ワンマンオーナーからの株式買取交渉を支援し株式譲渡契約を締結した活用事例

「ワンマンオーナーから会社を引き継ぎたい。しかし、株式買取の交渉も契約も初めてで、何から手を付ければよいか分からない」――本件は、事業承継の局面で株式買取を進めたい会社側(買い手)からのご相談でした。

現経営者がいわゆるワンマンオーナーで、経理・会計が整理されていないうえ、社内に私物が残っているなど、引継ぎの実務面でも不安が大きい状況でした。そこで当事務所が、交渉の進め方の整理から契約書作成、締結立会い、実務的な調整まで一貫して支援しました。

  • 株式を買い取って引き継ぐ場面で、交渉が止まりやすいポイント
  • ワンマンオーナーとの交渉を“感情戦”にしないための段取り
  • 株式譲渡契約書で後日のトラブルを防ぐために押さえる条項
  • 私物整理など、契約書だけでは解決しにくい実務課題の処理方法

坂尾陽弁護士

株式買取は「価格の合意」だけで終わりません。引継ぎを完了させる条件まで設計しておくことが、トラブル予防の核心です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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ご相談の背景

ご依頼企業様は、組織の立て直しのために経営体制を刷新し、現経営者(ワンマンオーナー)から事業を引き継ぐことを決意されました。引継ぎの方法として、株式を買い取って支配権を移転するスキームを検討していましたが、M&Aや株式買取交渉の経験がなく、進め方に強い不安がありました。

また、ワンマンオーナーは権威的で他人の意見を聞き入れない傾向があり、経理会計の区分も曖昧でした。そのため、交渉の場面で条件が二転三転したり、引継ぎ後に「聞いていない」「そんな約束はしていない」と争いになったりするリスクが想定されました。社内にはオーナーの私物が残っており、引継ぎの大きな障害にもなっていました。

ご相談時に会社側が抱えていた主な不安

本件では、単に株式を買い取るだけでなく、引継ぎの過程で起こり得るトラブルを事前に潰す必要がありました。ご相談時点では、主に次のような点が課題として挙がっていました。

  • 株式の買取価格をどう決め、相手方の納得感をどう作るか
  • 口頭合意のまま進めた場合に、後から条件を覆されないか
  • 経理・会計が整理されていないことに起因する「隠れた負債」や「想定外コスト」が出ないか
  • 印章・通帳・契約書類・会計データなど、会社運営に必須のものがきちんと引き渡されるか
  • 社内に残る私物や、オーナー個人色の強い運用をどう整理し、スムーズに体制を移行するか

当事務所の対応

株式買取交渉の“論点”を先に棚卸しし、会社側の方針を固める

最初に行ったのは、交渉テーブルに出る前の整理です。株式買取では「いくらで買うか」だけが注目されがちですが、実務では買う範囲(対象株式)いつ支払うか(クロージング条件)何を受け取って引継ぎ完了とするか(引渡物・協力義務)など、同時に決めるべき論点が多数あります。

本件でも、社内の意思決定がブレると相手方に主導権を握られやすいため、ヒアリングを通じて「絶対に譲れない条件」と「譲歩できる条件」を明確化し、交渉の落としどころを複数パターンで準備しました。これにより、オーナー側の発言が揺れた場面でも、会社側が冷静に対案を提示できる状態を整えました。

また、ワンマンオーナーとの交渉は、正面から論破しようとすると硬直化しやすいのが特徴です。そこで、会社側の要望を一方的に突き付けるのではなく、「引継ぎ後の混乱を避けるために必要な確認」「双方が安心して取引を終えるための段取り」という形で説明できるよう、伝え方も含めて設計しました。

価格交渉は“算定根拠”と“支払い条件”をセットで提示

株式の価格は、会社の財務状況や将来性、少数株式か支配権取得かといった事情で大きく変わります。本件は、経理会計の整理が十分でない面があったため、価格交渉が感覚論になりやすいリスクがありました。

そこで当事務所では、入手可能な資料を前提に「なぜその金額が合理的といえるか」を説明できる形に整えたうえで、支払い方法(例:一括・分割、引継ぎ完了と連動した支払いなど)も併せて設計しました。価格だけを単体で争点化させず、条件全体のバランスで合意点を探ることで、交渉を前進させました。

加えて、引継ぎに必要なデータや書類が揃わないまま代金だけ先に支払ってしまうと、会社側が不利になります。そこで、支払いタイミングと引渡物を連動させ、クロージングまでの“やることリスト”を作って、合意内容が実行に移るように進行管理も行いました。

株式譲渡契約書を作成し、締結と引継ぎを“型”に落とし込む

交渉がまとまった後、当事務所にて株式譲渡契約書を作成し、弁護士立会いの下で締結しました。ワンマンオーナーが相手方の場合、口頭合意のまま進めると後から条件が変わることもあり得ます。

契約書は「署名するための紙」ではなく、「引継ぎの手順書」です。誰が・いつ・何をするかを条項で固定しておくことで、引継ぎの停滞を防げます。

本件では、たとえば次のような点を中心に、後日の紛争予防を意識して条項設計を行いました。

  • クロージング条件:株式の移転と代金支払いを実行する前提条件(必要書類の提出、会社資産・印章・通帳等の引渡しなど)
  • 引渡物・協力義務:株主名簿、株券(発行している場合)、議事録、契約書類、会計データ、ITアカウント等の引継ぎ範囲の明確化
  • 表明保証・補償:未把握の債務や私的流用が後から発覚した場合の対応(ただし、過度な負担を避けつつ現実的な落としどころを設定)
  • 競業・勧誘の制限:退任後に顧客や従業員を引き抜くなどのリスクへの備え
  • 秘密保持:交渉過程や引継ぎ内容が社外に拡散しないようにするルール化

さらに、締結時点で「契約書はあるが現場が動かない」状態を避けるため、実行段階で問題になりやすい事項(例えば、担当者の窓口、引継ぎミーティングの実施方法、取引先への周知のタイミングなど)も、可能な範囲で合意に組み込みました。

私物整理など、実務面の障害も“交渉の一部”として処理

本件では、社内に残るワンマンオーナーの私物の処理が、引継ぎの大きな障害でした。こうした点は、契約書に一言書けば終わる問題ではなく、当事者の感情や面子が絡むため、放置すると引継ぎ自体が止まってしまいます。

そこで、引継ぎのスケジュールと連動させて、私物の回収・撤去の手順、立会いの要否、保管期限、トラブル時の連絡窓口などを具体化し、当事務所が間に入って調整しました。「どこまでが会社の備品で、どこからが個人の私物か」という線引きが曖昧になりやすい点についても、現場の実情を踏まえて整理しました。

結果として、私物整理が感情的な対立に発展することを避けつつ、会社側が必要なものを確実に確保し、引継ぎの停滞を防ぐことができました。

解決結果

弁護士のバックアップの下で株式買取交渉を進め、最終的に合意に至りました。株式譲渡契約書を締結し、必要な引渡物・手続を一つずつクリアする形で、円滑な引継ぎに向けた対応を進めることができました。

ご依頼企業様としても、交渉の全体像が見えたことで社内の意思決定がしやすくなり、現経営者の発言に振り回されずに交渉を進められた点を評価いただきました。引継ぎ後の運営に必要な情報・資料を取りこぼさない形で整理できたことも、体制刷新の第一歩になりました。

交渉の早い段階で「論点の棚卸し」と「契約書で固定すべき事項」を整理したことが、スムーズな合意形成と引継ぎに直結しました。

弁護士からのコメント

会社の経営引継ぎや株式売買を行う場合は、きちんと契約書を作成することで、その場だけではなく後々のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。とくに株式譲渡契約書は、一般的な契約書と考え方や条項設計が異なるため、経験のある弁護士が関与した方が安全です。

また、ワンマンオーナーが相手方の場合、法的論点だけでなく、実務上の障害(引渡物の確保、社内の私物整理、従業員への説明、取引先対応など)が交渉を難しくします。本件でも、契約書の締結だけでなく、実務面の調整まで含めて支援することで、引継ぎを前に進めることができました。

「相手が強硬だから仕方ない」と諦める前に、交渉設計と契約設計を見直すだけで、局面が動くことがあります。特に、合意後に揉めると事業そのものに影響が出るため、早い段階で専門家を入れることが結果的にコストを抑えます。

同じような場面で、会社側が押さえておきたいポイント

本件と同じように「オーナーから株式を買い取って引き継ぎたい」と考える場面では、次の点でつまずきやすいです。

  • 交渉を始める前に、社内で譲れない条件(価格以外も含む)を言語化しておく
  • 株式の価格だけに焦点を当てず、支払い条件・引渡物・引継ぎ完了の条件をセットで合意する
  • 株主名簿や議事録、印章・通帳、主要契約など、引継ぎの対象を具体的に列挙して契約書に落とす
  • 「私物」「口約束」「担当者任せ」になりやすい実務論点ほど、手順と期限を決めて動かす
  • 合意後のトラブルを避けるため、締結・支払い・引渡しは同日または連動させ、空白期間を作らない

まとめ

  • ワンマンオーナーからの株式買取は、価格以外の論点(引渡物・完了条件・実務対応)が交渉の成否を左右します
  • 交渉の前に会社側の方針を固め、対案を準備しておくと、交渉が感情戦になりにくくなります
  • 株式譲渡契約書は「引継ぎの手順書」として設計し、締結と引渡しを確実に連動させることが重要です
  • 契約書だけで片付かない実務課題(私物整理など)も、専門家が間に入ることで前に進みます

坂尾陽弁護士

事業承継の交渉は、進め方を誤ると「合意したのに引き継げない」状態になりがちです。早い段階で弁護士に相談し、交渉と契約を同時に設計することをおすすめします。

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