M&Aを終えたあとになって、簿外債務や粉飾・不正会計が見つかることは決して珍しくありません。
こうした「M&A 外 債務」や「M&A 粉飾 不正会計」は、
- 追加の支出や是正コストによる企業価値の棄損
- 銀行・取引先・従業員への信用不安
- 旧経営陣・監査人を巡る責任追及・当局対応
など、単なる会計上の調整にとどまらない重大な問題に発展し得ます。
本記事では、
- M&A 簿外債務・粉飾・不正会計が買収後に発覚したときの基本イメージ
- 買主側の初動対応フロー(事実整理・契約確認・通知)
- 表明保証違反・損害賠償・契約解除など主要な法的手段
- 売主側・旧経営陣の対応とガバナンス上の論点
- 将来のトラブルを防ぐためのDD・契約設計・モニタリングのポイント
を、紛争・トラブル目線から整理します。
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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M&Aにおける簿外債務・粉飾・不正会計とは何か【買収後になぜ重い問題になるのか】
簿外債務とは、本来は貸借対照表に計上すべき債務や保証・潜在債務が、何らかの理由で会計帳簿上に現れていない状態を指します。
具体例としては、次のようなものが典型です。
- 金額が大きいにもかかわらず計上されていない借入金・リース債務
- 税務調査で判明する可能性の高い未払税金・追徴税額
- 長時間労働の常態化による未払残業代・割増賃金
- 他社への連帯保証・保証債務の未開示
- 環境・許認可・リコールなどの潜在的な是正コスト
一方、粉飾・不正会計は、売上・利益・資産などを意図的に水増ししたり、損失や債務を隠したりする会計不正を指します。これらは多くの場合、
- 簿外債務の隠蔽
- 将来の損失・引当不足の先送り
と一体となって行われます。
M&Aの場面では、買収時点の財務諸表やDD(デューデリジェンス)の結果を前提に企業価値と買収価格を決めているため、
- 買収後に簿外債務・不正会計が見つかる
- 想定よりも大きな追加支出・是正コストが発生する
となれば、「高値で買わされた」「そもそも買わなかったはずだ」という重大な紛争の火種になります。
簿外債務や粉飾・不正会計は、「たまたま見落としていた」レベルのミスから、故意の隠蔽まで幅があります。法的対応を考えるうえでは、①どの程度の規模か、②当事者の認識・意図はどうだったかが重要なポイントになります。
買収後に簿外債務・粉飾・不正会計が発覚する典型パターン
「M&A 買収後 リスク発覚」は、実務上、次のようなパターンで生じることが多いとされています。
- 買収後の決算・監査プロセスで、会計処理の矛盾や異常値に気付く
- 税務調査・労基署調査・行政検査などを通じて、過去分の違反や未払が指摘される
- 従業員・元役員・取引先などからの内部通報・告発により、粉飾や不正スキームが明らかになる
- PMI(経営統合)プロセスで、業務フローの見直しや内部統制の整備を進めるなかで、帳簿に乗っていない債務・契約が見つかる
「M&A 簿外債務 発覚」や「買収後 不正 発覚」が起きる背景としては、
- DDの範囲・期間に限界があり、すべてのリスクを事前に洗い出せない
- 売主側の内部統制・ガバナンスが弱く、意図せざる簿外債務が溜まっている
- 一部の経営陣・担当者が、意図的に粉飾・不正会計を行っていた
といった事情が重なっていることが多いです。
買主側の初動対応フロー【事実整理・契約確認・通知】
「買収後 簿外債務」「M&A 粉飾 不正会計」が疑われるとき、買主側が感情的に相手を追及する前に取るべきステップは、おおまかに次の4つです。
- 事実関係・証拠の整理
- 契約書(表明保証・補償条項・責任制限)の確認
- 損害の内容と規模の把握
- 通知・交渉方針の検討(専門家との相談)
- 事実関係・証拠の整理
発覚の経緯、発見者、対象となる取引・契約の内容、内部メール・議事録・監査調書などを集め、時系列で整理します。 - 契約書の確認
最終契約書の**表明保証条項・補償条項・損害賠償条項・責任制限条項(キャップ・バスケット・サバイバル期間など)**を精査します。 - 損害の内容・規模の仮試算
未払税金・是正工事費用・残業代支払など、現時点で見込まれる支出を概算し、「数百万円レベルか、数億円レベルか」を掴みます。 - 通知・交渉方針の検討
通知期限(発見から日以内、クロージング後●年以内など)があれば、その管理を最優先しつつ、M&Aに詳しい弁護士・FA・会計士と協議して、請求の射程と交渉戦略を練ります。
多くのM&A契約では、表明保証違反・簿外債務に関する補償請求について、存続期間(サバイバル)や通知期限が定められています。期限を過ぎると請求できなくなるリスクがあるため、「おかしい」と感じた段階で、まず契約書の該当条項を確認し、必要に応じてクレーム通知だけでも先に出すことが実務上よく行われます。
取り得る法的手段と争点【表明保証違反・損害賠償・解除等】
簿外債務や粉飾・不正会計が買収後に発覚した場合に、どのような法的手段が取り得るかは、
- 契約上の表明保証・補償条項の内容
- 責任制限条項(キャップ・バスケット・サバイバル期間など)
- 不正の程度(単純ミスか、故意・重過失か)
によって変わりますが、代表的には次のようなオプションが検討されます。
① 表明保証違反に基づく補償請求・損害賠償請求
- 「簿外債務は存在しない」「財務諸表は一般に公正妥当な会計基準に従い作成されている」といった表明保証に違反しているとして、契約上の補償条項(インデムニティ)や損害賠償条項に基づき請求します。
② 債務不履行・契約不適合責任に基づく請求
- 表明保証条項や補償条項がなくても、株式譲渡契約・事業譲渡契約の債務不履行や、対象株式・事業の契約不適合責任を根拠に、損害賠償や代金減額を主張する余地があります(もっとも、契約で責任を修正・限定していることも多く、個別の条文の検討が不可欠です)。
③ 詐欺・錯誤に基づく契約取消・解除(重大な粉飾・不正会計の場合)
M&Aにおける粉飾や不正会計が故意の隠蔽を伴う重大な不正であり、それがなければM&Aに応じなかったといえるケースでは、
– 民法上の詐欺取消・錯誤取消
– 契約上の解除権の行使
を主張する余地があり得ます(ただし、M&Aでは契約で取消・解除を制限していることも多く、慎重な検討が必要です)。
④ 旧経営陣・監査人などに対する責任追及
- 旧取締役・監査役・会計参与などに対する会社法上の責任追及
- 監査法人・会計士に対する損害賠償請求
なども、事案によっては検討対象となります(ただし、立証負担・時間的コストが大きく、M&A契約の枠内での解決を優先するケースも多いです)。
実務では、「いきなり裁判に行く」よりも、契約上取り得る法的手段の強さを見極めたうえで、価格調整・補償・将来取引条件の見直しなどを組み合わせた和解案を模索することが多いです。どのオプションが取り得るかを整理すること自体が、交渉上のレバレッジになります。
売主側・旧経営陣の対応とガバナンス上の論点
簿外債務や不正会計が発覚したとき、売主側・旧経営陣にも次のような課題が生じます。
- 表明保証違反・補償義務の有無・範囲の検討
- 自社グループ内での責任分担(旧経営陣・担当役員・子会社管理ライン)
- 行政当局・監査人・金融機関への説明責任
売主側としては、少なくとも次のような対応が必要です。
- 事実関係と過去の開示状況(DD時の資料・説明内容)の整理
- 表明保証・補償条項・責任制限条項の確認
- 買主側からの主張(損害額・因果関係)の精査
- 必要に応じた社内調査委員会の設置・外部専門家の起用
特に、意図的な粉飾・不正会計が疑われる場合には、旧経営陣・担当役員の関与を含めて、社内ガバナンス上の責任も問われます。
売主側としては、「DDを受けたのだから、あとは買主の自己責任だ」と考えがちですが、故意の隠蔽や重要事項の未開示があれば、表明保証違反・不法行為などの責任を免れない可能性が高まります。事実を過小評価せず、早期に専門家を交えて対応方針を検討することが重要です。
将来のトラブルを防ぐための予防策【DD・契約設計・モニタリング】
最後に、「すでに起きてしまったトラブル」への対応に加え、これからM&A取引を行う場合や今後同じ失敗を繰り返さないための予防策についても簡単に触れておきます。
① DD(デューデリジェンス)の重点化と専門家の活用
- 財務・税務だけでなく、労務・環境・IT・法務・コンプライアンスなど、簿外債務や潜在リスクが出やすい領域のDDを強化する。
- 公認会計士・弁護士・税理士など専門家を組み合わせたチームで、不正会計・ガバナンスの兆候にも目配りする。
② 表明保証・補償条項・責任制限条項の設計
- 簿外債務・粉飾・不正会計に関して、具体的な表明保証項目を置く(簿外債務の不存在、会計基準への準拠、重要な不正の不存在等)。
- 補償条項(インデムニティ)により、どの損害をどの範囲までカバーするかを明確にする。
- M&A 損害賠償 上限・バスケット・サバイバル期間などの責任制限条項を、案件のリスクに応じて設計する。
③ 表明保証保険(R&W保険)・スキーム選択の検討
- 大型案件等では、表明保証保険を活用し、売主の責任を限定しつつ買主を保護するスキームも検討に値します。
- 簿外債務リスクが大きい場合には、株式譲渡ではなく事業譲渡スキームに切り替えることで、承継する負債を選別する方法もあります。
④ PMI後のガバナンス・モニタリング
- 買収後すぐに、内部統制・決裁ルール・権限体系をグループ基準に合わせ、不正の温床となる仕組みを残さない。
- 内部通報制度・内部監査などを整備し、早期に「買収 後 不正 発覚」できる体制を作る。
まとめ【今すぐ確認しておきたいポイント】
- 「M&A 簿外債務」「M&A 粉飾 不正会計」が買収後に発覚した場合、追加コスト・信用不安・ガバナンス問題など、M&Aの前提を揺るがす重大トラブルに発展し得ます。
- 買主側は、感情的な交渉の前に、事実関係・証拠の整理 → 契約書(表明保証・補償条項・責任制限)の確認 → 損害の仮試算 → 通知期限の管理と専門家相談という初動フローを踏むことが重要です。
- 取り得る法的手段としては、表明保証違反に基づく補償請求・損害賠償請求を中心に、事案によっては債務不履行・契約不適合責任、重大な不正の場合の取消・解除、旧経営陣への責任追及などが検討されます。
- 売主側・旧経営陣は、開示状況や内部統制の実態を踏まえつつ、自らの責任範囲を冷静に評価し、社内調査・再発防止策を含めたガバナンス対応を早期に検討する必要があります。
- 将来のトラブル予防のためには、DDの重点化・表明保証/補償条項/責任制限条項のバランス設計・表明保証保険の活用・PMI後のモニタリング体制構築などを通じて、「M&A 買収 後 リスク 発覚」を前提にした契約・運用設計が不可欠です。
ここで述べた内容は、あくまで一般的な枠組みです。
実際の案件では、スキーム・価格決定方法・契約文言・開示状況・不正の態様によって結論が大きく変わり得ますので、具体的なトラブルが生じている場合には、M&Aに詳しい弁護士・専門家に早期に相談することをおすすめします。
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