会社の代理商とは|通知義務・競業禁止・解除・留置権を実務解説

外部の代理店や販売パートナーに営業活動を任せるとき、「これは会社法上の代理商に当たるのか」「競業禁止や解除のルールはどうなるのか」が問題になることがあります。

会社法の代理商とは、会社のために、その平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、会社の使用人ではないものをいいます。一般に「代理店」と呼ばれる事業者がすべて代理商になるわけではありませんが、継続的に契約締結や顧客紹介を任せる外部パートナーでは、会社法16条〜20条のルールを確認する必要があります。

この記事では、会社の代理商について、通知義務、競業禁止、売買に関する通知を受ける権限、契約解除、留置権を、代理店契約・販売委託契約の実務で使える形で整理します。

  • 会社法上の代理商は、会社のために継続的に取引の代理又は媒介をする外部者で、会社の使用人ではない者です。
  • 代理商は、取引の代理又は媒介をしたときに会社へ通知する義務を負います。
  • 代理商は、会社の許可なく競業取引をしたり、同種事業を行う会社の役員等になったりすることが制限されます。
  • 期間の定めがない代理商契約は、原則として2か月前までの予告により解除できます。
  • 代理商には、一定の債権を担保するため、会社のために占有する物や有価証券を留置できる場合があります。

坂尾陽弁護士

代理商は、単なる「代理店」という呼び名ではなく、会社法上の要件を満たすかで判断します。契約書では、権限範囲、報告義務、競業可否、終了時の処理、留置権の扱いを明確にしておくことが重要です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社の代理商とは

会社の代理商とは、会社のために、その平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その会社の使用人ではないものをいいます。

第十六条 代理商(会社のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その会社の使用人でないものをいう。以下この節において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、会社に対して、その旨の通知を発しなければならない。

会社法の条文全体は、e-Gov法令検索「会社法」で確認できます。

代理商の特徴は、会社の外部にいる独立した事業者でありながら、特定の会社のために継続的に取引の代理又は媒介を行う点にあります。社内の従業員や支配人とは異なり、会社との関係は雇用ではなく、委任・準委任・代理店契約・販売委託契約などの契約関係として整理されるのが通常です。

「代理」と「媒介」の違い

代理商には、大きく分けて、取引の代理をするタイプと、取引の媒介をするタイプがあります。

区分 内容 実務上のイメージ
代理 会社を代理して契約締結などの法律行為を行う 会社の代理人として顧客と契約する販売代理店、保険代理店など
媒介 会社と顧客の契約成立に向けて紹介・交渉・取り次ぎを行う 見込み顧客を紹介し、契約成立まで営業支援を行う紹介代理店など

代理の場合、代理権の範囲内で行われた行為の効果は会社に帰属します。媒介の場合、代理商自身が契約を締結するのではなく、会社と相手方との契約成立を取り持つ役割になります。

会社の使用人・支配人との違い

会社の代理商は「会社の使用人でないもの」とされています。したがって、会社の従業員、支配人、店舗使用人などとは区別して考える必要があります。

会社内部の従業員の代理権は、会社の使用人の代理権支配人の問題として整理します。代理商は、会社の外部者に継続的な営業・取引補助を任せる場面で問題になる制度です。

実務ポイント

契約書の表題が「代理店契約」でも、実態が商品の仕入販売であれば、会社法上の代理商に当たらないことがあります。逆に、表題が「業務委託契約」や「販売委託契約」でも、特定会社のために継続的に取引の代理又は媒介をしていれば、代理商性が問題になります。


代理商に当たるかを判断するポイント

代理商に当たるかは、契約書の名称だけでは決まりません。実務では、次の要素を確認します。

確認ポイント 見るべき事情 注意点
会社のために活動しているか 特定の会社の商品・サービスの契約獲得、紹介、媒介を継続的に担っているか 単発の紹介や単なる広告掲載だけでは代理商性が弱くなることがあります。
平常の事業の部類に属する取引か 会社が通常行っている商品販売・サービス提供・保険契約・運送契約などに関する取引か 臨時の不動産売却や資金調達など、通常事業から外れる取引は別途検討が必要です。
代理又は媒介をしているか 契約締結権限があるか、顧客との契約成立に向けて継続的に仲介しているか 自社で商品を仕入れて自己責任で転売するだけなら、通常は販売店・取扱店の問題です。
会社の使用人ではないか 雇用関係、指揮命令、勤務時間、給与、社会保険、肩書など 外部委託形式でも、実態として使用人に近い場合は別の法的整理が問題になります。

特に多いのは、「販売代理店」と呼ばれる外部事業者が、実際には自社で商品を買い取り、自己の名で販売しているケースです。この場合、会社のために契約を代理又は媒介しているというより、自らの取引として販売しているため、会社法上の代理商とは別に整理されることがあります。

代理店・販売店・取次との整理

ビジネス上は、代理店、販売店、取次店、紹介パートナー、加盟店など多くの呼び方があります。会社法上の代理商に当たるかは、名称ではなく、誰のために、どのような法律関係で、取引の成立に関わっているかで判断します。

  • 会社の名で契約を締結する権限がある場合は、代理商性が問題になりやすくなります。
  • 会社と顧客の契約成立を継続的に媒介する場合も、代理商性が問題になり得ます。
  • 商品を仕入れて自己の名で再販売するだけの場合は、代理商ではなく販売店・再販売業者として整理されることが多いです。
  • 単なる広告掲載、リード提供、単発紹介だけの場合は、代理商に当たるかを慎重に確認します。
注意

「代理店」という名称を使うと、顧客から見て契約権限があるように見えることがあります。契約書だけでなく、名刺、ウェブサイト、営業資料、申込書の表示も含めて、権限の範囲を整える必要があります。


会社法16条〜20条で定められている主なルール

会社法16条〜20条は、会社の代理商について、次のようなルールを置いています。詳細な逐条整理は、【会社法16条・17条・18条・19条・20条】代理商|条文の要点と実務ポイントでも扱います。

条文 テーマ 実務上の意味
会社法16条 通知義務 代理商が取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく会社に通知する必要があります。
会社法17条 競業禁止 会社の許可なく、会社の事業の部類に属する取引や同種事業会社の役員就任等が制限されます。
会社法18条 売買に関する通知を受ける権限 物品販売又はその媒介を受けた代理商は、売買に関する通知を受ける権限を持つ場合があります。
会社法19条 契約の解除 期間の定めがない代理商契約は、原則として2か月前予告で解除できます。やむを得ない事由があれば即時解除も可能です。
会社法20条 留置権 弁済期にある一定の債権について、会社のために占有する物や有価証券を留置できることがあります。

これらの規定は、代理商と会社との継続的な信頼関係を前提に、会社側の営業秘密・顧客関係の保護、代理商側の報酬債権の保護、取引相手方の通知の便宜を調整するものです。


会社法16条|代理商の通知義務

会社法16条は、代理商が取引の代理又は媒介をしたとき、遅滞なく会社に通知しなければならないと定めています。

通知義務は、会社が取引の発生状況、相手方、条件、進行状況、リスクを把握するために重要です。外部代理店が営業活動をしている場合、会社が契約成立や顧客対応の状況を把握できなければ、納品、請求、クレーム対応、契約管理に支障が出ます。

通知すべき内容

実務上は、次のような情報を報告対象として契約書や運用ルールに明記しておくと安全です。

  • 取引相手方の名称、担当者、連絡先
  • 申込み、注文、契約締結、更新、解約申入れの有無
  • 契約対象の商品・サービス、数量、金額、納期、契約期間
  • 顧客からのクレーム、契約不適合、数量不足、返品、解約希望
  • 代理商が受け取った書面、メール、申込書、通知
  • 反社会的勢力、信用不安、利益相反などのリスク情報

会社法16条は「遅滞なく」と定めていますが、実務では「受領後24時間以内」「3営業日以内」「重要事項は即日」など、具体的な期限を契約書や業務マニュアルで定めておくと運用しやすくなります。

契約書での工夫

通知義務は抽象的なままだと運用がぶれます。通知対象、期限、通知方法、関連資料、緊急時の連絡先、通知を怠った場合の責任を契約書に入れておくと、後日の紛争予防になります。


会社法17条|代理商の競業禁止

会社法17条は、代理商が会社の許可なく競業行為をすることを制限しています。代理商は会社の営業情報、顧客情報、商品情報、価格情報に接しやすいため、会社と競合する行為を自由に認めると、会社側に大きなリスクが生じます。

第十七条 代理商は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

一 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。

二 会社の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

禁止される競業行為

会社法17条で特に問題になりやすいのは、代理商が、会社と同種・類似の事業を自社で始めたり、競合会社の営業活動に関与したりする場面です。

  • 会社の商品・サービスと競合するサービスを代理商自身が提供する
  • 会社の顧客候補を、代理商自身又は第三者の競合サービスへ誘導する
  • 会社の営業資料、ノウハウ、顧客情報を利用して類似事業を始める
  • 競合会社の取締役、執行役、業務執行社員に就任する

ただし、会社が許可した場合は、会社法17条の禁止に抵触しません。許可をする場合は、対象事業、地域、顧客範囲、期間、利用してよい情報、秘密保持、利益相反時の処理を明確にしておく必要があります。

競業禁止違反と損害額の推定

代理商が会社の許可なく、自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をした場合、その行為によって代理商又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定されます。

これは、会社側が損害額を立証しにくい場面で重要です。代理商の競業により、会社がどの顧客を失ったのか、どの売上機会を逃したのかを正確に示すことは容易ではありません。そのため、会社法は、競業行為によって得た利益額を損害額と推定する仕組みを置いています。

注意

競業禁止は、会社法の規定だけで十分に管理できるとは限りません。契約終了後の競業、営業秘密の使用、顧客への接触、紹介済み案件の扱いなどは、契約書で具体的に定めることが重要です。


会社法18条|売買に関する通知を受ける権限

会社法18条は、物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商について、売買に関する通知を受ける権限を認めています。

典型的には、顧客が商品に不具合や数量不足を見つけたとき、会社本体ではなく、販売を担当した代理商へ連絡する場面です。代理商が売買に関する通知を受ける権限を持つ場合、顧客から代理商への通知が、会社に対する通知として意味を持つことがあります。

通知受領権が問題になる場面

  • 納品された商品に契約不適合があるとして顧客が代理商へ通知した場合
  • 数量不足、破損、仕様違いについて代理商へ連絡した場合
  • 返品、交換、修補、代金減額、解除に関する連絡を代理商が受けた場合
  • 会社が「本社に言っていないから通知は無効」と主張できるかが争われる場合

会社側は、顧客対応窓口を明確にするとともに、代理商が受けた通知を直ちに会社へ共有する仕組みを整える必要があります。代理商側も、顧客から重要な通知を受けた場合は、自分だけで処理せず、会社へ速やかに伝える運用が必要です。

実務ポイント

売買に関する通知を受ける権限がある場合でも、代理商が会社のためにどこまで対応・承諾・返金・解除できるかは別問題です。通知を受ける権限と、解決条件を決める権限を分けて整理しましょう。


会社法19条|代理商契約の解除

会社法19条は、期間の定めがない代理商契約について、会社と代理商の双方が、2か月前までに予告して契約を解除できると定めています。また、やむを得ない事由があるときは、いつでも解除できます。

第十九条 会社及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、二箇月前までに予告し、その契約を解除することができる。

2 前項の規定にかかわらず、やむを得ない事由があるときは、会社及び代理商は、いつでもその契約を解除することができる。

期間の定めがない契約では2か月前予告が基本

代理商契約は継続的な取引関係になりやすいため、突然終了すると、会社側にも代理商側にも大きな影響が出ます。会社法19条は、期間の定めがない契約について、2か月前予告による解除を認めることで、終了に向けた準備期間を確保しています。

もっとも、契約書で契約期間、更新方法、中途解約、予告期間、終了時の手数料、顧客引継ぎ、在庫、資料返還、秘密保持を定めている場合は、まず契約条項を確認します。

やむを得ない事由がある場合の即時解除

代理商が重大な契約違反をした場合、会社の信用を害した場合、顧客情報や営業秘密を不正利用した場合、競業禁止に違反した場合などでは、やむを得ない事由による即時解除が問題になります。

ただし、即時解除は後から争われやすい対応です。違反内容、証拠、是正催告の要否、解除通知の文言、損害の有無を整理したうえで進める必要があります。

注意

2か月前予告で解除できるとしても、解除方法が常に安全とは限りません。長期継続契約、専属代理店、独占販売、設備投資、在庫負担がある場合は、契約書と取引経緯を踏まえて、権利濫用や損害補償のリスクも検討する必要があります。


会社法20条|代理商の留置権

会社法20条は、代理商の報酬債権などを保護するため、一定の場合に代理商の留置権を認めています。

第二十条 代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権が弁済期にあるときは、その弁済を受けるまで、会社のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。

代理商は、会社のために活動して報酬や手数料を得る立場です。会社が報酬を支払わない場合、代理商が会社のために占有している物や有価証券を留置できることがあります。

留置権が問題になるもの

代理商の留置権の対象は、会社のために代理商が占有する物又は有価証券です。たとえば、会社から預かった商品、サンプル、展示品、証券類などが問題になり得ます。

一方で、顧客データ、営業資料の電子ファイル、アカウント、ウェブページ、クラウド上の情報などは、「物又は有価証券」と同じように扱えるとは限りません。実務では、データ返還・アカウント移管・営業資料の削除を契約書で別途定めることが重要です。

契約で別段の定めを置くことができる

会社法20条ただし書は、当事者が別段の意思表示をしたときは留置権の規定が適用されないとしています。会社側としては、終了時に預託物、在庫、営業資料、アカウントを確実に回収したい場合、留置権の排除又は制限、報酬精算の方法、返還時期を契約書に明記することが考えられます。

実務ポイント

留置権を一律に排除するだけでは、代理商側の未払報酬リスクが残ります。会社側は返還確保、代理商側は報酬回収という双方の関心を踏まえ、精算期限、相殺、返還拒絶の可否、違約金を整理しておきましょう。


代理商契約で整備しておきたい条項

代理商に該当する可能性がある外部パートナー契約では、会社法の規定だけでなく、契約書で具体的な運用を決めておくことが重要です。

条項 定めるべき内容 実務上の狙い
権限範囲 契約締結権限の有無、媒介にとどまるか、価格・条件変更権限の有無 顧客から見た権限誤認を防ぐ
通知・報告 通知対象、期限、方法、関連資料、緊急連絡 契約・クレーム・解除通知の共有漏れを防ぐ
競業禁止 禁止範囲、許可手続、例外、契約終了後の扱い 顧客情報・営業秘密・商圏を守る
秘密保持 営業資料、価格、顧客情報、個人情報、ノウハウの使用制限 代理商が得た情報の目的外利用を防ぐ
報酬・手数料 発生条件、計算方法、支払時期、取消・返金時の処理 報酬債権と留置権トラブルを予防する
解除・終了処理 予告期間、即時解除事由、顧客引継ぎ、資料返還、在庫処理 契約終了時の混乱を抑える
表示管理 代理店名称、ロゴ使用、ウェブ掲載、名刺・営業資料の承認 権限表示やブランド毀損を防ぐ

代理商契約は、契約締結時よりも、契約終了時や競業発覚時に紛争化しやすい契約です。最初の契約書で、終了時に何を返すのか、どの顧客に接触できるのか、未払報酬をどう精算するのかを明確にしておくことが重要です。

会社側のチェックポイント

  • 代理商が顧客に対してどこまで会社を代理できるのか
  • 代理商の営業資料やウェブ表示を会社が確認できるか
  • 顧客情報・営業秘密を契約終了後も利用されないか
  • 競合サービスへの誘導や類似事業の開始を防げるか
  • 契約終了時に資料、在庫、アカウント、顧客対応を回収できるか

代理商側のチェックポイント

  • 自分に契約締結権限があるのか、媒介にとどまるのか
  • 報酬がいつ、どの条件で発生するのか
  • 契約終了後の報酬、紹介済み案件、継続案件の扱い
  • 競業禁止の範囲が広すぎないか
  • 未払報酬がある場合に、返還物や留置権をどう扱うか

代理商の競業禁止が問題になった裁判例

代理商の競業禁止は、条文上の抽象的なルールに見えますが、実際の代理店契約トラブルでも問題になります。

東京地裁令和6年10月10日判決では、サービスの販売代理店契約を締結していた会社が、販売代理店として取得した営業上の情報や営業手法を利用して類似事業を行ったとして、競業避止義務違反や秘密保持義務違反が問題になりました。

この裁判例では、販売代理店が会社法上の代理商に当たり、類似事業の実施について会社法17条1項1号の競業避止義務違反が認められました。また、販売代理店契約に基づく競業避止義務違反や機密保持義務違反も認められ、損害賠償が一部認容されています。

一方で、契約が既に解約により終了している以上、契約又は代理商の競業避止義務に基づく差止請求は認められないと判断されています。つまり、競業を止めたい場合には、契約存続中の対応、契約終了後の競業禁止条項、秘密保持条項、差止めの根拠を契約書上どう設計するかが重要になります。

裁判例からの実務ポイント

代理店が競合事業を始めた場合、会社法17条の競業禁止、契約上の競業禁止、秘密保持、営業秘密、不正競争防止法、役員責任など複数の法的構成が問題になります。契約書では、禁止行為を抽象的に書くだけでなく、営業資料・顧客情報・類似サービス・終了後の接触禁止を具体化しておくことが重要です。


代理商トラブルが起きたときの初動対応

代理商との間で、無断競業、報告漏れ、顧客情報の持ち出し、報酬未払い、解除の有効性などが問題になった場合は、まず事実関係を整理することが重要です。

  1. 代理商契約書、覚書、発注書、業務委託契約書を確認する
  2. 代理商の権限範囲、報告義務、競業禁止、秘密保持、解除条項を確認する
  3. 顧客との契約書、申込書、メール、チャット、営業資料を集める
  4. 代理商が取得・利用した顧客情報、営業資料、価格表、ノウハウを特定する
  5. 競業行為の開始時期、顧客、売上、利益、関与者を整理する
  6. 解除通知、是正催告、差止め、損害賠償、仮処分の要否を検討する

会社側が競業を止めたい場合は、証拠保全と通知のタイミングが重要です。代理商側が報酬未払いを主張する場合は、報酬発生条件、弁済期、紹介案件の成否、返還物の扱いを整理します。

いずれの立場でも、代理商契約は継続的な関係であり、終了後の顧客対応にも影響します。感情的に契約を打ち切る前に、契約上の手続と証拠を確認しましょう。


よくある質問

販売代理店は必ず会社法上の代理商になりますか

必ずしもそうではありません。販売代理店という名称でも、自社で商品を仕入れて自己の名で販売しているだけであれば、会社のために取引の代理又は媒介をしているとはいえないことがあります。契約の名称ではなく、実際の取引構造で判断します。

代理商に競業禁止義務はありますか

会社法17条により、代理商は会社の許可を受けなければ、自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすることなどが禁止されます。ただし、具体的な禁止範囲や契約終了後の扱いは、契約書で明確にしておくことが重要です。

代理商契約は2か月前に通知すれば必ず解除できますか

会社法19条は、期間の定めがない代理商契約について2か月前予告による解除を認めています。ただし、契約書で別の定めがある場合、長期継続契約や独占契約で解除方法が争われる場合、権利濫用が問題になる場合があります。契約内容と取引経緯を確認する必要があります。

代理商は会社の商品や資料を返さなくてもよいですか

代理商には、一定の場合に会社のために占有する物又は有価証券を留置できる権利があります。ただし、債権の内容、弁済期、占有している物の性質、契約上の別段の定めによって結論は変わります。契約書で留置権の排除や返還方法を定めているかを確認しましょう。

代理商が顧客からクレーム通知を受けた場合、会社にも効きますか

物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、売買に関する通知を受ける権限を有する場合があります。そのため、会社側は、代理商が顧客から受けた通知を速やかに共有させる体制を作る必要があります。

代理商と支配人の違いは何ですか

支配人は会社の使用人であり、本店又は支店で事業を行う者として広い代理権を持つ制度です。代理商は会社の使用人ではなく、外部の独立した事業者として、会社のために取引の代理又は媒介をする者です。支配人については、【会社法10条・11条・12条】支配人・代理権・競業禁止も参考になります。


まとめ

会社の代理商は、会社の外部パートナーに営業活動や契約獲得を任せる場面で重要になる制度です。一般的な「代理店」という名称だけで判断せず、会社のために、平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介を、使用人ではない者が行っているかを確認する必要があります。

  • 代理商は、会社のために取引の代理又は媒介をする外部者です。
  • 代理商は、取引の代理又は媒介をしたとき、遅滞なく会社へ通知する義務があります。
  • 代理商には、会社の許可のない競業行為を制限するルールがあります。
  • 期間の定めがない代理商契約は、原則として2か月前予告により解除できます。
  • 代理商の留置権は、未払報酬や返還物をめぐるトラブルで問題になり得ます。

代理商契約では、権限範囲、通知義務、競業禁止、秘密保持、報酬、解除、終了後の処理を契約書で具体化しておくことが重要です。特に、競業や顧客情報の利用が問題になると、差止めや損害賠償の可否に直結します。

坂尾陽弁護士

代理商との契約は、営業拡大に役立つ一方で、顧客情報・営業秘密・競業・終了時精算のリスクを伴います。契約締結時と契約終了時の両方を見据えて、権限と禁止事項を明確にしておきましょう。

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