M&A仲介手数料・成功報酬のトラブルと返還請求の実務

M&Aを進めるうえで、多くの企業が仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)と契約し、成功報酬ベースで支援を受けます。
その一方で、

  • 成約していないのに高額な成功報酬を請求された
  • 紹介してもらっていない相手との取引について手数料を請求された
  • 実質的な成果がないのに最低報酬や中途解約金を求められている

といったM&A 仲介 手数料 トラブルの相談も少なくありません。

本記事では、M&A仲介・FAトラブルの中でも、特に手数料・成功報酬に関する紛争に焦点を当て、典型的なパターンと返還請求の実務上のポイント、予防策を整理します。

  • M&A仲介・FA契約における手数料・成功報酬の基本的な仕組み
  • よくあるM&A 仲介 報酬 トラブルの類型(どんなパターンが多いのか)
  • すでに支払った手数料の返還請求を検討する際の一般的な考え方
  • 今後のM&AでM&A 仲介 手数料 トラブルを避けるための契約・実務上の工夫

手数料トラブルは「請求書が届いてから慌てて検討する」という順番になりがちですが、契約書の読み方や交渉のポイントを早めに押さえておくことで、ダメージを抑えられるケースも少なくありません。

坂尾陽弁護士

仲介会社・FAは手数料を得るために動いていることを忘れると大きな落とし穴にはまるリスクがあります!

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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M&A仲介手数料・成功報酬の基本構造

まず、M&A仲介・FA契約における手数料・成功報酬の基本的な構造を押さえます。

一般的なエンゲージメントレターでは、

  • 月額のリテイナーフィー(顧問料のような位置付け)
  • デューデリ・バリュエーション等の作業に応じたスポットフィー
  • 取引が一定の条件で成立した場合の成功報酬

といった項目が組み合わされています。中でもトラブルになりやすいのが、成功報酬と最低報酬、テイル条項です。

成功報酬については、

  • どの時点を「成約」とみなすのか(基本合意か、最終契約か、クロージングか)
  • どの金額をベースに計算するのか(株式価値か企業価値か、負債の扱いはどうするか)
  • 一定額以上の「最低成功報酬」を定めるか

といった点が、契約ごとに異なります。

また、「テイル条項」として、

  • 契約期間終了後、一定期間内に「当該仲介会社が紹介した相手」と成約した場合には成功報酬を支払う

といった規定が置かれていることも多く、これが後のM&A 仲介 手数料 トラブルの種になることがあります。

仲介・FA契約は個別交渉の余地が大きく、「業界標準」がそのまま通用するとは限りません。
したがって、自社がどの条件で「成功報酬を払う」と約束しているのかを、エンゲージメントレターの文言から丁寧に読み解くことが、トラブル対応・予防の出発点になります。

仲介手数料・成功報酬トラブルの典型パターン

次に、実務でよく問題となるM&A 仲介 報酬 トラブルの典型的なパターンを整理します。

  • 成約していないのに成功報酬を請求されるケース
    基本合意まで進んだものの最終契約には至らなかった、銀行や既存の取引先からの出資提案に切り替えたなどの場面で、「ここまで進んだから成功報酬を支払うべき」と主張されるケースです。契約上「成約」をどう定義しているかが争点になります。
  • 紹介していない相手との成約について請求されるケース
    仲介会社からは特段の紹介を受けていない相手に対し、自社で直接交渉して成約したところ、「情報の提供やきっかけは当社にある」などとして成功報酬を請求されるパターンです。テイル条項や「紹介」の定義が曖昧な場合に紛争化しやすくなります。
  • 最低成功報酬・中途解約金が問題になるケース
    案件規模が小さくなった、成約価格が大幅に下がったなどの結果、レーマン方式で計算した額よりも「最低成功報酬」の方が高くなってしまうケースがあります。実質的な成果とのバランスを欠くと感じられる場合、最低報酬の妥当性が争点になることがあります。
  • 複数の仲介会社への二重支払を巡るトラブル
    複数の仲介会社と並行して契約していた、途中で仲介会社を切り替えた結果、同じ成約について双方から成功報酬を請求されることがあります。それぞれのエンゲージメントレター上の「対象案件」「紹介範囲」の書き方に注意が必要です。

これらのパターンは、親記事であるM&A仲介・FAトラブルの典型パターンと対処法で総論的に整理した内容のうち、「手数料・報酬」にフォーカスしたものと位置づけることができます。
また、情報偏在や利益相反との絡みで問題となるケースについては、仲介会社との情報偏在・利益相反で起こるM&A仲介トラブルでも別途整理していく想定です。

手数料・成功報酬の返還請求で問題になるポイント

すでに支払ったM&A仲介手数料の返還を検討する場面では、一般論として次のような論点が重要になります。

  • 契約上、報酬発生条件が満たされていたか
    エンゲージメントレター上の「成約」や「紹介」の定義と、実際に何が起きたかを突き合わせます。例えば、基本合意段階での支払とされていたのか、最終契約・クロージングが条件だったのかで、支払義務の有無が変わり得ます。
  • 条項が極端に不公平でないか(交渉経緯も含めて)
    最低成功報酬や中途解約金が、案件規模や実際の業務内容に照らして極端に高額である場合、公平性を欠くとして見直しの余地が議論されることがあります。もっとも、企業間取引である以上、一般論としては「事前に合意した契約内容」が重視されやすく、個別事情の検討が必要です。
  • 説明義務違反・情報提供義務違反などとの関係
    仲介会社が報酬条件の重要な部分について十分な説明をしていなかった、リスクや他の選択肢について偏った説明しかしなかった、という事情があるときには、説明義務違反などを理由に責任追及が検討されることもあります。支払済み報酬との関係では、損害賠償請求や相殺の議論が絡むこともあります。

このようなポイントを踏まえ、実務では、

  • そもそも契約上の支払義務が存在しない(または一部にとどまる)と主張するのか
  • 契約自体の内容が極端に不公平だとして見直しを求めるのか
  • 説明義務違反等に基づく責任追及とあわせて返還を求めるのか

といった選択肢を検討することになります。

いずれのアプローチを取るかは、契約書の文言・交渉経緯・やり取りの証拠などによって大きく変わりますので、個別の事案では早い段階で専門家の意見を聞いておくことが望ましいといえます。

仲介会社との交渉・訴訟を見据えた実務対応

M&A 仲介手数料 トラブルが顕在化したとき、いきなり「払わない」とだけ伝えてしまうと、契約上の債務不履行を主張されるなど、かえって不利な立場に立たされるおそれもあります。
冷静に、次のようなステップを踏むことが重要です。

まず、事実関係と資料の整理です。

  • どのような報酬条件でエンゲージメントレターを締結したのか
  • どのタイミングで、どのような説明を受けていたのか
  • 案件はどこまで進んだのか(基本合意・最終契約・クロージングの状況)

といった点を、契約書・見積書・メール・議事録などをもとに時系列で整理します。

次に、当面の支払方針の検討です。
請求額の全額を直ちに支払うのか、一部については争うのか、いったん支払を留保するのかによって、交渉の前提が変わります。支払を完全に拒否する場合には、契約解釈や説明義務違反など、法的な根拠と証拠の見通しを慎重に検討する必要があります。

そのうえで、

  • まずは仲介会社との交渉による解決を目指すのか
  • 第三者を交えた調停・ADRを検討するのか
  • 裁判・仲裁を見据えて準備を進めるのか

といった解決手段の選択を検討します。M&A全体の紛争解決条項(専属的合意管轄・仲裁合意など)がある場合には、その内容も確認が必要です。

「争うか・諦めるか」の二択ではなく、どこまでなら妥協できるのか、どの部分であれば返還や減額を求める余地があるのかを整理したうえで交渉に臨むことが、結果としてコストとリスクのバランスを取りやすくします。

M&A紛争全般の解決手段については、**M&A紛争を裁判・仲裁・調停のどれで解決すべきか【メリット・デメリット】**で、別途整理していく予定です。

今後のM&Aで手数料トラブルを防ぐ予防策とまとめ

一度M&A 仲介 手数料 トラブルを経験すると、「もう仲介会社は使いたくない」と感じることもあるかもしれません。
しかし、多くの中小企業にとって、信頼できる仲介会社・FAの支援は依然として有用です。重要なのは、次の案件で同じ失敗を繰り返さないことです。

予防策としては、少なくとも次のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

  • 成功報酬の「発生条件」と「算定基準」を具体化する
    基本合意か最終契約か、クロージングかといった成約時点の定義、株式価値・企業価値のどちらをベースにするか、負債の扱いなどを、曖昧な表現にせず具体的に定めます。
  • 最低成功報酬・中途解約金の水準を交渉する
    案件規模や予想される工数に照らして、極端に高額な最低報酬になっていないかを確認し、必要に応じて上限・下限や分割払いなどの工夫を検討します。
  • テイル条項・紹介の定義を適切に絞り込む
    契約終了後の対象期間、どのような関与があった相手を「紹介先」とみなすのかを具体化し、自社の既存取引先や自力で開拓した相手にまで広がりすぎないようにします。
  • 社内でエンゲージメントレターのチェック体制を整える
    経営陣だけでなく、法務・財務・外部アドバイザーなども交えたチェックプロセスを設け、感覚的に「おかしい」と思う条項をそのままにしない仕組みを整えます。

最後に、本記事のポイントを改めて整理します。

  • M&A仲介・FA契約では、成功報酬・最低報酬・テイル条項などの設定がM&A 仲介 手数料 トラブルの主要な原因となりやすい
  • 典型的なトラブルとして、成約前の段階での成功報酬請求、紹介していない相手との成約に対する請求、最低成功報酬や中途解約金の妥当性を巡る紛争などがある
  • 手数料の返還請求を検討する際には、契約上の報酬発生条件、条項の公平性、説明義務違反等の有無といった論点を整理し、証拠に基づいて主張立証の可能性を検討する必要がある
  • 請求書が届いてから慌てるのではなく、事実と契約、交渉の選択肢を丁寧に整理したうえで、早期に専門家に相談することで、交渉の余地を広げやすくなる
  • 次回以降のM&Aでは、エンゲージメントレターのチェックと社内体制の整備を通じて、同種のM&A 仲介 手数料 トラブルを予防することが重要となる
MEMO

M&Aを継続的に行う企業では、「M&A仲介・FA契約レビュー用のチェックリスト」を社内で用意しておくと、案件ごとにゼロから悩まずに済みます。本記事の内容をベースに、自社の実情に合ったチェックポイントを整理しておくことも有効です。

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