【会社法930条〜932条】削除(支店所在地における登記の廃止)|改正の要点と実務ポイント

会社法930条〜932条は、現行会社法ではいずれも「削除」とされている条文です。かつては「支店の所在地における登記」に関する規定でしたが、令和4年9月1日施行の改正により、支店所在地を管轄する登記所で行う登記制度が廃止されました。

もっとも、これは「支店に関する登記がすべて不要になった」という意味ではありません。会社の本店所在地を管轄する登記所で、支店の所在場所を登記する必要がある場面は、改正後も残っています。

この記事では、会社法930条〜932条が削除された意味、旧制度で何が求められていたか、改正後に不要になった登記、現在も必要な本店所在地での支店登記、実務上の確認ポイントを整理します。

  • 会社法930条〜932条は、現行法上は削除されています。
  • 削除されたのは、支店所在地を管轄する登記所で行う「支店の所在地における登記」です。
  • 令和4年9月1日以降、支店所在地での登記申請は不要になりました。
  • ただし、本店所在地における「支店の所在場所」の登記は、改正後も必要になる場面があります。
  • 支店設置・支店移転・支店廃止では、会社法915条の変更登記や設立登記との関係を確認する必要があります。

坂尾陽弁護士

会社法930条〜932条のポイントは、「条文が削除されたから支店の登記が全部なくなった」のではなく、「支店所在地の登記所で別途行っていた登記が廃止された」という点です。本店所在地で必要な登記は別に確認しましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法930条〜932条とは

会社法930条〜932条は、現在の会社法では削除されています。旧法では、会社の支店が本店所在地とは別の登記所の管轄区域にある場合などに、支店所在地でも一定の登記をするための規定でした。

条文 旧法上の位置づけ 現行法上の扱い 実務上の結論
会社法930条 支店の所在地における登記の基本規定。支店設置時などに、支店所在地で商号・本店所在地・支店所在地等を登記する規定 削除 支店所在地を管轄する登記所での登記は不要
会社法931条 支店を他の登記所の管轄区域内へ移転した場合の支店所在地登記に関する規定 削除 旧所在地・新所在地の支店所在地登記は不要
会社法932条 支店所在地における変更登記等に関する規定 削除 商号変更・本店移転・組織再編・清算結了等に伴う支店所在地での登記は不要
改正後の残存論点 本店所在地での支店の所在場所の登記 会社法911条、912条〜914条、915条等で確認 支店設置・移転・廃止は本店所在地での登記要否を確認

会社法の現行条文は、e-Gov法令検索「会社法」で確認できます。現行法の条文確認では、930条〜932条は「削除」と表示されるため、旧法解説をそのまま使わないことが重要です。

また、令和4年9月1日施行の改正については、法務省「商業登記規則等が改正され、令和4年9月1日から施行されます」でも、支店・従たる事務所の所在地における登記の廃止が案内されています。

削除されたのは支店所在地の登記制度

会社法930条〜932条の削除で廃止されたのは、支店所在地を管轄する登記所において行う登記です。旧制度では、本店所在地で会社登記簿を管理しつつ、支店所在地にも索引的な登記記録を置く構造がありました。

改正後は、支店所在地の登記所で別途登記記録を作成・変更する必要がなくなりました。これにより、支店所在地ごとの申請、登録免許税、手続管理、変更登記漏れのリスクが減ることになります。

本店所在地での支店登記は別問題

一方で、本店所在地における支店の所在場所の登記まで消えたわけではありません。会社の設立時に支店を設ける場合や、設立後に支店を設置・移転・廃止する場合は、本店所在地の登記所で登記が必要になることがあります。

たとえば株式会社では、設立登記の登記事項や変更登記の場面で、支店の所在場所が問題になります。詳しくは、【会社法911条】株式会社の設立の登記|条文の要点と実務ポイント【会社法915条】変更の登記|条文の要点と実務ポイントも確認してください。

古い解説や旧条文を読むときは施行日を確認する

会社法930条〜932条は、旧条文の解説、司法書士試験系の教材、古い法令集、過去の実務記事に残っていることがあります。旧制度を理解する必要がある場面もありますが、現在の登記申請では、施行日後のルールに基づいて判断します。

特に「支店所在地でも3週間以内に登記が必要」「本支店一括申請が必要」といった旧制度の説明を見た場合は、令和4年9月1日より前の説明か、改正後も妥当する本店所在地での登記の説明かを切り分ける必要があります。

会社法930条〜932条は、現行法では削除されています。実務で問題になるのは、旧制度の支店所在地登記ではなく、改正後も残る本店所在地での支店の所在場所の登記です。


支店所在地における登記が廃止された背景と効果

支店所在地における登記は、もともと会社の本店所在地を探しやすくするための索引的な機能を持つ制度でした。現在は登記情報の取得や会社情報の確認手段が整備され、支店所在地ごとに別途登記記録を置く必要性が下がったため、会社の登記申請手続の負担軽減の観点から廃止されました。

廃止の効果は、支店所在地を管轄する登記所に対して、支店設置、支店移転、商号変更、本店移転、組織再編、清算結了などに伴う支店所在地側の登記申請をしなくてよくなった点にあります。

比較項目 改正前 改正後
支店所在地の登記所での登記 一定の場合に必要 不要
本店所在地での支店の所在場所の登記 必要 引き続き必要になる場面がある
支店所在地側の変更登記 商号・本店・支店所在地等の変更時に問題になった 不要
支店移転時の支店所在地登記 旧所在地・新所在地での登記が問題になった 支店所在地側では不要
実務上の確認先 本店所在地と支店所在地の双方を確認する必要があった 原則として本店所在地の登記所への申請を中心に確認する

申請先が本店所在地中心になった

改正前は、本店所在地の登記所での登記に加え、支店所在地の登記所でも登記が必要になる場面がありました。改正後は、支店所在地側の登記が廃止されたため、支店に関する登記実務は本店所在地での登記を中心に整理します。

ただし、支店がある都道府県や市区町村への税務関係届出、営業所所在地に関する許認可、労務・社会保険、金融機関手続などは、登記とは別に残ることがあります。支店所在地登記の廃止だけで、周辺手続がすべてなくなるわけではありません。

支店所在地の登記記録は職権閉鎖の対象になった

支店所在地における登記の廃止に伴い、既に支店所在地で作成されていた登記記録は、登記官による職権閉鎖の対象になりました。会社側が支店所在地登記記録を閉鎖するための登記申請を個別に行う必要はありません。

もっとも、実務上は、古い登記事項証明書、社内規程、取引先登録情報、許認可資料に支店所在地登記を前提とする記載が残っていることがあります。登記制度の廃止後も、社内資料の更新や取引先説明が必要になる場合があります。

本支店一括申請という発想は基本的に問題になりにくくなった

旧制度では、本店所在地の登記と支店所在地の登記を関連させて申請する本支店一括申請が問題になることがありました。支店所在地登記の廃止後は、支店所在地側の登記申請が不要になったため、旧制度の本支店一括申請を前提に処理する場面は基本的に問題になりにくくなっています。

ただし、旧制度下の登記漏れ、施行日前後の経過措置、古い登記記録や社内資料の確認が必要な場合は、改正時期と登記簿の状態を確認して対応します。

改正後も登記簿の見方は確認が必要です

支店所在地登記が廃止された後も、本店所在地の登記簿には支店の所在場所が記録されることがあります。支店の有無、所在地、変更日を確認するときは、本店所在地の登記事項証明書を確認しましょう。


会社法930条:削除(旧・支店の所在地における登記)

会社法930条

会社法930条は、旧法では「支店の所在地における登記」の基本規定でした。現行法では削除されています。

旧会社法930条は、会社の設立時に支店を設けた場合、会社成立後に支店を設けた場合、新設合併・新設分割・株式移転に伴い設立される会社が支店を設けた場合などに、一定期間内に支店所在地で登記をすることを定めていました。

旧会社法930条で問題になった場面 旧制度の考え方 現行実務
会社設立時に支店を設けた場合 本店所在地の設立登記後、支店所在地でも一定事項を登記 支店所在地側の登記は不要。本店所在地の設立登記で支店の所在場所を確認
会社成立後に支店を設けた場合 支店を設けた日から一定期間内に支店所在地で登記 支店所在地側の登記は不要。本店所在地での変更登記を確認
新設合併・新設分割・株式移転で設立会社が支店を設ける場合 組織再編に伴う支店所在地での登記が問題になった 支店所在地側の登記は不要。組織再編登記と本店所在地での支店登記を確認
支店所在地側の登記事項 商号、本店所在地、支店所在地など索引的事項を登記 支店所在地側の登記制度は廃止

旧930条の中心は索引的な支店所在地登記

旧930条で支店所在地に登記されていた事項は、会社の本店登記簿と同じ詳細な登記事項ではなく、商号、本店の所在場所、支店の所在場所など、会社を特定するための索引的な事項が中心でした。

そのため、旧制度でも、会社の実体や代表者、目的、機関設計などを詳しく確認するには、本店所在地の登記簿を確認する必要がありました。改正により、支店所在地側の索引的な登記を維持する必要性が低くなったと整理できます。

現在は本店所在地での支店設置登記を確認する

会社成立後に支店を設置する場合は、旧930条ではなく、会社法915条の変更登記として、本店所在地での登記要否を確認します。株式会社であれば、支店の所在場所は登記事項になり得るため、支店設置日、支店所在地、決定機関、添付書面を整理します。

支店の設置が取締役会設置会社の重要な業務執行に当たる場合は、取締役会決議が必要になることがあります。取締役会非設置会社では、取締役の決定など会社の機関設計に応じた意思決定を確認します。

会社法上の支店かどうかを最初に確認する

実務では、営業所、事務所、店舗、出張所、サテライトオフィス、倉庫など、さまざまな名称の拠点があります。しかし、そのすべてが会社法上の「支店」として登記対象になるわけではありません。

支店登記が必要かは、独立して営業活動を行う実体があるか、対外的な取引拠点として機能しているか、会社の意思決定上どのような位置づけかを踏まえて検討します。名称が「支店」でなくても登記対象になることがあり、名称が「支店」でも実体によっては慎重な検討が必要です。

支店という名称だけで判断しない

会社案内や名刺で「支店」と表示していても、会社法上の登記対象となる支店かどうかは別問題です。拠点の実態、取引権限、継続性、社内決定を確認してから登記要否を判断しましょう。


会社法931条:削除(旧・他の登記所の管轄区域内への支店移転)

会社法931条

会社法931条は、旧法では「他の登記所の管轄区域内への支店の移転の登記」を定める規定でした。現行法では削除されています。

旧931条では、会社が支店を他の登記所の管轄区域内へ移転した場合、旧所在地では移転の登記、新所在地では旧930条2項各号に掲げる事項の登記をする構造でした。支店所在地側に登記記録を置く制度があったため、支店移転時にも旧所在地・新所在地での処理が問題になっていました。

支店移転の場面 旧制度での支店所在地側の考え方 改正後の実務
支店を別の登記所管轄区域へ移転 旧所在地で移転登記、新所在地で一定事項の登記が問題になった 支店所在地側の登記は不要
同じ支店所在地管轄区域内で移転 支店所在地側で支店の所在場所の変更登記が問題になった 支店所在地側の登記は不要
本店所在地と支店所在地が同じ管轄区域の場合 旧930条でも除外関係が問題になった 本店所在地での登記を中心に確認
登記期限 旧制度では3週間・4週間など支店所在地側の期限が問題になった 支店所在地側の期限管理は不要。本店所在地での変更登記期限を確認

現在は支店移転も本店所在地で確認する

支店を移転した場合、改正後は支店所在地側の登記を考えるのではなく、本店所在地の登記簿に記録されている支店の所在場所を変更する必要があるかを確認します。

会社法915条の変更登記では、登記事項に変更が生じたときは、原則として2週間以内に本店所在地で変更登記をすることになります。支店移転日、決議日、実際の移転日、登記申請日を分けて確認しましょう。

支店移転と本店移転を混同しない

支店移転は、会社の本店を移す本店移転とは異なります。本店移転では、会社の主たる所在地が変わるため、管轄内移転か管轄外移転か、定款変更が必要か、旧所在地・新所在地の登記手続がどうなるかを別途確認します。

支店移転では、本店所在地は変わりません。変更されるのは支店の所在場所です。もっとも、本店移転に伴い、支店所在地との関係や旧制度下の支店所在地登記の説明が絡むことがあるため、旧制度の情報を読むときは注意が必要です。

本店移転の登記については、【会社法916条・917条】本店移転・職務執行停止仮処分等の登記|条文の要点と実務ポイントも参考になります。

支配人を置いた営業所の移転も確認する

支店に支配人を置いている場合、支店移転に伴い、支配人を置いた営業所に関する登記が問題になることがあります。支店所在地登記が廃止されたからといって、支配人関係の登記を確認しなくてよいわけではありません。

支配人の登記については、会社法918条で本店所在地における登記が問題になります。支店移転と支配人登記が連動する場合は、【会社法918条】支配人の登記|条文の要点と実務ポイントも確認してください。


会社法932条:削除(旧・支店における変更登記等)

会社法932条

会社法932条は、旧法では「支店における変更の登記等」を定める規定でした。現行法では削除されています。

旧932条では、持分会社の種類変更、組織変更、合併、会社分割、株式移転、清算結了など、会社法919条から925条まで及び929条の登記が問題になる場合に、一定期間内に支店所在地でも登記をすることを定めていました。

旧932条で支店所在地登記が問題になった主な場面 関連条文 改正後の考え方
持分会社の種類の変更 会社法919条 支店所在地側の登記は不要。本店所在地での登記を確認
組織変更 会社法920条 支店所在地側の登記は不要。組織変更登記を本店所在地で確認
合併 会社法921条・922条 支店所在地側の登記は不要。合併登記・解散登記を本店所在地で確認
吸収分割・新設分割 会社法923条・924条 支店所在地側の登記は不要。会社分割登記を本店所在地で確認
株式移転 会社法925条 支店所在地側の登記は不要。株式移転設立会社等の登記を確認
清算結了 会社法929条 支店所在地側の登記は不要。清算結了登記は本店所在地で確認

組織再編や清算で支店所在地側の登記は不要

会社が組織変更、合併、会社分割、株式移転、清算結了などを行う場合、旧制度では支店所在地側の登記も意識する必要がありました。改正後は、支店所在地における登記制度が廃止されたため、これらの登記について支店所在地側の申請は不要です。

ただし、組織再編や清算自体の登記が不要になったわけではありません。効力発生日、起算点、添付書面、債権者保護手続、登録免許税、公告の有無などは、各登記の条文に基づいて本店所在地で確認します。

支店の所在場所に変更が出る場合は本店所在地で確認する

組織再編や清算に伴って、支店を廃止する、支店を承継する、支店所在地を変更するなど、支店の所在場所そのものに変更が生じる場合があります。この場合、支店所在地側の登記は不要でも、本店所在地での支店の所在場所に関する登記は別途問題になります。

たとえば、吸収分割で事業拠点が承継会社に移る場合、単に分割登記だけでなく、各会社の支店の所在場所がどう変わるかを確認する必要があります。組織再編登記と支店登記を別タスクとして洗い出すことが重要です。

旧932条の検索結果は現行実務にそのまま使わない

「会社法932条」で検索すると、旧条文の全文や資格試験向けの解説が出ることがあります。しかし、現行法では削除されています。旧932条の内容を見て「支店所在地でも登記が必要」と判断すると、現行実務とずれるおそれがあります。

旧条文は、改正前の制度を理解するための参考資料として読むにとどめ、現在の申請では、会社法915条、919条〜929条、商業登記法、商業登記規則、法務局の申請書様式に基づいて確認しましょう。

旧932条は現行実務の直接根拠ではありません

旧932条は、組織再編や清算結了などに伴う支店所在地での登記を扱っていました。現行法では削除されているため、支店所在地側の登記申請を前提にしないことが重要です。


改正後も必要になる本店所在地での支店登記

会社法930条〜932条が削除されても、本店所在地での支店の所在場所に関する登記は、会社の状況に応じて必要になります。支店に関する実務では、まず「支店所在地側の登記は不要」と確認し、そのうえで「本店所在地側の登記は必要か」を判断します。

場面 本店所在地で確認する登記 関連する主な記事
会社設立時から支店を設ける 設立登記の登記事項として支店の所在場所を確認 会社法911条会社法912条〜914条
会社成立後に支店を設置する 支店の所在場所に関する変更登記を確認 会社法915条
既存支店を移転する 支店の所在場所の変更登記を確認 登記申請の期限
支店を廃止する 支店の所在場所の抹消・変更登記を確認 商業登記の申請手続
支店に支配人を置く又は支配人の営業所が変わる 支配人の登記を確認 会社法918条

支店設置では決議機関と設置日を確認する

支店を新たに設置する場合は、支店の所在地、設置日、設置を決定した機関、議事録等の書面を確認します。取締役会設置会社では、支店の設置が重要な業務執行として取締役会決議事項になることがあります。

登記の起算点は、支店を実際に設置した日や決議で定めた設置日との関係で問題になります。登記申請の期限を確認するため、社内決定日と支店設置日を混同しないようにしましょう。

支店移転では移転日と所在地の表記を確認する

支店移転では、移転前所在地、移転後所在地、移転日を確認します。登記上の所在地表記は、住居表示、ビル名、階数、部屋番号の扱いなどで実務上の確認が必要になることがあります。

社内規程、取引先登録、請求書・契約書、ウェブサイト、許認可、税務届出に記載された支店所在地も更新が必要になる場合があります。登記が本店所在地だけで済むようになっても、対外表示の更新は別に管理しましょう。

支店廃止では本当に登記対象支店を閉じるのか確認する

支店を廃止する場合は、営業実体がなくなるのか、単なる名称変更や移転なのか、事務所機能だけ残るのかを確認します。登記対象の支店を閉じるのであれば、本店所在地での支店の所在場所に関する登記を検討します。

税務署、都道府県税事務所、市区町村、社会保険、労働保険、許認可庁、金融機関、取引先への届出や連絡も別途必要になることがあります。登記だけで支店廃止の実務が完了するわけではありません。

支店登記と営業所・事務所の届出は別に管理する

登記上の支店と、税務・許認可・労務・業法上の営業所や事務所は、必ずしも同じ概念ではありません。会社法上の支店登記が不要又は完了していても、業法上の営業所届出や許認可変更届が必要になることがあります。

たとえば、建設業、宅建業、労働者派遣事業、金融商品取引業などでは、営業所や事務所の所在地が許認可・届出と結びつくことがあります。支店所在地登記の廃止を理由に、業法手続を省略しないよう注意してください。


旧制度と現行制度の比較

会社法930条〜932条を理解するには、「旧制度では何が必要だったか」と「現行制度では何が不要になったか」を分けて見ると整理しやすくなります。

論点 旧制度 現行制度 実務上の注意
支店所在地における登記 本店所在地以外の支店所在地でも登記が必要になる場面があった 廃止 支店所在地の登記所へ別途申請しない
会社法930条 支店設置時等の支店所在地登記を規定 削除 旧930条を現行申請の根拠にしない
会社法931条 支店を他管轄区域へ移転した場合の登記を規定 削除 支店所在地側の旧所在地・新所在地登記を考えない
会社法932条 組織再編・清算結了等に伴う支店所在地での変更登記等を規定 削除 組織再編や清算自体の本店所在地登記は別に確認
本店所在地の支店の所在場所 登記事項として残る 引き続き残る 支店設置・移転・廃止では会社法915条等を確認
登記コスト・手続負担 支店所在地側の登録免許税や申請管理が問題になった 軽減 ただし本店所在地側の登録免許税は残り得る
登記漏れリスク 本店所在地の変更だけでなく支店所在地側の変更登記漏れが問題になった 支店所在地側の漏れは基本的に問題にならない 本店所在地側の登記漏れ、許認可・税務届出漏れには注意

旧制度の情報は経過説明として使う

旧制度の情報は、過去の登記簿、古い契約書、社内規程、登記事務の経緯を確認するうえでは意味があります。しかし、現行の登記申請において、旧930条〜932条をそのまま根拠にして支店所在地登記を申請することはできません。

旧制度を確認する必要がある場合でも、「いつの時点の手続か」「令和4年9月1日前か後か」「本店所在地の登記か支店所在地の登記か」を分けて整理します。

現行制度では本店所在地の登記簿に集約して確認する

現行制度では、会社の支店に関する登記事項は、本店所在地の登記簿を中心に確認します。支店所在地側の登記記録がないことをもって、支店が存在しないと判断してはいけません。

取引先や金融機関から支店の登記確認を求められた場合は、本店所在地の履歴事項全部証明書や現在事項証明書を取得し、支店の所在場所の記載を確認するのが基本です。

登記事項証明書の説明が必要になることがある

改正前の制度を知っている取引先や社内担当者から、「支店所在地の登記簿がない」「支店所在地で登記が取れない」と質問されることがあります。この場合は、支店所在地における登記が廃止されたため、本店所在地の登記事項証明書で確認する運用になっていることを説明します。

特に、古い社内マニュアルや契約先の提出書類リストに「支店所在地の登記事項証明書」と記載されている場合は、必要書類の更新を依頼することも検討しましょう。


実務で確認するポイント

会社法930条〜932条が削除された後の支店登記実務では、旧制度の理解よりも、現在何を確認すべきかが重要です。次の順番で確認すると、支店所在地登記廃止後の手続漏れを減らしやすくなります。

  1. 対象拠点が会社法上の支店に当たるかを確認する。
  2. 会社類型を確認する。株式会社、合同会社、合名会社、合資会社で登記事項や手続が異なるためです。
  3. 本店所在地の登記事項証明書を確認し、現在の支店の所在場所がどう記録されているかを見る。
  4. 支店の設置・移転・廃止・名称変更・実態変更のどれに当たるか整理する。
  5. 本店所在地で変更登記が必要か、会社法915条の期限にかかるかを確認する。
  6. 支配人、許認可、税務、社会保険、労働保険、金融機関、取引先への届出・通知を別に洗い出す。

支店登記の要否は「名称」ではなく「実態」で見る

会社内部で「支店」と呼んでいても、会社法上の支店として登記すべきかは、拠点の独立性、営業活動の実態、継続性、取引上の表示、社内権限などによって判断します。逆に「営業所」「店舗」「事務所」と呼んでいても、実態によっては支店登記の検討対象になることがあります。

判断に迷う場合は、拠点の業務内容、責任者の権限、契約締結・請求・受発注の処理、対外表示、取引先との関係、許認可上の営業所該当性を整理してから、登記要否を検討しましょう。

登記期限は本店所在地の変更登記として管理する

会社法930条〜932条の削除後は、支店所在地側の3週間期限や4週間期限を管理する場面は基本的にありません。代わりに、本店所在地での変更登記として、会社法915条の2週間期限を意識する必要があります。

登記申請期限については、登記申請の期限(2週間・3週間)と起算点|登記の期間の考え方で詳しく整理しています。

登記申請の準備では最新の申請書様式を確認する

支店設置、支店移転、支店廃止では、申請書、登記すべき事項、議事録、委任状、登録免許税などを確認します。法務局の申請書様式や記載例は変更されることがあるため、実際の申請前には最新の様式を確認してください。

商業登記の申請手続全般については、商業登記の申請手続|申請人・添付書類・オンライン申請の基本も参考になります。

組織再編では支店の承継・廃止・移転を別タスクにする

合併、会社分割、株式移転、組織変更などでは、組織再編そのものの登記に意識が向きがちです。しかし、拠点が増える、なくなる、承継される、移転する場合は、支店の所在場所に関する登記や社内外の届出も別に確認する必要があります。

支店所在地登記が廃止されたことで、支店所在地側の登記は不要になりましたが、組織再編後の本店所在地の登記事項、許認可、雇用、賃貸借契約、取引先登録は別に整理しましょう。

旧登記簿・社内資料・契約書の表現を更新する

会社法930条〜932条の削除後も、古い社内規程、契約書、取引先提出書類、社内チェックリストに「支店所在地における登記」「本支店一括申請」「支店所在地登記事項証明書」といった表現が残っていることがあります。

これらの表現が残っていると、担当者が不要な登記や書類取得をしようとする原因になります。支店登記に関する社内マニュアルは、改正後の運用に合わせて更新しておくと安全です。

支店所在地登記の廃止後も周辺手続は残ります

支店所在地の登記所での申請が不要になっても、税務、社会保険、労働保険、許認可、金融機関、取引先への届出・通知は残ることがあります。登記だけでなく、拠点管理全体として確認しましょう。


会社法930条〜932条に関するよくある質問

会社法930条は現在どうなっていますか

会社法930条は、現行法では削除されています。旧法では支店の所在地における登記の基本規定でしたが、令和4年9月1日施行の改正により、支店所在地における登記制度が廃止されました。

会社法931条は現在どうなっていますか

会社法931条も、現行法では削除されています。旧法では、支店を他の登記所の管轄区域内へ移転した場合の支店所在地側の登記を定めていました。現在は、支店所在地側の登記申請は不要です。

会社法932条は現在どうなっていますか

会社法932条も、現行法では削除されています。旧法では、組織変更、合併、会社分割、株式移転、清算結了などに伴い、支店所在地でも変更登記等をする場面を定めていました。現在は、支店所在地側の登記は不要です。

支店登記は完全に廃止されたのですか

完全に廃止されたわけではありません。廃止されたのは、支店所在地を管轄する登記所で行う支店所在地登記です。本店所在地の登記所で、支店の所在場所を登記する必要がある場面は残っています。

支店を新しく設置した場合、登記は不要ですか

不要とは限りません。支店所在地側の登記は不要ですが、本店所在地で支店の所在場所に関する登記が必要になることがあります。会社法915条の変更登記や設立登記の登記事項を確認してください。

支店を移転した場合、どこの法務局に申請しますか

改正後は、旧制度のように支店所在地を管轄する登記所で別途申請する必要はありません。基本的には、本店所在地を管轄する登記所で、支店の所在場所に関する変更登記の要否を確認します。

支店を廃止した場合も登記が必要ですか

本店所在地の登記簿に支店の所在場所が記録されている場合、支店廃止に伴う変更登記が必要になることがあります。支店所在地側での登記は不要ですが、本店所在地での登記要否を確認してください。

旧会社法930条〜932条の解説を読んでもよいですか

旧制度の理解や過去の手続確認には参考になります。ただし、現行法では削除されているため、現在の申請要否を判断するときは、旧条文の説明をそのまま使わないようにしてください。

支店所在地の登記事項証明書を求められた場合はどうすればよいですか

支店所在地における登記が廃止された後は、支店所在地側の登記事項証明書が取得できない又は不要になることがあります。提出先に改正後の制度を説明し、本店所在地の登記事項証明書で支店の所在場所を確認してもらう運用を検討します。

支店所在地登記の廃止で登録免許税は不要になりましたか

支店所在地側の登記申請に伴う登録免許税は不要になりました。ただし、本店所在地での支店設置・移転・廃止等の登記に関する登録免許税は、申請内容に応じて別途問題になります。

支店所在地登記がなくなれば税務署への届出も不要ですか

不要とは限りません。税務署、都道府県税事務所、市区町村、社会保険、労働保険、許認可庁への届出は、登記とは別の制度です。支店所在地登記が廃止されても、各制度で必要な届出は個別に確認してください。

支配人を置く支店についても支店所在地登記は不要ですか

支店所在地側の登記は不要です。ただし、支配人を置く場合や支配人を置いた営業所が変わる場合は、会社法918条に基づく支配人の登記を確認する必要があります。


まとめ

会社法930条〜932条は、現行法上、いずれも削除されています。旧法では支店所在地における登記、支店移転時の支店所在地登記、支店所在地での変更登記等を定めていましたが、令和4年9月1日施行の改正により、支店所在地を管轄する登記所での登記制度が廃止されました。

  • 会社法930条〜932条は、現行法では削除されています。
  • 廃止されたのは、支店所在地を管轄する登記所での登記です。
  • 本店所在地での支店の所在場所の登記は、改正後も必要になる場面があります。
  • 支店設置・支店移転・支店廃止では、会社法915条の変更登記や設立登記との関係を確認します。
  • 税務、許認可、社会保険、金融機関、取引先への届出・通知は、登記とは別に管理する必要があります。

支店に関する手続では、「旧会社法930条〜932条の支店所在地登記は不要」「本店所在地での支店登記は別に確認」という二段階で整理することが大切です。古い解説や社内マニュアルを参照する場合は、令和4年9月1日以降の現行制度に合っているかを確認しましょう。

坂尾陽弁護士

支店所在地登記の廃止は、会社にとって手続負担を軽くする改正です。ただし、支店の所在場所を本店所在地で登記する場面や、税務・許認可の届出は残ります。支店を設置・移転・廃止するときは、登記と周辺手続を分けてチェックしましょう。

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