M&Aの後に想定外の簿外債務が見つかったり、業績連動のアーンアウト対価をめぐって相手方と対立したりすると、「この段階で弁護士に相談すべきなのか」「相談するとどれくらい費用がかかるのか」が大きな不安になります。
「M&A トラブル 弁護士」と検索されている方は、まさにその段階にいることが多いでしょう。
この記事では、M&Aトラブル・紛争で弁護士に相談すべき主なタイミングと、費用感のイメージを整理します。
まずは、この記事で分かることを簡単にまとめます。
- M&Aトラブル・紛争で弁護士が関与しやすい典型パターン
- 弁護士に相談すべき主なタイミングと、相談を遅らせるリスク
- M&Aトラブルを扱う弁護士に依頼する主なメリット
- M&Aトラブル対応にかかる弁護士費用の一般的な目安
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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M&Aトラブル・紛争で弁護士が必要になる典型ケース
「M&Aトラブル」と一口にいっても、実際にはさまざまな類型があります。まずは、どのような場面で弁護士が関与しやすいのかを整理しておくと、「自社のケースはどこに当てはまりそうか」をイメージしやすくなります。
典型的には、次のようなケースで弁護士への相談・依頼が検討されます。
- 表明保証違反・簿外債務・粉飾決算が疑われるケース
買収後に多額の簿外債務や粉飾が発覚し、「表明保証違反にあたるのか」「どこまで損害賠償を請求できるのか」「契約で定めた責任制限はどう効くのか」といった論点を整理する必要がある場合。 - 対価調整・アーンアウト条項をめぐる紛争
業績連動のアーンアウトや、クロージング後の価格調整条項について、算定方法・前提条件をめぐり激しく対立しているケース。会計・税務の前提と契約条項の読み方が複雑に絡むため、専門的な分析が必要になります。 - M&A仲介会社・FAとのトラブル
仲介会社の説明不足・利益相反・過剰な手数料請求などについて、報酬の支払義務や返還請求の可否が問題となるケース。仲介契約・FA契約の解釈がポイントになります。 - 事業譲渡・会社分割後の債権債務・許認可・従業員を巡るトラブル
どちらがどの債務を負担するのか、取引先との契約が移転していなかった、許認可が承継されていない、従業員の処遇に不満が出ているなど、スキーム固有の問題が噴出する場面。 - 経営者保証・役員・従業員をめぐる紛争
経営者の個人保証の扱いや、M&A後の役員退任・従業員退職を巡る紛争など、人に紐づく義務・地位が問題となるケース。
これらはどれも、金額が大きく、会社の将来に影響することが多いため、「一度こじれると長期化しやすい紛争」です。
より広い全体像や他の失敗パターンまで整理したい場合は、M&Aトラブル・紛争の全体像とよくある失敗パターンも併せて確認しておくと、個別の事案を位置づけやすくなります。
「まだ大ごとではない」と考えていても、契約上の通知期限や時効が進行していることがあります。事案がどの類型に近いかを早めに整理しておくことが、後の選択肢を広げるうえで重要です。
M&Aトラブルを弁護士に相談すべきタイミング
次に、「どのタイミングでM&A トラブル 弁護士に相談すべきか」という問題です。
一般的に、次のような局面では、できるだけ早めに弁護士への相談を検討することが望ましいと考えられます。
- 問題の兆しに気付いた段階(疑念レベルでも)
簿外債務らしいものが見つかった、業績管理の数字に違和感がある、アーンアウトの前提となる事業運営に不自然な点があるなど、「まだ証拠は十分でないが、気になる点がある」という段階。 - 相手方に何らかのクレームを伝えようとしているとき
メールや書面で相手に問題点を指摘しようとしている段階。最初の書面の書き方しだいで、その後の法的評価や交渉の土台が変わることが多いため、送付前に弁護士のチェックを受ける価値があります。 - 相手方から内容証明郵便・弁護士名義の通知書が届いたとき
すでに相手方が弁護士を立てている場合、対応を誤ると不利な前提で交渉が進んでしまうリスクがあります。自社だけで回答案を作成する前に、M&A紛争に通じた弁護士に相談するのが無難です。 - 契約上の通知期限・クレーム期間が迫っているとき
表明保証違反や価格調整条項について、契約書で通知期限・クレーム期間が定められていることがあります。期限を徒過すると、請求できるはずの権利を失うおそれがあります。 - 訴訟・仲裁・調停のいずれで進めるかを検討しているとき
すでに紛争が顕在化し、裁判・仲裁・調停などの選択肢を比較検討している段階。紛争解決条項の内容や国際的な要素の有無により、取れるルートが変わります。
相手方の弁護士名義で内容証明が届いた場合、「とりあえず場当たり的に返信してしまう」ことは避けるべきです。一度書面で認めた内容や交渉上の譲歩は、後から撤回するのが難しくなることが少なくありません。
ここで重要なのは、「相談」と「正式な依頼」を切り分けて考えることです。
早い段階では、M&A 紛争 弁護士に対して「事案の整理と選択肢の確認」だけを行い、そのうえで自社だけで対応を続けるか、交渉や訴訟を委任するかを判断することもできます。
「もう少し様子を見てから…」と先送りしているうちに、通知期限・時効・証拠の散逸などで手が打ちにくくなるケースは珍しくありません。迷ったら一度相談だけでもしておく、という発想が結果的に合理的なことが多いです。
M&Aトラブルを扱う弁護士に依頼するメリット
M&Aトラブルは、一般的な売掛金回収や契約解除の紛争に比べて、複雑な契約構造・会計処理・税務・金融実務が絡み合うことが多い分野です。
そのため、可能であれば「企業法務の中でもM&A紛争を集中的に扱っている弁護士」に依頼することが望ましいと言えます。主なメリットとして、次のような点が挙げられます。
第一に、「法的構成と選択肢の整理」です。
表明保証違反を前提に損害賠償を求めるのか、価格調整条項の解釈を争うのか、契約解除・減額交渉・追加補償など、どのゴールを目指すのかによって取るべき戦略は大きく変わります。M&Aトラブルに通じた弁護士であれば、契約書・DD資料・メールのやり取りなどを整理し、現実的な選択肢とリスクを早い段階で提示しやすくなります。
第二に、「交渉戦略とコミュニケーションの設計」です。
相手方企業・ファンド・金融機関・仲介会社など、関係者が多いのがM&A紛争の特徴です。どの相手と、どの順番で、どのトーンで交渉するのかにより、着地点が大きく変わり得ます。
弁護士が表に出ることで事態が硬直化する場合もあれば、逆に「弁護士同士の交渉」に切り替えることで感情的な対立が和らぐこともあります。こうしたバランスを取りながら進められる点も、専門の弁護士に依頼する意義といえます。
第三に、「訴訟・仲裁・調停へのスムーズな移行」です。
交渉が難航した場合、最終的には訴訟・仲裁・調停などの手続に進む可能性があります。契約上の専属的合意管轄や仲裁条項の有無、準拠法の内容などにより、どの手続が取り得るかも変わってきます。
こうしたプロセス選択については、**M&A紛争を裁判・仲裁・調停のどれで解決すべきか【メリット・デメリット】**で詳しく整理していますので、裁判・仲裁を視野に入れている方は、あわせて確認しておくとよいでしょう。
M&A紛争に慣れた弁護士は、「法律論」だけでなく、実務上どのような落としどころが現実的かという感覚も持っています。感情的な対立から一歩引き、経営判断としてどこを目指すかを整理する際のパートナーと考えるとイメージしやすいかもしれません。
M&Aトラブル対応の弁護士費用の目安
次に、多くの方が気にされる「費用感」についてです。
実際の弁護士費用は、案件の規模・複雑さ・想定される工数・依頼する範囲(相談のみ/交渉まで/訴訟・仲裁まで)などにより大きく変動します。そのうえで、あくまで一般的な目安として、次のようなレンジが想定されることが多いとされています。
- 初回法律相談料の目安
M&Aトラブルについての初回相談は、有料(例:1時間あたり数万円程度)とする事務所もあれば、一定時間までは無料とする事務所もあります。案件の性質上、契約書やメールなどの資料を読み込む必要があるため、事前に相談枠の時間や費用を確認しておくと安心です。 - 助言中心(アドバイザリー)の場合の費用感
相手との直接交渉は自社で行い、弁護士にはバックで助言を求める形の場合、タイムチャージ(例:1時間数万円程度)で必要な時間分だけ支払う方式が一般的です。事案の規模にもよりますが、数十万円〜100万円台程度に収まるケースもあれば、長期化するとさらに膨らむこともあります。 - 交渉代理(通知書送付・条件交渉)まで依頼する場合
弁護士名義での通知書作成・相手方との条件交渉・合意書ドラフトなどを含む場合、着手金+タイムチャージ、あるいは一定のパッケージフィーとする事務所もあります。金額としては、少なくとも数十万円〜数百万円規模になることが多いと考えておくとよいでしょう。 - 訴訟・仲裁・調停に進んだ場合
M&A紛争の訴訟・仲裁は、争点・証拠・手続が複雑になることが多く、争う金額も非常に高額なため、一般的な訴訟よりも弁護士費用が高額になりやすい分野です。着手金だけで数百万円規模、結果に応じた報酬金やタイムチャージが別途発生することもあり得ます。詳細は必ず個別に見積もりを受ける必要があります。 - 成功報酬・成果連動の取り扱い
取得できた損害賠償額や減額できた金額の一定割合を成功報酬として定める方式が採用されることもあります。ただし、完全成功報酬とすることは少なく、着手金+成功報酬の組み合わせが一般的です。
弁護士費用は、「高いか安いか」だけでなく、「どの範囲までをどの報酬形態で依頼するか」をすり合わせることが重要です。見積もりを取る際には、想定される進め方のパターンと、それぞれの費用レンジを確認しておくとよいでしょう。
坂尾陽弁護士
費用面だけを見て「弁護士に相談するのは最後の手段」と考える方も少なくありませんが、M&Aトラブルでは、初動を誤ることで損害額が大きく膨らんだり、交渉上のポジションを失ったりするリスクがあります。
結果として、「早い段階で相談しておいた方が、トータルのコストはむしろ抑えられた」と感じられる事案も少なくありません。
坂尾陽弁護士
まとめ:M&Aトラブルを弁護士に相談するか迷ったとき
ここまで、M&Aトラブル・紛争で弁護士に相談すべきタイミングと費用感の概要を見てきました。最後に、ポイントを整理します。
- M&Aトラブルは、表明保証違反・対価調整・仲介会社との紛争・事業譲渡後の債務・従業員トラブルなど、多様な類型があり、金額・影響が大きくなりやすい。
- 「問題の兆しに気づいた段階」「相手にクレームを書面で伝える前」「相手方弁護士名義の通知書が届いたとき」「通知期限が迫っているとき」は、M&A トラブル 弁護士への早期相談を検討すべき重要なタイミング。
- M&A紛争に通じた弁護士は、法的選択肢とリスクを整理し、交渉戦略や訴訟・仲裁への移行も見据えた対応方針を一体的に検討する役割を担う。
- 弁護士費用は、相談のみ・助言中心・交渉代理・訴訟・仲裁など依頼の範囲によって大きく変わるが、事前に見積もりを取り、報酬形態や想定レンジを確認しておくことが重要。
- 相談を先送りして通知期限・時効・証拠の散逸を招くと、取り得る選択肢が大きく制約されるため、「迷ったら一度相談だけでもしておく」というスタンスが結果的に合理的なことが多い。
M&Aトラブルは、一度こじれると長期化しやすく、経営にも大きな負担となります。まずは自社の状況がどの類型に近いのかを整理し、必要に応じてM&A紛争を扱う弁護士に早めに相談することを検討してみてください。
坂尾陽弁護士
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