「突然、約1億円を支払えという訴状が届いた。社内は混乱し、時間もない」――本件は、親族経営の歴史が長い製造・販売業の会社で起きた貸付金請求訴訟について、請求0円の判決(完全勝訴)を得た解決事例です。
ご相談は、すでに答弁書を提出した後のタイミングでした。次に提出すべき書面の期限が迫る中でも、訴訟では「最初にどのような方針で戦うか」を誤ると、その後の主張が場当たり的になり、取り返しがつかなくなることがあります。そこで当事務所は、初回から論点になっていない事情まで丁寧に聴き取りを行い、時効や債務の承認(相手から「支払うと認めた」と主張され得るポイント)を先回りして整理し、反論の芽を潰す方針を立てました。
※本記事は、事務所内の解決事例をもとに、プライバシー保護のため一部の事実関係を抽象化しています。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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ご相談前:親族間の対立が長期化し、未返済の貸付金を巡って訴訟に発展
ご依頼企業は古い歴史を持つ会社でしたが、前世代で兄弟間の確執が生じ、兄一派・弟一派に分かれて長年にわたり会社支配を巡る紛争が続いていました。紛争状態を解消するために事業を分けたり、新会社を設立したりと複数の手当てをしてきたものの、かえって権利関係が複雑化してしまった、という背景がありました。
そうした中、相手方企業から「未返済の貸付金がある」として、約1億円の支払いを求める訴訟を提起されました。請求額が大きく、会社の資金繰りや対外信用に直結する局面である一方、訴訟対応は途中段階まで進んでおり、時間的な余裕はほとんどありませんでした。
- 親族経営の長期化により、株式保有関係・取引関係が複雑になっていた
- 複数の再編措置を行った結果、当時の資料や経緯の整理が難しくなっていた
- 相手方から約1億円の請求訴訟を提起され、社内の意思決定を急ぐ必要があった
ご依頼企業としては、企業法務の訴訟経験が豊富な弁護士に依頼し、見通しを立て直したいということで、見積りを取ったうえで当事務所にご相談・ご依頼いただきました。
当事務所が重視したポイント:借用書がある事案では「時効」と「債務承認」の整理が分岐点になる
本件では、貸付けの存在をうかがわせる借用書が残っていました。借用書があると、相手方は「貸付金の存在は明らかだ」と強く主張してきます。また、会計帳簿上も未返済の貸付金として残っているように見える場合、裁判官の第一印象としては相手方に有利になりがちです。
もっとも、企業間・親族間の金銭移動は、会計処理や当事者の関係性、過去の精算の経緯によって意味合いが変わることがあり、借用書があるからといって直ちに請求どおりの支払い義務が確定するわけではありません。特に本件のように時間が経過している案件では、時効の成否が勝敗を左右し得ます。
さらに注意が必要なのが、相手方が「その後に債務を承認した」「支払いを約束した」などと反論してくるパターンです。もし裁判所に債務承認と評価される事情があると、時効を主張できなくなる可能性もあるため、当事務所では相手の反論を想定した上で、事実関係を徹底的に棚卸しする必要がありました。
当事務所の対応:短い期限の中で全体方針を固め、想定反論を封じる主張を組み立てた
最初に行ったこと:論点になっていない事情まで含めた徹底ヒアリング
ご依頼時点では、すでに答弁書が提出されており、次回書面の期限が限られていました。そこで当事務所は、通常の「訴状の請求原因に対する反論」だけで終わらせず、紛争の経緯、グループ内の資金移動、過去の精算交渉の有無など、論点として表面化していない事情も含めて詳細に聴き取りを行いました。
この段階で「何が勝敗を分けるか(見通し)」を固めておかないと、相手の主張に合わせて後追いで対応することになり、結果的に不利な流れになります。本件はまさに初動が重要なタイプでした。
証拠の棚卸し:経理資料と当時のやり取りを集約し、時系列を一枚に落とし込む
親族紛争が絡む案件では、「誰が何を言ったか」の認識が食い違いやすく、記憶だけに頼ると主張が揺れます。そこで当事務所は、社内の経理担当・当時の関係者とも連携しながら、送金記録、会計帳簿、社内稟議、議事録、メール・書面などを可能な範囲で集約し、争点ごとに紐づけて整理しました。
- 借用書の作成経緯・署名押印の状況(誰の権限で作成されたか)
- 送金・返済の有無が分かる入出金記録(通帳・振込明細等)
- 当時の精算交渉に関するメール・書面・メモ
- 会計帳簿上の処理(貸付金計上・振替・相殺等)の経緯
この「一枚の時系列」によって、時効の起算点や、相手が債務承認と主張し得る場面を客観的にチェックできるようになり、後述の書面作成にも直結しました。
時効の検討:起算点と中断・更新の可能性を時系列で整理
次に、貸付けの時期、返済の有無、取引の終了時期などを時系列で整理し、時効の起算点・完成時期を見立てました。あわせて、相手方が主張し得る「時効が止まった(中断した)」「後から時効が更新した」などの論点が入り込む余地がないかを洗い出しました。
この作業では、借用書の記載内容だけでなく、会計帳簿上の処理、社内稟議、当時のやり取り(メール・書面)、関係者の説明など、複数の資料を突き合わせて整合性を確認しました。
債務承認の芽を潰す:相手が使いそうな材料を先に検証
本件では、時効が争点になり得る一方で、相手方が「債務を認めた場面があるはずだ」と反論してくることが予想できました。そこで当事務所は、あらかじめ裁判例も調査・検討し、債務承認と評価されやすい類型(例えば、支払いを前提とする合意文言、分割払いの提案、債務を前提とした精算書の作成など)を踏まえながら、当社側に不利な材料がないかを徹底的に確認しました。
その結果、相手方が主張してきそうなポイントについて、事実関係を早期に固め、反論の根拠となる資料・経緯を準備できました。単に「そんな約束はしていない」と述べるのではなく、いつ・誰が・どの場面で・何を言ったのかを整理した上で、「債務承認とは評価できない」ことを先回りして主張できる状態を整えました。
準備書面の作成:裁判例の検討結果を踏まえ、読みやすいストーリーで提示
当事務所が初めて提出する書面では、上記の全体方針に基づき、主張と証拠を一つのストーリーとして組み立てました。裁判例の検討結果も踏まえ、裁判官が「何が争点で、どこで結論が分かれるのか」を短時間で把握できるよう、要点を整理して記載しました。
この段階で相手方の反論を先回りして潰しておくことで、相手方の主張の幅を狭め、裁判全体を短期決着に持ち込みやすくします。本件でも、まさにその狙いどおりの展開となりました。
結果:請求0円の完全勝訴判決を獲得
最終的に、裁判所から約1億円の請求に対して支払額0円とする判決を得ることができました。会社の命運を左右し得る金額の訴訟で、実質的な負担なく終結できたことは、経営面・信用面の双方で大きな意味を持ちます。
また、訴訟が長期化すると、経営陣・経理部門のリソースが削られ、取引先や金融機関への説明も難しくなります。本件では、争点を絞り込み、早い段階で「ここで勝てる」という軸を明確にできたことで、社内の混乱も早期に収束しました。
- 相手方の約1億円請求に対し、支払額0円で完全勝訴
- 方針を早期に固定し、争点の焦点化に成功
- 想定反論を封じたことで、短期間での決着につながった
本件でポイントになったこと:訴訟途中からの依頼でも「方針の立て直し」は間に合う
ご相談の時点で答弁書は提出済みでしたが、それでも「次に何を主張するか」「どの事実を固めるか」によって、訴訟の流れは大きく変わります。特に貸付金のような金銭請求では、相手方は書面や会計処理を材料に反論してくるため、先回りの準備が結果に直結します。
本件では、時効・債務承認という分岐点を見極め、初回から徹底したヒアリングと資料整理を行ったことで、裁判官に伝わる形で主張を提示できました。結果として、場当たり的な応酬に陥らず、短期間での完全勝訴に至りました。
弁護士からのコメント
親族経営が長く続く企業では、株式の保有関係や権利関係が複雑化し、親族同士で泥沼の紛争状態に陥ることが少なくありません。そこに「貸付金」「立替金」「精算金」などの金銭問題が絡むと、当事者の認識と会計処理がズレていることも多く、訴訟で突然大きな請求を受けるケースがあります。
紛争案件では、裁判になっているか否かにかかわらず、早い段階で全体の方針を決めることが極めて重要です。裁判例を調査・検討し、相手の反論を予測したうえで、先に有利な事情を主張しておく――この積み重ねが結果を左右します。
坂尾陽弁護士
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