M&Aのメリット・デメリット|売り手・買い手別の判断ポイント

M&Aには、事業承継、成長戦略、創業者利益、雇用維持、事業拡大などのメリットがあります。一方で、希望価格で売れない、情報漏えいが起きる、簿外債務や法令違反を引き継ぐ、PMIがうまくいかない、表明保証違反をめぐって紛争になるなどのデメリットやリスクもあります。

重要なのは、M&Aを「良いか悪いか」で抽象的に判断するのではなく、売り手・買い手それぞれの立場で、どのメリットを得たいのか、どのデメリットを許容できないのかを整理することです。

この記事では、M&Aのメリット・デメリットを売り手側・買い手側に分けて比較し、M&Aを選択肢に残すべきか判断するためのポイント、法務DD・契約・PMIでリスクを抑える方法を解説します。

  • 売り手側の主なメリットは、後継者問題の解決、創業者利益、雇用・取引の維持、事業の成長機会です。
  • 売り手側の主なデメリットは、希望条件で売れない可能性、情報漏えい、手続負担、売却後の責任です。
  • 買い手側の主なメリットは、成長スピードの短縮、人材・顧客・技術の取得、シナジー、事業拡大です。
  • 買い手側の主なデメリットは、簿外債務、法令違反、想定シナジー不発、PMI負担、従業員・取引先離脱です。
  • M&Aのリスクは、NDA、デューデリジェンス、最終契約、クロージング条件、PMI計画で予防・分担します。

坂尾陽弁護士

M&Aのメリットは、デメリットを無視して進めるほど小さくなります。価格だけでなく、責任範囲、DD結果、引継ぎ、PMIまで含めて判断しましょう。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)

 


M&Aのメリット・デメリットの全体像

M&Aのメリット・デメリットは、売り手と買い手で大きく異なります。売り手にとっては、会社や事業を次世代へ引き継ぐ手段になりますが、売却後の責任や従業員対応が問題になります。買い手にとっては、成長を加速する手段になりますが、対象会社のリスクを引き受ける可能性があります。

立場 主なメリット 主なデメリット・リスク 確認すべきポイント
売り手 事業承継、創業者利益、雇用維持、事業の成長、選択と集中 希望価格で売れない、情報漏えい、手続負担、売却後責任、関係者反発 売却目的、希望条件、責任範囲、従業員・取引先対応、引継ぎ
買い手 時間短縮、人材・顧客・技術の取得、事業拡大、シナジー、新規参入 簿外債務、法令違反、過大評価、PMI失敗、従業員・取引先離脱 買収目的、DD範囲、価格妥当性、契約条件、PMI計画
双方共通 単独では実現しにくい事業再編・成長を実現できる 交渉不成立、スケジュール遅延、秘密情報管理、専門家費用、紛争化 NDA、基本合意、費用、撤退条件、クロージング条件、紛争時対応

M&Aの意味や種類から確認したい場合は、M&Aとは何かを先に読むと全体像をつかみやすくなります。実際の進行順は、M&Aの流れで整理しています。

メリットとデメリットは裏返しです

たとえば、買い手にとって「短期間で事業を取得できる」ことはメリットですが、十分な調査をしないまま取得すると、簿外債務や労務問題を引き受けるリスクになります。M&Aでは、メリットだけでなく、その裏側のリスクを確認する必要があります。


売り手側のM&Aのメリット

売り手側にとってのM&Aは、会社や事業を第三者に引き継ぎ、経営者・株主・従業員・取引先にとって望ましい出口を作る手段です。特に中小企業では、後継者不在、創業者の引退、事業の選択と集中、資本力のある会社への承継を目的として検討されます。

後継者問題を解決できる

親族内承継や従業員承継が難しい場合でも、M&Aであれば社外から買い手を探すことができます。後継者がいないために廃業を検討している会社でも、事業価値、顧客基盤、従業員、許認可、技術、地域での信用などを評価する買い手が見つかれば、事業を存続させられる可能性があります。

会社売却の準備や進め方は、会社売却・事業売却の実務会社売却の流れと準備で詳しく整理しています。

創業者利益・投資回収を得られる

株式譲渡で会社を売却する場合、オーナー株主は株式の譲渡代金を受け取ることができます。長年育ててきた会社の価値を現金化できる点は、M&Aの大きなメリットです。引退資金、次の事業への投資、相続対策、個人保証の整理などにもつながります。

ただし、売却価格は、希望額だけで決まるものではありません。財務内容、収益力、事業の成長性、買い手とのシナジー、簿外リスク、DD結果、契約条件によって変動します。価格を考える際は、会社売却の相場・売却価格も確認してください。

従業員の雇用や取引先との関係を維持しやすい

廃業すると、従業員の雇用や取引先との契約が失われることがあります。M&Aで事業を承継できれば、買い手の方針や契約条件次第で、従業員の雇用、顧客対応、仕入先・外注先との関係を維持しやすくなります。

もっとも、従業員や取引先が必ずそのまま残るわけではありません。雇用条件、説明時期、キーパーソンの処遇、取引先への通知方法は、売却前から検討しておく必要があります。従業員対応は、会社売却で従業員はどうなるかも参照してください。

会社・事業の成長機会を作れる

売り手の会社が、単独では資金、人材、販路、システム、海外展開、研究開発に限界を感じている場合、より大きな買い手グループに入ることで成長機会を得られることがあります。創業者が一定期間残って引継ぎを行い、買い手の資本や管理体制を活用して事業を伸ばす設計もあります。

事業の選択と集中ができる

会社全体を売却するだけでなく、一部の事業を売却することで、経営資源を中核事業へ集中させることもできます。不採算事業、非中核事業、地域外事業、子会社を切り離す場合は、事業譲渡、会社分割、株式譲渡など複数の手法を検討します。

手法ごとのメリット・デメリットは本記事では概要にとどめます。株式譲渡、事業譲渡、会社分割などの違いは、M&Aの種類・手法で確認してください。


売り手側のM&Aのデメリット・リスク

売り手側のM&Aでは、会社や事業を売却できるメリットがある一方、買い手探し、情報開示、価格交渉、DD対応、契約交渉、従業員・取引先対応などの負担が生じます。売却後も一定の責任が残ることがある点にも注意が必要です。

希望する買い手や価格で売却できるとは限らない

M&Aは、買い手が存在し、条件が合意できて初めて成立します。売り手が希望する価格、従業員の処遇、引継ぎ条件、売却後の関与をすべて満たす買い手がすぐに見つかるとは限りません。

特に、業績が不安定、借入が多い、後継者依存が強い、主要取引先への依存度が高い、許認可や労務問題がある場合は、価格が下がったり、補償条項やクロージング条件が厳しくなったりします。

情報漏えい・従業員不安が生じる可能性がある

M&Aでは、候補先、仲介会社、FA、専門家、金融機関などに機密情報を開示する場面があります。情報管理が不十分だと、売却検討が従業員、取引先、競合先に伝わり、退職、取引縮小、信用不安につながることがあります。

詳細資料の開示前には、秘密保持契約を締結し、開示目的、開示先、複製・持出し、返還・廃棄、違反時対応を明確にします。M&Aの秘密保持契約は、M&AのNDAで詳しく解説しています。

DD対応と交渉に大きな負担がかかる

売り手は、買い手のデューデリジェンスに対応するため、決算書、契約書、議事録、株主名簿、許認可、従業員資料、借入資料、訴訟・クレーム資料などを整理する必要があります。資料の不足や回答の矛盾があると、買い手の不信感につながり、価格交渉で不利になることがあります。

また、売却準備、専門家対応、候補先との面談、DD回答、契約交渉、従業員対応を通常業務と並行して行うため、経営者・管理部門の負担は小さくありません。

売却後も表明保証・補償責任が残ることがある

売り手が会社を売却しても、最終契約で表明保証や補償条項を定めた場合、売却後に問題が発覚すると、買い手から損害賠償や補償を請求されることがあります。たとえば、税務申告、労務、重要契約、許認可、訴訟、知的財産、反社会的勢力、情報開示などが問題になります。

東京地裁平成30年3月28日判決では、株式譲渡後に対象会社の租税申告漏れ等が問題となり、売主の表明保証違反に基づく損害賠償請求が一部認められました。売り手側では、表明保証の範囲、知識限定、重要性限定、開示事項、補償上限、請求期間を慎重に交渉する必要があります。

経営者保証・借入・担保が自動的に消えるとは限らない

会社を売却しても、旧経営者の個人保証、担保、金融機関との契約が当然に解除されるとは限りません。保証解除は、金融機関との交渉や買い手側の信用力、借換え、契約条件に左右されます。

売却後に旧経営者の保証が残ると、会社を手放したにもかかわらず、借入リスクだけが残ることになりかねません。経営者保証や借入金の扱いは、会社売却で借金・借入金・経営者保証はどうなるかを確認してください。

売却後の責任を軽く見ないでください

売却代金を受け取った後でも、契約上の補償責任、秘密保持義務、競業避止義務、引継ぎ義務、保証解除未了の問題が残ることがあります。最終契約では、売却後に何が残るのかを必ず確認しましょう。


買い手側のM&Aのメリット

買い手側にとってのM&Aは、ゼロから事業を作るよりも短期間で、人材、顧客、技術、許認可、販路、ブランド、設備を取得できる可能性がある点に大きなメリットがあります。新規事業、地域展開、事業拡大、競争力強化の手段として活用されます。

成長スピードを短縮できる

新規事業を自社で立ち上げる場合、採用、育成、顧客開拓、許認可取得、設備投資、システム構築に時間がかかります。M&Aで既存事業を取得できれば、これらの時間を短縮し、早期に売上や顧客基盤を取り込める可能性があります。

ただし、時間短縮の効果は、対象会社が本当に期待した事業基盤を持っている場合に限られます。候補先の探し方や初期評価は、買収先の探し方・選び方で詳しく整理しています。

人材・顧客・技術・ノウハウを取得できる

M&Aでは、財務諸表に表れにくい人材、営業ノウハウ、技術、顧客リスト、取引先ネットワーク、ブランド、許認可、地域での信用などを取得できることがあります。採用難の業界では、人材や現場ノウハウを一体で取得できる点が大きな魅力です。

もっとも、キーパーソンが退職したり、顧客が離脱したりすると、買収時に想定していた価値が失われます。買収前から、雇用条件、インセンティブ、引継ぎ、顧客説明、PMI方針を検討する必要があります。

事業規模の拡大・多角化ができる

既存事業と同じ業種の会社を買収すれば、売上規模、営業エリア、取引先、シェアを拡大できます。隣接分野や新規分野の会社を買収すれば、事業の多角化や新市場参入につながります。

買い手側の実務全体は、会社買収の実務会社買収の流れと手順で確認できます。

シナジー効果を狙える

シナジーとは、買い手と対象会社が組み合わさることで、単独では得にくい効果が生じることです。たとえば、買い手の販路で対象会社の商品を販売する、対象会社の技術を買い手の既存製品に活用する、管理部門や仕入を統合してコストを下げる、といった効果が考えられます。

シナジーはM&Aの大きなメリットですが、過大に見積もりやすい点にも注意が必要です。買収価格を決める際は、実現時期、担当者、必要投資、失敗時の影響まで具体化しておく必要があります。


買い手側のM&Aのデメリット・リスク

買い手側のM&Aでは、対象会社の事業を取得できる一方で、対象会社に潜在する法的・財務的・労務的リスクを引き受ける可能性があります。買収後に問題が発覚すると、価格以上の損失や事業混乱につながることがあります。

簿外債務・税務・労務リスクを引き継ぐ可能性がある

株式譲渡で会社を買収する場合、会社そのものを取得するため、帳簿に表れていない債務、税務申告漏れ、未払残業、退職金、保証債務、訴訟・クレーム、行政対応などが後から顕在化することがあります。

東京地裁平成30年3月28日判決では、買収後に税務申告漏れ等が問題となり、対象会社に簿外負債や将来具体化する課税問題があったとして、表明保証違反が認められました。買い手側では、DDでリスクを確認するだけでなく、発見できなかったリスクを表明保証・補償条項でどのように処理するかが重要です。

法令違反・許認可・重要契約の問題が発覚することがある

対象会社が必要な許認可を持っていない、設備が法令に適合していない、重要契約に解除条項がある、契約移転に相手方同意が必要である、といった問題があると、買収後の事業継続に影響します。

東京地裁平成27年6月22日判決では、買収対象会社が使用する工場のクリーンルームに消防法等に関する問題があり、表明保証違反に基づく補償請求が一部認められました。許認可・設備・法令適合性は、買い手にとって典型的な確認事項です。

法務デューデリジェンスの調査項目は、法務デューデリジェンスM&Aデューデリジェンスのチェックリストで整理しています。

期待したシナジーが実現しないことがある

買収前に想定していた売上拡大、コスト削減、顧客紹介、技術活用、人材活用が実現しないことがあります。原因としては、対象会社の実態把握不足、顧客離脱、キーパーソン退職、文化の不一致、買い手側のPMI体制不足などが考えられます。

シナジーを買収価格に織り込む場合は、実現可能性を慎重に検討する必要があります。期待値だけで高値買収すると、買収後の減損、追加投資、資金繰り悪化につながることがあります。

PMIに失敗すると買収効果が失われる

買収後の統合が不十分だと、従業員の不安、キーパーソン退職、取引先離脱、管理体制の混乱、システム統合の失敗、コンプライアンス不備が起こります。M&Aは契約締結やクロージングで終わるのではなく、PMIで事業価値を実現する必要があります。

PMIの全体像は、M&AのPMIとはを参照してください。買収後の初期計画は、M&Aの100日プランで詳しく解説しています。

資金調達・財務負担が重くなることがある

買収代金、仲介手数料、専門家費用、税金、PMI費用、追加投資、運転資金を含めると、M&Aには大きな資金が必要です。融資を使う場合は、返済負担、担保、保証、財務制限条項も検討します。

M&Aにかかる費用は、M&Aにかかる費用で整理しています。買収資金の調達方法は、M&Aの資金調達方法も参考になります。

買い手側は「買った後」のリスクまで見ます

買収前の資料だけを見ると魅力的な案件でも、買収後に簿外債務、未払残業、重要契約の解除、キーパーソン退職が発覚すると、想定していたメリットが失われることがあります。DD、契約、PMIを一体で設計しましょう。


M&Aのメリット・デメリットを判断するチェックポイント

M&Aを進めるかどうかは、メリットの大きさだけでなく、デメリットをどこまで管理できるかで判断します。特に、売り手は「売却後に何が残るか」、買い手は「買収後に何を引き受けるか」を確認する必要があります。

判断項目 売り手側の確認 買い手側の確認
目的 事業承継、引退、資金回収、選択と集中のどれが主目的か 成長、参入、人材獲得、顧客獲得、シナジーのどれが主目的か
価格 希望価格と最低条件、価格調整の許容範囲 買収価格の妥当性、過大評価、追加投資の見込み
情報開示 開示資料の正確性、秘密情報の管理、説明範囲 開示資料の矛盾、未開示情報、質問回答の信用性
法務リスク 表明保証の範囲、補償責任、売却後義務 簿外債務、契約、許認可、労務、訴訟、知財
関係者対応 従業員、取引先、金融機関、株主への説明 キーパーソン、顧客、取引先の維持可能性
PMI 引継ぎ義務、旧経営者の関与、競業避止 統合体制、100日プラン、権限・規程・システム統合

判断ポイントは、M&Aの各工程で変わります。工程ごとの確認事項は、M&Aの流れM&Aにかかる期間とスケジュールをあわせて確認してください。


M&Aが向いているケース・向いていないケース

M&Aは有効な選択肢ですが、すべての会社に常に向いているわけではありません。売り手・買い手の目的、事業内容、リスク、準備状況によって、M&Aを進めるべきか、別の方法を検討すべきかが変わります。

売り手側でM&Aが向いているケース

  • 後継者不在だが、事業や従業員を残したい
  • 創業者利益を得て引退又は次の事業へ移りたい
  • 資本力や販路のある会社に承継した方が事業成長を見込める
  • 一部事業を売却して中核事業に集中したい
  • 金融機関、従業員、取引先に説明できる買い手候補がある

売り手側で慎重に検討すべきケース

  • 株主間で売却方針が一致していない
  • 会計・税務・労務・許認可に未整理の問題が多い
  • 売却情報が漏れると事業価値が大きく下がる
  • 希望価格と実態価値に大きな差がある
  • 経営者保証や借入の整理ができていない

買い手側でM&Aが向いているケース

  • 自社で立ち上げるよりも、既存事業を取得した方が早い
  • 不足している人材、顧客、技術、許認可、販路を取得したい
  • 対象会社とのシナジーを具体的に説明できる
  • DD、契約交渉、PMIを実行する体制がある
  • 買収資金と追加投資を含めた財務計画がある

買い手側で慎重に検討すべきケース

  • 買収目的が曖昧で、候補先を価格だけで選んでいる
  • DDに十分な時間・専門家・予算をかけられない
  • 対象会社の経営者やキーパーソンに依存している
  • PMI責任者や統合計画が決まっていない
  • 簿外債務や法令違反が見つかっても契約に反映できない

すでに「買収してよいか不安」「DDで問題が見つかった」「売却後の責任が心配」という段階であれば、単なるメリット比較ではなく、取引条件と契約リスクを具体的に確認する必要があります。


M&Aのデメリットを予防・軽減する方法

M&Aのデメリットは、完全になくせるものではありません。しかし、取引前の準備、専門家の役割分担、DD、契約条項、クロージング条件、PMI計画によって、リスクの発生可能性や影響を下げることはできます。

秘密保持契約で情報漏えいを防ぐ

候補先に詳細資料を開示する前に、秘密保持契約を締結します。開示目的、開示先、資料の複製・保存、返還・廃棄、違反時の責任を明確にし、競合先への情報開示は段階的に行います。

デューデリジェンスでリスクを見つける

買い手側は、財務・税務・法務・労務・ビジネスの観点から対象会社を確認します。売り手側も、買い手に指摘される前に自社の問題を整理し、開示事項、是正事項、価格調整の余地を検討します。

DDで発見したリスクを契約や価格へ反映する方法は、M&AのDD結果を契約・価格へ反映する方法で詳しく整理しています。

最終契約で責任範囲を明確にする

表明保証、補償条項、前提条件、解除条項、誓約事項を曖昧にすると、買収後に問題が発覚したときに紛争化しやすくなります。売り手は責任を限定したい一方、買い手は未発見リスクをカバーしたいため、契約交渉で利害が対立します。

M&Aの最終契約書は、M&Aの最終契約書で詳しく解説しています。クロージング前に解消すべき事項は、M&Aのクロージング前提条件として整理することがあります。

専門家の役割を明確にする

仲介会社やFAが関与していても、法務DDや契約リスクの確認まで当然に含まれるとは限りません。東京地裁令和4年2月24日判決では、M&Aに関するフィナンシャル・アドバイザリー契約について、デューデリジェンスに該当する程度の買収対象事業の調査までは業務に含まれないと判断されました。

専門家を利用する場合は、候補探索、条件調整、財務DD、税務DD、法務DD、契約書作成、交渉、クロージング支援のうち、誰がどこまで担当するかを確認しましょう。仲介・FAとの違いは、M&A仲介・FA・弁護士・税理士との違いで整理しています。

PMIを買収前から計画する

PMIは買収後に慌てて始めるものではありません。買収目的、統合責任者、Day1対応、従業員説明、システム移行、契約管理、権限規程、旧経営者の引継ぎを、DDや契約交渉の段階から検討しておくことが重要です。

失敗事例やトラブル予防の観点は、M&A失敗事例とDD・交渉での予防策で詳しく確認できます。


M&Aで弁護士に相談すべき場面

M&Aのメリットを活かし、デメリットを抑えるには、法務上のリスクを早めに整理することが重要です。弁護士への相談は、トラブルが起きてからだけでなく、NDA、基本合意、DD、最終契約、クロージングの各段階で検討できます。

相談場面 相談内容 放置した場合のリスク
NDA・初期接触前 情報開示範囲、競合先対応、秘密保持条項 情報漏えい、目的外利用、従業員・取引先への影響
基本合意前 独占交渉、費用負担、撤退条件、法的拘束力 条件変更・撤退が難しくなる
DD前・DD中 資料リスト、質問票、法務リスク、開示事項 重要リスクの見落とし、説明矛盾、価格交渉で不利
最終契約前 表明保証、補償、前提条件、解除、競業避止 売却後責任・買収後損失をめぐる紛争
クロージング前 条件充足、決議、同意取得、必要書類、同時履行 未充足条件のまま実行、書類不足、名義変更漏れ
問題発覚時 補償請求、解除、損害賠償、証拠整理、仲介トラブル 通知期限・請求期限を逃す、証拠が散逸する

M&Aの弁護士相談全体は、M&Aの弁護士相談で整理しています。すでに表明保証違反、DD不足、仲介手数料、買収後トラブルが問題になっている場合は、M&Aトラブル紛争M&Aトラブルを弁護士に相談するタイミングを参照してください。


よくある質問

M&Aの最大のメリットは何ですか?

売り手側では、後継者問題の解決、事業存続、創業者利益、雇用維持が大きなメリットです。買い手側では、既存事業を取得することで成長スピードを短縮し、人材・顧客・技術・販路をまとめて取得できる点が大きなメリットです。

M&Aの最大のデメリットは何ですか?

売り手側では、希望価格で売れない可能性、情報漏えい、売却後責任が問題になります。買い手側では、簿外債務、法令違反、未払残業、重要契約の解除、PMI失敗など、買収後に問題が発覚するリスクが大きなデメリットです。

M&Aは従業員にとってメリットがありますか?

買い手が事業を継続し、雇用や処遇を維持・改善する場合は、従業員にとってメリットがあります。一方で、経営方針、人事制度、勤務地、業務内容が変わることもあるため、説明時期、雇用条件、キーパーソン対応を慎重に設計する必要があります。

M&Aは買い手にとって本当に時間短縮になりますか?

対象会社が期待した人材、顧客、技術、許認可、事業基盤を実際に持っており、買収後のPMIが機能する場合は時間短縮になります。ただし、DD不足やPMI失敗があると、むしろ追加対応に時間と費用がかかることがあります。

M&Aのデメリットは契約書で防げますか?

契約書だけですべてのデメリットを防ぐことはできません。ただし、表明保証、補償条項、前提条件、解除条項、誓約事項、競業避止、引継ぎ義務を適切に定めることで、リスクを発見した場合の対応や責任分担を明確にできます。

売り手はどのデメリットに最も注意すべきですか?

売却後の責任範囲に注意すべきです。表明保証や補償条項が広すぎると、売却後に税務、労務、契約、許認可、訴訟などの問題について請求を受ける可能性があります。補償上限、期間、免責、開示事項を確認しましょう。

買い手はどのデメリットに最も注意すべきですか?

対象会社の未発見リスクとPMIに注意すべきです。簿外債務、未払残業、法令違反、重要契約、許認可、キーパーソン退職は買収後の損失につながります。DDと契約反映、買収後の統合計画を一体で進める必要があります。

M&Aのメリット・デメリットを比較した後、次に何をすべきですか?

売り手であれば、売却目的、最低条件、開示資料、株主意思、従業員対応を整理します。買い手であれば、買収目的、候補先条件、DD範囲、投資上限、PMI体制を整理します。そのうえで、専門家の役割分担と初期スケジュールを確認しましょう。

M&A後に問題が発覚した場合はどうすればよいですか?

まず、最終契約書、DD資料、開示資料、質問回答、メール、議事録、クロージング書類を整理します。表明保証違反、補償請求、解除、損害賠償、仲介トラブルなど、論点により初動が変わるため、早めに法的対応を検討してください。


まとめ

M&Aのメリット・デメリットは、売り手側と買い手側で異なります。売り手側は、事業承継、創業者利益、雇用維持、事業成長の可能性を得られる一方、情報漏えい、希望条件不一致、売却後責任、従業員・取引先対応に注意が必要です。買い手側は、成長スピードの短縮、人材・顧客・技術の取得、シナジーを狙える一方、簿外債務、法令違反、PMI失敗、過大評価のリスクがあります。

  • M&Aのメリットは、売り手・買い手の目的に合っている場合に初めて意味があります。
  • デメリットは、NDA、DD、最終契約、クロージング条件、PMI計画で予防・軽減します。
  • 売り手は、売却後責任と従業員・取引先対応を早めに整理する必要があります。
  • 買い手は、未発見リスクとPMI負担を見込んで、価格と契約条件を設計する必要があります。
  • メリット・デメリットの比較で迷う場合は、目的、価格、リスク、責任範囲、PMIを分けて検討しましょう。

M&Aは、メリットを得るための取引であると同時に、リスクを引き受ける取引でもあります。候補先との接触前、基本合意前、DD開始前、最終契約前、クロージング前の節目で、法務・税務・会計・事業面のリスクを確認することが重要です。

坂尾陽弁護士

M&Aを進めるか迷う段階では、メリットだけを並べるのではなく、「このデメリットが起きた場合に誰が、いつ、いくらまで負担するのか」を契約と実務で確認しましょう。

関連記事

M&Aのメリット・デメリットを把握した後は、流れ、期間、費用、DD、契約、売り手・買い手別の実務を確認しましょう。

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)