会計帳簿閲覧請求で会社私物化を是正し株式買取+貸付金弁済で解決した解決事例

本件は、親族経営の非上場会社(譲渡制限会社)において、経営に関与していない大株主(過半数超の株式を保有)から会計帳簿閲覧請求を受け、役員報酬や指摘支出(私的流用を疑われる支出)をめぐって紛争化しかけたところ、会社側(代表者側)で当事務所が対応し、早期に着地させた解決事例です。

会計帳簿閲覧請求は、単に「見せる・見せない」の問題に見えても、対応を誤ると、取締役の責任追及や株主間対立の激化、金融機関・取引先への波及など、会社の信用と経営に直結します。本件では、事実関係の棚卸しと是正方針を先に固め、開示対応と並行して“出口”となる株式買取+貸付金精算まで一気通貫で設計しました。

なお、当事務所がご相談を受けた時点では、会社側は「帳簿を見せれば、経営への口出しがさらに強くなる」「誤解で炎上するのではないか」という不安が強く、感情的な対立に引きずられかけていました。そこで、法的リスクと実務リスクを切り分け、会社が守るべきラインと譲れるラインを整理したうえで、合意形成の道筋を作りました。

  • 会計帳簿閲覧請求を受けた会社側の初動(拒否→交渉への切替)を整理
  • 役員報酬・支出の指摘ポイントを棚卸しし、説明・是正の方針を構築
  • 代表者個人が株式買取と貸付金弁済を行い、総額約1200万円で紛争を終結
  • 合意書で清算条項・守秘・再発防止(経費ルール)までセットにして再燃を防止

坂尾陽弁護士

会計帳簿閲覧請求は「拒否」だけで乗り切ろうとすると、かえって裁判手続や責任追及を招きがちです。会社側の守るべきポイントを整理し、出口まで含めて設計することが重要です。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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相談前の状況

会社は創業者の代から続く親族経営で、代替わり後、経営は親族の代表者が担っていました。一方で、株式の過半数超は別の親族(経営には関与していない大株主)が保有しており、日常の経営判断には口出しをしていないものの、会社の状況が見えにくい状態でした。

親族間の距離感があるまま年月が経つと、「報告がない=不透明」「説明されない=隠している」という誤解が積み上がりやすいのが実務感覚です。本件でも、決算内容や資金繰り、役員報酬の決定プロセスが共有されておらず、大株主側の不信感が強まっていました。

その結果、大株主から「役員報酬が高すぎるのではないか」「会社の支出に不透明な点があるのではないか」との指摘があり、会計帳簿閲覧請求がなされました。会社側としては、情報漏えい(取引先情報・従業員情報・単価情報等)や、帳簿の読み違いによる誤解拡大を懸念し、当初は閲覧自体を拒否する方向で対応していました。

しかし、拒否だけで押し切ると、裁判所手続(閲覧許可の申立て等)に発展する可能性があるほか、指摘内容が役員の責任追及に結び付くと、紛争が長期化しやすい局面でした。さらに、親族企業では「会社の問題」と「家族の問題」が混ざりやすく、いったん感情が先行すると合理的な交渉が難しくなります。

このような企業内紛争についての問題点は**会社内部紛争(株主・経営権・役員)の会社側対応 **で網羅的に整理しています。

会社側が抱えていた悩み

本件で会社側(代表者側)が特に困っていたのは、次の点でした。

  • 開示の範囲が分からない:どこまで見せるべきか、どこからが秘匿情報なのかが判断できない
  • 役員報酬と支出の指摘が刺さる:説明が難しい項目があると、帳簿開示そのものが“追及の入口”になってしまう
  • 紛争が外部に漏れる不安:親族内の対立が取引先や従業員に伝わると、信用と士気が落ちる
  • 終わらせ方が見えない:帳簿を見せても不信感が残れば、次は責任追及・解任・訴訟へ進む恐れがある

当事務所が重視したポイント

本件では、会社側の利益を守りつつ、紛争を拡大させないために、次の順序で整理しました。

  • 事実の棚卸し:役員報酬の決め方、指摘支出の内容、社内承認フロー、証憑の有無を確認し「説明できる領域/是正が必要な領域」を切り分ける
  • 開示対応の設計:閲覧の範囲・方法・同席者・複写の可否・守秘の取り決め等、会社の情報管理を崩さない枠組みを作る
  • 出口(紛争終結)の設計:関係が悪化している場合は、帳簿開示だけで終わらないため、株式買取・貸付金精算などの“終わらせ方”を同時に用意する
  • 合意の実装:株式譲渡の手続(譲渡承認等)と、清算条項・守秘・連絡窓口をワンセットにして「後から揉めない書面」に落とし込む

実際に行った対応

社内資料の収集と論点整理

まず、会社側で保有している会計資料・証憑を集約し、役員報酬と支出のうち、第三者から見ても疑義が生じやすい項目を抽出しました。

帳簿上の科目だけでは誤解が生じやすいため、支出の目的、関係者、発生経緯、社内承認の有無をひも付けて整理しました。

本件では、実際に少なからず説明が難しい支出も含まれていたため、単なる“拒否”ではなく、是正を前提に交渉方針を組み立てる必要がありました。ここを曖昧にしたまま対応すると、開示の場面で矛盾が出て、結果的に会社側が不利になります。

「拒否」から「交渉」への切り替え

会社側の懸念(情報漏えい、誤解、業務への支障)を踏まえつつ、紛争の早期終結を最優先に、閲覧の条件設定と合意形成へ舵を切りました。大株主側にとっても、裁判所手続での対立はコストと時間がかかり、親族関係の修復が困難になります。

そこで、会社側としては「説明できる部分は説明し、是正が必要な部分は是正する」「その代わり、これ以上の対立は終わらせる」というパッケージでの解決を提案しました。交渉の場では、感情に触れやすい言い回し(“不正”“横領”など)を避け、客観的に確認できる事実から順に説明することを徹底しました。

買取資金とスキームの整理

本件では、会社が自己株式として買い取る方法も理論上はあり得ますが、資金繰り・会社財産の流出・社内外への説明のしやすさ等を総合的に考慮し、代表者個人が買主となる形で設計しました。これにより、会社の運転資金を守りつつ、当事者間の対立を“株主関係の清算”として整理しやすくなります。

また、金額の内訳については、株式の対価と貸付金の弁済を混ぜてしまうと、後から「どちらの支払いだったのか」で紛争が再燃します。そこで、支払いの趣旨(株式譲渡対価/貸付金弁済/その他の清算金)を整理し、合意書でも明確にしました。

株式買取+貸付金弁済による清算

最終的には、大株主が保有する株式を代表者個人が買い取ること、あわせて会社に対する貸付金も精算すること(弁済すること)で合意しました。総額は約1200万円となり、会社側としても、経営の不確実性を抱えたまま長期紛争化することなく、早期に区切りを付けることができました。

合意書では、株式譲渡(買取)の条件だけでなく、相互の清算条項、守秘、今後の連絡窓口、追加請求をしないこと等を明確化し、蒸し返しを防止しました。とくに親族間では「口約束」が後で争点化しやすいため、合意内容を文章で固定することが重要です。

解決結果

本件は、会計帳簿閲覧請求をきっかけに表面化した役員報酬・支出の指摘を、会社側で受け止めて整理し、株式買取+貸付金弁済(総額約1200万円)で紛争を終結させた事案です。代表者個人が責任ある形で決着を付けたことで、会社としては経営の安定を取り戻し、対外的な信用不安の拡大も回避できました。

また、紛争の終結と同時に、社内の経費精算ルールや承認フローを見直し、役員報酬の決定手続も記録に残す運用へ切り替えました。これにより、同様の疑念が再燃しにくい体制を整えることができました。

同種トラブルで会社側が注意すべきこと

会計帳簿閲覧請求を受けたとき、会社側は「見せたら負け」と感じがちですが、実務では次の観点を押さえることが重要です。

  • 拒否方針の前に、まず事実を整理する(証憑が揃っているか、承認フローが機能しているか)
  • 開示のコントロール(範囲・方法・守秘・複写)を設計し、情報管理を崩さない
  • 出口を同時に作る(株式買取、役員体制の見直し、経費ルール整備など)
  • 合意書で“蒸し返し”を防ぐ(清算条項・守秘・窓口一本化)

会社側の状況(株主構成、資金繰り、親族関係、指摘内容の濃淡)により最適解は変わりますが、「初動で事実整理」「出口まで含めて設計」「書面で固定」の3点は多くの案件で共通します。

まとめ

  • 会計帳簿閲覧請求は、会社側の初動次第で「短期終結」も「長期紛争化」も起こり得る
  • 役員報酬・支出の指摘がある場合、拒否一本ではなく、事実整理と是正方針の提示が有効
  • 本件は株式買取+貸付金弁済(総額約1200万円)で清算し、経営の不確実性を解消した
  • 合意書に清算条項・守秘・再発防止を入れることで、蒸し返しを防止できる

坂尾陽弁護士

会計帳簿閲覧請求への対応は、会社法上の手続だけでなく、役員責任・資金繰り・親族関係・レピュテーションまで含めた総合判断が必要です。会社側での最適な着地点を一緒に設計します。

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