【会社法4条・5条】住所・商行為|条文の要点と実務ポイント

会社法4条・5条は、会社法総則の中でも、契約書・通知・登記・取引実務の前提になる条文です。会社法4条は、会社の住所が本店所在地にあることを定めています。会社法5条は、会社がその事業としてする行為と、その事業のためにする行為を商行為として扱うことを定めています。

この記事では、会社法4条・5条の条文の意味を、会社の本店所在地、契約書上の当事者表示、通知先、裁判・登記との関係、会社の取引が商行為になる場面に分けて整理します。条文は短いですが、実務では「どの住所を使うか」「この取引に商法上のルールが関係するか」という初動判断につながります。

坂尾陽弁護士

住所と商行為は、契約・登記・通知の入口です。条文の短さに反して実務影響は大きいです。
  • 会社法4条は、会社の住所を本店所在地に結び付ける規定です。
  • 本店所在地は、定款・登記・契約書・通知先の確認で重要になります。
  • 会社法5条は、会社の事業行為・事業のための行為を商行為とします。
  • 商行為に当たるかは、商法上の特則や契約実務を確認する入口になります。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

企業法務の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


企業法務の無料法律相談 0120-126-050(24時間365日受付)

 

会社法4条・5条の位置づけ

会社法4条・5条は、第1編「総則」第1章「通則」に置かれています。会社法1条が会社法の対象範囲を示し、会社法2条が用語を定義し、会社法3条が会社の法人格を定めた後に、会社の住所と商行為性を定めるのが会社法4条・5条です。最新の条文全体は、e-Gov法令検索の会社法で確認できます。

会社法4条・5条は、会社の内部組織を細かく定める条文ではありません。しかし、会社がどこに住所を持つか、会社の取引がどのような法的性質を持つかは、契約書、請求書、内容証明、訴訟、登記、保証、利息、商法上の特則などの検討に影響します。

前後の条文との関係では、会社の法人格は会社法3条の法人格で、会社法上の基本用語は会社法2条の定義で確認できます。会社法4条・5条は、その次に、会社を外部取引の主体として扱うための基礎を置く条文といえます。

会社法4条・5条の条文を確認する

会社法4条・5条は、いずれも短い条文です。まず、条文の文言を確認します。

会社法4条|会社の住所

会社法4条は、「会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。」と定めています。ここでいう住所は、会社という法人の法律上の住所です。自然人の住所とは異なり、会社については本店所在地が住所になります。

会社法5条|会社の商行為

会社法5条は、「会社(外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。」と定めています。

会社法5条のポイントは、会社の行為について、事業としてする行為だけでなく、事業のためにする行為も商行為として扱う点です。会社の取引では、商品やサービスの販売そのものだけでなく、資金調達、仕入れ、賃貸借、業務委託、広告、設備投資など、事業を支える取引も問題になります。

会社法4条|会社の住所は本店所在地にある

会社法4条により、会社の住所は本店所在地にあります。本店所在地は、会社の法的な所在を示す基準であり、契約書上の当事者表示、登記事項、通知先、訴訟や手続の検討で出発点になります。

実務上は、「本店所在地」「本店」「本社」「事務所」「営業所」という言葉が混在します。会社法4条で住所とされるのは本店所在地です。これに対し、「本社」はビジネス上の呼び方として使われることが多く、登記上の本店と常に一致するとは限りません。実際の管理部門がある場所、郵便物を受け取る場所、代表者が常駐する場所が、登記上の本店と異なることもあります。

定款上の本店所在地と登記上の本店を分けて確認する

本店所在地を確認するときは、定款と登記を分けて見る必要があります。株式会社の設立時には、定款で本店所在地を定めます。会社法27条は、定款の記載事項の一つとして本店所在地を位置づけています。

もっとも、定款では「東京都千代田区」など最小行政区画までを定め、登記では具体的な番地・建物名まで記載する運用がされることがあります。したがって、実務では、定款に書かれた本店所在地と、登記事項証明書に記載された具体的な本店所在地を照合することが重要です。

定款の記載事項は会社法27条の定款の記載事項で、設立登記における本店の登記事項は会社法911条の株式会社の設立の登記で確認できます。本店所在地をどう決めるかという設立実務は、本店所在地の決め方も参考になります。

本店移転では定款変更・登記・契約上の通知を確認する

本店を移転する場合、単にオフィスを移すだけでは足りないことがあります。定款で定めた本店所在地の範囲を超えて移転する場合は、定款変更が必要になることがあります。また、登記上の本店が変わる場合は、変更登記の要否と期限を確認する必要があります。

本店移転後も、契約書、請求書、Webサイト、許認可、金融機関届出、取引先マスター、電子契約サービス上の登録情報などが古い住所のままになっていることがあります。会社法4条の住所は本店所在地ですが、実務では、登記だけでなく、契約上の通知先や実際の郵便物受領体制も合わせて整える必要があります。

変更登記の基本は会社法915条の変更の登記で、本店移転登記の個別論点は会社法916条・917条の本店移転等の登記で確認できます。

契約書・内容証明・訴訟では住所情報を丁寧に扱う

契約書で会社を表示するときは、商号、住所、本店所在地、代表者名を組み合わせて記載するのが一般的です。このとき、登記事項証明書上の本店所在地を基準に確認すると、当事者特定の誤りを避けやすくなります。

ただし、契約書の通知条項で「通知先」を別に定めている場合は、本店所在地と通知先が一致しないことがあります。たとえば、登記上の本店は地方にあり、契約実務上の連絡先は東京オフィスや法務部所在地になっている場合です。この場合、通知の有効性は、会社法4条だけではなく、契約条項、取引経緯、通知方法、到達の有無を含めて検討します。

実務ポイント

登記上の本店所在地は会社の法的住所の基準ですが、契約上の通知先が別に定められている場合は、その通知条項も必ず確認します。

会社法5条|会社の事業行為は商行為になる

会社法5条は、会社がその事業としてする行為と、その事業のためにする行為を商行為と定めています。商行為に当たるかどうかは、商法上の特則や商事取引のルールを検討する入口になります。商法の条文は、e-Gov法令検索の商法で確認できます。

会社法5条を読むときは、「事業としてする行為」と「事業のためにする行為」を分けて考えると整理しやすくなります。

事業としてする行為

事業としてする行為とは、会社が本来の事業活動として行う行為です。メーカーが製品を販売する、IT企業がシステム開発業務を受託する、小売業者が商品を販売する、広告会社が広告制作を請け負う、といった行為が典型です。

このような本来事業の取引では、会社は取引の主体として反復継続的に事業活動を行います。そのため、会社法5条により商行為として扱われ、商法上のルールや商事取引の考え方が問題になることがあります。

事業のためにする行為

事業のためにする行為とは、本来事業そのものではなくても、会社の事業を行うために必要・関連する行為です。たとえば、事務所の賃借、設備購入、原材料の仕入れ、業務委託、広告宣伝、運転資金の借入れ、物流委託、クラウドサービスの利用契約などが考えられます。

会社の取引実務では、この「事業のためにする行為」が重要です。売上を生む契約だけでなく、事業を支える契約や資金調達も、会社の事業のために行われる限り、商行為として扱われる可能性があります。

注意

会社が当事者であるからといって、検討を省略してよいわけではありません。商行為性が問題になる場面では、取引の目的、事業との関連性、個別の商法・民法の規定を確認します。

商行為になることの実務上の意味

商行為に当たると、商法や商事取引に関する特則が問題になります。たとえば、商行為によって生じた債務の多数当事者関係、商事保証、商人の報酬請求、商人間の金銭消費貸借、商事売買など、個別の規定ごとに効果を確認する必要があります。

特に契約書レビューでは、「これは会社の事業に関する取引か」「保証が商事保証として扱われるか」「商法の売買・代理・委任・寄託などの特則が関係するか」を確認することがあります。会社法5条は、その検討の出発点になります。

一方で、古い解説で見かける商事消滅時効や商事法定利率の説明は、現在の民法・商法改正後のルールと整合しているか確認が必要です。会社法5条を根拠に「商行為だから当然に旧商法の利率や時効が適用される」と単純に処理しないよう注意しましょう。

会社の住所と商行為を契約実務でどう使うか

会社法4条・5条は、契約実務でセットで問題になることがあります。契約書では、会社を当事者として正確に特定し、その会社が事業として行う取引について、どのような契約上・法律上の効果が生じるかを整理する必要があります。

  • 当事者表示:商号、本店所在地、代表者名を登記事項証明書と照合し、別会社・旧商号・旧住所との取り違えを防ぎます。
  • 通知条項:本店所在地と通知先が異なる場合、どこに送れば有効な通知になるかを契約上明確にします。
  • 本店移転:移転後は登記だけでなく、取引先への通知、契約台帳、請求書、許認可、社内システムを更新します。
  • 取引の性質:会社の事業として、または事業のために行う取引かを確認し、商法上の特則の有無を検討します。
  • 保証・債務関係:会社取引に保証人や複数債務者が関係する場合、商事保証や連帯関係の規律を確認します。

契約書の住所欄は単なる形式欄ではありません。会社を特定し、通知の到達先を定め、紛争時の初動対応にも影響します。また、会社の取引が商行為に当たるかどうかは、契約上のリスク分担や法的効果の検討に関わります。

外国会社との関係

会社法5条は、会社に外国会社を含む旨を明記しています。外国会社が日本で取引を行う場合にも、会社法・商法・登記・契約実務が交差する場面があります。

ただし、外国会社については、日本における代表者、外国会社の登記、準拠法、裁判管轄、送達、支店・営業所の表示など、別の論点も関係します。会社法5条の商行為性だけで完結する問題ではないため、外国会社との契約では、当事者表示と権限確認をより丁寧に行う必要があります。

特に、外国会社の日本支店、海外本社、日本法人子会社、代理店が混在する取引では、「契約当事者が誰か」「どの住所に通知するか」「誰に代表権があるか」を分けて確認します。会社法4条・5条は、日本の会社法上の基礎を理解する入口として押さえるとよいでしょう。

会社法4条・5条でよくある誤解

会社法4条・5条は短い条文ですが、実務では誤解が起きやすい部分があります。次の点は、特に確認しておきたいポイントです。

  • 本社と本店は常に同じとは限らない:ビジネス上の本社所在地と、登記上の本店所在地が違うことがあります。
  • 本店所在地と通知先は常に同じとは限らない:契約で別の通知先を定めている場合があります。
  • 定款の本店所在地と登記上の本店は粒度が違うことがある:定款は市区町村まで、登記は具体的住所までという形で分かれることがあります。
  • 会社の全行為を無条件に商行為と断定しない:事業としてする行為または事業のためにする行為かを確認します。
  • 古い商法解説をそのまま使わない:時効・利率などは改正後の現行法を確認します。

これらの誤解は、契約書の当事者表示、請求書送付、債権回収、本店移転、保証契約、商取引トラブルで問題になります。形式的な住所欄や条文名だけで判断せず、実際の資料と契約条項に当てはめて確認することが大切です。

実務チェックリスト

会社法4条・5条を実務で使うときは、次の順に確認すると、見落としを減らしやすくなります。

  • 登記事項証明書:商号、本店所在地、代表者、支店の有無、変更履歴を確認します。
  • 定款:本店所在地の定め、定款変更の要否、公告方法などを確認します。
  • 契約書:当事者表示、通知条項、準拠法、裁判管轄、住所変更時の通知義務を確認します。
  • 取引の目的:会社の事業としてする行為か、事業のためにする行為かを確認します。
  • 商法上の特則:保証、複数債務者、売買、代理、報酬、利息など、個別規定の適用可能性を確認します。
  • 更新作業:本店移転後は、登記、契約台帳、請求書、許認可、Web表示、取引先登録情報を更新します。

特に、M&A、事業譲渡、グループ再編、本店移転、海外会社との取引では、古い住所や旧商号、別法人名義の契約が残っていることがあります。会社の住所と取引主体を正確に確認することが、後日の紛争予防につながります。

よくある質問

本店所在地と本社所在地は同じですか

同じ場合もありますが、常に同じとは限りません。会社法4条上の住所は本店所在地です。一方で、本社所在地は実務上の呼び方として使われることがあり、管理部門や営業拠点の所在地を指すこともあります。法的な確認では、登記事項証明書上の本店所在地を確認します。

契約書には登記上の本店所在地を書けば十分ですか

当事者表示としては、登記上の本店所在地を基準にするのが基本です。ただし、通知先を別に定めたい場合は、通知条項で具体的に記載する必要があります。たとえば、法務部宛、東京オフィス宛、電子メール宛などを定める場合は、到達ルールも合わせて整理します。

会社の借入れは商行為になりますか

事業資金の借入れなど、会社の事業のために行う借入れは、会社法5条の「事業のためにする行為」として商行為に当たる可能性があります。その場合、保証や複数債務者の関係などで商法上の規定を確認する必要があります。

会社が当事者なら、すべて商行為として処理してよいですか

会社法5条は、会社が事業としてする行為と、事業のためにする行為を商行為としています。したがって、事業との関係を確認せずに、会社が当事者であるというだけで全てを機械的に処理するのは避けるべきです。もっとも、多くの会社取引では事業との関係が認められるため、商法上の特則を確認する入口として会社法5条を意識することが重要です。

本店移転後、取引先への通知をしないとどうなりますか

本店移転登記をしていても、契約上、住所変更時の通知義務が定められている場合があります。通知を怠ると、旧住所への通知の有効性、請求書や重要書類の未達、期限徒過などが問題になることがあります。本店移転時は、登記だけでなく契約上の通知・社内外の登録情報更新をセットで行うことが重要です。

まとめ

会社法4条・5条は、会社法総則の中でも実務の土台になる条文です。会社の住所と会社の商行為性を押さえることで、契約書、登記、通知、商取引の検討を進めやすくなります。

  • 会社法4条は、会社の住所を本店所在地にあるものと定めています。
  • 本店所在地は、定款・登記・契約書・通知先の確認で重要です。
  • 本社・営業所・通知先は、登記上の本店所在地と一致しないことがあります。
  • 会社法5条は、会社の事業行為・事業のための行為を商行為とします。
  • 商行為に当たるかは、商法上の特則や契約実務を確認する入口になります。

会社法4条・5条を確認するときは、条文の文言だけで終わらせず、登記事項証明書、定款、契約書、通知条項、取引の目的を合わせて確認しましょう。住所の誤りや取引主体の取り違えは、後日の請求・通知・紛争対応で大きな支障になることがあります。

坂尾陽弁護士

本店所在地と商行為性は、契約実務の前提です。迷ったら登記・定款・契約条項を順に確認しましょう。

関連記事

会社法4条・5条から関連する総則・登記・設立の論点を確認する場合は、次の記事も参考になります。