共同事業を解消した後、相手方から突然「精算金として230万円を支払ってほしい」と請求された――本件は、このような共同事業の精算金請求トラブルについて、弁護士の介入により、請求を退けたうえで逆に270万円を回収した解決事例です。
ご依頼企業様は小売事業を営み、過去に取引のあった卸売業者と、仕入れから販売までを連携して行う形で共同事業(ジョイントベンチャー的な協業)を開始しました。運用自体は口頭・メール中心で進み、収支の管理は相手方に任せる形になっていました。
しかし、共同事業を終える段階で、相手方から一方的に精算金の請求が届きます。金額も算定根拠も納得できるものではなく、このまま支払ってよいのか判断できない状況でした。そこで当事務所が、合意内容と収支の実態を調査し、「請求を拒む」だけでなく「こちらから返還・損失按分を請求する」方針へ切り替え、交渉で合意を得ました。
坂尾陽弁護士
本件の要点は次のとおりです。
- 共同事業解消後に、精算金230万円を請求された
- 口頭・メール中心で運用され、収支の管理が相手方に偏っていた
- 入金明細書・請求書・領収書等を整理し、収支の実態を可視化
- 共同事業を「組合契約」として整理し、利益按分だけでなく損失按分(折半)も主張
- 交渉により、支払い0円+逆に270万円を回収する合意を実現
※本記事は、事務所内の解決事例をもとに、プライバシー保護のため一部の事実関係を抽象化しています。
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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ご相談の背景
ご依頼企業様(40代・男性)は小売事業を営んでおり、取引実績のある卸売業者から共同事業の提案を受けました。双方の強みを活かし、商品を仕入れて消費者へ販売する一連の流れを連携して行い、売上(または利益)を一定割合で按分する形で運用する――という枠組みです。
スタート時点では「うまく回れば双方にメリットがある」という期待があり、契約書を作り込むよりも、まずはスピード感を重視して口頭・メールで合意を積み上げながら進める形になっていました。また、日々の収支計算や精算の取りまとめは、卸売業者側が主導する運用でした。
共同事業は一定期間続いたものの、最終的には解消する判断となります。ところが解消後、卸売業者から「精算金として約230万円を支払ってほしい」という請求が届きました。
問題点
本件で難しかったのは、次のような事情が重なっていた点です。
- 共同事業の合意が口頭・メール中心で、前提条件が一部あいまいだった(売上按分か利益按分か等)
- 収支管理を相手方に任せていたため、共同事業中は「どの程度の利益(または損失)が出ているか」が見えにくかった
- 解消後に請求された精算金が、当初想定していない内容で、算定根拠も示されていなかった
ご依頼企業様としては、「請求を無視してよいのか」「反論すると関係がさらに悪化しないか」「そもそも正しい精算額がいくらなのか」が分からず、社内としても対応方針を決められない状態でした。
当事務所の対応
まず「合意の中身」を整理する
共同事業の精算では、最初に「何を基準に按分する約束だったのか」を確定させる必要があります。典型的には、次のいずれか(または両方)が論点になります。
- 売上を按分する約束だったのか(売上按分)
- 経費控除後の利益を按分する約束だったのか(利益按分)
本件では、やり取りが口頭・メール中心であったため、当時のメール、見積書・請求書のやり取り、入金のタイミング、会計処理などを突き合わせ、当事者が実務上どの前提で動いていたのかを整理しました。
入金明細・請求書・領収書を集約し、「お金の流れ」を可視化
次に、共同事業の期間中の入出金を徹底的に整理しました。具体的には、通帳の入金明細書、振込明細、請求書・領収書、仕入れ関連の資料などを集約し、時系列で一覧化します。
共同事業の紛争は、最終的に「数字の勝負」になることが多く、感覚的な主張では押し切られがちです。そこで当事務所では、可能な限り客観資料に基づいて、相手方の請求の根拠がどこにあるのか、逆に過大な支払いが潜んでいないかを検証しました。
相手方が過剰な利益を得ていた点を把握し、返還請求の方向へ転換
検証を進めたところ、卸売業者側が共同事業の収支計算の過程で、実質的に過剰な利益を得ており、結果として当社側が損をしていた可能性が高いことが分かりました。共同事業中は収支を相手方に任せていたため、当時は気づけなかったポイントです。
そこで当事務所は、精算金230万円の請求を争うだけでなく、こちらから過大に支払っていた金額の返還を求める方針へ切り替えました。交渉の構図を「守り」から「攻め」へ変えることで、相手方の態度や譲歩余地も変わり得ます。
共同事業を「組合契約」として整理し、損失の折半も主張
本件の共同事業は、法的には民法上の組合契約(共同で事業を行い、成果を分配する関係)として整理できる余地がありました。組合契約の枠組みで整理する場合、利益を一定割合で分け合うのであれば、原則として損失も同じ割合で負担する、という考え方が基本になります。
そのため当事務所では、相手方からの精算金請求に対し、単に「合意していない」と反論するだけでなく、共同事業で生じた損失部分についても、約束した按分割合(折半)に従って精算すべきであると主張しました。
交渉設計:反論の順番と見せ方を整え、合意へ収束
共同事業の精算紛争では、相手方が数字を握っていることも多く、資料の出し渋りや論点のすり替えが起こりやすいです。そこで当事務所では、
- こちら側で確定できる入出金・根拠資料を先に示す
- 相手方請求の根拠の提示を求め、整合しない点を具体的に指摘する
- 返還請求・損失按分の主張を組み合わせ、交渉の着地点を複数用意する
という順番で、交渉を組み立てました。最終的には、交渉により双方が合意に至り、裁判に発展させずに解決できました。
解決結果
最終的に、相手方から請求されていた精算金約230万円については支払い不要となり、逆に当社側が約270万円を回収する内容で合意しました。請求を受けた時点では「支払うしかないのでは」と不安が強かった状況でしたが、事実関係と数字を整理し、法的構成を立て直したことで、結論を大きく逆転させることができました。
この事例からわかるポイント
共同事業の精算金請求に直面したとき、会社側が押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 相手方の請求額を前提にせず、まずは合意内容(按分基準)を整理する
- 通帳明細・請求書・領収書など、一次資料でお金の流れを可視化する
- 共同事業が組合契約として整理できる場合、利益だけでなく損失も按分して精算すべきことがある
- 「守りの反論」だけでなく、返還請求などこちらからの主張を組み合わせると交渉が動く
担当弁護士からのコメント
企業法務のトラブルには、共同事業に関する紛争が意外と多くあります。別々の会社が連携して事業を行う場合、ジョイントベンチャー形式で協業する場合、株式を半分ずつ持ち合う場合など、形は様々ですが、いずれも一旦揉めると泥沼化しやすい領域です。
本件は、相手方から請求を受けた事案でしたが、弁護士が間に入り事実関係と会計資料を調査し、法的に整理し直すことで、逆にこちら側から反撃することができました。共同事業では「お金の流れの分析」が重要になりますので、早めにご相談いただくことで、不利な前提を固定される前に打ち手を作りやすくなります。
よくあるご質問
契約書がなくても、共同事業として反論できますか?
可能な場合があります。口頭やメール中心でも、やり取りや入出金の実態から、当事者がどのような合意で動いていたかを立証できることがあります。まずは資料を集め、整理することが重要です。
精算金の請求を受けたとき、会社側は何を準備すべきですか?
入金明細(通帳・振込記録)、請求書・領収書、共同事業に関するメールやチャット、見積書など、「お金」と「合意」を裏づける資料が中心です。資料が揃わなくても、現時点であるものから整理するだけで見通しが立つこともあります。
相手方からの請求を争うだけでなく、こちらから請求することもできますか?
はい。本件のように、収支を検証すると相手方が過剰な利益を得ていたり、精算方法が不適切だったりすることがあります。事実関係と法的構成次第では、返還請求や損失按分の主張など、こちらから請求できる余地があります。
最後に、本件の要点をまとめます。
- 共同事業の精算金230万円請求に対し、入出金資料を整理して根拠を検証
- 組合契約としての性質を踏まえ、利益だけでなく損失の折半も主張
- 交渉で合意し、支払い0円+逆に270万円の回収に成功
坂尾陽弁護士
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