会社分割は、事業を切り出して再編したり、M&Aのスキームとして利用したりする場面が増えています。一方で、分割後に「この債務はどの会社が支払うのか」「そもそも会社分割で債務から逃げたのではないか」といった会社分割 責任をめぐる紛争も少なくありません。
特に、
「会社 分割 トラブル」「会社 分割 紛争」といったキーワードで検索している方は、
- すでに債権者や取引先から請求・クレームを受けている
- 会社分割のスキームを検討中だが、責任分担が本当に大丈夫か不安
といった状況にあることが多いはずです。
そこで本記事では、
- 会社分割で債務や契約上の責任がどの会社に承継されるのかという基本ルール
- 会社分割後に実際に起こりやすい債務・責任トラブルのパターン
- 濫用的 会社 分割と評価された場合の残存債権者保護・承継会社の責任
- 会社分割を設計・実行する際に押さえておきたい予防策
- トラブルが疑われるときの初動と、弁護士に相談すべきタイミング
を中心に解説します。
会社分割は「債務を切り離せる便利な制度」と誤解されがちですが、債権者保護や濫用的会社分割の規制など、責任リスクも非常に重い領域です。安易にスキームを組む前に、一度整理しておきましょう。
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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会社分割と債務承継・責任分担の基本ルール
まずは、会社分割で債務や契約上の責任がどのように移るのか、基本的な枠組みを押さえておきます。
1 会社分割の基本構造
会社分割とは、分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、承継会社(既存会社)や設立会社(新会社)に承継させる組織再編をいいます(会社法2条29号・30号)。
- 分割会社:事業を切り出す側
- 承継会社:既存会社に事業を移す「吸収分割」の受け手
- 設立会社:新しく作った会社に事業を移す「新設分割」の受け手
吸収分割では、吸収分割契約で定めた効力発生日に、契約で定めた範囲の権利義務が承継会社に一括して移ります。新設分割では、新設会社の設立日に、新設分割計画の定めに従って権利義務が移ります。
契約の相手方や債権者の個別同意を得なくても、法律上の包括承継が生じる点が、通常の債務引受・契約譲渡と大きく異なるポイントです。
2 「免責的」か「重畳的」かで大きく変わる責任
会社分割で問題となるのが、分割会社がその債務から免責されるのか、それとも分割後も責任を負い続けるのかという点です。
実務上は、次のイメージで整理できます。
- 免責的債務引受
→ 承継会社・設立会社が債務者として全面的に引き受け、分割会社はその債務について原則として責任を負わなくなるパターン。
→ 債権者にとっては「債務者が変わる」ため、会社法上の債権者保護手続(官報公告・個別催告・異議申立て)が重要になります。 - 重畳的債務引受(連帯責任型)
→ 債務は承継会社等に移るが、分割会社も引き続き同一債務について責任を負うパターン。
→ 債権者は、分割後も分割会社に請求できるため、一定の場合には債権者保護手続を省略できるとされています。
どちらの形を採るかは、会社分割契約・計画の定め次第です。そのため、「会社分割したから旧会社はもう責任を負わないはず」といった一律の理解は危険であり、契約書・計画書・開示書類を精査することが不可欠です。
3 債権者保護手続と責任との関係
会社分割で債務者が実質的に変わる場合、会社法は債権者保護手続(官報公告・「知れたる債権者」への個別催告・異議申立期間の付与)を義務づけています。
- 異議を述べた債権者には、原則として
– 金銭による弁済
– 相当な担保の提供
– 信託会社への信託等
を行う必要があります。 - 一定の場合(重畳的債務引受を定めるなど)、債権者保護手続を省略できるケースもありますが、分割会社の純資産の実質的な毀損がないことが前提とされています。
「会社分割の手続きは法務局の登記だけで完了する」と考えられていることがありますが、実際には、債権者保護手続の設計・実行を誤ると、その後の責任分担や無効・差止めの争点になりやすいポイントです。
会社分割で典型的に起こる債務・責任トラブル
ここからは、実務でよく見られる会社 分割 トラブル/会社 分割 紛争のパターンを整理します。
1 「どの会社が支払うのか分からない」紛争
もっとも典型的なのが、債務や契約上の義務の帰属が不明確なケースです。
- 分割対象事業に絡む債務だが、スキーム設計の段階で棚卸しが十分でなかった
- 会社分割契約・計画の権利義務表に記載がなく、「事業との関連性」で争いになる
- グループファイナンス(グループローン・保証・担保)が複雑で、「どこまでが承継範囲か」があいまい
このような場合、
- 債権者は「分割会社・承継会社の両方に請求できるはず」と主張し、
- 会社側は「自社は責任がない/限定されるはず」と反論する、
という構図で、支払義務の有無や範囲をめぐる紛争に発展しがちです。
2 債権者保護手続の不備をめぐる争い
債権者保護手続の実行が不十分な場合も、大きな火種になります。
例えば、
- 債権者リストに漏れがあり、「知れたる債権者」への個別催告が行われていない
- 官報公告・個別催告の文言や期間設定に不備があり、効力発生日との関係で争いが生じる
- 異議を述べた債権者への弁済・担保提供がなされないまま、会社分割が実行されてしまった
こうしたケースでは、
- 会社分割の差止請求や会社分割無効の訴え
- 債権者側からの損害賠償請求(取締役の責任追及など)
といった形で、長期の紛争に発展することもあります。
3 保証・担保・継続契約の扱いをめぐるトラブル
会社分割では、借入金・リース・賃貸借・保証契約など、長期にわたる契約が多数からみ合います。i
問題になりがちなのは、例えば次のようなケースです。
- 分割会社が金融機関の借入について連帯保証人となっているが、
– どの会社が保証人になるのか、
– 保証契約を継続するのか解除するのか、
が十分に整理されておらず、金融機関・グループ内で紛争になる。 - 重要な賃貸借契約の賃借人が承継会社に変わったが、賃貸人との間で「無断譲渡・無断転貸」に該当するとして解除・違約金請求が争われる。
- 継続的な取引基本契約の当事者が承継会社に変わったことを取引先が問題視し、「信用力が違う」「条件が違う」として支払拒否・条件見直しを求めてくる。
4 「説明不足」による信義則上の紛争
形式的には会社法上の手続を満たしていても、実務では、
- 主要債権者・取引先に対して十分な説明・協議をしないまま会社分割を行った結果、
- 「実質的には債務から逃げるためのスキームだ」「信用を裏切られた」として紛争になる
ケースも少なくありません。
債権者保護手続はあくまで最低限の法的枠組みにすぎません。特に金融機関や重要な取引先については、早い段階から事業・債務の帰属や今後の支払計画を説明しておくことが、紛争予防のうえで非常に重要です。
坂尾陽弁護士
濫用的会社分割と残存債権者の保護ルール
次に、近年の大きな論点である濫用的 会社分割と、残存債権者保護のルールを整理します。
1 濫用的会社分割とは何か
濫用的会社分割とは、簡単にいえば、
優良事業や資産を新会社・承継会社に移し、負債を分割会社側に残したまま、債権者に十分な説明や保護を行わない会社分割
のことを指します。
このようなスキームが問題視されるのは、
- 分割会社に残った負債の支払原資が細り、
- 残存債権者(分割後も分割会社に対する債権を持ち続ける債権者)が実質的に回収できなくなる
ためです。
2 詐害行為取消権と最高裁判例
旧会社法(改正前)では、残存債権者を保護する明文の規定がなく、
- 債権者が民法の**詐害行為取消権(民法424条)**を用いて会社分割を争えるか
が大きな論点でした。
2012年の最高裁判決は、新設分割についても詐害行為取消権の行使が可能であると判断し、残存債権者が会社分割により移転した財産の返還・価額賠償を求め得ることを認めました(もっとも、組織再編自体の無効は別途「無効の訴え」で争う必要があるとされました)。
3 会社法改正後の「残存債権者保護」
その後の会社法改正(平成26年改正・平成27年施行)により、
- 分割会社が残存債権者を害することを知って会社分割を行った場合には、
- 残存債権者は、承継会社・設立会社に対して、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求できる
とする規定が設けられました。
ポイントは、
- 会社分割の形をとっても、
- 「債権者を害する目的(認識)がある濫用的スキーム」であれば、
- 承継会社側も、受け取った財産の価額の範囲で責任を負い得る
という点です。
また、
- 吸収分割の場合、承継会社が「債権者を害することを知らなかった」ことを立証できれば免責される余地があるのに対し、
- 新設分割では、承継会社(設立会社)側の善意・悪意に関わらず責任追及が認められる、とされています。
4 時効・除斥期間にも注意
残存債権者が承継会社等に請求できる期間も、法律で制限されています。
- 「債権者を害することを知って分割をしたことを知った日」から2年以内
- 会社分割の効力発生日から20年以内
に請求(または請求の予告)を行わなければならないとされています。
会社分割から年数が経っていても、「実は当時のスキームは濫用的だったのではないか」と問題になるケースがあります。残存債権者として対応を検討する場合も、分割会社側としてリスク管理する場合も、時効・除斥期間のチェックは欠かせません。
会社分割を設計・実行するときのチェックポイント
ここからは、会社側(分割会社・承継会社)が会社 分割 責任をめぐるトラブルを予防するために、事前に押さえておきたいポイントを整理します。
1 債権債務の棚卸しと「承継表」の精度
まず重要なのは、分割対象事業に関連する債権債務の棚卸しです。
- 金融機関借入・社債・保証
- リース・賃借・販売代理店契約などの長期契約
- 訴訟・紛争予備軍案件、行政処分・課徴金リスク
- 従業員・退職給付・税金等の潜在債務
これらを洗い出したうえで、
- どの債務・契約をどの会社に承継させるのか
- 承継しない場合、分割会社の支払能力・事業計画はどうなるのか
を、会社分割契約・計画の**「承継権利義務表」**に漏れなく反映させる必要があります。
- まずは、分割対象事業に紐づく債権・債務・契約のリストを作成
- 各項目について、承継会社/分割会社のいずれが負担するかを明確化
- 紛争・行政調査・潜在債務など「見えにくいリスク」を別途メモで整理
- 会社分割契約・計画の権利義務表に、上記を正確に反映させる
- 実務担当者だけでなく、外部専門家(弁護士・会計士)のレビューを受ける
2 債権者保護手続と主要債権者への説明
債権者保護手続は、単に官報公告・個別催告を形式的に済ませればよいものではなく、スケジュールと内容の設計が重要です。
- 官報公告の掲載タイミングと、異議申立期間の設定
- 「知れたる債権者」への個別催告の漏れ防止
- 異議を述べた債権者への弁済・担保提供の方法
に加えて、特に金融機関や重要取引先などについては、
- 会社分割の目的・事業再編のストーリー
- 分割後の債務返済計画
- 担保の付け替え・保証の整理方針
を個別に説明し、納得感を得ておくことが、後の紛争予防につながります。
重畳的債務引受を用いると、債権者保護手続を省略できる場合がありますが、その分、分割会社の責任が残るため、「どの債務についてどの程度責任を残すのか」という経営判断が必要です。単に手続簡略化のために使うのではなく、債権者との関係や分割後の財務バランスを踏まえて慎重に検討すべきです。
3 濫用的会社分割と評価されないための工夫
事業再生や事業承継の一環として会社分割を使う場合、「債権者を害する目的ではない」ことが客観的に説明できるようにしておくことが重要です。
具体的には、
- 分割の目的とビジネス上の合理性(選択と集中・再建の必要性など)を文書で残す
- 分割後も一定の範囲で分割会社が債務を負担し続ける、又は保証を付けるなど、債権者保護を配慮した設計にする
- 分割会社に残る資産・キャッシュフローが、残存債権者の回収可能性を大きく損なわないようにする
- 残存債権者に対しても、可能な限り説明・協議の場を設ける
などが挙げられます。
「分割会社には負債だけ残し、優良事業は全部新会社へ」という設計は、ビジネス上の合理性や債権者への配慮を十分に説明できない限り、濫用的会社分割と評価されるリスクが高くなります。
4 紛争が想定される場合の条項設計と紛争解決条項
債務承継・責任分担をめぐる紛争が予想される場合には、
- 分割当事会社間での負担調整条項(補償・求償・費用負担)
- 将来の紛争についての専属的合意管轄・仲裁合意・準拠法条項
などを、会社分割契約の中でしっかり設計しておくことも有効です。
紛争解決条項の考え方については、M&A紛争の解決手段【訴訟・仲裁・調停】と戦略や**M&A紛争を裁判・仲裁・調停のどれで解決すべきか【メリット・デメリット】**とあわせて検討するとよいでしょう。
トラブルが疑われるときの対応と弁護士への相談タイミング(まとめ)
最後に、すでに会社 分割 紛争が顕在化しつつある場合の、基本的な対応の流れとポイントを整理します。
1 まず確認すべき資料と事実
- 会社分割契約書・新設分割計画書(権利義務表・責任分担条項)
- 債権者保護手続に関する書類(官報公告、個別催告書、異議申立の有無と対応)
- 分割前後の財務諸表・キャッシュフロー(分割会社・承継会社双方)
- 問題となっている債権・契約の内容と、分割後の取扱いに関する社内メモ・交渉記録
これらを整理したうえで、
- 法律上どの会社が債務者・保証人・契約当事者と評価されるか
- 債権者保護手続や残存債権者保護規定に照らして、どのような主張・防御が可能か
- 濫用的会社分割と評価されるリスクの有無
を検討していくことになります。
2 交渉・訴訟・仲裁・調停の選択
会社分割に絡む紛争は、金額も大きく、利害関係人も多岐にわたります。
- 個別債権者との交渉による和解
- 債権者側からの支払請求訴訟
- 分割無効の訴え(効力発生日から6か月以内の期間制限)Crear AC+1
- 濫用的会社分割を理由とする残存債権者の請求
- 仲裁条項がある場合の国際仲裁・国内仲裁
など、どの手段を選ぶかによって、コスト・スピード・公開性・執行可能性が大きく変わります。
この点は、M&A紛争の解決手段【訴訟・仲裁・調停】と戦略や**M&A紛争を裁判・仲裁・調停のどれで解決すべきか【メリット・デメリット】**でより詳しく検討すべきテーマです。
- 会社分割での債務承継は、「免責的」か「重畳的」かで責任の構図が大きく変わる
- 債権者保護手続の不備や説明不足は、会社 分割 トラブル・紛争の大きな火種になる
- 濫用的会社分割と評価されると、承継会社も受け取った財産の価額の範囲で責任を負い得る
- スキーム設計段階での債権債務棚卸し・権利義務表の精度・債権者とのコミュニケーションが予防のカギ
- すでに紛争が顕在化している場合は、資料と事実関係を整理したうえで、M&A紛争に詳しい弁護士に早期相談することが重要
会社分割を巡る責任問題は、会社法・民法・倒産法・労働法など複数の分野が絡み合い、個別事情によって結論が大きく変わります。分割の設計段階でも、トラブルが起きてからでも、早めに専門家に相談しておくことで、取り得る選択肢を広げることができます。
坂尾陽弁護士
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