株式会社の成立(会社法49条~51条)

株式会社の成立

(株式会社の成立)

第四十九条 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

株式会社は本店所在地において設立登記をすることで成立しますが、設立登記に関しては商業登記法において定められています。会社法は9081項によって登記事項が対抗できる場合が定められていますが、設立登記は会社法49条によって会社設立の効力要件とされており会社法9081項の例外であると考えられます。

また、設立登記の時期については、発起設立の場合について会社法9111項、募集設立の場合について会社法9112項によって期限が定められています。

(株式会社の設立の登記)

第九百十一条 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。

一 第四十六条第一項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第三項の規定による通知を受けた日)

二 発起人が定めた日

2 前項の規定にかかわらず、第五十七条第一項の募集をする場合には、前項の登記は、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。

一 創立総会の終結の日

二 第八十四条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日

三 第九十七条の創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から二週間を経過した日

四 第百条第一項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から二週間を経過した日

五 第百一条第一項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日

3項以下、略)

 

株式の引受人の権利

(株式の引受人の権利)

第五十条 発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となる。

2 前項の規定により株主となる権利の譲渡は、成立後の株式会社に対抗することができない。

権利株とは株式引受人の地位のことをいいますが、設立時株式に関する権利株の譲渡については会社法502項において定められています。同様の規定は、発起人が出資履行前の権利の譲渡について会社法35条、募集設立の場合における募集株式引受人について会社法632項が設けられています。

 

設立時発行株式の引受けの無効・取消し

(引受けの無効又は取消しの制限)

第五十一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十三条第一項ただし書及び第九十四条第一項の規定は、設立時発行株式の引受けに係る意思表示については、適用しない。

2 発起人は、株式会社の成立後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。

株式引受けの無効・取消しの制限

発起人による株式引受けは共同的行為であることから団体法的な行為が要請されることや、株式引受けを信頼する公衆の利益を保護が要請されることから、株式の引受けについて無効や取消しが制限されています。

なお、株式の引受けが消費者契約である場合には消費者契約法の適用が考えられますが、消費者契約法に基づく株式引受けの取消しについても消費者契約法72項により制限されています。

(取消権の行使期間等)

第七条 第四条第一項から第四項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間(同条第三項第八号に係る取消権については、三年間)行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年(同号に係る取消権については、十年)を経過したときも、同様とする。

2会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法律により詐欺又は強迫を理由として取消しをすることができないものとされている株式若しくは出資の引受け又は基金の拠出が消費者契約としてされた場合には、当該株式若しくは出資の引受け又は基金の拠出に係る意思表示については、第四条第一項から第四項までの規定によりその取消しをすることができない。

未成年者・制限能力者の場合

設立時株式引受人が未成年者や制限能力者である場合に意思表示の無効・取消しができるかは会社法51条からは明らかではありません。この点について、古い裁判例は未成年者が法定代理人から処分を許された金員で株式の引受け・払込みをした事案について株式の引受けと判断したものがあります(東京地裁昭和12723日判決)。

詐害行為取消権・否認権の行使

株式の引受けによって、引受人の債権者が害されるような場合において民法上の詐害行為取消権や破産における否認権の行使ができるかについて、会社法51条は定めがありません。

会社法51条の趣旨は、引受人が無効・取消しの主張をすることを制限しているだけであると考えれば、株式の引受けについて詐害行為取消権や否認権の行使は許されると考えることができるでしょう。

もっとも、正当な対価を得てなされた財産の処分行為についての民法424条の2や破産法1611項を踏まえると、株式の引受けは原則として正当な対価を得てなされた財産の処分行為であり、このことにより財産の隠匿等のおそれが生じたり、又は隠匿等を図ったりということは想定しづらいようにも思えます。

執筆者:坂尾陽弁護士

  • 2009年 京都大学法学部卒業
  • 20011年 京都大学法科大学院修了
  • 2011年 司法試験合格
  • 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
  • 2016年 アイシア法律事務所設立

 

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