取引先とのトラブルが深刻化すると、「口頭やメールで言った/言わない」の争いになったり、社内決裁や監査の観点からも、正式な通知として記録を残したくなったりします。
内容証明 企業間の場面でよく使われるのは、①請求や催告の意思を明確に示す、②将来の交渉・訴訟に備えて「いつ・何を通知したか」を証拠化する、という2つの目的です。ただし、内容証明は「送れば必ず回収できる」万能ツールではありません。目的と次の一手をセットで設計することが重要です。
この記事で分かること
- 企業間トラブルで内容証明郵便を送るべき典型場面(目的別)
- 送る前に準備すべき資料と、宛名・送付先の注意点
- 書き方の基本構成と、避けるべきNG表現
- 文例(支払請求/履行催告・解除予告/不具合対応)とポイント
- 受取拒否・無視されたときの考え方と、次の手(交渉〜裁判手続)
坂尾陽弁護士
執筆者:弁護士 坂尾 陽(企業法務・M&A担当)
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内容証明郵便とは?企業間トラブルで使う意味
内容証明郵便は、郵便局が「いつ」「どんな内容の文書」を差し出したかを証明してくれる郵便サービスです。相手に対する通知(意思表示)を、後から争われにくい形で残せるのが最大のメリットです。
ただし、内容証明郵便そのものに「強制力」があるわけではありません。
相手が支払い・履行をしなければ、最終的には交渉・ADR・裁判手続などで解決を図る必要があります(企業間紛争の全体像は企業紛争・会社訴訟(企業間トラブル)の解決手段で整理しています)。
「内容」と「到達日」は別の話:配達証明の重要性
実務では、内容証明とセットで配達証明を付けることが多いです。内容証明が「文書の内容と差出日」を証明するのに対し、配達証明は「いつ配達されたか(到達日)」を証明するためです。
とくに、解除通知など到達により効力が発生する意思表示は、到達日が争点になりやすいので、配達証明まで含めて設計するのが安全です。
内容証明でできること・できないこと
- できること:請求・催告・解除通知などの意思表示を「いつ・どんな内容で」したかを証拠化する
- できること:相手方に“こちらは本気で対応する”という心理的インパクトを与え、交渉を動かす材料にする
- できないこと:送っただけで支払いや履行が強制される(裁判・強制執行が不要になる)
- できないこと:事実関係が未整理のまま、曖昧な主張を並べて「勝てる通知」にする(むしろ逆効果になり得ます)
企業間で内容証明を送るべき典型場面
内容証明は、トラブルの初期から毎回送るものではありません。「通知した事実と内容」を後で立証する必要がある場面で効果を発揮します。
送付を検討しやすい場面(目的別)
- 売掛金・請負代金などの未払いが続き、通常の督促(メール・電話)では動かない
- 納期遅延や不具合の是正について、いつまでに何をするかを期限付きで催告したい
- 契約解除(債務不履行解除)を見据え、解除の前提となる催告や解除通知を明確に残したい
- 相手方が「言った/言わない」「受け取っていない」を主張しそうで、証拠の形で残したい
- 消滅時効が迫っており、まずは催告(時効の完成猶予)で時間を確保したい(※その後の手続が重要)
契約解除の要件や通知設計は、内容証明の書き方だけで決まりません。解除の可否や「催告が必要か」などは、契約解除の通知と手続きで詳しく解説しています。
「送らない方がよい」こともある
次のような状態で送ると、相手を硬化させたり、こちらの弱点を与えたりすることがあります。
- 事実関係(納期、検収、瑕疵の範囲、追加仕様など)が未整理で、後から主張が変わりそう
- 請求の根拠が薄いのに、強い断定・非難を入れてしまう(名誉毀損・脅迫等のリスクも)
- 社内の決裁・方針が固まっていないのに「解除する」「訴える」などの最終カードを切ってしまう
送る前にやるべき準備(企業ならではのチェック)
内容証明は、文面そのものよりも、送る前の準備で成否が決まることが多いです。最低限、次を押さえます。
- 目的の確定:支払請求/履行請求/瑕疵対応/解除通知/時効対策など、ゴールを1つ決める(混ぜすぎない)
- 契約書・発注書・検収・議事録の確認:解除条項、損害賠償、検収、再委託、責任制限、合意管轄などを把握する
- 証拠の棚卸し:メール・チャット・納品物・ログ等を「時系列」で並べ、争点を固定する
- 宛名・送付先の確認:法人は本店所在地・代表者名など、到達が争われにくい宛て方にする(移転直後などは要注意)
- 社内手続:交渉窓口、回答期限、次の手(支払督促・仮差押え・訴訟等)までのタイムラインを決めておく
なお、企業間の契約トラブル全体の初動(証拠保全・交渉の組み立て等)は、契約トラブル(債務不履行・解除・損害賠償)の企業向け対応にもまとめています。
内容証明の書き方:基本構成と押さえるポイント
内容証明は「長文で論破する」場ではありません。後から裁判所や第三者が読んでも分かるように、事実→請求→期限→次の手を簡潔に並べます。
基本構成(そのまま使える骨格)
- ①当事者:宛先(会社名・所在地・代表者)、差出人(会社名・所在地・代表者)
- ②契約の特定:契約名、発注日、案件名、発注書番号など「何の話か」を固定
- ③事実経過:重要な日付・やり取りを時系列で(主観は削る)
- ④請求・通知:支払金額、履行内容、是正内容、解除の意思表示など“求める結論”を明確に
- ⑤期限:「令和○年○月○日まで」など、回答・履行の期限を区切る(合理的な期間にする)
- ⑥次の対応:期限までに履行がなければ、協議・法的手続(支払督促・訴訟等)を検討する旨を淡々と記載
- ⑦連絡先:窓口(担当部署)・連絡方法(メール等)を明記(弁護士名義なら弁護士宛て)
書き方のコツ:争点を増やさない
企業間紛争では、相手から「反論ポイント」を拾われると長期化しやすいです。次の点を意識すると、不要な争点を増やしにくくなります。
- 断定できない推測(「御社は最初から払う気がない」等)は書かない
- 請求根拠が複数ある場合でも、文面では主軸を1つにする(詳細は別紙・別途交渉へ)
- 解除や損害賠償まで踏み込むときは、要件を意識して書く(催告・相当期間など)
損害賠償請求まで見据える場合は、要件や立証の考え方を債務不履行による損害賠償請求で整理しておくと、通知文の設計がブレにくくなります。
注意点:NG表現・法的リスク(強い言葉は逆効果)
内容証明は、将来裁判所に提出される可能性があります。相手を威圧する表現は、心証を悪くしたり、別の法的トラブルを招いたりすることがあります。
- 名誉毀損・信用毀損:事実関係が確定していないのに「詐欺」「横領」など断罪する
- 脅迫・恐喝と誤解される表現:「払わないと会社を潰す」「取引先に言いふらす」など不相当な害悪告知
- 業務妨害に発展し得る行為の示唆:SNS拡散、取引先への一斉通知等を軽々に書く
- 法的に危うい断定:解除要件を満たさないのに「解除した。異議は認めない」と断言する
文例:そのまま転用しない前提で“型”をつかむ
以下は、企業間でよくある3パターンの「短い型」です。実際に使うときは、契約条項や経緯に合わせて調整してください(事実と要件が合わない文面は危険です)。
文例1:未払い代金の支払請求(催告)
(例)貴社に対し、令和○年○月○日付の請求書(請求番号:○○)に基づく代金○○円のお支払いをお願いしておりましたが、支払期日(令和○年○月○日)を経過しても入金が確認できません。
つきましては、本書面到達後○日以内(令和○年○月○日まで)に、下記口座へお支払いください。期限までにお支払いいただけない場合、やむを得ず法的手続(支払督促・訴訟等)を検討いたします。
ポイント
- 請求書番号・支払期日・金額など「特定情報」を入れて争点を減らす
- 期限を区切り、次の手(手続の例示)は淡々と書く
- 遅延損害金を請求するなら、根拠(契約条項・利率・起算日)も整理しておく
文例2:履行催告+解除予告(納期遅延など)
(例)貴社は、令和○年○月○日までに○○を納品する義務を負っていますが、現時点で納品が確認できません。
本書面到達後○日以内(令和○年○月○日まで)に納品(又は検収に耐える状態での提供)を行ってください。期限までに履行がない場合、当社は契約を解除し、損害賠償等を請求することがあります。
ポイント
- 「相当期間を定めた催告」が必要かはケースで変わるため、解除要件は確認する
- 解除に踏み込む前に、まずは契約解除の通知と手続きで全体像を整理する
- 解除後に争点になりやすい“原状回復・精算・損害”まで想定しておく
文例3:不具合・瑕疵への是正要求(検収・再納品)
(例)貴社が納品した○○(令和○年○月○日納品分)について、別紙記載の不具合が発生しており、当社の業務に支障が生じています。
つきましては、令和○年○月○日までに、①不具合の原因と再発防止策、②修補・再納品のスケジュール、③暫定対応策をご提示ください。期限までに誠実な回答がない場合、契約上・法的手続上の対応を検討いたします。
ポイント
- 不具合の事実は“観測できる事実”として書き、原因の断定は避ける
- 求める結論を「回答」「修補」「スケジュール」などに分解すると交渉しやすい
- 損害が絡むときは、損害賠償の要件・立証も並行して整理する
送付方法・受取拒否への備え:到達と証拠の考え方
企業間では、相手方が受領を渋ったり、担当者不在を理由に引き延ばしたりすることがあります。文面だけでなく、送付方法も設計しておきます。
送付方法の基本(実務で多い組み合わせ)
- 内容証明郵便+配達証明(到達日も押さえる)
- 同時に、メールでも同内容を送っておく(到達の補強・早期交渉のため)
- 宛先は本店所在地・代表者宛てを基本に、部署宛てを併記するかはケースで判断
受取拒否・不在で返送されたとき
「受け取っていないから無効」と単純に片付かないことがある一方で、常に“到達したことになる”と断定できるわけでもありません。重要なのは、相手が了知できる状態だったか、こちらがどこまで到達の確保を尽くしたか、という点です。
実務上は、返送の記録も含めて保管したうえで、次の対応を検討します。
- 再送:住所・社名・代表者名の誤りがないか確認して再送する
- 併用:メール・FAX・訪問など、別手段でも通知した事実を積み上げる
- 早期に手続へ:支払督促・訴訟提起など、裁判所を介した到達手段に切り替える
送った後・受け取った後の「次の手」
内容証明はゴールではなく、交渉・回収・関係整理の“途中の道具”です。送った側/受け取った側で、次の一手を整理します。
送った側:タイムラインを先に決める
- 期限到来まで:回答窓口を一本化し、相手の提案(分割・減額・相殺等)を想定して準備
- 期限到来後:交渉継続か、法的手続へ移行かを判断(感情ではなく損得で)
- 時効が迫る場合:催告だけで安心せず、6か月以内に「裁判上の請求」等へ移る計画を立てる
受け取った側:無視は基本的に得策ではない
内容証明が届いたら、まずは社内で事実確認を行い、契約条項・経緯・証拠を整理します。反論がある場合も、放置せず、こちらの立場を明確にした回答を出した方が、交渉上も訴訟上も不利になりにくいことが多いです。
- 事実の確認:納期・検収・瑕疵・仕様変更・支払条件など、争点になりやすい箇所を時系列で確認
- 法的整理:支払義務の有無、解除の有効性、相殺・同時履行の抗弁などを検討
- 回答方針:認める/争う/一部認める(分割・減額)を決め、安易な債務承認にならない文面にする
まとめ
- 内容証明は「強制力」ではなく、「通知内容と時期の証拠化」に強みがある
- 企業間では、支払請求・履行催告・解除通知・時効対策など“目的別”に使い分ける
- 送付前に、契約・証拠・宛名・社内方針・次の手(手続)までセットで準備する
- 文面は事実と請求を簡潔に。攻撃的な表現は避け、争点を増やさない
- 送った後/受け取った後の行動が重要。放置せず、交渉〜裁判手続を見据えて動く
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