【会社法918条】支配人の登記|条文の要点と実務ポイント

会社法918条は、会社が支配人を選任したとき、又は支配人の代理権が消滅したときに、本店所在地で支配人の登記をしなければならないことを定める条文です。

支配人は、会社の本店又は支店において、その事業に関する広い代理権を持つ使用人です。取締役や代表取締役とは異なりますが、取引先から見ると、契約締結、通知、受領、訴訟対応などに関わる重要な権限者として扱われます。そのため、支配人を置いたことや代理権が消滅したことは、登記簿に反映しておく必要があります。

この記事では、会社法918条について、支配人登記が必要になる場面、登記する場所、登記事項、選任・代理権消滅時の実務、会社法908条の登記の効力、支配人制度との関係を整理します。

  • 会社法918条は、支配人の選任と代理権消滅を本店所在地で登記することを定めています。
  • 支配人の登記は、支配人の氏名・住所と、支配人を置いた営業所を公示するための登記です。
  • 支配人の代理権は広いため、解任・辞任・営業所廃止などで代理権が消滅した場合は、登記漏れを放置しないことが重要です。
  • 支配人制度そのものは会社法10条〜13条、登記の効力は会社法908条とあわせて確認します。

坂尾陽弁護士

支配人の登記では、「誰を支配人にするか」だけでなく、「どの営業所の支配人なのか」「代理権が消滅した後も外部に古い表示が残っていないか」を確認することが重要です。登記簿と実際の権限がずれると、取引先対応や契約の有効性をめぐる紛争につながりやすくなります。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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会社法918条とは

会社法918条は、会社の支配人に関する登記義務を定める規定です。条文は、支配人を選任した場合と、支配人の代理権が消滅した場合を対象にしています。

第九百十八条 会社が支配人を選任し、又はその代理権が消滅したときは、その本店の所在地において、その登記をしなければならない。

会社法の条文全体は、e-Gov法令検索「会社法」で確認できます。

918条のポイントは、登記すべき場所が「支配人を置いた本店又は支店の所在地」ではなく、会社の本店所在地とされている点です。支店に支配人を置く場合でも、会社の支配人の登記は会社の登記簿にされます。

支配人の選任と代理権消滅を公示する規定

支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持ちます。取引先から見ると、支配人がどの営業所について権限を持つのか、すでに代理権が消滅していないかは重要な情報です。

そこで、会社法918条は、支配人の選任と代理権消滅を登記により外部へ示す仕組みを置いています。登記は、支配人の権限の有無や範囲について、会社と取引先の双方が確認するための基本資料になります。

会社法10条〜13条と一体で読む

会社法918条だけを読んでも、支配人制度の全体は分かりません。918条は登記に関する条文であり、支配人の選任、代理権、競業禁止、表見支配人については、会社法10条〜13条と一体で確認する必要があります。

規定 内容 918条との関係
会社法10条 支配人の選任 支配人を置く前提となる規定
会社法11条 支配人の代理権 登記される支配人の権限の中身を示す規定
会社法12条 支配人の競業禁止 支配人の社内外の行動制限に関する規定
会社法13条 表見支配人 支配人らしい名称・外観を与えた場合の取引安全に関する規定
会社法918条 支配人の登記 支配人の選任・代理権消滅を登記する規定

支配人制度全体については、支配人とは|選任・登記・権限・表見支配人まで整理も参考になります。会社法10条〜12条の条文解説は、【会社法10条・11条・12条】支配人・代理権・競業禁止|条文の要点と実務ポイントで整理しています。


支配人の登記が必要になる場面

会社法918条で登記が必要になる中心場面は、支配人を選任したときと、支配人の代理権が消滅したときです。実務では、営業所の移転・変更・廃止、支店設置・廃止、支配人の住所変更なども、支配人登記とあわせて確認します。

支配人を選任したとき

会社が支配人を選任したときは、支配人の登記が必要です。支配人は単なる肩書ではなく、会社法上、会社に代わってその事業に関する広い代理権を持つ者です。そのため、社内で「支店長」「営業所長」「マネージャー」と呼んでいるだけでは、直ちに会社法上の支配人になるわけではありません。

支配人を選任する場合は、少なくとも次の事項を整理します。

  • 誰を支配人にするのか
  • どの本店又は支店において事業を行わせるのか
  • 支配人に与える実際の権限と社内規程の関係
  • 選任を決定する機関・手続
  • 登記申請に必要な書類

支配人の選任は、取引先に対する外部表示だけでなく、社内の権限設計そのものに関わります。支配人という名称を安易に使うと、実際には想定していなかった広い代理権を前提に取引されるおそれがあります。

支配人の代理権が消滅したとき

支配人の代理権が消滅したときも、会社法918条により登記が必要です。代理権消滅の典型例は、支配人の解任、辞任、雇用関係の終了、死亡、支配人を置いた営業所の廃止などです。

代理権消滅の登記を放置すると、登記簿上は古い支配人が残っているように見えることがあります。特に、元支配人が取引先と接触していた場合、会社が「もう権限はない」と主張できるかが問題になりやすくなります。

登記漏れの注意点

支配人を解任しただけで安心せず、登記簿上の表示も確認する必要があります。代理権が消滅した後に登記が残っていると、取引先が古い登記や外観を前提に行動するリスクがあります。

支配人を置いた営業所に変更があるとき

会社の支配人の登記事項には、支配人を置いた営業所が含まれます。そのため、支配人を置いた本店又は支店について、移転、変更、廃止がある場合は、支配人を置いた営業所の表示もあわせて確認します。

商業登記規則では、会社の支配人を置いた営業所の移転・変更・廃止がある場合に、本店又は支店の移転・変更・廃止の登記と同時に申請すべき場面が想定されています。たとえば、支店に支配人を置いている会社がその支店を移転又は廃止する場合は、支店登記だけでなく、支配人を置いた営業所の登記も確認します。

支配人の住所変更にも注意する

商業登記法上、会社の支配人の登記事項には支配人の氏名及び住所が含まれます。そのため、支配人の住所に変更が生じた場合も、登記簿上の表示を確認する必要があります。

役員変更ほど頻繁に意識されないため、支配人の住所変更は漏れやすい論点です。支配人を選任している会社では、役員・本店・支店の変更管理だけでなく、支配人情報の変更管理も社内チェック項目に入れておくことが望ましいです。


支配人の登記事項と申請先

会社法918条は「本店の所在地」において登記すると定めています。具体的な登記事項や添付書面は、商業登記法・商業登記規則もあわせて確認します。

支配人の登記は会社の登記簿にする

商業登記法44条は、会社の支配人の登記を会社の登記簿にすることを定めています。会社の支配人登記は、支配人を置いた営業所ごとに別の登記簿を作るのではなく、会社の登記記録の中で管理されます。

会社の支配人の登記において登記すべき事項は、支配人の氏名及び住所、支配人を置いた営業所です。

商業登記法の条文は、e-Gov法令検索「商業登記法」で確認できます。

登記する主な事項

会社の支配人の登記で中心となる事項は、次の2つです。

登記事項 実務上の確認ポイント
支配人の氏名及び住所 氏名・住所の正確な表示を確認します。住所変更があった場合は変更登記の要否を確認します。
支配人を置いた営業所 本店又は支店のどの営業所に支配人を置くのかを確認します。支店に置く場合は支店登記との関係も確認します。

支配人の登記では、役員の就任登記とは違う記載・添付書面の考え方があります。実務では、申請書の記載方法、添付書面、登録免許税、同時申請の要否を、対象会社の類型や具体的な変更内容に応じて確認します。

添付書面の基本

商業登記法45条は、会社の支配人の選任登記の申請書には支配人の選任を証する書面を、支配人の代理権消滅の登記の申請書にはこれを証する書面を添付することを定めています。

たとえば、株式会社で支配人を選任・解任する場合は、取締役会議事録、取締役の決定書、社内の決裁書類など、選任又は代理権消滅を基礎づける書面を確認します。実際の添付書面は、会社類型、機関設計、定款、代理人申請の有無により変わり得ます。

申請先は本店所在地の管轄登記所

会社法918条は、本店の所在地で登記すると定めています。したがって、支店に支配人を置く場合でも、会社の支配人の登記は本店所在地の管轄登記所への申請として整理します。

登記申請の方法や添付書類の基本は、商業登記の申請手続|申請人・添付書類・オンライン申請の基本で整理しています。登記制度全体の位置づけは、会社の登記とは|登記の効力・対抗要件・登記漏れのリスクを整理も参考になります。


会社法918条と登記の効力

支配人の登記で重要なのは、登記をするかどうかだけではありません。支配人の権限発生、代理権消滅、第三者対抗、社内の権限制限が、それぞれどのように関係するかを整理する必要があります。

選任登記は支配人制度の外部公示

支配人を選任した場合、会社法918条に基づき登記をします。もっとも、実務上は、支配人の選任という社内手続と、登記による公示を分けて考えます。登記は、支配人の存在と支配人を置いた営業所を外部に示すための制度です。

支配人が実際に取引先と契約を締結する場面では、登記簿だけでなく、支配人としての権限、営業所、取引内容、過去の取引経緯、会社の表示などが問題になります。登記があるからすべての取引が当然に有効になる、又は登記がないから当然に無効になる、と単純化しないことが重要です。

代理権消滅の登記漏れは取引先との紛争につながる

支配人を解任した場合や、支配人の代理権が消滅した場合は、登記簿上の表示を速やかに直す必要があります。会社法908条は、登記すべき事項について、登記後でなければ善意の第三者に対抗できないという登記の効力を定めています。

このため、会社が内部的には支配人を解任していても、代理権消滅の登記が遅れていると、取引先との関係で「すでに代理権は消滅していた」と主張できるかが問題になることがあります。特に、元支配人が従前から取引先と交渉していた場合、外部表示の管理が重要です。

会社法908条を含む登記の通則については、【会社法907条〜910条】会社法上の登記の通則・効力・変更登記・期間|条文の要点と実務ポイントで詳しく整理しています。

社内の権限制限は別問題として管理する

支配人には、会社法11条により、その事業に関する広い代理権があります。会社内部で「一定金額を超える契約は本社承認が必要」「特定の契約は代表取締役決裁が必要」と定めていても、その制限を善意の第三者に当然に主張できるとは限りません。

したがって、支配人を選任する会社側では、登記だけでなく、社内規程、契約締結フロー、取引先への権限表示、承認印・電子契約権限、稟議ルールを一体で整える必要があります。

実務ポイント

支配人の登記は、支配人の権限を外部に示す重要な情報です。ただし、登記だけで社内の権限管理が完了するわけではありません。支配人の肩書、名刺、メール署名、契約書の署名権限、電子契約アカウントもあわせて管理しましょう。


支配人を選任・解任するときの社内手続

会社法918条は登記の規定ですが、登記申請の前提として、支配人の選任・解任を適切に決定している必要があります。社内手続があいまいなまま登記だけを進めると、後から権限や責任の所在が問題になることがあります。

株式会社では機関設計を確認する

株式会社では、取締役会設置会社かどうかにより、支配人の選任・解任をどの機関で決定するかを確認します。取締役会設置会社では、重要な使用人の選任・解任に関する取締役会決議の要否が問題になります。取締役会非設置会社では、業務執行の決定として取締役の過半数の決定や定款・社内規程を確認します。

支配人は、通常の従業員よりも外部的な権限が大きい使用人です。そのため、名目上だけ支配人と呼ぶのではなく、どの機関が、どの営業所について、どの者を支配人として選任したのかを、議事録や決定書面で明確にしておくことが重要です。

持分会社では定款と社員の業務執行権限を確認する

合同会社などの持分会社でも、支配人を置く場合には、定款、業務執行社員の権限、社員間の決定ルールを確認します。会社法918条は「会社」が支配人を選任した場合を対象にするため、株式会社だけでなく持分会社でも問題になり得ます。

持分会社では、社員が業務執行権限を持つため、支配人を置くことで社外の取引権限がどのように整理されるかを社内で共有しておく必要があります。

解任・辞任時は外部表示を同時に整理する

支配人の解任や辞任では、社内の人事手続、雇用契約、業務引継ぎ、登記、取引先説明を同時に整理します。支配人が契約締結権限を持っていた場合は、契約書、発注書、電子契約、銀行・金融機関対応、社内承認フローにも影響します。

特に、退職した元支配人のメールアドレス、名刺、会社ウェブサイト、取引先向け案内資料が残っていると、登記だけを直しても外観が残ることがあります。登記と外部表示をセットで見直すことが重要です。


支配人登記と他の登記との関係

支配人の登記は、会社の設立登記や役員変更登記とは異なる独自の論点を持ちます。もっとも、実務では、本店移転、支店設置・廃止、会社の解散、登記申請期限などと同時に問題になることがあります。

会社法915条の変更登記との違い

会社法915条は、会社の設立登記で登記した一定の事項に変更が生じた場合の変更登記を定める規定です。一方、支配人の登記は、会社法918条に独立して定められています。

そのため、支配人選任・代理権消滅の登記を考えるときは、会社法915条の2週間以内の変更登記と機械的に同じものとして扱うのではなく、918条、商業登記法44条・45条、商業登記規則上の手続を確認します。ただし、登記が遅れるほど外部表示のリスクが高まるため、実務上は速やかな申請を前提に管理します。

会社法915条の変更登記については、【会社法915条】変更の登記|条文の要点と実務ポイントを参考にしてください。登記期限の一般的な考え方は、登記申請の期限(2週間・3週間)と起算点|登記の期間の考え方で整理しています。

支店に支配人を置く場合

支配人は、本店又は支店において事業を行わせるために選任されます。支店に支配人を置く場合は、支店の登記、支配人を置いた営業所の表示、支店移転・廃止時の同時申請を一体で確認します。

「営業所」「支店」「事務所」という名称を社内で使っていても、会社法上・商業登記上の支店に当たるかは別問題です。支配人の権限を付与する前に、その拠点の法的な位置づけを確認しましょう。

会社の解散時には支配人登記も整理する

会社が解散した場合、商業登記規則上、会社の支配人の登記は抹消する記号を記録する扱いが定められています。会社の解散・清算の場面では、役員・清算人の登記だけでなく、支配人登記が残っていないかも確認します。

商業登記規則の条文は、e-Gov法令検索「商業登記規則」で確認できます。


支配人登記の実務チェックリスト

支配人登記では、登記申請書だけを作るのではなく、権限設計、社内決裁、取引先対応、外部表示まで確認することが重要です。

支配人を選任するときのチェックリスト

  • 支配人にする者の氏名・住所を正確に確認したか
  • 支配人を置く営業所が本店か支店かを確認したか
  • 支店に置く場合、支店登記との関係を確認したか
  • 取締役会決議、取締役の決定、社員の決定など、選任手続を確認したか
  • 支配人の権限範囲と社内決裁ルールを整備したか
  • 契約書署名、電子契約、社内承認、印鑑・アカウント管理を整備したか
  • 登記申請に必要な選任を証する書面を準備したか

支配人の代理権が消滅したときのチェックリスト

  • 代理権消滅の原因が解任、辞任、退職、死亡、営業所廃止などのどれかを確認したか
  • 代理権消滅を証する書面を準備したか
  • 登記簿上の支配人表示を速やかに整理したか
  • 名刺、メール署名、ウェブサイト、パンフレット等の外部表示を削除・変更したか
  • 取引先、金融機関、主要契約先への説明範囲を決めたか
  • 元支配人の電子契約・発注・決裁アカウントを停止したか
  • 未決裁案件や進行中の契約交渉の引継ぎを確認したか

支配人を置いた営業所に変更があるときのチェックリスト

  • 本店又は支店の移転・変更・廃止があるか
  • 支配人を置いた営業所の表示にも変更が必要か
  • 本店移転・支店移転・支店廃止の登記と同時申請が必要か
  • 営業所変更後も同じ支配人に権限を持たせるのか
  • 支配人の権限を変更・終了させる場合、代理権消滅登記が必要か
  • 取引先への案内、契約書の表示、請求書・注文書の送付先を更新したか

表見支配人・使用人の代理権との違い

支配人登記を考えるときは、表見支配人や使用人の代理権との違いも整理しておく必要があります。いずれも会社の担当者が外部と取引する場面で問題になりますが、根拠条文と判断ポイントが異なります。

表見支配人との違い

表見支配人は、会社が支店長、営業所長など、支配人と誤認されやすい名称を付した場合に、取引先保護の観点から問題になる制度です。実際に支配人として選任・登記されていなくても、外部から支配人のように見える表示がある場合には、会社が責任を負うかが問題になります。

表見支配人については、【会社法13条】表見支配人|条文の要点と実務ポイントで詳しく整理しています。918条の記事では、実際に支配人を選任した場合や代理権が消滅した場合の登記を中心に考えます。

使用人の代理権との違い

会社法14条・15条は、特定事項の委任を受けた使用人や店舗使用人の代理権を定めています。これらは、支配人ほど広い権限ではなく、任された事項や店舗内の物品販売等に関する権限が問題になる規定です。

一般の営業担当者、購買担当者、店舗スタッフがした取引については、支配人登記の有無だけでなく、会社法14条・15条の使用人の代理権、民法上の代理・表見代理、社内権限制限の外部表示を確認します。使用人の代理権については、会社の使用人の代理権|特定事項の委任/店舗使用人の権限を整理も参考になります。


よくある質問

支配人を選任したら必ず登記が必要ですか

会社が会社法上の支配人を選任した場合は、会社法918条により登記が必要です。社内の役職名として「支配人」「店長」「支店長」と呼んでいるだけの場合とは区別し、会社法上の支配人として選任しているかを確認します。

支店に置く支配人も本店所在地で登記しますか

はい。会社法918条は、本店の所在地で登記すると定めています。支店に支配人を置く場合でも、会社の支配人の登記は会社の登記簿にされるため、本店所在地の管轄登記所への申請として整理します。

支配人の登記には何を記載しますか

会社の支配人の登記では、主に支配人の氏名及び住所、支配人を置いた営業所を登記します。支配人の住所変更や、支配人を置いた営業所の移転・変更・廃止がある場合も、登記簿上の表示を確認する必要があります。

支配人を解任したら何をすべきですか

支配人を解任した場合は、代理権消滅の社内手続、登記申請、取引先説明、外部表示の削除・変更、電子契約や決裁アカウントの停止を確認します。登記だけでなく、元支配人に権限が残っているように見える外観を整理することが重要です。

支配人登記に2週間以内という期限はありますか

会社法918条自体には、会社法915条のような「2週間以内」という文言は置かれていません。ただし、支配人の選任・代理権消滅は外部の取引安全に関わるため、実務上は速やかに申請する前提で管理すべきです。特に代理権消滅の登記漏れは、元支配人との取引をめぐる紛争につながり得ます。

支配人を置くと、代表取締役と同じ権限になりますか

同じではありません。代表取締役は会社の機関として会社を代表する者であり、支配人は会社の使用人として、支配人を置いた本店又は支店の事業に関する広い代理権を持つ者です。もっとも、取引先から見ると支配人の権限は大きいため、契約締結権限や社内制限の管理が重要になります。

表見支配人がいる場合も918条の登記が必要ですか

表見支配人は、実際に支配人として選任・登記されていない者について、支配人らしい外観を会社が与えた場合に問題になる制度です。会社法918条の登記は、実際に支配人を選任した場合や代理権が消滅した場合の登記です。両者は別の制度ですが、外部から見た権限表示という点で関連します。


まとめ

会社法918条は、会社が支配人を選任したとき、又は支配人の代理権が消滅したときに、本店所在地で登記をしなければならないことを定める条文です。支配人は会社の使用人でありながら、会社の事業に関する広い代理権を持つため、登記による公示と社内の権限管理が重要になります。

  • 会社法918条は、支配人の選任・代理権消滅の登記義務を定めています。
  • 会社の支配人の登記は、本店所在地で、会社の登記簿にされます。
  • 登記事項は、主に支配人の氏名・住所と、支配人を置いた営業所です。
  • 代理権消滅の登記漏れは、元支配人との取引をめぐるリスクにつながります。
  • 支配人登記は、会社法10条〜13条、会社法908条、商業登記法44条・45条とあわせて確認します。

支配人を選任する場合は、登記申請だけでなく、社内の決裁機関、権限規程、取引先への表示、電子契約・決裁アカウント、退任時の外部表示削除まで一体で管理することが重要です。支配人の権限は広いため、会社の実情に合わないまま肩書や登記だけを先行させないよう注意しましょう。

坂尾陽弁護士

支配人の登記は、会社の内部手続と外部の取引安全をつなぐ制度です。支配人を置くかどうか、誰にどの営業所の権限を与えるか、代理権消滅後の登記と外部表示をどう整理するかを、登記申請前に確認しておきましょう。

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支配人制度、使用人の代理権、会社法上の登記、登記申請手続に関する周辺論点は、次の記事も参考になります。

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