少数株主の株式買取に対応した解決事例

本件は、譲渡制限会社(非上場会社)において、少数株主(約30%)から「株式を買い取ってほしい」と申出があったところ、会社側・支配株主側が買取資金価格交渉の壁に直面しつつも、最終的に支配株主個人が2~3億円規模で株式を取得し、紛争化を回避して解決した事案です。なお、少数株主側から見た場合の問題点の整理は**少数株主 弁護士相談 **サイトでまとめています。

少数株主は勤務を継続する意向があり、株主としての立場と従業員としての立場が混在するため、対応を誤ると感情対立が深まり、経営にも人事にも悪影響が及びます。そこで当事務所は、譲渡制限株式の承認手続や裁判所の売買価格決定手続(会社法上の手続)を踏まえつつ、会社側の資本政策・事業承継上のメリットが最大化する形で、交渉だけで着地するスキームを設計しました。

  • 少数株主からの買取申出(資金需要)と、勤務継続の希望が同時に存在
  • 会社側の課題は「買取資金の手当て」と「価格の妥当性」の2点
  • 会社法上の手続リスク(承認手続・価格決定)を見据えて交渉の主導権を確保
  • 支配株主個人が買主となり、2~3億円で少数株式を取得
  • 株主構成を整理し、今後の事業承継・資本政策に備えた

坂尾陽弁護士

少数株主の株式買取は「買う/買わない」より先に、会社にとって得になる出口(支配権・資本政策・人事の整理)を設計すると合意形成が進みます。

執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)

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ご相談前の状況(会社側)

対象会社は、親族経営で長年事業を継続してきた非上場会社でした。代替わりを機に株式が親族へ分散し、現経営陣(支配株主)が過半数の議決権は確保していたものの、定款変更や組織再編等の場面を見据えると2/3超の安定的な議決権までは届いていない状況でした。

そこへ、株式の約30%を保有する少数株主から、資金需要があるため「株式を買い取ってほしい」と申し出がありました。

会社としては、社内の人員配置・情報管理の観点からも無視できない一方、まとまった買取資金の捻出が難しく、また提示された希望価格にも大きな開きがあり、交渉が膠着していました。

加えて、譲渡制限会社であっても、少数株主が第三者への譲渡を打診し、会社が承認しない場合には、一定の手続のもとで会社側に買取対応が求められ得ます。

会社側が「拒否」を続けるほど、時間とコストが増え、関係性も損なわれるリスクが高い局面でした。このような企業内紛争については**会社内部紛争(株主・経営権・役員)の会社側対応 **で網羅的に整理しています。


当事務所が立てた方針

会社側のゴールを「資本政策」として言語化する

本件は単なる「親族間の揉め事」ではなく、会社側にとっては資本政策(株主構成の最適化)の問題でした。

将来の事業承継・金融機関対応・M&A等を見据えると、株主が分散したままの状態は、意思決定の遅れや追加コストに直結します。

そこで、会社側が今回の買取で得たい成果(支配権の安定化、将来の承継準備、人事面の火種の解消)を先に整理しました。

買主を「会社」ではなく「支配株主個人」とする選択

自己株取得(会社が自社株を買い取る)も選択肢ですが、分配可能額や手続の整備が必要で、社内稟議や金融機関との調整も含めて時間がかかることがあります。

そこで本件では、スピードと実行可能性を優先し、支配株主個人が買主となるスキームを軸に検討しました(もちろん、税務・資金繰り・株主間合意の観点から最適解を比較したうえで判断します)。

また、当該スキームは税負担の面で少数株主側にとってメリットがあることから、当該スキームを採用することが株式の買取価格の減額交渉の材料となる面もあります。

会社法上の手続を踏まえ、交渉の「落とし所」を先に設計

譲渡制限株式の承認手続や、合意ができない場合の売買価格決定手続といった会社法上の枠組みは、紛争化したときの「着地点」を示すものでもあります。会社側としては、裁判所手続に進んだ場合の不確実性(評価レンジのぶれ、時間、対外的影響)を踏まえ、交渉で合意できる価格帯・条件を現実的に定めることが重要です。


実際の対応と交渉の流れ

財務・株主構成を整理し、価格交渉の土台を作る

まず、直近の決算書や資金繰り表、事業計画などを基に、会社の収益力・キャッシュ創出力を整理しました。

同時に、株主構成(誰が何%を持つか)と、今後必要になり得る特別決議事項(定款変更、組織再編、資本政策)を洗い出し、会社側にとって株式集約のメリットがどこにあるかを明確化しました。
(参考)株主紛争とは?原因・典型パターン・解決手段を解説(会社側)

「第三者譲渡の打診→承認手続」のカードを冷静に扱う

少数株主側が第三者への譲渡を希望し、会社が承認しない場合、会社法上は会社または指定買取人が株式を買い取る枠組みが用意されています。

そこで当事務所は、対立を煽るのではなく、あくまで会社側が取り得る選択肢とリスクとして整理し、交渉の場では「裁判所手続も視野に入る以上、合理的な条件で早期に合意した方が双方に得策」というストーリーを組み立てました。

資金手当てと支払い方法を整え、合意の現実性を高める

買取資金については、支配株主個人が金融機関と調整して資金を確保する方法、支払時期を分ける方法など、実行可能な選択肢を検討しました

。価格交渉は、会社の実態に照らした評価レンジを提示しつつ、少数株式であることによる流動性の制約や、将来紛争の予防(清算条項・相互免責)とセットで条件を詰めていきました。

株式譲渡契約書と付随合意で「後日の火種」を消す

最終局面では、株式譲渡契約書に加え、表明保証や誓約、秘密保持、紛争の蒸し返しを防ぐ清算条項等を整備しました。

勤務継続が前提のため、当事者の心理的負担を増やさない表現・運用も意識し、社内の関係者への説明範囲(誰にどこまで伝えるか)も含めて調整しました。


解決の結果

結果として、支配株主個人が少数株主の保有株式(約30%)を2~3億円で買い取り、株主構成を整理することができました。裁判所手続には進まず、交渉のみで合意成立となりました。

会社側としては、将来の事業承継・資本政策を進めやすい株主構成となり、特別決議の局面でも意思決定が安定しました。また、少数株主が勤務を継続する前提でも、合意内容を丁寧に設計したことで、社内の混乱を最小限に抑えることができました。


本件で重要だったポイント(会社側)

本件の学びは、「少数株主の買取申出=面倒な要求」と捉えるのではなく、会社側にとってのメリットを回収できる形に組み替えることにあります。とくに重要だったのは次の点です。

  • 資本政策としての目的(承継・M&A・金融機関対応)を先に定め、交渉の軸をぶらさなかった
  • 買主の選択(会社/支配株主個人/指定買取人)を比較し、最も実行可能なルートに絞った
  • 会社法上の手続を理解したうえで、裁判所手続の不確実性を交渉の「背景」として使った
  • 価格だけでなく条件(清算条項・守秘・表明保証)をセットにして、後日の紛争を防いだ
  • 勤務継続を前提に、株主関係と雇用関係を切り分け、社内運用まで見据えて合意した

同様のご相談で、会社側が準備しておくとよい資料

少数株主から買取を求められた場合、初動で次の資料が揃っていると、交渉が一気に現実的になります。

  • 最新の株主名簿・株式の取得経緯が分かる資料(相続・贈与・譲渡など)
  • 定款(譲渡制限の定め、買取人指定の運用が分かるもの)
  • 直近数期分の決算書・試算表・資金繰り表
  • 今後の資本政策・事業承継の方針メモ(外部説明用でなく、社内整理で可)
  • 当該少数株主が勤務継続する場合は、職務・権限・情報アクセスの現状整理

まとめ

  • 少数株主からの買取申出は、会社側にとっても資本政策の好機になり得る
  • 譲渡制限株式は「売れない」わけではなく、会社法上の手続を踏まえた交渉設計が重要
  • 資金と価格の問題は、買主の選択・支払方法・条件設計で解けることが多い
  • 勤務継続がある場合は、株主関係と雇用関係を切り分けて火種を残さない

坂尾陽弁護士

少数株主から買取を求められた段階でご相談いただければ、会社法上の手続・価格交渉・契約書整備まで一気通貫で整理し、紛争化を避ける着地点を設計できます。

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