「社内に法務担当者を置くべきか、それとも顧問弁護士を付けるべきか」は、成長フェーズの会社ほど悩みやすいテーマです。結論から言うと、中小〜中堅企業では、専任の法務人員を採用する前に「顧問弁護士+社内の窓口(兼任でも可)」の体制を作る方が合理的な場面が多くあります。
一方で、業務量・業種・リスクの種類によっては、法務部やインハウスローヤー(企業内弁護士)を置くメリットが大きくなる会社もあります。この記事では、顧問弁護士と社内法務の違いを「費用・役割・スピード・実務運用」の観点で整理し、あなたの会社での最適解を見つけるための考え方をまとめます。
- 社内法務(法務部・法務担当者・インハウス)と顧問弁護士の役割の違い
- 費用の考え方(人件費・顧問料・スポット費用・見えないコスト)
- 中小〜中堅で多い「窓口社員+顧問弁護士」の現実的な運用例
- 社内法務を置くべきケース/顧問を優先すべきケース
- 体制を作るときに失敗しやすいポイント(範囲・レスポンス・専門性)
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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社内法務と顧問弁護士の違い(まず定義をそろえる)
「社内法務」といっても、実際には次のように複数の形があります。比較の前提として、言葉のズレをなくしておきましょう。
- 法務担当者(非弁護士):総務・人事・経理・営業管理などが兼任して、契約書の一次確認や社内調整を担う
- 法務部:一定規模以上で、複数名のチームとして契約・ガバナンス・コンプライアンス等を内製する
- インハウスローヤー(企業内弁護士):弁護士資格を持つ社員が、会社の内部で法務判断・交渉・紛争対応を担う
- 顧問弁護士:社外の弁護士と顧問契約を結び、継続的に相談・レビュー・対応支援を受ける
このうち、中小企業で現実的に多いのは「(兼任の)窓口社員+顧問弁護士」の組み合わせです。顧問弁護士の全体像は、顧問弁護士(顧問契約)の総合ページでも整理しています。
結論:中小〜中堅は「顧問+窓口」で合理化しやすい
社内法務と顧問弁護士は、どちらが上という話ではありません。ただ、会社規模と業務量を踏まえると、一般的に次の傾向があります。
- 小規模(代表者が意思決定の中心):まず顧問弁護士を付け、代表者が直接やり取りするか、窓口社員(総務等)を1名置くのが現実的
- 中堅(部門が増え案件が増える):兼任の法務担当者を置きつつ、顧問弁護士に判断・交渉・紛争対応を任せる「ハイブリッド」が機能しやすい
- 大企業/規制産業/高頻度で法務案件が出る会社:法務部・インハウスの必要性が上がり、顧問は専門領域や紛争対応の補完として活用しやすい
中小企業が専任法務を採用する場合、採用・教育・社内調整のコストが重く、しかも「法務の仕事量」が常にフルタイムで発生するとは限りません。そのため、固定費を抑えつつ専門性を確保できる顧問弁護士の方が、費用対効果が出やすいのが実務感です。
費用で比較:社内法務の人件費と顧問料の考え方
判断で最も誤解が多いのが「費用」です。社内法務は給与だけでなく、社会保険料の会社負担、採用コスト、教育コスト、PC・席・管理コスト等も含めて考える必要があります。
社内法務(担当者・法務部)にかかるコストのイメージ
例えば、月給35万円の社員を法務担当として採用した場合でも、会社側の負担は給与だけでは終わりません。賞与・社会保険の会社負担・採用費・業務引継ぎ等を含めると、月あたり数十万円の固定費になるのが一般的です(会社規模や雇用条件により変動します)。
顧問弁護士にかかるコストのイメージ
顧問料は、相談範囲・対応スピード・契約書チェックの量などで幅がありますが、月額数万円〜十数万円に収まるケースも多く、社内法務の固定費と比べると「社員1名の総コストの1/5以下」になることも珍しくありません。
顧問料の具体的な相場感や、スポットとの比較は、顧問弁護士費用の相場・料金体系で詳しく整理します(※プラン設計により大きく変わるため、考え方が重要です)。
費用比較は「月額の安さ」だけでなく、トラブルを未然に防げた結果としての損失回避(回収不能、炎上、退職、行政対応など)まで含めて判断すると、顧問の効果が見えやすくなります。
役割で比較:できること・得意領域・限界
次に、役割(できること)で整理します。社内法務と顧問弁護士は、得意領域が部分的に重なりつつも、強みが異なります。
社内法務が強いこと
- 社内調整:事業部の事情やスケジュールを踏まえた落としどころを作る
- 運用設計:契約書テンプレート、稟議フロー、押印ルール、社内規程など「回る仕組み」を整える
- 一次レビュー:定型契約のチェック、条項の抜け漏れ確認、相手方との事務的なやり取り
顧問弁護士が強いこと
- 高度な法的判断:条文・判例・ガイドラインを踏まえたリスク評価と代替案提示
- 交渉・紛争対応:クレーム、債権回収、労務トラブル、訴訟・調停などの実戦対応
- 専門領域:M&A、知財、個人情報、広告表示、国際取引など、論点が尖った場面の対応
- 第三者性:社内の空気に引っ張られにくく、経営判断に必要な「リスクの見える化」をしやすい
「顧問弁護士は何をしてくれるのか?」を具体的に知りたい方は、顧問弁護士の業務内容・相談できることもあわせてご覧ください。
スピードで比較:初動対応の作り方が成果を分ける
法務は、結論の正しさだけでなく初動の早さで結果が変わる場面が多くあります。顧問契約の価値が出やすいのは、まさにここです。
- 顧問弁護士:会社理解が進んでいる前提で相談でき、担当弁護士の稼働確保もしやすい(契約設計による)
- 社内法務:社内の一次情報にアクセスしやすく、現場の動きを止めずに整理できる
実務では「社内で事実整理・資料収集を進めつつ、早めに顧問へ相談して方針を決める」という動きが最も強いです。顧問導入の必要性に迷う場合は、顧問弁護士は必要?導入すべき会社の特徴で判断軸を整理しておくとスムーズです。
中小〜中堅で多い運用例:「窓口社員+顧問弁護士」で回す
中小企業では、法務を専任で抱えるよりも「窓口を決めて顧問と回す」方が現実的です。ポイントは、顧問弁護士に丸投げするのではなく、社内に最低限のハブを置くことです。
窓口社員が担うと回りやすい業務
- 相談の優先順位づけ(緊急度・期限・影響範囲)
- 事実関係の整理(時系列、メール・チャット・契約書の収集)
- 社内関係者の調整(営業・人事・経理・現場など)
- 弁護士からの質問への回答・追加資料の回収
顧問弁護士に寄せた方がよい業務
- 契約条項の修正提案(代替案の提示を含む)
- 相手方との交渉文面(内容証明、通知書、和解案等)
- 労務・解雇・ハラスメント等の高リスク案件の方針決定
- 訴訟・労働審判・行政対応など、外部対応が必要な案件
社内の窓口が曖昧だと、情報が散らばり、弁護士の確認コストが増えて対応が遅れがちです。「誰が」「何を集めるか」を決めるだけで、顧問の効果が出やすくなります。
社内法務を置くべきケース(顧問だけでは足りなくなる兆候)
次のような兆候がある場合、顧問弁護士を付けたうえで、社内法務の強化(兼任→専任、法務部化、インハウス採用等)を検討する価値があります。
- 契約書のレビュー依頼が毎週のように発生し、定型化だけでは追いつかない
- 従業員数が増え、労務案件(採用、評価、休職、懲戒等)が高頻度で出る
- 個人情報・広告表示・金融/医療など、規制対応が日常業務の中心になっている
- 海外取引やM&Aが増え、専門論点が複数同時進行する
- 子会社・拠点が増え、ルール統一やガバナンスが重要課題になっている
ただし、この場合でも「全部を内製化する」必要はありません。社内法務は運用設計と一次対応を厚くし、専門領域や紛争対応は顧問弁護士に任せる、という切り分けが現実的です。
顧問弁護士を選ぶときに失敗しやすいポイント
顧問を付けても成果が出ないケースの多くは「契約前のすり合わせ不足」です。次の3点は最低限チェックしておくことをおすすめします。
- 業務範囲:顧問料に含まれる業務/別料金になりやすい業務の線引き
- レスポンス:緊急時の連絡手段、初動の目安時間、担当体制(属人化しないか)
- 専門性:自社の業種・論点(契約、労務、債権回収等)に強いか
具体的な質問集や比較軸は、顧問弁護士の選び方・探し方でチェックリスト形式で整理しています。契約書面の確認ポイントは、顧問契約書で確認すべき条項も参考になります。
顧問契約の相談窓口やプランの概要を知りたい方は、顧問弁護士(顧問契約)のご案内もご覧ください。
まとめ
- 社内法務には「兼任担当」「法務部」「インハウス」など複数の形がある
- 中小〜中堅では、専任採用の前に「窓口社員+顧問弁護士」の体制が合理的になりやすい
- 費用比較は給与だけでなく、採用・教育・社会保険等を含めた総コストで見る
- 社内法務は運用設計・社内調整、顧問弁護士は高度判断・交渉・紛争対応が強い
- 業務量が増えたら、顧問を維持しつつ社内法務を段階的に厚くするのが現実的
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