数いる場合:共有者全員がばらばらに議決権を行使できるわけではなく、権利行使者の指定・通知が問題になります。
  • 相続株式の場合:遺産分割前は、相続人間で株式が準共有となるため、誰が議決権を行使するかを整理する必要があります。
  • 会社の同意がある場合:会社が同意すれば常に適法になるわけではなく、民法上の共有関係に沿った決定かが問題になります。

最高裁平成27年2月19日判決は、共有に属する株式について、会社法106条本文の指定・通知を欠いた権利行使について、会社が同条ただし書の同意をしても、民法の共有に関する規定に従っていない場合には適法となるものではないと判断しました。また、共有株式の議決権行使の決定は、特段の事情がない限り、株式の管理に関する行為として持分価格の過半数で決せられるとしています。

相続株式をめぐる株主総会、取締役選任、役員報酬、事業承継の場面では、共有株式の権利行使者指定が紛争の入口になりやすいです。詳しくは会社法106条の解説を確認してください。

会社法107条・108条:株式の内容と種類株式

会社法107条と108条は、株式の内容をどう設計できるかを理解するための規定です。ここを押さえると、譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式、議決権制限株式、拒否権付株式などの位置づけが分かりやすくなります。

会社法107条:発行する全部の株式についての特別の定め

会社法107条は、会社が発行する全部の株式の内容として、譲渡による取得について会社の承認を要する旨、株主が会社に株式の取得を請求できる旨、一定の事由が生じたときに会社が株式を取得できる旨を定めることを認めています。

非上場の中小企業で特に重要なのは、譲渡制限の定めです。譲渡制限がある会社では、株主が第三者に株式を譲渡しようとするとき、原則として会社の承認が必要になります。これにより、会社にとって望ましくない第三者が株主になることを一定程度防ぐことができます。

会社法108条:内容の異なる種類株式

会社法108条は、会社が内容の異なる2以上の種類の株式を発行できることを定めています。たとえば、剰余金配当について優先する株式、議決権を制限する株式、譲渡制限のある種類株式、取得条項付種類株式、拒否権付種類株式などです。

種類株式は、資金調達、事業承継、ベンチャー投資、合弁会社、M&A、少数株主整理などで活用されます。一方で、定款変更、種類株主総会、株主平等、反対株主の株式買取請求などの論点と結びつくため、設計段階で慎重に確認する必要があります。詳しくは種類株式とは|内容・設計・定款変更のポイントを確認してください。

会社法109条:株主平等の原則

会社法109条1項は、株式会社は、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないと定めています。これが株主平等の原則です。

株主平等は、「すべての株主を常に同じ扱いにしなければならない」という意味ではありません。株式の内容と数に応じた平等が求められます。普通株式と優先株式で配当内容が異なること、10株を持つ株主が1株を持つ株主より多い議決権を持つことは、株式の内容・数に応じた取扱いとして整理されます。

株主平等が問題になる場面

株主平等が問題になりやすいのは、特定の株主だけに有利・不利な扱いをする場面です。たとえば、特定株主だけに配当しない、特定株主だけ議決権を極端に制限する、経営陣と対立する株主だけを排除する目的で定款変更を行うといった場合には、会社法109条との関係を検討する必要があります。

非公開会社では、会社法109条2項により、剰余金配当、残余財産分配、議決権について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます。もっとも、この制度は万能ではありません。裁判例では、属人的定めを用いた定款変更について、目的の正当性や手段の相当性を欠き、株主としての基本的権利を実質的に奪うものとして無効と判断された例があります(東京地裁立川支部平成25年9月25日判決)。

注意

少数株主や対立株主への対応を目的として、議決権や配当を極端に制限する定款変更を検討する場合、単に特殊決議を満たせばよいとは限りません。目的、手段、代償措置、株主平等、反対株主の保護を総合的に確認する必要があります。

株式の基本を実務で確認する場面

会社法上の株式の基本は、次のような実務場面で問題になります。

場面 確認すべきこと 関連する論点
会社設立 発起人、引受株式数、払込金額、出資の履行 株主の責任、設立時発行株式、払込証明
株主総会 議決権数、基準日、株主名簿、共有株式 株主の権利、共有株式、株主平等
株式譲渡 譲渡制限、承認機関、名義書換、株主名簿 株式の内容、譲渡制限株式
相続・事業承継 遺産分割前の準共有、権利行使者、議決権行使 共有株式、株主総会、種類株式
資金調達 募集株式、持株比率の希釈化、種類株式 株主の権利、株式の内容、株主平等
少数株主整理・M&A 種類株式、株式買取請求、価格決定、通知手続 種類株式、反対株主の株式買取請求

株式の基本を確認するだけであれば104条から109条の理解で足りますが、実際の手続では別の条文も関係します。たとえば、株主総会の手続は株主総会の招集手続、反対株主の退出は反対株主の株式買取請求も併せて確認してください。

会社側が確認すべきチェックリスト

会社側で株式・株主関係を整理するときは、最低限、次の点を確認します。

  • 定款:発行可能株式総数、譲渡制限、種類株式、属人的定めの有無を確認します。
  • 株主名簿:株主名、住所、株式数、取得日、名義書換の履歴を確認します。
  • 株主総会資料:基準日、議決権数、招集通知、議決権行使、議事録を確認します。
  • 株式移動資料:株式譲渡契約書、譲渡承認請求、承認決議、相続関係資料を確認します。
  • 資本政策資料:募集株式、自己株式、種類株式、株式買取請求に関する資料を確認します。

特に非上場会社では、株主名簿が更新されていない、過去の株式譲渡承認が曖昧、相続株式の権利行使者が決まっていない、株主総会で議決権数を誤っているといった問題が紛争につながります。株主構成に変動があったときは、その都度資料を整理しておくことが重要です。

株主側が確認すべきチェックリスト

株主側で自分の権利を確認するときは、次の点を整理します。

  • 何株を保有しているか:株主名簿、株式譲渡契約書、相続資料、出資資料を確認します。
  • どの種類の株式か:普通株式か、議決権制限・配当優先・取得条項などの種類株式かを確認します。
  • 議決権を行使できるか:基準日、共有株式、名義書換、譲渡承認の有無を確認します。
  • 配当や残余財産分配を受けられるか:定款、種類株式の内容、会社の決議を確認します。
  • 少数株主権を使えるか:必要な保有割合、保有期間、公開会社・非公開会社の違いを確認します。

会社との関係が悪化している場合でも、感情的に株主総会や会社に対応する前に、まず自分の株式数、株式の内容、株主名簿上の記載、過去の譲渡・相続の経緯を整理することが重要です。

よくある質問

株式とは簡単にいうと何ですか。

会社法上の株式とは、株式会社における株主の地位を表す単位です。株主は、その株式について、配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会で議決権を行使する権利などを持ちます。

株主は会社の借金を払う必要がありますか。

通常は、株主が会社の借金を直接支払う必要はありません。株主の責任は、原則としてその有する株式の引受価額を限度とします。ただし、株主が保証人になっている場合、役員として責任を負う場合、違法配当や利益供与など別の責任が問題になる場合は別です。

株主の権利だけを一部譲渡できますか。

株式は株主としての地位を表すものであり、株主権は一体として扱われます。そのため、議決権だけ、配当請求権だけを株式から切り離して自由に譲渡できるわけではありません。株主間契約や信託を使う場合でも、会社法上の強行規定や株主の地位を害しないかを確認する必要があります。

相続で株式が共有になった場合、誰が議決権を行使できますか。

遺産分割前の株式は、共同相続人の準共有になるのが通常です。この場合、共有者は株式について権利を行使する者を1人定め、会社に通知する必要があります。権利行使者の指定がないまま株主総会で議決権を行使しようとすると、決議の効力をめぐって紛争になることがあります。

株主平等の原則があれば、全員を同じ扱いにしなければなりませんか。

必ずしも全員を一律に同じ扱いにするという意味ではありません。会社は、株主をその有する株式の内容と数に応じて平等に取り扱う必要があります。種類株式や非公開会社の属人的定めにより異なる取扱いが認められる場合もありますが、目的や手段が不当で、株主の基本的権利を実質的に奪うような設計は問題になります。

関連記事

株式の基本を押さえた後は、個別の条文や関連論点を確認すると、実務上の判断がしやすくなります。

まとめ

株式とは、会社法上、株式会社における株主の地位を表す基本単位です。株主は、原則として引受価額を限度に責任を負い、剰余金配当、残余財産分配、議決権などの権利を持ちます。株式が共有になった場合、権利行使者の指定・通知が必要となり、株式の内容や種類株式を設計するときは、定款、種類株主総会、株主平等の原則を確認する必要があります。

会社側では、定款、株主名簿、株式譲渡・相続・払込関係資料、株主総会議事録を整理しておくことが重要です。株主側では、自分が何株・どの内容の株式を持ち、どの権利を行使できるかを確認することが出発点になります。株主構成や資本政策に関する判断を誤ると、総会決議の効力、株式買取請求、損害賠償、支配権紛争につながることがあるため、早い段階で資料を確認して進めることが大切です。

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)