【会社法924条】新設分割の登記|条文の要点と実務ポイント

会社法924条は、会社が新設分割をする場合に、新設分割会社について変更登記をし、新設分割により設立する会社について設立登記をすることを定める条文です。新設分割は、既存会社が事業に関する権利義務の全部又は一部を、新しく設立する会社に承継させる会社分割の一種です。

吸収分割と異なり、新設分割では承継先となる会社を新たに設立します。そのため、会社法924条では、分割会社側の変更登記だけでなく、新設分割設立会社側の設立登記が問題になります。また、登記期限の起算点は単純に「計画書で定めた日」だけではなく、株主総会決議、種類株主総会、反対株主・新株予約権者への通知公告、債権者保護手続、社員同意などのうち、必要な手続の終了時点を確認して判断します。

この記事では、会社法924条について、新設分割の登記の基本、分割会社の変更登記と設立会社の設立登記、2週間期限の起算点、添付書面、効力発生・権利義務承継との関係を実務目線で整理します。

  • 会社法924条は、新設分割の登記を定める条文です。
  • 新設分割会社については変更登記をし、新設分割により設立する会社については設立登記をします。
  • 登記期限は、会社法924条各号で定められた日のうち、必要なもののいずれか遅い日から2週間以内です。
  • 新設分割設立会社が株式会社か持分会社かによって、確認すべき条文構造と登記事項が変わります。
  • 新設分割登記は会社分割の公示として重要ですが、個別資産・許認可・契約・労働契約承継の対応まで当然に済ませるものではありません。

坂尾陽弁護士

会社法924条は、条文が長く、起算点も複数あります。実務では、まず「設立会社が株式会社か持分会社か」「分割会社が株式会社だけか、合同会社だけか、混在か」を分け、そのうえで必要な承認・通知公告・債権者保護手続の終了日を一覧化して、2週間期限を逆算します。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法924条とは

会社法924条は、新設分割をした場合の登記について定めています。新設分割は、事業に関する権利義務を既存会社に承継させる吸収分割と異なり、承継先となる会社を新たに設立する手続です。

項目 会社法924条のポイント
対象となる組織再編 新設分割
分割会社側の登記 新設分割をする会社について変更の登記
設立会社側の登記 新設分割により設立する会社について設立の登記
期限 会社法924条各号で定める日のいずれか遅い日から2週間以内
主な実務論点 設立会社の種類、起算点、同時申請、添付書面、資本金計上、効力発生、個別対抗要件

会社法924条は、一定の日から二週間以内に、新設分割をする会社については変更の登記をし、新設分割により設立する会社については設立の登記をしなければならない旨を定めています。

会社法の条文全体は、e-Gov法令検索「会社法」で確認できます。会社法924条は長い条文であり、設立会社が株式会社か持分会社か、分割会社が株式会社か合同会社かによって起算点が分かれるため、条文全体を確認しながらスケジュールを組むことが重要です。

新設分割会社は変更登記をする

新設分割をする会社は、新設分割会社と呼ばれます。会社法924条では、この新設分割会社について変更の登記をすることが求められます。

分割会社側の登記では、分割をした旨、新設分割により設立する会社の商号・本店など、会社分割によって登記簿上公示すべき事項を確認します。分割会社の商号、目的、資本金の額、公告方法などが新設分割に伴って変更される場合は、その変更登記も合わせて検討します。

新設分割設立会社は設立登記をする

新設分割により設立する会社は、新設分割設立会社と呼ばれます。新設分割では、承継先が既存会社ではないため、設立会社について設立登記をします。

新設分割設立会社が株式会社であれば株式会社の設立登記、持分会社であれば合名会社・合資会社・合同会社の設立登記に関する登記事項を確認します。単に「会社分割をした」という登記だけでなく、新しい会社を成立させるための登記である点が重要です。

924条は会社分割手続全体ではなく登記段階の条文

会社法924条だけを読んでも、新設分割計画、株主総会決議、総社員の同意、反対株主の株式買取請求、新株予約権者保護、債権者保護手続、労働契約承継、許認可、契約上の承諾などの実務対応は完結しません。

会社法924条は、これらの手続を経て、新設分割を登記簿にどう反映するかを定める登記条文です。実務では、手続書類、登記申請書、添付書面、登記すべき事項が同じ事実関係を前提に整合しているかを確認する必要があります。


新設分割の登記で確認する会社と登記内容

新設分割の登記では、分割会社側と設立会社側を分けて考えると整理しやすくなります。どちらか一方だけを見ていると、同時申請、管轄、添付書面、登記すべき事項の漏れが起きやすくなります。

区分 登記の種類 登記の意味 主な確認事項
新設分割会社 変更登記 新設分割をした事実を分割会社の登記簿に反映する 分割をした旨、新設分割設立会社の商号・本店、分割会社側の登記事項変更
新設分割設立会社 設立登記 新設分割により新会社を成立させる 目的、商号、本店、資本金、役員又は社員、公告方法、分割をした旨、分割会社の商号・本店

分割会社側の変更登記

分割会社側の変更登記は、既存の分割会社が新設分割をしたことを公示するための登記です。分割会社は新設分割によって当然に消滅するわけではありません。そのため、吸収合併や新設合併の消滅会社のような解散登記ではなく、変更登記として整理されます。

もっとも、新設分割の内容によっては、分割会社の事業目的、資本金、公告方法、役員構成、その他の登記事項に変更が生じることがあります。新設分割に伴う変更なのか、別個の変更登記なのかを区別しつつ、同時期に申請すべき事項を漏れなく確認します。

設立会社側の設立登記

設立会社側の登記は、新設分割設立会社を成立させる登記です。設立会社が株式会社であれば会社法911条の設立登記事項、合同会社であれば会社法914条の設立登記事項など、設立する会社類型に応じた登記事項を確認します。

新設分割設立会社の設立登記では、通常の設立事項だけでなく、新設分割により設立されたこと、分割会社の商号・本店なども問題になります。新設分割計画で定めた内容と、定款、役員選任、資本金計上、登記すべき事項がずれていないかを確認する必要があります。

複数会社で共同して新設分割をする場合

二以上の会社が共同して新設分割をする場合、各分割会社の承認手続や債権者保護手続の完了時点が異なることがあります。会社法924条は、複数の起算点のうち遅い日を基準にする構造を採っています。

共同新設分割では、一社の手続だけを見て登記期限を判断すると、他社側の手続未了により登記申請ができないことがあります。各社の株主総会・社員同意・公告通知・債権者保護手続を横並びで管理することが重要です。


登記期限は「いずれか遅い日」から2週間以内

会社法924条の最大のポイントは、登記期限の起算点です。吸収分割では効力発生日から2週間以内と整理しやすいのに対し、新設分割では、設立会社の種類と分割会社の種類に応じて、複数の手続日のうち「いずれか遅い日」から2週間以内とされています。

以下は、実務で確認すべき起算点のイメージです。実際の案件では、会社類型、新設分割計画、株主構成、新株予約権の有無、債権者保護手続の要否に応じて、必要な項目だけを拾います。

設立会社 分割会社の区分 主な起算点 実務上の見方
株式会社 株式会社のみ 株主総会決議日、種類株主総会決議日、反対株主通知公告から20日経過日、新株予約権者通知公告から20日経過日、債権者保護手続終了日、分割会社が定めた日 必要な手続のうち最も遅い日を基準にする
株式会社 合同会社のみ 総社員の同意日又は定款所定手続終了日、債権者保護手続終了日、合同会社が定めた日 社員同意と債権者保護手続の完了を中心に確認する
株式会社 株式会社と合同会社の混在 株式会社側・合同会社側それぞれの基準日のうち遅い日 各社の手続完了日を横並びで確認する
持分会社 株式会社のみ 株主総会決議日、種類株主総会決議日、反対株主通知公告から20日経過日、債権者保護手続終了日、分割会社が定めた日 設立会社が持分会社の場合は、新株予約権者への交付関係がないため、株式会社設立の場合と項目が一部異なる
持分会社 合同会社のみ 総社員の同意日又は定款所定手続終了日、債権者保護手続終了日、合同会社が定めた日 合同会社側の社員同意・債権者保護・定めた日を確認する
持分会社 株式会社と合同会社の混在 株式会社側・合同会社側それぞれの基準日のうち遅い日 各社の手続の最終完了日を起算点にする

すべての起算点が常に問題になるわけではない

会社法924条には複数の起算点が列挙されていますが、すべての案件で全項目が問題になるわけではありません。たとえば、種類株主総会が不要な会社では種類株主総会決議日は起算点になりません。新株予約権を発行していない会社では、新株予約権者への通知公告に関する起算点も通常は問題になりません。

実務では、「自社の案件で必要な手続」を先に確定し、その手続ごとの完了日を並べ、最後に到来する日を登記期限の起算点として管理します。

反対株主・新株予約権者・債権者保護手続の終了時点に注意する

新設分割では、株主総会決議をしただけで直ちに登記できるとは限りません。反対株主への通知又は公告から20日を経過した日、新株予約権者への通知又は公告から20日を経過した日、債権者保護手続が終了した日が、株主総会決議日より後になることがあります。

特に債権者保護手続は、公告・個別催告・異議申述期間・異議が出た場合の弁済又は担保提供等によってスケジュールが変わります。登記期限を守るには、会社法924条だけでなく、債権者保護手続の工程表もあわせて作成する必要があります。

分割会社が定めた日は任意記載だからこそ明確化する

会社法924条には、新設分割をする会社が定めた日も起算点として挙げられています。複数会社で共同して新設分割をする場合は、関係会社が合意により定めた日が問題になります。

この日が新設分割計画書や議事録、委任状、申請書の記載とずれていると、登記の事由や手続終了日の説明が難しくなります。実務では、登記申請可能日を意識して、計画書・議事録・申請書の記載を整えることが重要です。


設立会社が株式会社か持分会社かで何が変わるか

会社法924条は、設立会社が株式会社である場合と、持分会社である場合を分けています。どちらも「分割会社の変更登記」と「設立会社の設立登記」が必要である点は共通しますが、設立会社の登記事項や手続の前提が変わります。

比較項目 設立会社が株式会社 設立会社が持分会社
条文構造 会社法924条1項 会社法924条2項
計画条文との関係 株式会社を設立する新設分割計画 持分会社を設立する新設分割計画
設立登記 株式会社の設立登記事項を確認 合名会社・合資会社・合同会社の設立登記事項を確認
出資者・構成員 株主、株式、資本金、役員構成が中心 社員、出資、業務執行社員・代表社員が中心
実務上の注意 株式・新株予約権・資本金計上との整合を確認 社員構成、責任類型、定款、出資の履行を確認

株式会社を設立する新設分割

新設分割設立会社が株式会社である場合、設立登記では、目的、商号、本店、資本金の額、発行可能株式総数、発行済株式数、役員、公告方法など、株式会社の設立登記事項を確認します。

また、新設分割計画で株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債などが関係する場合は、登記事項や添付書面だけでなく、資本金・資本準備金の計上、分割対価、既存の新株予約権者への対応とも整合させる必要があります。

持分会社を設立する新設分割

新設分割設立会社が持分会社である場合、設立する会社が合名会社、合資会社、合同会社のいずれかによって登記事項が異なります。合同会社であれば、目的、商号、本店、資本金の額、業務執行社員、代表社員、公告方法などを確認します。

持分会社では、株式や株主ではなく、社員、出資、責任の類型、業務執行・代表の仕組みが中心になります。株式会社を設立する新設分割の感覚で準備すると、定款や社員に関する登記事項の確認が漏れることがあります。

効力発生は設立会社の成立と結び付く

新設分割では、設立会社が成立することにより、新設分割計画の定めに従って権利義務の承継が問題になります。株式会社を設立する場合も、持分会社を設立する場合も、設立会社の成立日を無視して効力発生を考えることはできません。

そのため、新設分割では、計画書上の予定日、登記申請日、設立登記の受付、会社成立、権利義務承継、個別対抗要件の取得を一つの流れとして管理する必要があります。


登記申請・管轄・同時申請の考え方

新設分割の登記では、分割会社の変更登記と設立会社の設立登記を別々の作業として準備しながら、申請のタイミングは同時申請を意識して組み立てます。設立会社の管轄と分割会社の管轄が異なる場合は、経由申請の扱いも確認します。

分割会社の変更登記と設立会社の設立登記は一体で準備する

新設分割では、設立会社が成立しなければ会社分割の承継関係も完成しません。そのため、分割会社側の変更登記だけを先に済ませる、設立会社側の設立登記だけを単独で済ませる、という発想ではなく、両者を一体の組織再編登記として準備します。

申請書の登記の事由、登記すべき事項、添付書面、登録免許税、委任状、代表者の印鑑証明書などについて、分割会社側と設立会社側で矛盾がないかを確認します。

管轄が異なる場合は経由申請を確認する

新設分割会社と新設分割設立会社の本店所在地を管轄する登記所が異なる場合、どの登記所にどの申請書を提出し、どの登記所を経由するかを確認する必要があります。

管轄を誤ると、登記期限に余裕がない場面で補正や再提出が必要になるおそれがあります。新設分割は手続日が複数あるため、登記期限の起算点を確定する前から、管轄と申請方法を確認しておくべきです。

法務局の申請書様式や登記すべき事項の提出方法も確認する

商業登記の申請方法には、オンライン申請、書面申請、QRコード付き書面申請などがあります。具体的な申請書様式や記載例は、法務局「商業・法人登記の申請書様式」も確認して準備します。

新設分割では、登記すべき事項が長くなりやすく、添付書面も多くなります。電子申請や登記すべき事項の電磁的記録媒体提出を利用する場合でも、登記内容と添付書面の整合性を事前に確認しておくことが重要です。


新設分割登記の添付書面で確認すること

新設分割の登記では、通常の会社設立や変更登記よりも添付書面が多くなりがちです。会社類型、承認方法、債権者保護手続の要否、設立会社の機関設計、新株予約権の有無などによって必要書面が変わります。

書面類型 確認する内容 注意点
新設分割計画書 承継する権利義務、設立会社の基本事項、対価、資本金等 登記すべき事項や定款と整合させる
承認手続書面 株主総会議事録、種類株主総会議事録、総社員の同意書等 承認不要・略式・簡易の該当性は慎重に確認する
債権者保護手続書面 公告・催告、異議の有無、弁済・担保提供等 異議申述期間と登記期限の起算点を連動させる
設立会社関係書面 定款、役員又は社員の就任承諾、代表者選定、印鑑証明書等 設立する会社類型ごとに必要書面が異なる
資本関係書面 資本金の額の計上に関する証明書など 会計処理・計画書・登記金額の整合を確認する
代理申請関係書面 委任状など 登記申請人・代理人・押印の整合を確認する

新設分割計画書と登記事項の整合

新設分割計画書は、登記申請の土台になる書面です。設立会社の商号、本店、目的、承継する権利義務、分割対価、資本金・準備金、成立日又は手続終了日との関係が、登記申請書や定款と整合しているかを確認します。

計画書に記載された事業承継の範囲が曖昧な場合、登記だけでなく、契約承継、許認可、労働契約、取引先説明にも影響します。登記書類を作る段階で初めて確認するのではなく、計画書作成時点から登記事項を意識しておくことが重要です。

承認手続と株主リスト・社員同意

株式会社が新設分割をする場合、株主総会決議や種類株主総会決議が必要になることがあります。株主総会議事録や株主リストが必要になる場面では、議決権数、議決権割合、議案内容、決議要件を確認します。

合同会社が関係する場合は、総社員の同意又は定款で定めた手続の終了が問題になります。合同会社は株式会社と手続構造が異なるため、株主総会議事録を前提にしたチェックリストをそのまま流用しないよう注意が必要です。

債権者保護手続の完了を証明する書面

新設分割では、債権者保護手続が必要となる場面があります。公告、個別催告、異議申述期間、異議が出た場合の弁済・担保提供・信託などを確認し、手続が終了したことを示す書面を準備します。

会社法924条の起算点にも債権者保護手続の終了日が含まれるため、添付書面の確認は、登記期限の確認そのものでもあります。公告日、催告日、異議申述期間満了日、対応完了日を一覧化しておくと安全です。

資本金の額の計上に関する証明書

新設分割設立会社が株式会社や合同会社として資本金を登記する場合、資本金の額が会社法の規定に従って計上されたことを示す書面が問題になります。法務局の申請書様式ページでも、資本金の額の計上に関する証明書の例が案内されています。

資本金の額は、税務・会計上の処理だけでなく、登記簿、定款、計画書、登録免許税にも関わります。登記申請直前に数字を合わせるのではなく、会計処理と登記申請の双方を見ながら早めに確認する必要があります。


新設分割の効力発生と登記の関係

新設分割では、設立会社の成立と権利義務承継が密接に結び付きます。株式会社を設立する新設分割では、新設分割設立株式会社は、その成立の日に新設分割計画の定めに従って権利義務を承継します。持分会社を設立する場合も、設立持分会社の成立の日に承継が問題になります。

登記申請日・会社成立日・承継日を混同しない

新設分割では、単に「新設分割計画で定めた効力発生日」を見れば足りるわけではありません。設立会社は設立登記によって成立するため、会社成立日と権利義務承継日を意識する必要があります。

実務上は、計画書で想定した日、会社法924条上の登記期限の起算点、登記申請日、設立登記の受付日、会社成立日、権利義務承継日を時系列で整理します。これらを混同すると、取引先説明、会計処理、許認可、契約承継、労務対応にずれが生じます。

登記だけで個別資産の対抗要件まで完了するわけではない

新設分割により権利義務が承継されるとしても、個別資産や権利について対抗要件が別途必要となる場合があります。不動産、知的財産権、許認可、契約上の地位、担保権、金融機関との契約などは、登記とは別に名義変更や承諾、通知、登録手続を確認します。

会社法924条の登記は会社分割の公示として重要ですが、登記をしただけで、個別資産の名義や許認可・契約の承継がすべて自動的に対外的に問題なくなるわけではありません。新設分割計画の承継対象ごとに個別対応表を作ることが有用です。

労働契約や従業員対応も別に確認する

新設分割に従業員や労働契約が関係する場合は、労働契約承継に関する通知、協議、異議申出などの対応が問題になります。会社法924条は登記条文であり、労働契約承継の手続を代替するものではありません。

従業員対応、就業規則、社会保険、給与計算、退職給付、個人情報の移転などは、登記スケジュールと並行して管理する必要があります。


新設分割登記と他の組織再編登記の違い

新設分割登記は、吸収分割登記、合併登記、株式移転登記と混同されやすい手続です。会社法924条を理解するには、他の登記条文との違いを押さえることが重要です。

登記条文 対象手続 登記の基本形 主な違い
会社法921条・922条 合併 消滅会社の解散登記、存続会社の変更登記又は新設会社の設立登記 消滅会社がある
会社法923条 吸収分割 分割会社と承継会社の双方の変更登記 承継先が既存会社
会社法924条 新設分割 分割会社の変更登記、設立会社の設立登記 承継先となる新会社を設立する
会社法925条 株式移転 株式移転設立完全親会社の設立登記 事業承継ではなく完全親会社の設立が中心

吸収分割との違い

吸収分割では、承継先が既存会社です。そのため、会社法923条では、吸収分割会社と吸収分割承継会社の双方について変更登記をします。これに対し、新設分割では承継先を新たに設立するため、設立会社について設立登記をします。

この違いにより、新設分割では、設立会社の定款、機関設計、役員又は社員、資本金、設立登記事項、成立日が重要になります。

新設合併との違い

新設合併では、合併により消滅する会社があり、新設会社がその権利義務を承継します。消滅会社については解散登記をし、新設会社については設立登記をします。

新設分割では、分割会社が当然に消滅するわけではありません。そのため、分割会社については解散登記ではなく変更登記をします。この点は、新設合併との大きな違いです。

株式移転との違い

株式移転は、完全親会社を設立する手続であり、会社法925条が登記を定めています。新設分割と同じく「設立登記」が問題になりますが、株式移転は事業に関する権利義務の承継ではなく、株式を通じた完全親会社化が中心です。

新設分割では、承継対象となる事業、資産、債務、契約、労働契約、許認可が実務上の中心になります。株式移転と同じ感覚で処理すると、承継対象ごとの個別対応が漏れやすくなります。


新設分割登記でミスが起きやすいポイント

新設分割登記では、条文上の起算点が複雑であることに加え、設立登記と変更登記を同時に扱うため、実務上のミスが起きやすくなります。特に次の点に注意が必要です。

  • 2週間期限の起算点を、株主総会決議日だけで判断してしまう
  • 債権者保護手続の終了日を確認せずに登記申請日を決めてしまう
  • 設立会社が株式会社か持分会社かによる登記事項の違いを見落とす
  • 分割会社の変更登記と設立会社の設立登記を別々に準備し、同時申請・管轄確認が漏れる
  • 新設分割計画書、定款、議事録、資本金計上証明書、登記申請書の記載がずれる
  • 不動産、許認可、契約、労働契約などの個別対応を登記で完了したと誤解する

起算点の誤り

新設分割登記で最も注意すべきなのは、起算点の誤りです。株主総会決議日だけを基準にしてしまうと、反対株主への通知公告から20日経過日、債権者保護手続終了日、分割会社が定めた日が後に来る場合に対応できません。

登記期限を正しく管理するには、会社法924条の各号をそのままチェックリスト化し、該当しない項目に線を引き、該当する項目の実際の日付を記入していく方法が有効です。

登記事項と計画書の不整合

新設分割計画書の記載と、設立会社の定款・登記申請書・登記すべき事項が一致していないと、補正や説明が必要になります。特に商号、本店、目的、資本金、承継する権利義務、分割対価、設立時役員又は社員の記載には注意が必要です。

新設分割は複数部署が関与することが多いため、法務、経理、総務、人事、事業部門、外部専門家の間で最新版の計画書と登記情報を共有しておく必要があります。

登記後の個別対応漏れ

新設分割登記が完了すると、社内では「会社分割が終わった」と認識されがちです。しかし、取引先への通知、契約承継、許認可、金融機関対応、不動産・知的財産の登録、従業員対応などは、登記とは別の実務対応として残ることがあります。

登記完了をゴールにするのではなく、登記前、登記日、登記後に必要な実務対応を分けて管理することが重要です。


会社法924条の実務チェックリスト

新設分割登記を準備する際は、次の順で確認すると抜け漏れを減らせます。

  1. 新設分割設立会社が株式会社か持分会社かを確認する
  2. 新設分割会社が株式会社のみ、合同会社のみ、混在のいずれかを確認する
  3. 新設分割計画書の内容と設立会社の定款・登記事項を照合する
  4. 株主総会決議、種類株主総会決議、総社員の同意など必要な承認手続を確認する
  5. 反対株主・新株予約権者への通知公告が必要か確認する
  6. 債権者保護手続の要否、公告・催告・異議対応を確認する
  7. 会社法924条各号の起算点を一覧化し、最も遅い日を確定する
  8. 2週間以内に申請できるよう、管轄、同時申請、経由申請を確認する
  9. 設立会社側の設立登記添付書面と分割会社側の変更登記添付書面を分けて準備する
  10. 登記後に必要な契約、許認可、資産名義、労務、取引先対応を別途管理する

このチェックリストは、会社法924条の登記に関する入口整理です。実際の案件では、会社類型、機関設計、株主構成、債権者の範囲、承継資産、許認可、労働契約、金融機関との契約により、確認すべき事項が増えることがあります。


会社法924条に関するよくある質問

新設分割の登記はいつまでに申請する必要がありますか

会社法924条各号で定められた日のうち、必要なもののいずれか遅い日から2週間以内です。株主総会決議日だけでなく、種類株主総会、反対株主・新株予約権者への通知公告、債権者保護手続、社員同意、分割会社が定めた日などを確認します。

新設分割会社は解散登記をしますか

通常は解散登記ではなく変更登記です。新設分割では、分割会社が当然に消滅するわけではありません。会社法924条も、新設分割をする会社については変更の登記をすると定めています。

新設分割設立会社の設立登記だけをすれば足りますか

足りません。会社法924条は、新設分割をする会社についての変更登記と、新設分割により設立する会社についての設立登記の双方を求めています。実務上も、両方の登記を一体で準備する必要があります。

新設分割の効力発生日は計画書で自由に決められますか

新設分割では、設立会社の成立と権利義務承継が関係します。計画書上の予定日だけで完結するのではなく、会社法924条の起算点、設立登記、設立会社の成立日を踏まえて整理する必要があります。

会社法924条の登記を遅れて申請した場合、新設分割は無効になりますか

登記期限を過ぎたことだけで、直ちに新設分割が常に無効になるわけではありません。ただし、登記義務違反、過料、登記簿と実体のずれ、取引先・金融機関・許認可対応への影響が問題になります。期限徒過に気付いた場合は、速やかに申請準備を進めるべきです。

吸収分割の登記とは何が違いますか

吸収分割では、承継先が既存会社であるため、分割会社と承継会社の双方について変更登記をします。新設分割では、承継先として新しい会社を設立するため、分割会社の変更登記と設立会社の設立登記が問題になります。

登記が終われば不動産や契約の名義変更も完了しますか

完了するとは限りません。会社法924条の登記は商業登記です。不動産、知的財産、許認可、契約上の地位、金融契約、労働契約などは、個別に対抗要件、承諾、通知、登録、名義変更が必要となる場合があります。


まとめ

会社法924条は、新設分割の登記を定める条文です。新設分割会社については変更登記をし、新設分割により設立する会社については設立登記をします。

  • 会社法924条は、新設分割の登記を定めています。
  • 新設分割では、分割会社の変更登記と、設立会社の設立登記が必要です。
  • 設立会社が株式会社か持分会社か、分割会社が株式会社か合同会社かによって起算点が変わります。
  • 登記期限は、会社法924条各号で定める日のうち必要なもののいずれか遅い日から2週間以内です。
  • 登記だけで、個別資産、許認可、契約、労働契約承継などの対応がすべて完了するわけではありません。

新設分割は、新しい会社を設立して事業に関する権利義務を承継させるため、登記、承認手続、債権者保護、資本金計上、設立会社の機関設計、個別資産・契約・労務対応が複雑に絡みます。会社法924条の2週間期限を守るだけでなく、登記前後の実務対応を含めてスケジュールを管理しましょう。

坂尾陽弁護士

会社法924条の実務では、「変更登記+設立登記」「いずれか遅い日から2週間」「設立会社の成立と承継」「登記後の個別対応」をセットで確認します。新設分割のスケジュールを作る段階で、登記期限・添付書面・個別承継対応を一覧化しておくことが重要です。

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新設分割登記、会社分割登記、組織再編登記、登記期限、会社の登記の効力については、次の記事も参考になります。

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