M&Aアドバイザリー契約・FA契約は、M&Aの相手方探し、条件交渉、資料作成、デューデリジェンスの調整、最終契約までの進行支援を専門家に依頼するための契約です。名称は「アドバイザリー契約」「FA契約」「エンゲージメントレター」「業務委託契約」などさまざまですが、実務上は、報酬、業務範囲、契約期間、解除、テール条項、責任限定などを定める重要な契約条件として機能します。
もっとも、契約締結時には「M&Aを支援してもらう」という大枠だけが意識され、実際にどこまでの業務をしてもらえるのか、成功報酬がいつ発生するのか、途中で解除できるのか、説明不足があった場合に責任追及できるのかまでは十分に確認されないことがあります。その結果、成約後又は交渉中に、報酬請求、業務範囲、責任限定、利益相反、説明不足をめぐってトラブルになることがあります。
この記事では、M&Aアドバイザリー契約・FA契約の基本、M&A仲介契約との違い、エンゲージメントレターの意味、報酬体系の読み方を整理したうえで、契約前・契約中に確認すべき条項を解説します。M&A仲介会社やFAとの紛争全体については、M&A仲介・FAトラブルの典型パターンと対処法も参考になります。
- M&Aアドバイザリー契約・FA契約では、報酬額だけでなく業務範囲と責任範囲を確認することが重要です。
- FA契約は売り手又は買い手の一方に付く契約であり、売り手・買い手双方と関係する仲介契約とは立場が異なります。
- エンゲージメントレターという名称でも、報酬、解除、テール条項、責任限定を定める契約条件として慎重に読む必要があります。
- 成功報酬やレーマン方式は、基準額と発生時期の定め方によって請求額が大きく変わります。
- 契約後の損害賠償請求を考える前に、まず契約書、説明資料、請求書、メール、議事録を整理することが大切です。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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M&Aアドバイザリー契約・FA契約とは
M&Aアドバイザリー契約とは、会社や事業の譲渡・買収を進めるにあたり、専門家にM&Aの支援を依頼する契約をいいます。売り手側であれば譲渡先候補の探索、企業価値の整理、条件交渉、最終契約までの支援が中心になり、買い手側であれば対象会社の検討、条件提示、デューデリジェンスの調整、契約交渉の支援が中心になります。
ただし、「アドバイザリー契約」という言葉自体は広く、経営顧問、資金調達、事業再生、システム導入などM&A以外の支援にも使われます。本記事で扱うのは、M&Aの場面でFA、M&Aアドバイザー、M&A仲介会社などに業務を依頼する契約です。一般的な経営アドバイザリー契約ではなく、M&Aの進行と契約条項に関する注意点に絞って整理します。
M&Aアドバイザリー契約の基本的な意味
M&Aアドバイザリー契約の中心は、M&Aのプロセスについて専門家から支援を受けることです。典型的には、候補先の選定、ノンネームシートや企業概要書の作成、譲渡価格や条件の整理、基本合意書・最終契約書の交渉支援、デューデリジェンスの段取り、クロージングまでの進行管理などが問題になります。
しかし、契約書に「M&Aに関する助言を行う」とだけ書かれている場合、読者が期待する業務と実際の契約上の業務が一致しないことがあります。たとえば、依頼者は「買い手候補の調査までしてくれる」と考えていたのに、契約上は候補先の紹介や資料共有にとどまる場合があります。また、デューデリジェンスについても、FA自身が調査を実施するのか、外部専門家の調整や立会いにとどまるのかで責任範囲は大きく変わります。
契約書に「M&A支援」「アドバイザリー業務」と書かれているだけでは不十分です。候補先探索、資料作成、価格算定、交渉支援、デューデリジェンス対応、契約書レビューのどこまでが含まれるのかを分けて確認する必要があります。
FA契約とは|売り手側・買い手側のどちらに付くか
FA契約とは、フィナンシャル・アドバイザーが、売り手側又は買い手側の一方と契約し、その依頼者の立場からM&Aを支援する契約です。FAは、依頼者にとって有利な条件でM&Aを進めることが期待されるため、売り手側FAであれば譲渡価格や譲渡条件の最大化、買い手側FAであれば買収価格、リスク確認、契約条件の調整が重要になります。
もっとも、FA契約であっても、成功報酬を受け取る仕組みになっている場合には、案件を成立させる方向にインセンティブが働きます。そのため、「FAだから常に依頼者だけの利益を考えてくれる」と単純に理解するのではなく、報酬体系、業務範囲、利益相反の有無、責任限定条項をあわせて確認する必要があります。
中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)でも、FAは譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいて支援を行う者として整理されています。契約締結前には、FAがどちらの立場で、どの範囲の業務を行い、どのような報酬を受け取るのかを確認することが重要です。
M&A仲介契約との違い
M&Aアドバイザリー契約・FA契約を読むときは、M&A仲介契約との違いを押さえる必要があります。一般に、仲介は売り手・買い手双方の間に立って成約を支援する立場であり、FAは売り手又は買い手の一方に付いて支援する立場です。
両者の違いは、契約書の名称だけで判断できるものではありません。実際には「アドバイザリー契約」という名称であっても、売り手・買い手双方から報酬を受け取る構造になっている場合や、相手方とも別契約を締結している場合があります。逆に、M&A仲介会社が形式上は片側の支援をしているように見えても、実質的には双方の間で成約支援をしているケースもあります。
そのため、契約書を読む際には、名称よりも次の点を確認します。
- 誰と契約しているか:売り手側だけか、買い手側だけか、双方と契約しているかを確認します。
- 誰から報酬を受け取るか:依頼者だけから報酬を受けるのか、相手方からも手数料を受けるのかを確認します。
- どの利益を優先する設計か:依頼者に有利な条件を目指すのか、双方の成約を目指すのかを確認します。
- 利益相反の説明があるか:相手方手数料、グループ会社、投資ファンド、他案件との関係などが説明されているかを確認します。
FA契約であっても、相手方との関係、報酬構造、案件紹介の経緯によっては利益相反が問題になることがあります。この点は後半で契約条項とトラブル類型を整理する際に改めて確認します。
M&Aアドバイザリー契約が必要になる場面
M&Aアドバイザリー契約は、M&Aの相手方を探す段階から、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングまでの各段階で使われます。特に、中小企業のM&Aでは、経営者自身がM&Aの経験を十分に持っていないことが多く、候補先の探索、価格感、交渉の進め方、必要資料の準備について専門家の支援が必要になります。
一方で、FAやアドバイザーに依頼すれば、すべてのリスクがなくなるわけではありません。たとえば、対象会社の財務・法務・労務・税務リスクをどこまで調査するかは、契約上の業務範囲やデューデリジェンスの設計によって変わります。契約書レビューや法的リスクの判断は、弁護士など別の専門家が担うべき場面もあります。
したがって、M&Aアドバイザリー契約を締結する場面では、「誰に任せるか」だけでなく、「何を任せるか」「何は任せていないか」「どの専門家を別途使うべきか」を契約書上で明確にしておくことが重要です。
エンゲージメントレターとは|契約書として確認すべき理由
エンゲージメントレターとは、FAやM&Aアドバイザーに業務を依頼する際に、業務範囲、報酬、契約期間、秘密保持、解除、責任限定などを記載する文書をいいます。名称としては「依頼書」「業務委託契約書」「アドバイザリー契約書」と異なることもありますが、実質的に契約条件を定める文書であれば、署名前に契約書として読む必要があります。
エンゲージメントレターは、短い文書であることも少なくありません。そのため、単なる手続書類のように扱われることがあります。しかし、後から報酬請求、解除、専任義務、テール条項、責任限定が問題になったとき、最初に確認されるのはこの文書です。内容を十分に読まずに署名すると、想定外の報酬負担や契約上の制限を受けるおそれがあります。
エンゲージメントレターの役割
エンゲージメントレターの役割は、FAやアドバイザーがどのような業務を行い、依頼者がどのような報酬を支払い、どの期間その関係が続くのかを明確にすることです。M&Aでは、交渉開始から成約まで数か月以上かかることも多く、途中で候補先、スキーム、価格、契約条件が変わることがあります。そのため、契約関係を曖昧にしたまま進めると、成約直前又は成約後に認識のズレが表面化します。
特に確認すべきなのは、業務範囲と報酬の対応関係です。たとえば、候補先を紹介するだけの支援と、条件交渉、資料作成、デューデリジェンス対応、最終契約まで一貫して支援する場合とでは、期待される業務量も報酬の妥当性も異なります。報酬が高いかどうかは金額だけで判断するのではなく、提供される業務内容とあわせて検討する必要があります。
契約書・業務委託契約との関係
エンゲージメントレターという名称であっても、当事者、業務内容、報酬、契約期間、解除、責任範囲が記載され、署名又は押印がされていれば、実質的には契約書として機能します。したがって、「契約書というタイトルではないから拘束力が弱い」と安易に考えるべきではありません。
また、エンゲージメントレターとは別に、秘密保持契約、業務委託契約、アドバイザリー契約書、成功報酬に関する覚書などが作成されることもあります。この場合、複数の文書間で、報酬の発生時期、契約期間、解除、テール条項、責任限定の内容が食い違っていないかを確認する必要があります。文書ごとの用語が違うだけで、実質的には同じ報酬や同じ義務を定めていることもあります。
エンゲージメントレターを「簡単な依頼書」と考えて署名すると、後から成功報酬、最低報酬、テール条項、直接交渉禁止、責任限定を理由に不利な立場になることがあります。署名前に、契約書と同じ前提で確認することが重要です。
サイン前に確認すべき基本項目
エンゲージメントレターに署名する前には、少なくとも次の項目を確認します。すべてを詳細に交渉できるとは限りませんが、どの条項が自社にとってリスクになるかを把握したうえで署名することが重要です。
- 業務範囲:候補先探索、資料作成、価格算定、交渉支援、デューデリジェンス対応、契約書調整のどこまで含まれるかを確認します。
- 報酬:着手金、月額報酬、中間金、成功報酬、最低報酬、実費、消費税、支払時期を確認します。
- 契約期間・解除:契約期間、更新、中途解除の可否、解除時の費用負担を確認します。
- 専任条項・直接交渉禁止:他の専門家を使えるか、候補先と直接連絡できるか、制限の期間と範囲を確認します。
- テール条項:契約終了後に成約した場合でも報酬が発生する候補先、期間、条件を確認します。
- 責任限定:FAやアドバイザーが責任を負わない範囲、故意・重過失の例外、損害賠償額の上限を確認します。
このうち、報酬、専任、直接交渉禁止、テール条項、責任限定は、トラブルになった後では修正が難しい条項です。契約締結前に違和感がある場合は、署名を急がず、契約書全体のバランスを確認することが重要です。
M&Aアドバイザリー契約の報酬体系
M&Aアドバイザリー契約・FA契約で最もトラブルになりやすい項目の一つが報酬です。報酬は、着手金、月額報酬、中間金、成功報酬、最低報酬、テール条項、実費などの組み合わせで定められることがあります。契約書上の表現が似ていても、発生時期や算定基準が違えば、最終的な負担額は大きく変わります。
報酬条項を見るときは、「いくらか」だけでなく、「いつ発生するか」「何を基準に計算するか」「成約しなかった場合に支払うのか」「契約終了後も発生するのか」を分けて確認します。
着手金・月額報酬・中間金
着手金は、契約締結時又は業務開始時に支払う報酬です。M&Aが成約しなくても返還されない設計になっていることが多いため、契約前に返還の有無、業務開始の範囲、着手金に含まれる業務を確認する必要があります。
月額報酬は、一定期間ごとに発生する報酬です。長期化する案件では、成約しなくても支払総額が大きくなることがあります。候補先の探索や交渉が進んでいない場合でも月額報酬が発生するのか、一定期間後に見直しできるのかを確認します。
中間金は、基本合意の締結、意向表明書の提出、独占交渉権の付与など、一定のマイルストーンに達した時点で発生する報酬です。中間金が成功報酬に充当されるのか、成約しなかった場合に返還されるのか、複数候補先との交渉で重複して発生するのかが問題になります。
成功報酬とレーマン方式
成功報酬は、M&Aが成立した場合に発生する報酬です。多くの契約では、譲渡額、移動総資産、純資産、企業価値などを基準に、一定の料率を乗じて計算します。このように、金額区分ごとに料率を定める方式は、一般にレーマン方式と呼ばれます。
レーマン方式で特に重要なのは、料率そのものよりも、報酬の基準額です。たとえば、同じ5%という料率でも、譲渡額を基準にするのか、時価純資産を基準にするのか、営業権を含む時価総資産を基準にするのかで、報酬額は大きく変わります。契約書上の「取引金額」「譲渡価額」「総資産価額」「移動総資産」「企業価値」といった言葉は、似ていても意味が異なります。
報酬算定をめぐる裁判例として、東京地裁令和2年9月23日判決があります。この事案では、M&A仲介契約の報酬について、契約書の条項は時価総資産価額を基準とするように読める一方で、契約締結後の交渉経緯、取締役会での説明、請求書の記載などから、時価総資産レーマン方式とする合意は認められないと判断されました。
この裁判例は、報酬条項では契約書の文言だけでなく、実際の説明資料、請求書、メール、社内決裁資料との整合性が重要になることを示しています。契約前の段階では、報酬率だけでなく、基準額、計算式、具体例を契約書又は説明資料に明確に残しておくことが重要です。
最低報酬・テール条項との関係
最低報酬とは、成功報酬の計算結果が一定額を下回る場合でも、最低限支払うべき報酬額を定める条項です。中小企業のM&Aでは、譲渡額が比較的小さい場合でも、最低報酬によって数百万円から数千万円の負担が生じることがあります。
最低報酬は、それ自体が直ちに不当というわけではありません。しかし、提供される業務内容、案件規模、候補先探索の難易度、担当者の関与度合いと比べて過大ではないかを確認する必要があります。特に、着手金や月額報酬に加えて最低報酬が設定されている場合、成約時の総負担額を事前に試算しておくべきです。
また、テール条項との関係にも注意が必要です。テール条項とは、契約終了後であっても、一定期間内に特定の候補先とのM&Aが成立した場合に報酬が発生する条項です。契約終了後に別の専門家を使って成約した場合でも、旧FAから成功報酬を請求される可能性があります。
テール条項を確認するときは、対象候補先がどこまで含まれるのか、期間は何年か、どの程度の関与があれば報酬発生の対象になるのかを確認します。単に情報を受け取っただけの候補先まで対象にする条項や、期間が長すぎる条項は、後の紛争につながりやすい部分です。
報酬条件でトラブルになりやすいポイント
報酬条件でトラブルになりやすいのは、報酬の種類が複数ある場合、報酬発生のタイミングが曖昧な場合、基準額の意味が不明確な場合、契約終了後の報酬発生範囲が広い場合です。特に、基本合意、最終契約、クロージングのどの時点で成功報酬が発生するのかは、必ず確認すべきです。
また、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、第三者割当増資など、スキームが変わった場合に報酬計算がどうなるかも重要です。契約時点では株式譲渡を想定していたが、交渉の途中で事業譲渡に変わった場合、報酬の基準額や発生条件が契約書の想定と合わなくなることがあります。
- 報酬発生時期:基本合意時、最終契約時、クロージング時のどこで発生するかを確認します。
- 報酬基準額:譲渡額、純資産、移動総資産、企業価値、営業権を含むかを確認します。
- 最低報酬:案件規模に比べて過大な最低報酬になっていないかを確認します。
- 中途終了時の費用:成約しない場合でも、着手金、月額報酬、実費、中間金が残るのかを確認します。
- 契約終了後の報酬:テール期間、対象候補先、報酬発生条件を確認します。
報酬額の相場、成功報酬の発生条件、返還請求、手数料減額交渉については、M&A仲介手数料・成功報酬のトラブルで詳しく整理しています。本記事では、報酬条項をM&Aアドバイザリー契約・FA契約の一部として読み、後の条項チェックへつなげます。
報酬条項を確認したら、次に見るべきなのは、FAやアドバイザーが実際にどこまでの業務を行うのかという業務範囲です。報酬が高いか低いかは、提供される業務の範囲と責任の内容を見なければ判断できません。
業務範囲・権限・成果物の条項で確認すべきこと
報酬条項を確認したら、次に重要になるのが、FAやアドバイザーが実際にどこまでの業務を行うのかという業務範囲です。M&Aアドバイザリー契約では、「M&Aに関する助言」「企業提携の支援」「必要なサービスの提供」など、広い表現で業務内容が書かれていることがあります。しかし、その表現だけでは、候補先探索、交渉窓口、資料作成、デューデリジェンス対応、価格算定、契約書レビューのどこまでが含まれるのかは分かりません。
後からトラブルになるのは、依頼者側が「当然そこまでやってもらえる」と考えていた業務が、契約書上は明確に含まれていなかった場合です。業務範囲は、報酬額の妥当性や責任範囲とも直結するため、抽象的な業務名ではなく、具体的な作業単位で確認する必要があります。
助言だけか、交渉窓口まで担うのか
まず確認すべきなのは、FAやアドバイザーの役割が「助言」にとどまるのか、相手方との交渉窓口まで担うのかです。助言型であれば、依頼者が自ら候補先と交渉し、FAは条件整理や進め方についてコメントするにとどまることがあります。一方、交渉窓口型であれば、候補先との日程調整、条件提示、質問対応、相手方アドバイザーとの連絡などをFAが前面に立って行うことがあります。
この違いが曖昧なままだと、交渉が停滞したときに、「FAが積極的に動かなかった」と見るのか、「契約上は助言にとどまる業務だった」と見るのかで認識が分かれます。契約書では、少なくとも次のような項目を分けて確認します。
- 候補先への初回打診を誰が行うか
- 条件交渉の窓口を誰が担うか
- 相手方からの質問に誰が回答するか
- 面談・トップ面談の調整を誰が行うか
- 交渉方針の最終決定権がどちらにあるか
FAは依頼者側の利益を踏まえた助言を期待される立場ですが、すべての交渉判断を代わりに行うわけではありません。特に、価格、表明保証、補償条項、役員・従業員の処遇、経営者保証の扱いなど、重要条件については、FAの助言を参考にしながらも、依頼者側で最終判断を行う前提を確認しておく必要があります。
デューデリジェンスやバリュエーションをどこまで行うのか
業務範囲で誤解が生じやすいのが、デューデリジェンスとバリュエーションです。契約書に「デューデリジェンス支援」「企業価値判断の参考資料作成」「バリュエーション支援」と書かれていても、それがFA自身による調査・評価を意味するのか、外部専門家の手配や資料共有の調整にとどまるのかは契約ごとに異なります。
買い手側であれば、対象会社の財務、税務、法務、労務、許認可、契約、偶発債務などをどこまで確認するかが問題になります。売り手側であれば、提示された企業価値や譲渡条件が妥当か、買い手の資金力や履行可能性をどこまで確認するかが問題になります。FAがすべてのリスクを発見し、保証してくれると考えるのは危険です。
バリュエーションについても、正式な株式価値算定書なのか、交渉上の参考レンジなのか、候補先への説明資料なのかを分けて確認します。参考資料であるにもかかわらず、依頼者側が「専門家による保証された評価額」と受け止めてしまうと、後に成約価格への不満が生じたときに認識のズレが表面化します。
契約書に「DD支援」「価値算定支援」と書かれている場合は、FAが自ら調査・評価を行うのか、外部専門家の起用や資料提出を調整するだけなのかを確認します。言葉の印象ではなく、具体的な作業範囲で読むことが重要です。
資料作成・候補先選定・条件交渉の範囲
M&Aでは、ノンネームシート、企業概要書、インフォメーション・メモランダム、意向表明書、基本合意書、最終契約書、クロージング資料など、多くの資料が作成されます。FAがどの資料を作成し、どの資料をレビューし、どの資料は弁護士・公認会計士・税理士など他の専門家が担当するのかを切り分けておく必要があります。
候補先選定についても、FAが独自ネットワークから候補先を探索するのか、依頼者側が指定した候補先に連絡するだけなのか、候補先の信用力・資金力・買収後方針まで確認するのかで、期待できる支援内容は異なります。候補先の選び方や情報の出し方に偏りがあると、利益相反や情報偏在の問題に発展することがあります。候補先の選定や情報開示に違和感がある場合は、M&A仲介の利益相反・情報偏在によるトラブルも確認しておくとよいでしょう。
条件交渉では、価格だけでなく、表明保証、補償、クロージング前提条件、競業避止、従業員の処遇、役員退任、経営者保証、引継ぎ期間などが問題になります。FAがこれらの条件の経済的影響を整理するのか、法的な条項レビューは弁護士が行うのかを分けておくことで、専門家間の役割分担が明確になります。
成果物・報告頻度を契約書に落とし込む
業務範囲を実効的にするには、成果物と報告頻度も確認する必要があります。たとえば、候補先リスト、進捗報告、面談メモ、条件比較表、バリュエーション資料、DD質問リスト、論点管理表など、どのような形で情報が共有されるのかを契約書又は別紙に書いておくと、後の認識違いを減らせます。
報告頻度も重要です。月1回の定例報告なのか、候補先から反応があった都度報告するのか、重要条件に関する交渉は事前承認を要するのかを定めておくことで、「知らないうちに交渉が進んでいた」「重要な条件変更が共有されていなかった」というトラブルを防ぎやすくなります。
業務範囲の条項は、細かく書けば書くほどよいというものではありません。しかし、少なくとも、FAに期待する中核業務、依頼者側で行う判断、他専門家が担当する領域、成果物、報告方法は明確にしておくべきです。
専任条項・直接交渉禁止・解除・テール条項の注意点
M&Aアドバイザリー契約・FA契約では、依頼者の自由度を制限する条項にも注意が必要です。代表的なものが、専任条項、直接交渉禁止条項、契約期間・解除条項、テール条項です。これらは、FAの業務機会や報酬を保護するために置かれることがありますが、範囲が広すぎると、依頼者側が他の専門家へ相談したり、契約を見直したりすることが難しくなります。
専任条項で他の専門家を使えなくなるリスク
専任条項とは、契約期間中、依頼者が同じ案件について他のM&A仲介会社、FA、アドバイザーなどを起用しないことを定める条項です。FA側から見ると、候補先探索や交渉支援に労力を投じる以上、同時に他社へ依頼されると業務機会や報酬機会が不安定になるため、一定の合理性があります。
ただし、専任条項が広すぎると、依頼者側はセカンドオピニオンを取りにくくなります。特に、報酬条件、候補先の選定、価格レンジ、利益相反、契約条項に違和感がある場合でも、他の専門家へ相談できないように読める条項は慎重に見直すべきです。
専任条項を見るときは、禁止される相手方がM&A仲介会社・FAに限られるのか、弁護士、公認会計士、税理士、金融機関への相談まで制限するのかを確認します。契約条項のレビューや紛争予防のために弁護士へ相談することまで制限する条項は、依頼者にとって過度に不利になり得ます。
直接交渉禁止条項の範囲と期間
直接交渉禁止条項とは、FAを通じて紹介された候補先と、依頼者がFAを介さずに直接交渉することを制限する条項です。FAの紹介を受けた後に、FAを外して成約し、報酬支払いを回避する行為を防ぐという意味では、一定の合理性があります。
しかし、直接交渉禁止条項も、対象候補先、禁止される行為、禁止期間が広すぎると問題になります。たとえば、単に名前を聞いただけの候補先、過去から取引関係があった候補先、依頼者が独自に接触していた候補先まで一律に対象とする条項は、後の紛争につながりやすい部分です。
また、直接交渉が全面的に禁止されるのか、事前にFAへ通知すれば直接面談や事実確認ができるのかも確認します。M&Aでは、経営者同士の相性、従業員の処遇、事業方針など、当事者間で直接確認した方がよい事項もあります。直接交渉禁止条項は、FAの報酬保護と、当事者間の円滑な意思疎通のバランスを見て修正する必要があります。
中途解約できるか
契約期間と解除条項も重要です。FAの対応に不満がある場合、候補先探索が進まない場合、方針が合わない場合、利益相反が疑われる場合でも、中途解約が難しい契約になっていると、依頼者側は不利な契約関係に拘束され続けることがあります。
解除条項では、任意解除ができるか、何日前の通知が必要か、解除時に未払報酬や実費が発生するか、解除後も秘密保持義務や資料返還義務が残るかを確認します。重大な義務違反がある場合の即時解除、反社会的勢力排除条項違反、情報漏えい、利益相反の不開示など、解除原因が具体的に書かれているかも重要です。
解除を検討する段階では、感情的に通知を出す前に、契約書、エンゲージメントレター、報酬請求書、進捗報告、メール、議事録を整理しておくべきです。解除通知の内容やタイミングを誤ると、逆に違約金、成功報酬、テール条項を理由に請求を受けることがあります。
契約終了後のテール条項
テール条項は、契約終了後の一定期間内に、特定の候補先とのM&Aが成立した場合に、旧FAへ成功報酬を支払う旨の条項です。報酬条項の一部として説明されることもありますが、実務上は、解除や契約終了後の自由度を大きく左右する条項です。
テール条項では、対象候補先を「FAが具体的に紹介し、一定の交渉実績がある候補先」に限定できているかを確認します。単にリストに載っていた候補先、資料を送っただけの候補先、依頼者が従前から知っていた候補先まで含まれると、契約終了後に別ルートで進んだ案件まで報酬請求の対象にされる可能性があります。
期間も重要です。契約終了後の短期間であれば合理性がある場合もありますが、長期間にわたって広く拘束されると、依頼者側の事業承継や資本政策に支障が生じます。テール条項は、対象候補先、対象取引、期間、報酬額、重複報酬の処理を具体的に確認する必要があります。
専任条項、直接交渉禁止条項、テール条項は、契約終了後にも影響することがあります。解除を考える場合は、候補先との連絡を進める前に、どの候補先が制限対象になるかを確認しておくことが重要です。
責任限定・免責・善管注意義務のチェックポイント
M&Aアドバイザリー契約・FA契約では、責任限定条項や免責条項が置かれることが少なくありません。たとえば、M&Aの成立を保証しない、提供資料の正確性を保証しない、依頼者が自己責任で最終判断を行う、故意又は重過失がない限り責任を負わない、損害賠償額を受領報酬額に限定する、といった条項です。
これらの条項があるからといって、常にFAやアドバイザーへの責任追及ができなくなるわけではありません。他方で、責任限定条項を軽視して契約すると、説明不足や誤情報提供があったと感じた場合でも、請求の見通しが厳しくなることがあります。契約前の段階で、どの責任が限定され、どの責任が残るのかを確認することが重要です。
FAが責任を負わないとする条項の読み方
責任限定条項を見るときは、まず、何について責任を負わないとされているのかを分解します。M&Aが成立しなかったことについて責任を負わないのか、相手方が表明保証に違反したことについて責任を負わないのか、提供資料の正確性について責任を負わないのか、将来計画や業績予測について責任を負わないのかで意味が異なります。
FAやアドバイザーは、相手方や対象会社が作成した資料のすべてを保証する立場ではないことが多いです。そのため、契約書に「資料の真実性、正確性、完全性を保証しない」と書かれることがあります。ただし、FAが重要な矛盾やリスクを具体的に認識していた場合にまで、何も説明しなくてよいという意味になるとは限りません。
責任限定条項は、免責される対象と、なお責任が残り得る場面を分けて読む必要があります。特に、説明資料、Q&A、メール、議事録、面談記録などに重要なやり取りが残っている場合は、契約書の免責条項だけで結論を決めないことが大切です。
故意・重過失がある場合の扱い
多くの責任限定条項では、FAやアドバイザーに故意又は重過失がない限り責任を負わない、又は故意・重過失がある場合でも賠償額を一定額に限定する、という形が見られます。ここで重要なのは、故意・重過失の例外が明記されているか、賠償額の上限がどこまで及ぶのかです。
たとえば、受領報酬額を上限とする条項がある場合、依頼者側が実際に受けた損害額が大きくても、契約上は請求額が制限される可能性があります。他方で、故意に重要情報を隠した場合や、専門家として通常求められる注意を著しく欠いた場合にまで同じ上限を適用できるかは、事案ごとの検討になります。
本文で重要なのは、「責任限定条項があれば必ず責任追及できない」とも、「故意・重過失と主張すれば必ず争える」とも単純化しないことです。契約条項、説明経緯、FAが認識していた情報、依頼者側の確認状況、損害との因果関係を合わせて検討する必要があります。
提供情報の正確性を誰が負担するか
M&Aでは、対象会社や相手方が提供する資料を基に、FA、弁護士、公認会計士、税理士などが検討を進めます。FA契約では、対象会社や相手方から提供された資料の正確性について、FAが保証しないと定められることがあります。この場合、依頼者側は、自ら又は外部専門家を通じてデューデリジェンスを行うことが前提になります。
もっとも、FAが単に資料を受け流すだけでよいとは限りません。FAが重要な不一致、明らかな矛盾、価格や契約条件に重大な影響を与え得る事情を認識していた場合には、依頼者へ適切に伝えるべきかが問題になります。したがって、契約前には、FAが提供資料をどの程度確認するのか、異常値や矛盾を発見した場合にどのように報告するのかを確認しておくべきです。
依頼者側としては、FAに任せきりにせず、重要な資料やQ&Aを自社でも確認する体制を作ることが必要です。特に、財務数値、簿外債務、主要契約、許認可、労務、税務、経営者保証、クロージング条件は、FAの説明だけでなく、必要に応じて専門家のレビューを受けるべきです。
最終判断は依頼者側とされる条項のリスク
FA契約では、「依頼者は自己の責任と判断でM&Aを実行する」「FAはM&Aの成果や将来見通しを保証しない」といった条項が置かれることがあります。これは、FAが助言者であり、最終的な投資判断・売却判断を行うのは依頼者であるという点では自然な条項です。
しかし、この条項があると、後に「FAの助言を信じて契約した」と主張するだけでは足りず、どの情報が提供され、どの説明が不足し、どの判断に影響したのかを具体的に示す必要が出てきます。最終判断条項がある契約では、意思決定の過程を記録しておくことが特に重要です。
取締役会資料、稟議資料、投資委員会資料、メール、議事録、専門家からの報告書、候補先とのやり取りを残しておくと、後に責任範囲を検討する際の重要な証拠になります。反対に、口頭説明だけで進めてしまうと、FAが何を説明し、依頼者が何を理解して判断したのかが不明確になります。
裁判例から見る資料共有・Q&Aの重要性
東京地裁令和2年9月23日判決では、M&A仲介契約に基づく報酬請求と、会計処理に関する告知義務違反を理由とする損害賠償請求が争われました。裁判所は、仲介者が株式譲渡価額の決定に重大な影響を与え得る事項を認識した場合には、依頼者に告知すべき義務を負うとしつつ、当該事案ではQ&Aシートが提供され、依頼者側が容易に会計処理の存在を認識し得る状態だったとして、善管注意義務違反を否定しました。
この裁判例から分かるのは、FAや仲介者の責任を検討する際、単に「重要な問題があったか」だけでなく、「その問題がどの資料に記載されていたか」「誰に共有されていたか」「依頼者側が確認できる状態だったか」「追加説明が必要な状況だったか」が重要になるということです。
もちろん、資料を共有していれば常に責任が否定されるわけではありません。資料の記載が分かりにくい場合、重要性が高いのに埋もれている場合、FAが依頼者の誤解を認識しながら補足しなかった場合などは、別途検討が必要です。大切なのは、契約前から、資料共有、Q&A、報告、意思決定の記録を残す運用を作っておくことです。
- 責任限定の対象:M&A不成立、資料の正確性、将来予測、相手方の契約違反など、何が免責されるのかを確認します。
- 故意・重過失の例外:故意又は重過失がある場合に責任限定が外れるのか、損害賠償額の上限が残るのかを確認します。
- 情報提供の方法:重要事項がメール、Q&A、報告書、議事録のどこで共有されたのかを確認します。
- 依頼者側の確認体制:FA任せにせず、弁護士・会計士・税理士のレビューを受ける範囲を決めます。
- 意思決定の記録:取締役会資料、稟議資料、面談メモなど、判断過程を残しておきます。
実際にFAや仲介会社への損害賠償請求、責任追及、訴訟を検討する段階では、責任限定条項の文言だけでなく、説明経緯、共有資料、依頼者側の確認状況、損害との因果関係を総合的に見る必要があります。契約後の責任追及については、M&A仲介会社・FAに損害賠償請求できるかで詳しく整理しています。
ここまでの条項を確認すると、FA・アドバイザーとのトラブルは、報酬だけでなく、業務範囲、交渉権限、解除、情報共有、責任限定が複合して起こることが分かります。契約書の読み方を踏まえて、実際にどのようなトラブルが起こりやすいのかを整理しておくと、契約前・契約中の対応を選びやすくなります。
FA・アドバイザリー契約で実際に起こりやすいトラブル
FA・アドバイザーとのトラブルは、報酬だけでなく、業務範囲、候補先の選び方、説明内容、解除、責任限定が重なって起こります。契約書だけを見るのではなく、エンゲージメントレター、説明資料、メール、議事録、Q&A、請求書を時系列で照合することが重要です。
成約ありき・売却ありきの提案
成功報酬型では、M&Aが成立しないと大きな報酬が発生しないため、成約に向けた進行が強調されることがあります。成功報酬型であること自体が問題なのではなく、依頼者が判断するためのリスク、価格前提、代替案、候補先の信用が十分に説明されていたかが問題になります。
リスク説明・前提条件の説明不足
価格算定、財務情報、表明保証、経営者保証、クロージング条件などについて、どこまで説明を受けたかが争点になることがあります。説明不足を検討する際は、「何が説明されなかったか」だけでなく、「どの資料に記載され、誰が確認できる状態だったか」まで整理します。
デューデリジェンス・バリュエーションの品質を巡る不満
買収後に問題が発覚すると、FAやアドバイザーがもっと調査すべきだったのではないかと感じることがあります。ただし、契約上の業務がDDの実施そのものなのか、DD専門家の手配・資料共有・助言にとどまるのかで責任範囲は変わります。
候補先選定・利益相反への不信
特定の候補先だけが強く推された、他の選択肢が示されなかった、相手方との関係が不透明だったという不満もあります。利益相反や情報偏在が問題になる場合は、M&A仲介の利益相反・情報偏在によるトラブルも確認してください。
悪質性が高いケース
相手方が当初から対価を支払う意思に乏しい、買収後に資産流出が疑われる、経営者保証の扱いについて重大な約束違反があるなど、通常の契約トラブルを超えるケースもあります。この場合は、M&A詐欺・悪質M&Aの被害回復の観点から、証拠保全や民事・刑事の初動を検討する必要があります。
契約前・契約中に弁護士へ確認すべきチェックリスト
M&Aアドバイザリー契約・FA契約は、署名後に不利な条項に気付いても、簡単に修正できるとは限りません。中小企業庁の中小M&Aガイドラインも、仲介者・FAの業務内容、手数料、専任条項、直接交渉制限、テール条項、責任・免責などを確認する重要性を示しています。ただし、ガイドラインは法律そのものではないため、支払拒否や損害賠償請求の可否は個別事情に応じて検討します。
- 報酬条件:着手金、月額報酬、中間金、成功報酬、最低報酬、実費を確認します。
- 業務範囲:候補先探索、資料作成、交渉、DD対応、契約書レビューの範囲を確認します。
- 専任・直接交渉制限:他の専門家利用や候補先との直接連絡が制限されすぎていないかを確認します。
- 解除・テール条項:中途解除時の費用、契約終了後の報酬請求、対象候補先の範囲を確認します。
- 責任限定:故意・重過失の例外、損害賠償額の上限、資料の正確性、最終判断条項を確認します。
- 証拠化:契約書、説明資料、メール、議事録、Q&A、報酬請求書を保存します。
すでに報酬請求や損害が問題になっている場合は、契約条項だけでなく、説明経緯、共有資料、依頼者側の確認状況、損害との因果関係を整理します。責任追及を検討する場合は、M&A仲介会社・FAに損害賠償請求できるかも参考になります。
FAQ
M&Aアドバイザリー契約とは何ですか
M&Aの相手方探索、条件交渉、資料作成、DD対応、最終契約までの支援を、FAやアドバイザーに依頼する契約です。報酬、業務範囲、契約期間、解除、責任限定などを定めます。
FA契約と仲介契約の違いは何ですか
FA契約は売り手又は買い手の一方から依頼を受ける契約です。仲介契約は、売り手・買い手双方の間に立ってM&A成立を目指す点が異なります。
エンゲージメントレターとは何ですか
FAやアドバイザーに正式に業務を依頼する際の契約文書です。名称はレターでも、報酬、業務範囲、解除、テール、責任限定を定める重要文書として確認します。
FA契約は途中で解除できますか
解除できるかは契約書の定めによります。解除できる場合でも、着手金、月額報酬、実費、テール条項、直接交渉禁止条項が残ることがあります。
FAの成功報酬はいつ発生しますか
基本合意時、最終契約時、クロージング時など、契約によって異なります。報酬発生時期が曖昧な場合は、契約書、請求書、説明資料、交渉経緯を確認します。
責任限定条項があるとFAへの責任追及はできませんか
責任限定条項があっても、常に責任追及が不可能になるわけではありません。故意・重過失の例外、情報提供の内容、依頼者側の確認体制、損害との因果関係を踏まえて検討します。
まとめ|M&Aアドバイザリー契約は報酬・業務範囲・責任限定を契約前に確認する
M&Aアドバイザリー契約・FA契約は、M&Aの進行を専門家に依頼するための重要な契約です。署名前に内容を確認しないと、報酬請求、解除、テール条項、責任限定の場面で不利になることがあります。
- FA契約は、業務範囲と報酬条件を具体的に確認します。
- エンゲージメントレターは、契約書として署名前に確認します。
- 成功報酬、最低報酬、テール条項は、後の請求トラブルにつながりやすい部分です。
- 責任限定条項は、故意・重過失の例外や損害賠償額の上限まで確認します。
- トラブル時は、契約書、説明資料、メール、議事録、請求書を時系列で整理します。
契約後に条件を争うよりも、署名前に不明確な条項を修正し、説明内容を記録しておく方が安全です。契約中に不安が生じた場合も、早い段階で契約書とやり取りを整理しておくことで、解除、報酬交渉、責任追及の選択肢を検討しやすくなります。
坂尾陽弁護士
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