電子公告とは、会社が公告すべき内容を、インターネット上のホームページなどに掲載して、不特定多数の人が内容を確認できる状態に置く公告方法です。
会社法上の電子公告では、単に自社サイトに公告文を載せればよいわけではありません。公告方法として定款・登記を整えること、公告ホームページのURLを管理すること、公告期間中に継続して閲覧できる状態を保つこと、必要な場合には電子公告調査を受けることが重要です。
この記事では、会社法上の電子公告について、定義、公告方法として採用する手続、公告期間、公告の中断と追加公告、電子公告調査の要否、決算公告の例外、実務上のチェックポイントを整理します。
- 電子公告は、会社法上の公告方法の1つであり、インターネット上で公告内容を提供する方法です。
- 電子公告を公告方法とするには、定款の定めと登記、公告ホームページURLの管理が必要です。
- 電子公告は、公告の種類ごとに必要な期間中、継続して掲載する必要があります。
- 公告期間中に閲覧不能や改変が起きた場合には、会社法940条の追加公告対応が問題になります。
- 決算公告を除く法定公告では、原則として電子公告調査機関の調査を受ける必要があります。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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電子公告とは
電子公告とは、会社法上、公告方法のうち、電磁的方法により不特定多数の者が公告すべき内容の情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって、インターネットに接続された自動公衆送信装置を使用するものをいいます。
実務上は、会社のホームページなどに公告文や公告PDFを掲載し、利害関係人がインターネットを通じて公告内容を確認できるようにする方法と理解すると分かりやすいです。
ただし、会社法上の電子公告は、単なるウェブ掲載とは異なります。公告方法として電子公告を選択する場合には、会社法939条の公告方法、会社法940条の公告期間・中断、会社法941条以下の電子公告調査をセットで確認する必要があります。
会社法の現行条文は、e-Gov法令検索「会社法」で確認できます。電子公告制度の全体像は、法務省の電子公告制度についてでも案内されています。
この記事では、会社法上の会社公告としての電子公告を扱います。電子メールでの通知、社内掲示、任意のニュースリリース、一般的なウェブ告知とは区別して整理します。
電子公告と官報公告・日刊新聞公告の違い
会社の公告方法には、官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告の方法があります。電子公告は、このうちインターネットを利用する公告方法です。
| 公告方法 | 特徴 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 官報公告 | 官報に公告を掲載する方法です。 | 定型的で利用例が多く、債権者保護公告などで選ばれることがあります。 |
| 日刊新聞紙公告 | 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に公告を掲載する方法です。 | 定款で新聞名を特定するか、記載の仕方を確認します。 |
| 電子公告 | 公告内容をインターネット上で閲覧できる状態に置く方法です。 | 定款・登記、URL、公告期間、調査、公告中断時の対応を管理します。 |
公告方法の選び方全体は、会社の公告方法(官報・日刊新聞・電子公告)|定款の定めと選び方で整理しています。本記事では、電子公告に絞って説明します。
電子公告は、閲覧者がインターネット経由で内容を確認しやすく、決算公告では費用面のメリットが出ることもあります。一方で、法定公告では電子公告調査が必要になる場合があり、ウェブサイト障害やURL変更の管理も問題になります。
電子公告を公告方法にするための手続
会社が公告方法として電子公告を採用するには、個別の公告文を掲載する前に、定款と登記を整える必要があります。電子公告を行うたびに定款変更が必要になるわけではありませんが、公告方法そのものを電子公告にする場合には、会社の基本ルールとして定めておく必要があります。
定款に電子公告を公告方法とする旨を定める
電子公告を公告方法とする場合には、定款に「当会社の公告は、電子公告により行う。」という趣旨の定めを置きます。設立時であれば原始定款に定め、既存会社であれば定款変更手続を検討します。
法務省も、電子公告の方法によって公告を行うためには、定款にその旨を定めておく必要があると案内しています。ただし、ウェブページのURLまで定款に定めておく必要はありません。
電子公告を公告方法とする場合には、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法を、官報又は日刊新聞紙として定款に定めることもできます。
会社法939条の公告方法の条文上の整理は、【会社法939条】会社の公告方法|条文の要点と実務ポイントも参照してください。
公告ホームページURLを登記する
会社が定款を変更して電子公告を公告方法とした場合には、公告方法の変更登記が必要です。この場合、公告方法だけでなく、公告ホームページのURLも登記事項になります。
公告ホームページURLは、公告が実際に掲載されるページのURL、又は公告ページが複数にわたる場合の共通ページのURLとして設計します。URLは公告期間中に変わらないように管理することが重要です。
CMS移行、ドメイン変更、SSL化、サーバ移転、PDFファイル名変更などにより公告URLが変わる場合には、登記内容や公告期間中の閲覧可能性に影響がないかを確認します。
予備的公告方法を定めるか検討する
電子公告を公告方法とする場合、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告ができない場合の公告方法を定款に定めることができます。実務では、予備的公告方法として官報を定める例があります。
予備的公告方法は、電子公告の便利さを使いつつ、ウェブサイト障害などで公告できない場合の手当てを用意する意味があります。ただし、予備的公告方法を定めたからといって、公告期間中の中断管理や電子公告調査が不要になるわけではありません。
電子公告を採用するときは、定款記載例だけで判断せず、どの公告で電子公告を使うのか、決算公告だけなのか、組織再編・資本減少などの法定公告にも使うのかを踏まえて検討します。
電子公告の公告期間
電子公告は、官報や新聞のように1回掲載して終わりではありません。会社法940条は、電子公告による公告について、公告の種類ごとに継続掲載すべき期間を定めています。
会社法940条の公告期間を整理すると、次の4類型になります。
| 公告の種類 | 継続掲載すべき期間 | 注意点 |
|---|---|---|
| 特定の日の一定期間前に公告すべき公告 | その特定の日まで | 効力発生日や株主総会日など、条文上の特定の日を確認します。 |
| 決算公告 | 定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで | 電子公告調査は不要でも、長期掲載管理が必要です。 |
| 異議申述期間を定める公告 | 当該期間を経過する日まで | 債権者が異議を述べられる期間中は閲覧可能な状態を維持します。 |
| その他の公告 | 公告開始後1か月を経過する日まで | 前3類型に当たらない公告の受け皿です。 |
公告期間を誤ると、債権者保護手続、組織再編、資本減少、登記申請などのスケジュールに影響することがあります。個別手続では、公告開始日、公告終了日、異議申述期間、効力発生日、登記申請日を一覧化して管理すると安全です。
会社法940条の条文単位の解説は、【会社法940条】電子公告の公告期間等|条文の要点と実務ポイントで整理しています。
公告の中断と追加公告
電子公告で特に注意すべきなのが、公告期間中の中断です。会社法940条3項は、公告期間中に公告の中断が生じた場合の扱いを定めています。
公告の中断とは、公告情報が不特定多数の者に提供される状態に置かれなくなること、又は公告情報がその状態に置かれた後に改変されることをいいます。
実務上は、次のような場面が問題になり得ます。
- サーバ障害により公告ページが表示されない
- 公告PDFが削除される、又はリンク切れになる
- ウェブサイト改修で公告ページのURLが変わる
- 認証設定やアクセス制限により一般の人が閲覧できなくなる
- 公告文や公告PDFの内容が公告期間中に差し替えられる
- ドメイン・サーバ・CMS移行により公告ページの表示が不安定になる
もっとも、公告期間中に一時的な中断が生じた場合でも、会社法940条3項の要件を満たせば、公告の効力に影響しないとされています。
| 要件 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 帰責性 | 会社が善意かつ重過失なし、又は会社に正当な事由があること | 障害原因、管理体制、会社の認識、対応状況を記録します。 |
| 中断時間 | 中断時間の合計が公告期間の10分の1を超えないこと | サーバログや調査機関の記録で中断時間を確認します。 |
| 追加公告 | 中断を知った後速やかに、中断の発生・時間・内容を当該公告に付して公告すること | 元の公告に追加公告情報を付して掲載します。 |
追加公告は、公告の中断が生じたことを後から補足して知らせる対応です。追加公告では、中断が生じた旨、中断が生じた時間、中断の内容を当該公告に付して公告します。
追加公告は「障害がありました」とだけ書くものではありません。どの公告について、いつ、どのような中断が、どれだけの時間生じたのかを明確にし、当該公告に付して掲載することが重要です。
電子公告調査が必要な公告・不要な公告
電子公告を使う場合に、実務上よく問題になるのが電子公告調査の要否です。電子公告調査とは、電子公告が公告期間中に適法に行われたかどうかについて、法務大臣の登録を受けた電子公告調査機関が調査する制度です。
会社法941条は、会社法又は他の法律の規定による公告を電子公告によりしようとする会社について、原則として公告期間中に電子公告調査機関の調査を求める必要があると定めています。ただし、会社法440条1項の決算公告は除かれています。
| 公告の種類 | 電子公告調査の要否 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 会社法又は他の法律に基づく法定公告 | 原則として必要 | 公告開始前に調査機関へ依頼し、公告期間・URL・公告根拠条文を共有します。 |
| 決算公告 | 不要 | 調査は不要ですが、電子公告の場合は継続掲載期間や全文公告に注意します。 |
| 任意のニュースリリース・お知らせ | 通常は会社法上の電子公告調査の対象外 | 法定公告か任意告知かを区別します。 |
法務省も、法律の規定による公告を電子公告によりしようとする会社等は、決算公告の場合を除き、公告期間中に電子公告が適法に行われたかどうかについて、電子公告調査機関の調査を受けなければならないと案内しています。
電子公告調査機関の制度、依頼の流れ、登録制度、調査記録簿、報告・検査などは、電子公告調査機関とは|登録制度・調査の流れ・監督(報告/検査)を整理で整理しています。会社法941条以下の逐条整理は、【会社法941条〜959条】電子公告調査・電子公告調査機関|条文の要点と実務ポイントも参照してください。
決算公告を電子公告でする場合
決算公告を電子公告でする場合には、通常の法定公告とは異なる特例があります。重要なのは、電子公告調査は不要である一方、電子公告として決算公告を行う場合には継続掲載や公告内容に注意が必要な点です。
法務省は、決算公告について、電子公告調査機関の電子公告調査を受ける必要がないこと、電子公告を公告方法とする会社等が決算公告をする場合には要旨の公告ではなく全文を公告しなければならないこと、決算公告用のホームページは他の公告事項のホームページとはリンクのない別アドレスを登記できることを案内しています。
また、会社の公告方法を官報又は日刊新聞紙による方法としている場合でも、決算公告のみをインターネット上のホームページに掲載することができる場合があります。この場合にも、貸借対照表等が掲載されるウェブページのURLの登記が問題になります。
| 項目 | 決算公告でのポイント |
|---|---|
| 電子公告調査 | 会社法941条の調査は不要です。 |
| 掲載期間 | 定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで継続掲載が必要です。 |
| 公告内容 | 電子公告を公告方法とする場合、官報・新聞公告のような要旨公告ではなく、全文公告が必要です。 |
| URL管理 | 過年度分を含めて閲覧できるよう、URL・ファイル名・サーバ契約を管理します。 |
電子公告を行うときの実務手順
電子公告の実務では、公告方法として電子公告を採用する段階と、個別の公告を実施する段階を分けて整理すると、漏れを防ぎやすくなります。
- 定款で公告方法を確認し、電子公告を採用しているか確認する。
- 公告ホームページURLの登記内容を確認する。
- 今回の公告が法定公告か、任意告知かを確認する。
- 公告の根拠条文と公告期間を確認する。
- 電子公告調査が必要かどうかを確認する。
- 必要な場合は、公告開始前に電子公告調査機関へ依頼する。
- 公告文、公告URL、公告開始日、公告終了日を確定する。
- 公告期間中、閲覧不能・リンク切れ・内容改変がないように管理する。
- 中断が生じた場合は、原因、時間、内容を確認し、追加公告を検討する。
- 調査結果通知、スクリーンショット、サーバログ、社内承認資料を保存する。
電子公告は、法務担当者だけで完結しません。ウェブ担当者、システム担当者、外部制作会社、サーバ管理者、電子公告調査機関との連携が必要になることがあります。
特に、公告期間中にサイト改修やサーバ移転を予定している場合は、公告ページを移動しない、URLを変えない、ファイルを差し替えない、アクセス制限をかけない、といった運用ルールを事前に共有しておくことが重要です。
電子公告を選ぶメリットと注意点
電子公告には、インターネット上で公告内容を確認できる、決算公告では費用面のメリットが出やすい、過年度公告を一覧化しやすいといった利点があります。
一方で、すべての会社にとって電子公告が最適とは限りません。法定公告で電子公告調査が必要になる場合、調査費用や事前依頼、公告期間中の監視、追加公告対応などの管理負担が生じます。
| 観点 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 閲覧性 | 利害関係人がインターネットで確認できます。 | URL変更やリンク切れに注意が必要です。 |
| 費用 | 決算公告では費用を抑えやすいことがあります。 | 法定公告では電子公告調査費用がかかる場合があります。 |
| 証跡 | 調査結果通知やログを残せます。 | 官報・新聞と異なり、サイト障害や改変への対応が必要です。 |
| 運用 | 自社サイトで公告を整理しやすいです。 | 法務とウェブ運用の連携が不可欠です。 |
電子公告を採用するか迷う場合は、決算公告だけを想定しているのか、組織再編・減資・解散などの債権者保護公告にも使うのかを分けて検討します。会社の公告方法の選択は、コストだけでなく、手続の確実性と管理体制を含めて判断することが大切です。
電子公告でよくあるミス
電子公告では、次のようなミスが起きやすいため注意が必要です。
- 定款上の公告方法が電子公告になっていないのに、電子公告だけで済ませてしまう
- 公告ホームページURLの登記を失念する
- 公告期間の終期を誤って、早く公告ページを削除してしまう
- 決算公告は調査不要であることだけを見て、5年間掲載を忘れる
- 法定公告なのに電子公告調査機関への依頼をしていない
- 公告期間中にPDFを差し替え、改変と評価され得る状態を作ってしまう
- サイトリニューアルで公告URLを変更し、リンク切れを起こす
- 中断発生後に追加公告を速やかに行わない
電子公告は、公告文の内容だけでなく、「公告期間中に同じ内容を継続して見られる状態に置いたか」が重要です。公告開始前に、URL、期間、調査要否、障害時対応をチェックリスト化しておきましょう。
よくある質問
電子公告のURLは定款に書く必要がありますか
通常、電子公告を公告方法とする旨は定款に定めますが、公告ホームページURLまで定款に定める必要はありません。URLは登記事項として管理します。
電子公告にすれば官報公告は不要になりますか
会社の公告方法を電子公告とした場合、会社法上の公告方法は電子公告になります。ただし、事故その他やむを得ない事由により電子公告ができない場合の予備的公告方法を定款で定めることがあります。また、個別手続で官報公告が要求される場面や、別途の公告・催告が必要になる場面もあるため、個別条文を確認する必要があります。
電子公告調査は必ず必要ですか
すべての電子公告で必要になるわけではありません。会社法又は他の法律の規定による公告を電子公告によりしようとする場合は原則として必要ですが、会社法440条1項の決算公告は除かれています。任意のお知らせやニュースリリースも、通常は会社法上の電子公告調査の対象ではありません。
決算公告は電子公告調査が不要なら、すぐ削除してもよいですか
いいえ。決算公告について電子公告調査は不要ですが、電子公告による決算公告には継続掲載期間があります。会社法940条1項2号により、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで継続して掲載する必要があります。
公告期間中にホームページが落ちた場合はどうなりますか
公告期間中に閲覧不能や改変が生じると、会社法940条の公告の中断が問題になります。会社が善意かつ重過失なし又は正当な事由があること、中断時間の合計が公告期間の10分の1を超えないこと、速やかに追加公告を行うことなどの要件を満たすかを確認します。
電子公告の証拠はどのように残しますか
電子公告調査が必要な場合は、調査結果通知が重要な証拠になります。調査不要の決算公告でも、掲載開始日、掲載URL、掲載内容、過年度分の保存状況、スクリーンショット、サーバログなどを保存しておくと、後日の確認に役立ちます。
まとめ
電子公告は、会社法上の公告方法の1つであり、インターネット上で公告内容を確認できるようにする制度です。便利な方法である一方、定款・登記、URL、公告期間、電子公告調査、公告中断時の追加公告を正しく管理する必要があります。
- 電子公告を公告方法にするには、定款の定めと登記を確認します。
- 公告ホームページURLは登記事項であり、公告期間中の変更やリンク切れに注意します。
- 電子公告は、公告の種類に応じて必要な期間中、継続して掲載します。
- 公告中断が起きた場合は、中断時間、帰責性、追加公告の要件を確認します。
- 決算公告を除く法定公告では、原則として電子公告調査機関の調査を受ける必要があります。
電子公告を導入・実施するときは、公告方法の選択、公告期間の管理、電子公告調査の要否、ウェブ運用の安全性をまとめて確認することが重要です。特に、組織再編、資本減少、解散・清算など手続期限と連動する公告では、公告開始前にスケジュールと証跡管理を整えておきましょう。
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