本件は、親族・関係者を中心に株式が分散した譲渡制限会社で、株主間対立が限界に達していたところ、当事務所が経営を担う株主グループ(過半数を少し超える持分)の立場で受任し、投資ファンドへの全株式売却により会社を譲渡して着地させた解決事例です。
反対株主グループも40%超の持分を保有しており、要望が「売りたい」「買い取ってほしい」「やっぱり残りたい」など頻繁に揺れていました。さらに相手方には弁護士が付いていたものの、意思決定がまとまらず交渉が長期化しやすい状況でした。
そこで当事務所は、株主全員の利害を整理しつつ、譲渡制限会社の承認手続を先回りで設計し、買主(ファンド)も含めた三者の合意形成を主導しました。結果として、数十億円規模での会社譲渡を実現しました。
坂尾陽弁護士
- 過半数株主側が主導しつつ、40%超の反対株主グループも納得できる着地点を設計
- 買主(ファンド)と事前に方向性を固め、承認請求→承認決議をスムーズに通す段取りを構築
- 相手方の要望が変動しても、論点を固定して交渉を前に進める“プロセス設計”で長期化を抑制
- 最終的に株主全員が株式を売却し、数十億円規模で会社全体を譲渡
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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相談前の状況
対象会社は非上場の譲渡制限会社で、株主構成が複数グループに分かれていました。ご依頼者側は議決権の過半数を少し超える持分を保有していたものの、反対株主グループも40%超を保有し、経営方針や将来の方向性で折り合いが付かない状態でした。
加えて、会社として明確な事業承継の道筋がなく、株主間対立が続くほど、採用・取引・金融機関対応など日々の経営判断にも影響が出やすい局面に入っていました。内部で打開策を探っても、「誰が最終決定するのか」「誰が責任を負うのか」が曖昧なため、議論が堂々巡りになりやすい状況でした。
反対株主側は、株式を売却したいという意思自体はあるものの、要望が頻繁に変わり、交渉相手も増えることで、当事者間の調整コストが雪だるま式に増えていくリスクがありました。なお、少数株主側から見た場合の問題点の整理は**少数株主 弁護士相談 **サイトでまとめています。
会社側が抱えていた主な課題
会社側(経営を担う株主グループ)としての課題は、単に「高く売る/安く買う」という話ではなく、次のように複層的でした。
- 株主間の合意形成:過半数があっても、全株式を売却するには反対株主グループの納得が不可欠
- 譲渡制限会社の手続:株式譲渡承認のルートを誤ると、承認拒否や価格決定手続など別の紛争に発展し得る
- 買主対応:ファンドの投資判断に耐える情報開示・スケジュール管理・契約実務(表明保証等)が必要
- 交渉の長期化:要望が変動する相手に引きずられると、事業の足腰が弱り、買主の関心が薄れる
これらを同時に解くには、「株主対応」「会社法手続」「M&A実務」を一本の線でつなぐ必要がありました。
当事務所の対応
着地点を「全株式売却」に固定し、論点を整理
まず、株主間対立の原因と、各グループの本音(残りたいのか、降りたいのか、どこが譲れないのか)を棚卸ししました。
争点を増やすと収拾がつかなくなるため、「会社をどうするか」という出口戦略を先に決め、全株式売却を基本線として交渉の土台を固めました。
反対株主側の要望が変わるたびに“最初からやり直し”にならないよう、議論を次の枠に整理して進めました。
- 売却の方向性(売る/売らない)
- 買主の要件(誰に売るか)
- 価格と条件(いつ、いくら、どの条件で)
- 手続とスケジュール(承認・契約・クロージング)
ファンド候補を探索し、買主側の投資判断を前提にプロセスを設計
次に、買主候補として投資ファンドを中心に打診し、会社の強みが評価されやすいストーリー(成長余地・管理体制の整備余地・ガバナンス改善余地など)を整理しました。
ファンド案件では、デューデリジェンスや契約条項(表明保証、補償、クロージング条件等)が“実質の交渉本番”になるため、初期段階から実務の段取りを意識して進めました。
なお、デューディリジェンスの重要性や失敗した場合のトラブル対応については、**M&Aの失敗事例から学ぶデューデリ・契約交渉の落とし穴**も参考にしてください。
譲渡制限会社の承認手続を先回りし、承認請求のタイミングをコントロール
本件は譲渡制限会社であるため、株式譲渡には会社の承認が必要になります。ここで、形式的に承認請求が先に来ると、社内の意思決定が固まらないまま「承認する/しない」の判断を迫られ、混乱が増幅しがちです。
そこで、当事務所は譲渡先(ファンド)と事前に連絡を取り、承認の方向性を固めてから、承認請求をしてもらう段取りを採りました。具体的には、承認に必要な情報の整理、社内決議の準備、関係者説明の順序を整え、承認手続が“詰まらない”状態を作ったうえで正式手続に移行しました。
反対株主側のブレを吸収し、交渉を前に進める
反対株主側は、株式を売却したいという意向はある一方で、要望がコロコロ変わりやすく、交渉の着地点が定まりませんでした。相手方弁護士が付いていても、意思決定が整理されていないと、こちらの提案が“検討中”のまま止まってしまいます。
当事務所は、株主全員の手続スケジュールを見える化し、買主(ファンド)の検討プロセスも踏まえて、いつまでに何を決めないと取引が流れるのかを共有しました。
その結果、ファンドが登場したタイミングで方針が一気に収束し、最終合意までの調整がスムーズになりました。
最終契約(株式譲渡契約書)とクロージングを安全に完了
買主がファンドの場合、最終局面では「価格」だけでなく、表明保証、補償、誓約事項、クロージング条件など、契約実務の積み上げが必要になります。とくに株主が複数いる案件では、誰がどこまで責任を負うのかが曖昧だと、契約締結直前に揉める原因になります。
そこで本件では、契約書の構造を整理し、株主全員が署名できる形に整えたうえで、クロージング当日の資金決済・株券(又は株主名簿)の手当・役員変更等の手続まで一連で段取りしました。株主間対立がある局面でも、最後に「手続が終わらない」状態を避けるため、実務のチェックリストを作り、関係者の動きをそろえました。
結果
最終的に、株主全員が保有株式を売却し、投資ファンドが会社を取得する形で会社譲渡を実現しました。売却規模は数十億円規模となり、株主間対立の解消だけでなく、今後の経営体制・ガバナンスを含めた次のステージに移行することができました。
調整期間において、反対株主側の要望変動に振り回されず、手続と交渉の“軸”を維持し続けたことが、最終的な成功要因でした。
この解決事例から得られるポイント
同様に株主構成が割れている会社では、早期に出口戦略を決めないと、社内外の信用が毀損し、買主候補が遠のきます。本件の経験から、会社側が押さえるべきポイントは次のとおりです。
- 過半数があっても、相手の持分が大きい場合は「強行」よりも、合意形成の設計が結局早い
- 譲渡制限会社は、承認手続の段取り次第で“余計な紛争”が生まれるため、先回りが重要
- ファンドが関与する局面では、価格だけでなく、情報開示・契約条項・スケジュール管理が成否を分ける
- 過半数株主側と40%超の反対株主が対立し、事業承継も見えない状況だった
- 全株式売却を軸に、買主(ファンド)探索と手続設計を同時並行で進めた
- 承認請求のタイミングをコントロールし、譲渡制限会社の承認手続をスムーズに通した
- 約2年の調整を経て、数十億円規模で会社譲渡に成功した
株主対立が深い会社ほど、当事者同士だけで解決しようとすると、議論が発散しやすく長期化しがちです。会社側として「守るべき事業」と「譲れる条件」を整理したうえで、手続と交渉を一体で設計することが重要です。
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