【会社法933条〜936条】外国会社の登記|条文の要点と実務ポイント

会社法933条〜936条は、外国会社の登記について、初回登記、登記事項、日本における代表者や営業所を追加・移転・設置・閉鎖した場合の登記を定める条文です。

外国会社が日本で継続して取引をする場合、まず会社法817条に基づいて日本における代表者を定め、会社法818条との関係で登記前取引の制限を確認します。そのうえで、実際にどこで、どの事項を、いつまでに登記するかを整理する中心条文が933条〜936条です。

この記事では、会社法933条・934条・935条・936条について、営業所の有無、日本における代表者の住所地、登記事項、3週間・4週間の期限、外国で発生した事項の起算点を、実務で確認しやすい形で整理します。

  • 会社法933条は、外国会社が初めて日本における代表者を定めた場合の外国会社登記を定める基本規定です。
  • 日本に営業所を設けていない場合は日本における代表者の住所地、営業所を設けた場合は営業所所在地で登記するのが基本です。
  • 外国会社の登記では、同種又は最も類似する日本の会社類型に応じた登記事項に加え、準拠法、日本における代表者、公告方法などを登記します。
  • 934条〜936条は、代表者の追加、営業所の追加、代表者住所や営業所の移転、営業所の設置・閉鎖に伴う登記を定めています。
  • 外国で生じた登記事項については、日本における代表者へ通知が到達した日から登記期間を起算する点が重要です。

坂尾陽弁護士

外国会社の登記は、「日本に支店を置くかどうか」だけでなく、「日本における代表者をどこに置くか」「営業所を置くか」「代表者や営業所が複数になるか」で申請先と期限が変わります。933条〜936条は、その分岐を読むための条文です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)

 


会社法933条〜936条とは

会社法933条〜936条は、会社法第7編第4章「登記」の第3節「外国会社の登記」に置かれている規定です。外国会社が日本で継続取引を行う場合に、会社法817条・818条で求められる日本における代表者と外国会社登記を、登記手続の側から具体化しています。

条文 テーマ 実務で問題になる場面
会社法933条 外国会社の初回登記・登記事項・準用・期間起算 外国会社が初めて日本における代表者を定め、日本で登記をする場面
会社法934条 日本における代表者の選任の登記等 登記後に日本における代表者を追加する、又は営業所を追加する場面
会社法935条 日本における代表者の住所移転・営業所移転の登記等 代表者住所又は営業所を他の登記所の管轄区域へ移す場面
会社法936条 日本における営業所の設置・閉鎖の登記等 営業所がない外国会社が初めて営業所を設ける、又はすべての営業所を閉鎖する場面

外国会社登記の全体像は、外国会社の登記とは|日本進出(継続取引)に必要な手続と注意点でも整理しています。本記事では、会社法933条〜936条の逐条的な読み方に焦点を当てます。

会社法の現行条文は、e-Gov法令検索「会社法」で確認できます。

実務ポイント

外国会社登記では、817条・818条で「日本における代表者を定める必要があるか」「登記前に継続取引ができるか」を確認し、933条〜936条で「どこに、何を、いつまでに登記するか」を確認する、という順序で読むと整理しやすくなります。


条文の要点

会社法933条〜936条は、営業所の有無と登記所の管轄を軸に分岐します。条文を読む際は、まず「営業所を設けていない外国会社か」「日本に営業所を設けた外国会社か」を分けることが重要です。

会社法933条:外国会社の登記

会社法933条1項は、外国会社が会社法817条1項により初めて日本における代表者を定めたときは、3週間以内に、営業所の有無に応じて外国会社の登記をしなければならないと定めています。

日本に営業所を設けていない場合は日本における代表者の住所地で、日本に営業所を設けた場合は営業所の所在地で登記します。

933条は、外国会社登記の基本規定です。初回登記の場所、登記事項、営業所を支店とみなす扱い、他の登記規定の準用、外国で生じた登記事項の期間起算をまとめて定めています。

特に重要なのは、登記場所と登記事項です。日本に営業所を置かない場合には日本における代表者の住所地が登記地になり、営業所を設ける場合には営業所所在地が登記地になります。単に海外本社の所在地や契約締結地で決まるわけではありません。

会社法934条:日本における代表者の選任の登記等

会社法934条は、外国会社の登記後に、日本における代表者を新たに定めた場合や、日本に営業所を新たに設けた場合の登記を定めています。

934条は、初回登記後に代表者や営業所が増える場面の規定です。営業所を設けていない外国会社が、新たな日本における代表者を定め、その住所地が既に登記されている他の代表者住所地の管轄外である場合には、その新たな代表者の住所地でも外国会社の登記をする必要があります。

また、日本に営業所を設けた外国会社が、登記後に日本に営業所を新たに設け、その所在地が既に登記された他の営業所所在地の管轄外である場合には、その新たな営業所所在地でも外国会社の登記をする必要があります。

会社法935条:日本における代表者の住所の移転の登記等

会社法935条は、日本に営業所を設けていない外国会社の日本における代表者が、外国会社の登記後にその住所を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の登記を定めています。

同条2項は、日本に営業所を設けた外国会社が、登記後に営業所を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の登記を定めています。

935条は、代表者住所又は営業所の「管轄外移転」があったときの登記を定めます。営業所を設けていない外国会社では、代表者住所地が登記の基準になるため、住所移転が登記地の変更に直結します。営業所を設けている外国会社では、営業所所在地の移転が登記地の変更に直結します。

旧住所地又は旧所在地では3週間以内に移転の登記をし、新住所地又は新所在地では4週間以内に外国会社の登記をするのが基本です。ただし、すでに登記されている他の代表者住所地又は他の営業所所在地の管轄区域内へ移る場合には、新所在地側では移転の登記だけで足りるという例外があります。

会社法936条:日本における営業所の設置の登記等

会社法936条は、日本に営業所を設けていない外国会社が、外国会社の登記後に日本に営業所を設けた場合の登記を定めています。

また、日本に営業所を設けた外国会社が、登記後にすべての営業所を閉鎖した場合の登記も定めています。

936条は、外国会社の日本での拠点構造が変わる場面を扱います。もともと日本に営業所を置かず、日本における代表者の住所地で登記していた外国会社が、後から営業所を設ける場合には、代表者住所地と営業所所在地の双方で登記が問題になります。

反対に、日本に営業所を置いていた外国会社がすべての営業所を閉鎖し、なお日本における代表者を残す場合には、営業所所在地から代表者住所地へ登記の中心を移すような処理が必要になります。日本における代表者の全員が退任しようとする場合は、会社法820条の代表者退任手続との関係を別途確認します。


会社法933条の初回登記をどう整理するか

会社法933条1項は、外国会社が初めて日本における代表者を定めた場合の外国会社登記を定めています。出発点は、会社法817条1項により日本における代表者を定めることです。

会社法817条1項は、外国会社が日本において取引を継続してしようとするときに、日本における代表者を定めなければならないとしています。933条は、その代表者を初めて定めた後、3週間以内に外国会社の登記をすることを求めています。

区分 登記地 実務上の確認ポイント
日本に営業所を設けていない場合 日本における代表者の住所地 日本に住所を有する代表者を置くか、複数代表者を置くか、住所地の管轄を確認します。
日本に営業所を設けた場合 営業所の所在地 営業所所在地、賃貸借契約、実際の営業拠点、管轄登記所を確認します。
外国で登記事項が生じた場合 上記登記地 期間は、通知が日本における代表者に到達した日から起算します。

営業所を置かない場合

外国会社が日本に営業所を置かず、日本における代表者だけを定める場合、外国会社の登記は日本における代表者の住所地で行います。

この場合、代表者の住所地が登記の基準になります。代表者が複数いる場合、どの代表者が日本に住所を有しているか、どの住所地で登記をするか、その後の住所移転や追加代表者の選任で管轄が変わるかを確認します。

営業所を置かない設計は、日本に物理的拠点を置かず、代表者を通じて一定の継続取引や連絡窓口を置く場合に問題になります。ただし、営業活動の実態によっては、営業所設置、税務、許認可、労務、銀行口座などの論点も別途検討する必要があります。

営業所を置く場合

外国会社が日本に営業所を設ける場合、外国会社の登記は営業所の所在地で行います。実務上は、日本支店を設けるケースとして説明されることが多い場面です。

もっとも、会社法上の条文では「営業所」とされており、933条3項により、外国会社が日本に設けた営業所について、一定の登記事項の適用上、支店とみなされます。したがって、日本会社の支店登記と同じ言葉で説明される場面があっても、外国会社特有の登記事項や代表者制度を確認する必要があります。

3週間の期限と起算点

933条1項の初回登記は、日本における代表者を初めて定めたときから3週間以内が基本です。会社法933条5項は、登記すべき事項が外国において生じたときは、登記期間を、その通知が日本における代表者に到達した日から起算すると定めています。

海外本社での決議日、現地証明書の発行日、翻訳完了日、社内承認日などが複数ある場合、どの日を起算点として管理するかが問題になります。外国で生じた事項については、日本における代表者への通知到達日を証拠化しておくことが実務上重要です。

期限管理の注意

外国会社登記では、「本国で決まった日」と「日本における代表者へ通知が到達した日」がずれることがあります。登記期間の管理では、現地決議・証明書取得・翻訳・通知到達・申請準備を分けて記録しましょう。


外国会社の登記事項

会社法933条2項は、外国会社の登記事項を定めています。外国会社の登記では、日本における同種の会社又は最も類似する会社の種類に従い、株式会社であれば911条3項各号、持分会社であれば912条〜914条の各号に掲げる事項を登記するほか、外国会社特有の事項を登記します。

同種又は最も類似する会社の種類を確認する

外国会社の登記事項を決める前提として、その外国会社が日本法上どの会社類型に最も近いかを確認します。たとえば、外国のCorporation、Limited Company、LLCなどが、日本の株式会社、合同会社その他の会社類型のどれに近いかを、設立根拠法、出資者の責任、機関、持分、利益分配、代表権などから検討します。

これは、会社名だけで機械的に決めるものではありません。名称上は株式会社に似ていても、実質的には持分会社に近い場合もあり得ます。会社法823条の「同種又は最も類似する会社」との接続も意識して確認します。

外国会社特有の登記事項

会社法933条2項が外国会社について追加で定める主な登記事項は、次のとおりです。

登記事項 意味 確認資料の例
外国会社の設立の準拠法 どの国・州・地域の法令に基づいて設立されたか 設立証明書、会社証明書、現地登記簿、定款等
日本における代表者の氏名及び住所 日本での代表者と住所 選任決議、就任承諾、住所確認資料、本人確認資料等
準拠法の規定による公告方法 同種又は類似会社が株式会社である場合の、本国法上の公告方法 本国法、定款、会社証明書、現地専門家の確認等
貸借対照表相当情報の提供事項 819条3項の措置をとる場合の情報提供に必要な事項 公告・開示に関するURL、電子公告・ウェブ掲載情報等
会社法939条2項の公告方法の定め 日本法上の公告方法についての定めがある場合の内容 公告方法の定め、電子公告URL等
公告方法の定めがない場合の官報公告 定めがない場合は官報公告となる旨 公告方法の定めの有無の確認資料

外国会社の登記事項は、本国法上の会社情報を日本の商業登記制度に接続する作業です。そのため、現地会社証明書や本国法の内容を単に翻訳するだけでなく、日本法上の登記事項としてどう表現するかを検討する必要があります。

営業所は支店とみなされる

933条3項は、外国会社が日本に設けた営業所について、会社法911条3項3号、912条3号、913条3号、914条3号に規定する支店とみなすと定めています。

つまり、外国会社の営業所は、一定の登記事項の適用上、日本会社の支店に相当するものとして扱われます。ただし、外国会社の営業所は、外国会社の本国法上の組織や日本における代表者制度と結びつくため、日本会社の支店と完全に同一に扱えば足りるわけではありません。

915条・918条〜929条の準用

933条4項は、会社法915条及び918条から929条までの規定を外国会社について準用すると定めています。この場合、「2週間」は「3週間」に、「本店の所在地」は、日本に営業所を設けていない外国会社では日本における代表者の住所地、日本に営業所を設けた外国会社では営業所所在地に読み替えられます。

この準用により、変更登記、支配人登記、組織変更・合併・会社分割・株式移転に相当する登記、解散・清算関係の登記などが、外国会社にも一定の形で及ぶことになります。もっとも、外国会社の本国法上の組織再編や解散が、日本法上どの登記に対応するかは、具体的な事案ごとに確認が必要です。

実務ポイント

外国会社の登記事項は、「日本会社の登記事項をそのままコピーする」作業ではありません。本国法上の会社情報を、日本の株式会社・持分会社のどの登記事項に対応させるかを確認し、準拠法、日本代表者、公告方法など外国会社特有の事項を加えて整理します。


会社法934条:代表者や営業所を追加した場合

会社法934条は、外国会社の登記後に、日本における代表者や営業所を追加した場合の登記を定めます。初回登記後に日本での体制を拡大する場合に確認する条文です。

営業所を設けていない外国会社が代表者を追加した場合

日本に営業所を設けていない外国会社が、外国会社の登記後に日本における代表者を新たに定めた場合、その新たな代表者の住所地でも外国会社の登記が必要になることがあります。

ただし、その住所地が、既に登記されている他の日本における代表者の住所地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合は除かれます。つまり、管轄が同じであれば新たな登記所での外国会社登記までは不要ですが、管轄が異なる代表者住所地を追加する場合は、その住所地での登記を検討する必要があります。

営業所を設けた外国会社が営業所を追加した場合

日本に営業所を設けた外国会社が、外国会社の登記後に日本に営業所を新たに設けた場合、その新たな営業所所在地でも外国会社の登記が必要になることがあります。

ただし、その所在地が、既に登記された他の営業所所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合は除かれます。営業所を複数設ける場合は、各営業所の所在地と管轄登記所を一覧化し、どこで登記が必要になるかを確認します。

追加するもの 対象となる外国会社 登記が必要になりやすい場合 例外の考え方
日本における代表者 日本に営業所を設けていない外国会社 新代表者の住所地が、既存代表者住所地と別の管轄区域にある場合 既存代表者住所地と同一管轄内であれば、新住所地での外国会社登記までは不要
日本における営業所 日本に営業所を設けた外国会社 新営業所所在地が、既存営業所所在地と別の管轄区域にある場合 既存営業所所在地と同一管轄内であれば、新所在地での外国会社登記までは不要
追加時の注意

代表者や営業所を追加すると、単に社内体制が変わるだけでなく、登記地が増えることがあります。複数代表者・複数営業所の体制にする場合は、住所地・所在地ごとの管轄を必ず確認しましょう。


会社法935条:住所や営業所を移転した場合

会社法935条は、外国会社の登記後に、日本における代表者の住所又は営業所を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の登記を定めます。

営業所を設けていない外国会社の代表者住所移転

日本に営業所を設けていない外国会社では、日本における代表者の住所地が登記地になります。そのため、日本における代表者が住所を他の登記所の管轄区域内に移転した場合、登記地の移動が問題になります。

旧住所地では3週間以内に移転の登記をし、新住所地では4週間以内に外国会社の登記をするのが基本です。ただし、既に登記されている他の日本における代表者の住所地を管轄する登記所の管轄区域内へ住所を移転した場合は、新住所地では住所移転の登記だけで足ります。

営業所を設けた外国会社の営業所移転

日本に営業所を設けた外国会社では、営業所所在地が登記地になります。そのため、営業所を他の登記所の管轄区域内に移転した場合、旧所在地と新所在地の双方で登記が問題になります。

旧所在地では3週間以内に移転の登記をし、新所在地では4週間以内に外国会社の登記をするのが基本です。ただし、既に登記されている他の営業所所在地を管轄する登記所の管轄区域内へ営業所を移転した場合は、新所在地では営業所移転の登記だけで足ります。

移転するもの 旧所在地側 新所在地側 例外
営業所なし外国会社の代表者住所 3週間以内に移転の登記 4週間以内に外国会社の登記 他の登記済み代表者住所地の管轄内へ移転する場合は、住所移転の登記で足りる
営業所あり外国会社の営業所 3週間以内に移転の登記 4週間以内に外国会社の登記 他の登記済み営業所所在地の管轄内へ移転する場合は、営業所移転の登記で足りる

本国の代表者住所移転とは区別する

会社法935条で問題になるのは、日本における代表者の住所移転や日本における営業所の移転です。本国の役員や代表者の住所変更、本国の本店所在地の変更、本国法上の登記事項の変更は、935条だけで処理できるとは限りません。

外国会社の本国側で会社名、目的、役員、資本金、本店、組織再編、解散などが変わった場合は、933条4項の準用規定や、変更登記の要否を別途確認します。


会社法936条:営業所を設置・閉鎖した場合

会社法936条は、日本に営業所を設けていない外国会社が、外国会社の登記後に日本に営業所を設けた場合と、日本に営業所を設けた外国会社がすべての営業所を閉鎖した場合を定めています。

営業所なしから営業所ありへ変わる場合

日本に営業所を設けていない外国会社が、外国会社の登記後に日本に営業所を設けたときは、日本における代表者の住所地では3週間以内に営業所を設けたことを登記し、その営業所所在地では4週間以内に外国会社の登記をするのが基本です。

ただし、登記された日本における代表者の住所地を管轄する登記所の管轄区域内に営業所を設けた場合は、その営業所を設けたことを登記すれば足ります。

この規定は、代表者住所地で登記していた外国会社が、後から日本支店・営業拠点を持つようになる場面で重要です。営業所を設けることにより、登記地の中心が代表者住所地から営業所所在地へ移るため、申請先と必要書類を整理する必要があります。

すべての営業所を閉鎖する場合

日本に営業所を設けた外国会社が、外国会社の登記後にすべての営業所を閉鎖した場合には、その外国会社の日本における代表者の全員が退任しようとするときを除き、営業所所在地では3週間以内に営業所閉鎖の登記をし、日本における代表者の住所地では4週間以内に外国会社の登記をするのが基本です。

ただし、登記された営業所所在地を管轄する登記所の管轄区域内に、日本における代表者の住所地がある場合は、すべての営業所を閉鎖したことを登記すれば足ります。

すべての営業所を閉鎖しても、日本における代表者を残す場合は、外国会社としての登記関係が代表者住所地へ移ることになります。一方、日本における代表者の全員が退任し、日本で継続取引を終える場合は、会社法820条の代表者退任、債権者保護、公告、清算・撤退実務を確認する必要があります。

場面 代表者住所地側 営業所所在地側 実務上の意味
営業所なし外国会社が初めて営業所を設置 3週間以内に営業所設置の登記 4週間以内に外国会社の登記 代表者住所地基準から営業所所在地基準へ移る
営業所あり外国会社がすべての営業所を閉鎖 4週間以内に外国会社の登記 3週間以内に営業所閉鎖の登記 営業所所在地基準から代表者住所地基準へ移る
営業所閉鎖と代表者全員退任を同時に検討 820条との関係を確認 閉鎖・退任・債権者保護を整理 日本での継続取引終了や撤退手続として設計する
実務ポイント

936条は、営業所の有無が変わる場面の「登記の引っ越し」を整理する条文です。営業所を設けるときも、閉鎖するときも、代表者住所地側と営業所所在地側の双方で何を登記するかを確認します。


外国会社登記で確認すべき実務ポイント

会社法933条〜936条の実務では、条文上の分岐だけでなく、登記準備、必要書類、翻訳、通知、期限管理、関連手続を一体で整理する必要があります。

初回設計では営業所の有無を先に決める

外国会社登記の初回設計では、日本に営業所を置くか、営業所を置かず日本における代表者の住所地で登記するかを先に決めます。この判断により、登記地、必要書類、税務、銀行口座、契約名義、許認可、雇用対応が変わることがあります。

日本進出の形態を比較する場合は、外国会社登記、駐在員事務所、日本法人設立を分けて整理します。駐在員事務所は本格的な営業活動を行う拠点とは区別されるため、継続取引を行う場合は外国会社登記や日本法人設立を検討する必要があります。

必要書類と翻訳を早めに確認する

外国会社の登記では、本国の会社証明書、設立証明書、定款、代表者の資格・権限を示す資料、公告方法に関する資料、営業所設置や代表者選任を示す資料などが問題になります。

外国語資料を日本の登記で使う場合は、訳文の準備も必要になります。国・州・地域によって証明書の名称、発行機関、記載事項、認証・アポスティーユの要否、取得にかかる日数が異なるため、登記期限から逆算して準備します。

外国で生じた変更は通知到達日を記録する

933条5項は、前各項により登記すべき事項が外国で生じた場合、登記期間を、その通知が日本における代表者に到達した日から起算すると定めています。

このため、本国での取締役変更、会社名変更、目的変更、公告方法変更、組織再編、解散などがあった場合は、現地でいつ決まったかだけでなく、日本における代表者にいつ通知されたかを記録します。メール、取締役会議事録、通知書、受領確認などを保存しておくと、期限管理の説明がしやすくなります。

933条4項の準用で3週間管理になる場面を確認する

外国会社については、会社法915条や918条〜929条の規定が準用されます。この場合、通常の会社で「2週間」とされる期間が、外国会社では「3週間」に読み替えられます。

ただし、すべての場面で機械的に3週間と考えればよいわけではありません。935条や936条のように、新住所地・新所在地側で4週間以内の外国会社登記が必要になる場面もあります。条文ごとに、旧所在地側・新所在地側の期限を分けて管理します。

登記後の周辺手続を切り分ける

外国会社登記が完了しても、それだけで日本での事業準備がすべて終わるわけではありません。税務届出、銀行口座、賃貸借、許認可、社会保険、労務、個人情報保護、取引先登録、請求書・契約書の名義など、周辺手続を別に確認します。

特に、営業所の設置・閉鎖、代表者変更、住所移転は、登記だけでなく税務・労務・契約・許認可の変更届にも影響します。登記申請の担当者と事業部・経理・人事・税務担当者の間で、変更内容を共有することが重要です。

確認項目 確認する理由 主な確認資料
日本で継続取引を行うか 817条・818条・933条の入口になる 事業計画、契約書、営業体制、顧客対応フロー
日本における代表者 登記地・権限・通知先・期限起算に関係する 選任資料、住所資料、権限資料、就任承諾
営業所の有無 登記地、税務、許認可、労務に関係する 賃貸借契約、拠点計画、営業体制資料
本国法上の会社類型 同種又は最も類似する会社の判断に必要 設立証明書、定款、本国法、現地専門家メモ
公告方法 933条2項の登記事項に関係する 定款、本国法、電子公告URL、官報公告の要否
外国で生じた変更の通知到達 933条5項の起算点管理に必要 通知書、メール、受領確認、社内稟議

会社法933条〜936条に関するよくある質問

会社法933条は何を定めていますか

会社法933条は、外国会社が初めて日本における代表者を定めた場合の外国会社登記、登記事項、営業所を支店とみなす扱い、他の登記規定の準用、外国で生じた登記事項の期間起算を定めています。

外国会社の登記はどこで行いますか

日本に営業所を設けていない場合は日本における代表者の住所地、日本に営業所を設けた場合は営業所所在地で登記します。代表者や営業所が複数になる場合は、934条〜936条の追加・移転・設置・閉鎖の規定も確認します。

外国会社の登記はいつまでに必要ですか

初めて日本における代表者を定めた場合は、原則として3週間以内に外国会社の登記が必要です。外国で生じた登記事項については、日本における代表者へ通知が到達した日から期間を起算します。

会社法934条はどのような場面で使いますか

会社法934条は、外国会社の登記後に日本における代表者を新たに定めた場合や、日本に営業所を新たに設けた場合に使います。新たな代表者住所地や営業所所在地が既存の登記所管轄外かどうかがポイントです。

会社法935条はどのような場面で使いますか

会社法935条は、日本に営業所を設けていない外国会社の代表者住所が管轄外へ移転した場合や、日本に営業所を設けた外国会社の営業所が管轄外へ移転した場合に使います。旧所在地側では3週間、新所在地側では4週間の登記が問題になります。

会社法936条はどのような場面で使いますか

会社法936条は、日本に営業所を設けていない外国会社が登記後に日本に営業所を設けた場合や、日本に営業所を設けた外国会社がすべての営業所を閉鎖した場合に使います。営業所の有無が変わるため、代表者住所地側と営業所所在地側の登記を整理します。

営業所を置かない外国会社でも登記が必要ですか

必要になることがあります。日本で継続取引をするために日本における代表者を定める場合、営業所を置かなくても代表者住所地で外国会社登記をすることがあります。営業所がないから登記不要とは限りません。

外国会社の登記事項は日本の株式会社と同じですか

完全に同じではありません。日本における同種又は最も類似する会社の種類に応じた登記事項に加え、外国会社の設立準拠法、日本における代表者、準拠法上の公告方法、日本法上の公告方法など、外国会社特有の事項を登記します。

外国で役員や会社名が変わった場合、日本で登記が必要ですか

必要になることがあります。933条4項により変更登記等の規定が外国会社にも準用され、933条5項により外国で生じた事項の期間起算は日本における代表者への通知到達日からとされます。変更内容が日本の登記事項に当たるかを確認してください。

外国会社の登記をしないまま日本で営業した場合はどうなりますか

会社法818条との関係で、外国会社の登記をするまでは日本で継続して取引をすることができないのが基本です。登記前に継続取引をした場合、取引をした者の連帯責任や過料のリスクが問題になります。詳しくは会社法818条〜820条の記事を確認してください。

外国会社登記と日本法人設立はどちらを選ぶべきですか

本国会社を主体に日本で活動する場合は外国会社登記が候補になります。一方、日本での事業規模、雇用、許認可、資金調達、税務、契約主体、信用の観点から日本法人設立が適する場合もあります。933条〜936条は外国会社登記の条文であり、進出形態の選択は別途比較検討が必要です。


まとめ

会社法933条〜936条は、外国会社の登記について、初回登記から代表者・営業所の追加、移転、設置、閉鎖までを整理する規定です。外国会社が日本で継続取引を行う場合、817条・818条とあわせて必ず確認したい条文です。

  • 会社法933条は、外国会社の初回登記、登記事項、準用、期間起算を定めています。
  • 日本に営業所を設けていない場合は代表者住所地、営業所を設けた場合は営業所所在地で登記します。
  • 外国会社の登記では、同種又は最も類似する日本の会社類型に応じた登記事項と、外国会社特有の登記事項を確認します。
  • 934条は代表者や営業所の追加、935条は代表者住所や営業所の移転、936条は営業所の設置・閉鎖を扱います。
  • 外国で生じた登記事項は、日本における代表者への通知到達日を起算点として期限管理する必要があります。

外国会社登記では、条文上の登記地・期限だけでなく、本国法上の会社情報、代表者の権限、営業所の実態、公告方法、必要書類、翻訳、税務・許認可との接続まで確認する必要があります。日本進出や拠点変更を行う場合は、登記申請だけでなく、契約・税務・労務・許認可を含めて早めに整理しましょう。

坂尾陽弁護士

933条〜936条は、外国会社の登記実務の地図になる条文です。日本に営業所を置くか、代表者住所地で登記するか、後から代表者や営業所を追加・移転するかによって期限と申請先が変わります。日本進出前に、取引開始日から逆算して登記スケジュールを組みましょう。

関連記事

外国会社の日本進出、代表者、登記前取引、登記申請、登記期限については、次の記事も参考になります。

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)