会社の種類を調べるときは、まず「法人の種類」全般ではなく、会社法上の会社に限定して整理することが大切です。会社法上の会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社があり、このうち合名会社、合資会社、合同会社をまとめて持分会社と呼びます。
この記事では、株式会社と持分会社の違い、合同会社・合名会社・合資会社の位置づけ、会社形態を選ぶときの実務上の比較ポイントを整理します。会社設立を検討している方だけでなく、契約書、登記簿、定款、グループ会社管理で会社類型を確認したい法務・総務担当者にも役立つように、会社法上の用語と実務の見方をつなげて解説します。
坂尾陽弁護士
- 会社法上の会社は、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類です。
- 合名会社・合資会社・合同会社は、まとめて持分会社と呼ばれます。
- 実務では、株式会社と合同会社の比較が中心になりやすいです。
- 会社形態を選ぶときは、責任範囲、資金調達、意思決定、公告・登記を合わせて確認します。
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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会社の種類とは|会社法上の4類型を確認する
会社法で「会社」といった場合、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社を指します。一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、医療法人、学校法人なども法人ではありますが、会社法上の「会社」ではありません。会社の種類を調べるときは、まずこの範囲を切り分ける必要があります。
最新の条文は、e-Gov法令検索の会社法で確認できます。会社法2条は「会社」の定義を置き、会社法575条は合名会社、合資会社、合同会社を「持分会社」と総称しています。会社法上の用語を正確に押さえるには、会社法2条の定義も合わせて確認すると理解しやすくなります。
- 株式会社:株式を発行し、出資者を株主として扱う会社です。資金調達や株式譲渡、機関設計に関する規律が厚く置かれています。
- 合名会社:無限責任社員だけで構成される持分会社です。社員が会社債務について重い責任を負うため、現在の新規設立では選択される場面は限定的です。
- 合資会社:無限責任社員と有限責任社員の双方がいる持分会社です。責任の異なる社員が混在するため、設計上の理解が必要です。
- 合同会社:有限責任社員だけで構成される持分会社です。少人数・オーナー経営型の事業で選ばれることが多い会社形態です。
ここで注意したいのは、持分会社の「社員」は、日常用語の従業員ではないという点です。会社法上の社員とは、持分会社の出資者として会社の構成員となる人を指します。株式会社でいえば株主に近い立場ですが、経営への関与や責任の範囲は会社類型によって異なります。
株式会社と持分会社の違い
会社の種類を比較するときは、まず株式会社と持分会社に分けて考えると整理しやすくなります。株式会社は、株式を単位に出資者である株主の地位を設計し、取締役などの機関を通じて経営する会社類型です。これに対し、持分会社は、社員の人的関係を重視し、定款自治の幅が比較的広い会社類型です。
実務上は、株式会社は外部から資金を集めやすく、株式譲渡や増資、ストックオプション、将来の上場・M&Aなどを見据えた設計に向いています。合同会社は、設立・運営コストを抑えながら、少人数で柔軟に意思決定したい場合に検討されます。ただし、合同会社は株式会社のように株式を発行するわけではないため、外部投資家を広く受け入れる設計には不向きなことがあります。
- 出資者の呼び方:株式会社では株主、持分会社では社員と呼びます。持分会社の社員は従業員ではなく、会社の構成員です。
- 出資者の責任:株式会社の株主は原則として有限責任です。合同会社の社員も有限責任ですが、合名会社や合資会社には無限責任社員が存在します。
- 意思決定のしくみ:株式会社は株主総会、取締役、取締役会などの機関を通じて意思決定します。持分会社は社員間の合意や定款の定めがより重要になります。
- 資金調達のしやすさ:株式会社は株式発行を前提に資本政策を設計しやすい一方、持分会社は少人数の内部関係を重視する設計になりやすいです。
- 社会的信用・取引実務:取引先、金融機関、採用市場では株式会社の方が一般に説明しやすい場面があります。他方、合同会社でも実体のある事業であれば十分に活用できます。
「どちらが優れているか」ではなく、事業の成長イメージ、出資者の人数、外部投資の予定、経営者間の関係、将来の出口に合うかを見て選ぶことが重要です。
4種類の会社の特徴
会社法上の4種類は、名前が似ていても、責任範囲や運営の考え方が大きく異なります。以下では、それぞれの会社類型を実務上の使いどころから整理します。
株式会社
株式会社は、最も一般的に選ばれる会社形態です。出資者である株主は株式を保有し、株主総会で重要事項を決定します。経営は取締役などの役員が担い、会社の規模や公開会社・大会社該当性によって、取締役会、監査役、会計監査人などの機関設計が問題になります。
株式会社は、将来の増資、役員・従業員へのインセンティブ設計、株式譲渡、M&A、事業承継を見据える場合に扱いやすい会社類型です。その反面、定款認証、登記、公告、株主総会・取締役会の運営など、会社法上の手続管理は相応に必要になります。
合同会社
合同会社は、持分会社のうち、有限責任社員だけで構成される会社です。少人数で事業を行い、出資者自身が経営に関与するオーナー経営型の事業では、柔軟に設計しやすい類型です。定款自治の幅が比較的広く、利益分配や業務執行の定めを事業の実情に合わせやすい点も特徴です。
もっとも、合同会社は株式を発行しないため、株式による外部投資、種類株式、ストックオプション、上場を前提にした資本政策とは相性がよくありません。将来的に外部投資家を受け入れる可能性が高い場合は、最初から株式会社にするか、後の組織変更コストを見込んでおく必要があります。
合名会社
合名会社は、無限責任社員だけで構成される持分会社です。無限責任社員は、会社債務について出資額を超えて責任を負う可能性があります。そのため、現代の新規設立で積極的に選ばれる場面は多くありません。
ただし、会社法上の制度を理解するうえでは、合名会社は持分会社の基本形として重要です。社員の責任が会社類型を分ける中心的な基準になるため、合名会社、合資会社、合同会社の違いを比較すると、持分会社の構造が見えやすくなります。
合資会社
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員の双方がいる持分会社です。責任の重い社員と、出資額を限度に責任を負う社員が併存する点に特徴があります。現在は、合同会社が利用しやすい選択肢として定着しているため、合資会社が新規設立で選ばれる場面は限定的です。
合資会社を検討する場合は、誰が無限責任社員になるのか、有限責任社員との権限関係をどう設計するのか、取引先・金融機関にどのように説明するのかを慎重に確認する必要があります。
会社形態を比較するときの実務ポイント
会社形態の比較では、「設立費用が安いか」だけを見て判断すると、後で不都合が出ることがあります。会社の種類は、設立時だけでなく、資金調達、株主・社員間の関係、事業承継、取引先対応にも影響します。
- 責任範囲:出資者が有限責任か、無限責任を負う人がいるかは最優先で確認します。中小企業では、代表者保証や個人保証も別途問題になるため、会社法上の責任と契約上の責任を分けて見る必要があります。
- 資金調達:外部投資家を入れる、株式を使った資本政策を行う、将来上場を検討する場合は、株式会社の方が設計しやすいです。
- 意思決定:少人数で柔軟に経営したい場合は合同会社が合うことがあります。ただし、社員間の関係が崩れたときの出口も定款で考えておく必要があります。
- 定款と商号:商号には会社の種類を表示する必要があります。商号設計の基本は、商号とは|会社法6条のルールで確認できます。
- 設立手続:会社形態を決めた後は、定款作成、認証の要否、出資の履行、設立登記を確認します。設立全体の入口は、設立・定款(会社設立の基本)で整理しています。
会社形態の選択は、税務、社会保険、許認可、業界慣行とも関係します。この記事では会社法上の会社類型に絞っていますが、実際に設立する場合は、会社法上の設計と、税務・会計・許認可の観点を分けて確認することが重要です。
有限会社・一般社団法人などとの違い
会社の種類を調べていると、有限会社、一般社団法人、NPO法人、LLPなども一緒に出てくることがあります。しかし、これらは会社法上の4類型とは分けて考える必要があります。
有限会社は、現在は新たに設立できる会社類型ではありません。会社法施行前から存在していた有限会社は、特例有限会社として株式会社の一種として扱われます。そのため、これから新しく会社を作る場面では、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の中から検討することになります。
一般社団法人やNPO法人は、会社法上の会社ではありません。営利事業を行うかどうか、剰余金分配の可否、設立目的、所管法令が異なるため、「法人の種類」としては比較対象になりますが、「会社の種類」としては会社法上の4類型と区別します。
どの会社形態が向いているか
多くの事業では、実務上の候補は株式会社か合同会社に絞られます。合名会社や合資会社は、無限責任社員がいることから、あえて選ぶ理由がある場合を除き、慎重に検討すべき類型です。
- 株式会社が向きやすい場面:外部投資を受ける予定がある、将来の株式譲渡・M&A・事業承継を見据える、取引先や採用市場での説明しやすさを重視する、複数株主で権利関係を明確にしたい場合です。
- 合同会社が向きやすい場面:少人数で経営する、外部投資よりも内部の柔軟性を重視する、設立・運営コストを抑えたい、出資者と経営者がほぼ一致している場合です。
- 合名会社・合資会社を検討する場面:責任関係を理解したうえで、特定の人的関係や既存の事業形態に合わせる必要がある場合です。無限責任を軽く見て選ぶべきではありません。
会社形態は、後から組織変更によって変更できる場合があります。しかし、変更には手続、債権者対応、登記、契約・許認可の見直しが伴います。最初の設計段階で、将来の資本政策や事業承継まで見据えておく方が安全です。
会社の種類を選ぶときに確認すべきこと
会社類型を選ぶ場面では、抽象的なメリット・デメリットだけでなく、具体的な運営場面に落とし込んで確認する必要があります。とくに、複数人で創業する場合や、家族会社・同族会社として長く運営する場合は、出資者間の関係を最初から整理しておくことが重要です。
- 誰が出資し、誰が経営するのか。
- 将来、外部投資家や後継者を入れる可能性があるか。
- 出資者が離脱する場合の持分・株式の扱いをどうするか。
- 利益分配、役員報酬、経営権をどのように設計するか。
- 取引先、金融機関、許認可上、株式会社であることが事実上求められないか。
これらを確認せずに「合同会社の方が安い」「株式会社の方が信用がある」といった理由だけで決めると、後で増資、持分譲渡、役員選任、株主間・社員間の対立が問題になることがあります。会社類型は、設立時の器を選ぶだけでなく、将来の会社運営のルールを選ぶことでもあります。
まとめ:会社の種類は責任範囲と将来設計から選ぶ
会社法上の会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類です。実務では、株式会社と合同会社を中心に比較し、責任範囲、意思決定、資金調達、定款・登記、将来の組織変更まで含めて判断します。
- 会社法上の会社は4種類で、持分会社は合名会社・合資会社・合同会社の総称です。
- 株式会社は、株式を使った資金調達や将来のM&A・事業承継を見据えやすい類型です。
- 合同会社は、少人数・オーナー経営型の事業で柔軟に運営しやすい類型です。
- 合名会社・合資会社は、無限責任社員がいるため慎重な検討が必要です。
- 設立費用だけでなく、出資者間の関係、将来の資本政策、定款設計まで確認しましょう。
坂尾陽弁護士
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